本シリーズの構想から約半年が経った今、まだ完成には程遠い。
というのも真島さんとの会敵で四苦八苦している途中なのだ。暫くしたら筆が動くのでもうしばらくお待ち下さい。
【前回のBullets Price】
DAのすべての能力を上回る傭兵集団の実力を見たたきな。だが、フレディの言葉が腑に落ちない。そんなたきなが、傭兵集団から去って、普段通り接客業している時だった。
喫茶リコリコ
傭兵による治療から2週間後のこと
傭兵達の懸命な治療の末、たきなは怪我してから1ヶ月以内で喫茶リコリコに戻っていた。
千束はたきなが戻ってきてウキウキで接客していた。
だが、たきなは納得行かなかった。
確かに傭兵の実力はDAを上回る展開力、制圧力、戦術的能力、全て予想を上回っていた。
それでもたきなには、フレディの言葉には気に食わなかった。
(・・・何が”汚れ仕事”ですか。やってることは犯罪者と変わりないじゃないですか・・・)
そう悩んでいるうちに千束に声をかけられた。
「たきな?どーした?」
「あ・・・いえ・・・後で話しても?」
たきなは言葉を選びながら言う。
千束は頷きながら言った。
「いいよ!傭兵の皆さんの実力を見に行ったんでしょ?楽しみだなぁ。」
千束は再び接客に戻った。
たきなは考え事しながら厨房に入る。
するとミカとぶつかり、そのはずみでたきなが片付けていた皿を落として割ってしまった。
パリーン!!!
その音に千束が接客をやめてすっとんでくる。
「先生!たきな!大丈夫!?」
「あぁ・・・私は大丈夫だ。だが・・・」
ミカが落とした目線の先には、たきなが割れた皿で指を切っていた。
たきなは2人に謝る。
「店長・・・千束・・・ごめんなさい・・・」
「いや、いいんだ。私の不注意だ。」
「そーだよ。たきなはまだ病み上がりなんだから、ゆっくり休んで良いよ。」
そう言って千束は接客業に戻った。
千束が明るく振舞うのに対して、たきなが暗い顔していることに気づいたミカ。
おそらく、傭兵らに何か言われたのか?と不安がよぎる。
「ここは私がやるから、クルミのところに行きなさい。無理はしないでくれ。」
「ーーー申し訳ございません。ありがとうございます。」
たきなは立ち上がり、奥の控え室に向かった。
たきなは謝罪する前になにか小声で言ったような気がするが、ミカは気にせず、割れた皿を片付け始めた。
------------------------------
「なんで!・・・こんな!・・・時にっ!」
たきなは1人で愚痴を呟きながら止血し始めた。
そこの押し入れにはクルミが居るのにも関わらず・・・
「なんでDAはあんな傭兵と手を組んだんですか!訳のわからない殺ししか出来ない犯罪者なのに!」
「そんなに知りたいか?」
クルミの声に、たきなはビクッ!と背筋が凍るような感じがした。
たきなは振り返る。
クルミはにやにやとたきなを見ている。
「クルミ・・・私、そんなに声出てましたか?」
「うるさいほどな。それで?あの”狼”からなんか言われたのか?」
たきなは驚く。
なぜ知っているのかをクルミに問う。
「カズキ・・・いや、リーから謝罪の文章が来てたから、何事かと思っていたが、また奴と喧嘩したのか。」
「対したことありません。ただ、千束をバカにしたことに腹立ったんです。」
「”不殺”のことか?」
「そうですよ!ーーーえっ?」
たきなはクルミの言葉に固まった。
クルミはたきなに手招きした。
一抹の不安の中、クルミのPCデスクを覗いた。
クルミは黙々と作業して、あるフォルダを開いた。
たきなはその画面を見て大層驚いた。
そこには”狼”の経歴とDA依頼以前の直接的殺害数が”0”と表記していた。
たきなはただ黙っていた。
いや、漠然としていた。
あんな”奴”が不殺をあざけ笑っていたのに、自分も不殺を?
クルミが口を開く。
「最初見たときは驚いた。だが、”カズキ”の言葉で確信した。”狼”は最初から世界に蔓延っている闇の半分以上を屠って”いない”。多くの世界に蔓延っている闇を屠っているのは、武闘派の”ジョージとその部下”だった。狼はその闇の”交渉人”に過ぎなかったということだ。」
「え?ーーーじゃあ、最初の情報は一体どこから?」
「カズキ曰く、『奴のせいにすれば、銃撃戦を隠蔽することが出来る上に1人で暗躍していれば、世界中は恐怖に包まれるだろう』とコメントをもらったよ。これは一杯掴まされたな。」
「情報が嘘と言うのは?」
あまりにも出来すぎた情報・・・
困惑するたきなの問いにミカが後ろから答えた。
「いや、その可能性は無い。」
たきなは声の主であるミカに振り返る。
「彼が提示した情報チップカードに全員の経歴が入っていた。無論、彼の本名も生まれも全部載っている。しかも、チップ内部に暗号が仕込まれていた。『このチップはリーとフレディ、フリッツしか知られていない』とクルミに解読してもらったんだ。しかも、クルミでさえ唸る巧妙な暗号だった。とても嘘とは思えないな。」
ミカはたきなからクルミに目線を移す。
クルミは目線を感じ取ったのか、”狼”のプロフィールを拡大した。
たきなは再び、クルミのPC画面を覗く。
『
たきなはひとつの文章に目を凝らし、口にした。
「ーーー渡米して数年後。戦闘と暗殺スタイルを確立させたうえで、戦わずして勝利に導く戦略と交渉術を生み出した。直後の紛争にて14歳の時に傭兵頭であるフリッツを守るために左半身を喪失した・・・」
たきなは言葉を失った。
彼は自分の命を差し出してまで味方を庇おうとした。
その結果が前の金属製の左腕だろう。
14歳の決断力じゃない。
14歳の行動力でもない。
DAでもない彼がそこまで身を挺するなんて・・・
”彼”は一体何のために戦うのだろうか?
たきなは2人に聞いた。
「このことは千束には言ってあるのですか?」
2人は首を振った。
千束は”彼”の真実を知らない。
では、傭兵の詳細な経歴は?
それでも2人は首を振った。
千束は”何も知らない”。
いや、”教えられない”というほうが正しい?
たきな自身でもわからなかった。
ミカが小声で言う。
「ミズキには言ってあるが、肝心の千束には伝えていないんだ。」
「何故です?」
ミカの代わりにクルミが応えた。
「この傭兵の存在が少なくとも千束にも影響が出ると思ったからだ。もし”狼”が不殺を貫いている事を千束が知ったら?」
「恐らく、知りすぎてジョージといった武闘派に始末される?」
「おおよそ正解だ。」
クルミは次にジョージの経歴を拡大させた。
そこにはーーー
『アラン機関に所属しながらSASに所属。裏でSASを暗躍しつつも同時にアラン機関の依頼もこなしている。』
と。
ほぼ結論が出た。
傭兵・・・
いやジョージといった武闘派は、DAの弱体化を狙っている。
正しくは、”狼”の姿を隠す実力を見抜く千束の命を奪い、その他諸々を含めてDAの殲滅戦を計ろうとしている。
まず考えられるのは、数多のCIA工作員が日本在住時にDAによって、始末されたことによる報復攻撃の1つの可能性だ。
もう1つは25年前の仇討ち。
ジョージの思惑が正しければ、国際機関あるいは・・・”アラン機関”を通して世界一の傭兵に”依頼させた”という問題だ。
その抑止力として”狼”がDAと傭兵のバランス、あるいは空間を作っている。
だから、傭兵の情報網を此方に与えた上で此方も下手に傭兵に手を出さないようになっている。
”狼”だけじゃない。
傭兵の司令塔である”現代のアインシュタイン”、傭兵頭の人物もそばにいる。
この3人のおかげでDAとCIAのパワーバランスになっている事だ。
ただ、この3人が傭兵内で1人でも欠けた場合、日本の終わりと言ってもいいだろう。
早急に片付けなければならない。
しかし?
どうやって?
DAは彼らを抑えても、千束を救える手段がほとんどない。
悩むたきなにクルミが言った。
「たきな。お前は千束だけを見ていろ。既にカズキがボクに対して働きをかけている。傭兵のトップは絶対に口を割らない。そしてフレディに関してだが、傭兵の中で特別な存在だ。実力も誰よりも高いのは確かだ。ただ、千束には”不殺”のことを絶対に言わない。いや、言っちゃダメだ。」
たきなは沈黙のまま頷いた。
続いてクルミはミカにも言った。
「ミカも同様に守って欲しい。これは千束だけの問題じゃない。ここにいる全員の問題なんだ。1つのピースも欠けてはいけないんだ。あとでボクからミズキにも言う。」
「わかった。」
「店長、クルミ、ありがとうございます。」
たきなは2人におじきをした。
だが、クルミの顔が険しい。
「いや、こっちも早くに気づくべきだった。ここまで慎重に水面下で起きていたなんて・・・」
クルミの言い分にミカが諭す。
「大丈夫だ。彼らが命を賭けてまで情報を伝えたんだ。なんとかなるさ。」
------------------------------
東京・某所
同時刻にて
「これで本当によかったのか?リー?」
フリッツは戸惑いながら言う。
リーは断言した。
「フレディの情報が正しければ、ジョージは日本での絶滅戦争を望んでいる可能性が高い。」
「25年前の報復か?」
「それもそうだが、フレディ以上にDAに対しての当りが強すぎる。いくらクライアント相手に強気に出ても困る。今までほぼ対等に渡ってきたのに、日本に到着してから強めに出ている。」
「それはリーの直感か?」
「いや、傭兵の将来とお前の”娘”のことだ。」
「・・・あの子か。」
画面を見たままリーとその言葉に躓くフリッツ。
フリッツは何も言い返せなかった。
大事な一人娘を置いて傭兵家業に出て行ったきり、彼女は孤児として”DA”に迎えられた。
彼女の存在は、リーとフレディしか知らない。
だから、下手にジョージたちに言えないのだ。
あの25年前のテロに彼女も関わっているのだから・・・
さらに追い討ちをかけるようにリーが言う。
「フレディが言ってたぜ。『あまり動揺するな。幾ら知っている人物とは言えど、味方に敵は必ず存在する。裏切り者に悟られるな』ってな・・・あの店主には見覚えあるんだろう?」
「あぁ、かなり昔の話だ。彼は忘れているかもしれないな。」
いや、忘れていて欲しい。
できればジョージたちに悟られないように・・・
次回⇒【内外の謀り】
小話【フリッツの子と覚悟】
・・・あれは30年近く前のことだ。
DAの存在は耳にしていた。
私は闘いの為に身を投じてきた人間だ。
今更、あの子を教育することはできなかった。
だからDAに赴き、あの子を日本に置いてきた。
あの子だけじゃない。
DAの現指令や喫茶店の主である、ミカの旦那さんも知っている。
20年前に一度通信を介して会話したが、まさかここに来て出会うなんて思いもしなかった。
全部、私の不運が繋がってしまった瞬間でもある。
ジョージにばれれば始末されるのは承知の上。
傭兵らはともかく、あのお嬢さんたちを巻き込みたくないのだ。
ここは私が終末を告げる必要がある。
あとは頼んだぞ、フレディ。
~Fin~
それでは、次回までごきげんよう。