~銃弾と対価~   作:クマぴょん

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※制作者からのお知らせ※
前話も言った通り、今話から週1投稿に切り替わることに舵を切った。担当医が最後の決断でもう後戻りできないと診断されたので、今、畳みかけないとまずいのだ。作者都合だが、今切り替えないとまずいと判断した。こればかりは許して欲しい。遺作にはしたくないのだ。

【前回のBullets Price】
喫茶リコリコの依頼内容に齧り付くジョージに違和感を感じたリー。そして、フレディの扇動でジョージは保身のために作戦に従事する。だが、それを見逃せないリーはフレディ単独行動という偽りの作戦で行動開始したーーー


【因縁】

 

 

東京駅周辺

作戦開始から2時間が経過

 

<<各隊、定時報告だ。>>

 

リーこと作戦指揮官が各隊を伝達した。

リーの横にはフリッツとワタナベ、ジョンがいる。

今作戦は不測の事態に備え、全力投射は出来ない。

マイケルとジョージ、その部下、そして単独行動中のフレディでLimaの早期発見と脅威の排除を行なうようになった。

 

<<こちらダブリン。未だに発見できず。>>

 

ダブリンはジョージとマイケルの元SASコンビだ。

上官と元部下のコンビネーションが光るだろう。

 

<<了解した。引き続き作戦を続行せよ。>>

<<こちらモスクワ。こちらも見つかってない。>>

 

モスクワはロシア人のチュレンコフとアレクの戦友コンビ。

最低限の武装でも鎮圧できる上、監視能力高いので、この2人は切っても外せない。

 

<<了解。モスクワも続行せよ。アウト。>>

<<こちらカタフラクト。現在周回中だが、ターゲットならびにLimaは見つからず。>>

 

カタフラクトにはロケット弾にも耐える重防弾車輌で、中には運転手のリック、レーダー兼通信手のロック、警戒要員のハリスとガウディーが乗っている。

ここもダメか・・・と”演じる”リー。

 

<<あー了解。次の周回ルートに移っても構わない。>>

 

リーが一息入れると、フレディのチャンネルに移った。

 

<<オーバーロードからアーチャーへ。Noce(ノース)から通達。>>

 

Noceというのはクルミのコールサインでイタリア語で”クルミ”だ。

 

<<こちらアーチャー。続けろ。>>

<<Noce曰く、『WhiskeyがMIAもしくはPOW。Tangoが単独で行動を開始。Novemberが退避を開始』だ。>>

<<受け取った。こちらも確認次第、再度連絡する。アウト。>>

 

クルミからの情報によれば、

 

『ミズキが行方不明もしくは捕虜。たきながターゲットの行動範囲内に入ったので単独で囮を開始。千束が囮作戦中にマツシタを退避させる。』

 

ということだ。

この通信のやり取りの中で、ワタナベとジョンは困惑した。

何ゆえ、他チームに通達しないのかと・・・

そしてフリッツに目線を移した。

フリッツはあごを支えて険しい顔していた。

2人はフリッツたち3人の行動が読めなかった。

通信が終えたリーがフリッツたちを見渡した。

 

「フリッツはともかく、ワタナベとジョンに残ったのは話があるからだ。できれば俺たちに協力してくれ。今後のこの傭兵の将来に関わる事だ。」

 

将来?

ワタナベとジョンはまたしてもわからない。

何を考えているのだと。

もしかしなくてもジョージの言動が怪しいとかが?

そう2人が考えると、リーは2人の考えを言語化にした。

 

「2人とも、もしかしてジョージが謀りごとが気になるのか?」

「Mr.リー・・・なぜそれを?」「なぜわかった?」

「言わなくてもわかるさ。2人に聞きたい。何故、ジョージがここに来てからクライアントに対して当りが強いと思う?」

 

2人は思考を巡った。

だが、考え付くのは25年前の日本で発生したテロぐらいだが・・・

ジョンはそのテロを口に出す。

 

「25年前の事を引きずっているのか?」

「半分はあたりだ。」

「半分?残りの半分は?」

 

ワタナベが疑問で聞き返す。

フリッツが答えを出す。

 

「アラン機関。」

 

2人は怪訝な顔でフリッツを見た。

何ゆえ、アラン機関が出てくるのかと?

ジョージが推測したのでは?

リーがフリッツの答えを補足する。

 

「言いたい事は山ほどあるが、あいつが店でアラン機関を言い出しかけたのは、フレディがアメリカから帰還したときだ。あの時、フレディが所属していた結社が何者かに壊滅されたとの情報があったが、その出所はジョージが持っていた。」

 

リーの言葉にワタナベは気づく。

 

「待ってください。Mr.リー。当時の我々は名も無き傭兵集団で世界にとっては知らない存在だったはずです。あの時は傭兵の規模も大きかったですし、知る術もなかったはずです。」

 

ワタナベの言葉に便乗してジョンも続く。

 

「それもそうだ。何故、ジョージが知っている?」

「あいつがアラン機関の二重スパイだとしたら?」

「なんだと!?」

「Mr.リー・・・その情報は確かですか?」

 

そういわれて、リーはあるフロッピーディスクを取り出す。

そのディスクをPCに入れると、ジョージの経歴が出てきた。

ジョージの経歴を見る2人に、思いもよらぬ記述が書かれてあった。

 

『ーーー21歳の時、射撃の腕を買われてアラン機関に抜擢。と同時に英国陸軍士官学校を首席で返り咲き、彼の強い要望でSASにー』

 

この記述で、ジョージはSASとアラン機関の両方の肩を持つこととなる。

しかし、この情報が定かではない。

出所不明ならいいと思った2人。

だが、フリッツの言葉で現実に戻る。

 

「この情報はISIS(イスラエル諜報特務庁)SIS(秘密情報部)からだ。」

 

確信ともいえる情報源だった。

幾ら身内とは言えど、モサドとMI6が逃すわけが無い。

ましてや今回の依頼と30年前から受け持つCIAの依頼・・・

これらはジョージによって操られている可能性だ。

10年前の旧電波塔テロの情報はリーからだったが、アレもジョージの工作の可能性も無きしもあらず。

明らかに出来すぎているDAの依頼。

しかも21歳という若さで士官学校を飛び級したあたり、明らかに影のある人物だ。

『影のある人間に手引きする組織』とは正にこのことだったか。

いや、この傭兵自体が影のある人間が一定数いるのも事実であるが・・・

少なくとも目の前にいるフリッツがそうだ。

ただ、フリッツがリーとフレディに協力を仰いでいるという事は、フリッツの過去も知っているという事とその2人から信用しているから、フリッツとの協力関係の状態を意味している。

そしてリーが提案した。

 

「これらを踏まえて、できれば2人にも協力したい。」

 

ワタナベは即決した。

 

「わかりました。Mr.フリッツは共に歩んだ戦友でもあります。」

 

だが、ジョンは悩んだ。

ジョンの旧知の友人であるマイケルの存在だ。

マイケルの元上官がジョージで、そう安々と「はい、そうですか。」と言えない。

慎重に決断したかった。

ここ数十年ずっと好敵手として、戦友として共にしてきた。

決められない立場にいる。

フリッツがジョンの考えに助言した。

 

「ジョン。確かに決められない立場では居るだろう。だが、ジョージが傭兵を決別した上で裏切るとなると、マイケルもわかるんじゃないか?マイケル自身がジョージを誘った立場として、フレディに目をつけられる可能性が。」

「・・・!そうか!あいつにはあいつの立場があるのか・・・それには気づかなかった・・・わかった。協力しよう。」

 

ジョンの答えにひと段落した一同。

しかし、時は待ってくれなかった。

リーの機器にアーチャーから緊急入電が入った。

 

------------------------------

 

東京駅付近

 

<<了解した。引き続きTangoの支援に入れ。尚、アーチャーからコールサインをドラグーンに変更する。復唱せよ。>>

「アーチャーからドラグーンに変更・・・了解した。警戒態勢に移行する。」

 

ドラグーンは心拍センサーを頼りに、工事現場に踏み入れた。

100年以上前のM1891に三角錐の銃剣を無理くり装着し、DAとの共同模擬戦で用いたMauser M1918を背負い、単身で行動してた。

Tangoの捜索に入っていたものの、その相手がまさか15年前の因縁の敵だとは思っていなかった。

 

ジン。

15年前ー

左腕を失う前。

未練のあるフレディと相対していた。

今では、暗殺者として。

『サイレント・ジン』として目の前で現れた。

互いに暗殺者として決着つけることができる瞬間だ。

あの時は完敗した。

だが・・・今は違う。

狡猾で姑息な手でも成し遂げるのがフリーランス(傭兵)なのだから。

 

「ん?」

 

フレディの耳になにかか聞こえて、彼は顔を上げた。

その音源を頼りに工事現場の奥へと進む。

 

ピピッ!!

 

心拍センサーで2人を示す情報が出てきた。

ビンゴだ。

かすかに銃の音も聞こえる。

フレディは走り出して、フードを被り、背負っている対戦車ライフルを手に取っていた。

走りながらであるが、安定した走りで対戦車ライフルに、13x92mmTuF弾を薬室に装填。

そして、フレディは現場に到着した。

奥に見えるのはーーーたきなで、手前が恐らくジン。

一瞬だったが、血の色が識別できた。

恐らく、たきなが負傷している可能性がある。

手遅れになる前に構えて、照準が絞りきる前に撃つ!

 

ダァーン!

 

甲高い砲撃に近い音が工事現場を包み込み、放たれた砲弾はジンの背中に吸い込まれるように直撃した。

弾丸は弾かれたものの、ジンは背中に強い衝撃で大きくよろめき、振り返る。

高所に陣取って、フードを被り黄色の目をした男がこちらを狙っている。

白のフード・・・黄色の目・・・

ジンの思考の引き出しの中に1つの人物が思い浮かぶ。

 

(ー嘘だ。あの子供がーーー何故だ?何故ここにいる!?)

 

ジンは焦った。

15年前の敵がここに会敵するとは思っていなかった。

あの時は、動きに躊躇のある子供が・・・

小銃よりも倍以上の小銃を手にとって軽々と持っているとはー

ジンだけではない。

たきなも同様だった。

彼がここにいること自体、不思議で仕方が無かった。

彼は叫ぶ。

 

「井ノ上!貴様はそこに隠れていろ!(オレ)だけで撃破する。」

 

と言い終わると同時に高所から飛び降りて、ジンと対等な高度にいる。

ジンは拳銃をフレディに構えなおすと、彼は対戦車ライフルを背中に戻して、銃剣のついた小銃で吶喊した。

ジンはそれに対応して射撃する。

だが、彼もまたジンの狙う所に小銃を盾にしていた。

焦るジン。

果敢に撃つも、彼は全て小銃を盾にしたり、あるいは銃剣で弾くといった人間離れの事を簡単に成し遂げている。

ジンとフレディの間に迫る距離。

1発の銃弾が、フレディの左脚に当たるも金属音と共にどこかに飛んでいった。

ジンは”ソレ”を見てあっけに取られると同時に、フレディの小銃で床尾打撃が炸裂し、ジンの右頬に直撃。

2度目の衝撃でジンは拳銃を手放すが、直ぐに立て直す。

だがフレディは一旦、バックステップで距離をとった。

直後、ノーモーションでボロボロになった小銃と殺意のある三角錐の銃剣がジンめがけて投擲。

驚きのあまりジンはギリギリで交わす。

だが、速度と運動エネルギーが逸脱して、たきなの横を一瞬で通過して、工事現場の資材に水平に深く突き刺さった。

たきなはその小銃を見て、驚きを隠せない。

そしてーーー2人を振り返る。

たきなを追い詰めたジンが、逆にフレディによって追い詰めている。

 

突進槍(ランス)のような正拳突き。

天を突き、斬り落す鎌槍(ハルバード)のようなかかと落し。

重く金槌(ウォーハンマー)のような前蹴り。

大きく薙ぐことが出来る薙刀(グレイブ)のような回し蹴り。

 

全ての技が無駄なく素早く、1発1発が重く見える。

ジンも諦めず、果敢に応戦。

応戦も適わず、ジリジリと引くジン。

フレディの攻撃の隙がなく、防御を捨てて、追撃の連続で次々と追い込んでいる。

ジンは、たきなが隠れる鉄骨まで追い詰められた。

フレディの前蹴りを左によけるジン。

しかし、その前蹴りは鉄骨に衝撃を与えた上で、鉄骨を軸に左後回し蹴りがジンの左側頭部に当てた。

蹴りの衝撃と鉄骨に受身した衝撃が合わさり、ジンのバランスを大きく崩す。

ソレを見逃すはずがないと、トドメのかかと落しでジンは気を失い、その場で倒れた。

フレディは言う。

 

「ターゲット沈黙。」

 

 

次回⇒【Mr.Enemy】




小話【鷹の暗殺者】

作戦開始から10分後のこと。
リーはクルミからの情報共有で、フレディの話をしてた。

「鷹の暗殺者」・・・いや、フレディの・・・奴の異名だよ。
名付け親?
アラン機関だ。
それを聞いて、奴は不服だったのかアラン機関の連中を口封じさせて、病院送りにしたんだ。
口封じと言っても殺しはしていない。
人間には急所が多いからな。
奴はそれを全部知っているわけだ。
死ねる急所と死ねない急所・・・それだけで奴のアドバンテージなんだよ。
アイツは、とにかく強い。
ただひたすら強い。
実力はフリッツやジョンと言った古参連中を遥かに超えている。
だから、奴には親父であるフリッツを超えてほしいんだ。
まだ、アイツの本気はフリッツの命令で出していない。
クルミ、この作戦でアイツの戦闘力が解るぜ。

と、リーはクルミと連絡を閉じた。
クルミは、何とかしてでもフレディを暴きたかった。
あの情報だけでは物足りない。
ならば、千束とたきなに奴の実力はどんなものかを聞き出そうとしていた。

~Fin~

それでは、次回までごきげんよう。
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