~銃弾と対価~   作:クマぴょん

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【前回のBullets Price】
真島を含める所属不明の敵を完膚なきまで叩き潰すことに成功したフリッツ傭兵団。そんな傍ら、ドラグーンは情報共有のために喫茶リコリコに足を運ぶことにしたのだった。


【扇動家の目線】

 

 

2100時

東京・錦糸町

喫茶リコリコにて

 

November救出作戦後、ドラグーンはLimaを警護しつつ喫茶リコリコに到着し、フッサールらは周辺掃討完了次第、アジトに帰還する予定だ。

それでドラグーンは、Noceことクルミに傭兵集団の情報が有っているかの確認のために喫茶リコリコにいた。

 

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「うぅ・・・」

 

喫茶店に戻ってからクルミは正座していた。

しかも、土足であがる客間で。

クルミの目の前にはたきなが不動明王のように立っていた。

そして相変わらず酒豪のミズキはカウンター席におり、任務から解除されたフレディもミズキ同様に酒を飲みながらカウンター席に座っていた。

November・・・

いや、千束は座敷でミカが千束の治療を行っていた。

 

「痛っ・・・なるほど?」

 

ミカが治療中の千束の腕に痛みが走っては、その度に苦虫を噛み潰したような顔をする千束。

今救出における事の顛末は、千束は納得がいったそうだ。

事件は傭兵集団が入国する以前、『銃密輸取引事件』に遡る。

DAの頭脳にして高インフラの「ラジアータ」が何者かによってハッキング・・・いや破壊を目的とした”クラッキング”が行われた。

クラッキングにおけるインフラの破壊と通信障害で機能が低下したラジアータは、ほぼ機能を停止したといっても過言ではない。

ラジアータが動けなくなり、その対応に追われた結果が密輸阻止の失敗と作戦隠蔽の為に”たきなを左遷させた”というものだった。

で、クラッキングした犯人が客間で正座している”ウォールナット”。

ミズキに酒を盛られても、一気飲みでジョッキを空にしたフレディは、呆れるようにため息が出た。

そんなフレディを横目に、ミズキは言い放つ。

 

「つまり。全部コイツが原因って事。」

「何だよ、助けてやっただろぉ・・・」

 

こんな弱腰なハッカーを見て益々フレディはため息をついた。

 

「ミズキお嬢、酒を頼む。」

「はいよ。アンタには助けられたわ。」

 

並々に注がれるも彼は一気に飲み干す。

酔いもせずに淡々としゃべる。

 

「気にするな。クルミが犯人だったという情報も作戦前にリーから知ったばっかりだったしな。」

「アンタのところのハッカー、こっちのちびっこと違って優秀だわ。」

「カズキよりもボクの方がー」

 

クルミの言葉にフレディは遮る。

 

「優秀なハッカーは汚名返上して、恩を倍に返すまでが礼儀だ。お前さんのケツ拭きが疎かになったせいで、今作戦以前のDAの4名が亡くなって、強いて言えば我々が日本に来るはずもなかった。違うか?」

 

フレディの発言はごもっともだ。

クルミのクラッキングさえ無ければ、この依頼はあったとしてもスルーしていた。

スルー出来るには、

 

・秘密裏に組織化された治安組織の存在

・数百挺にのぼる銃密輸取引作戦の失敗

・高インフラ破壊

 

の隠ぺいをしなかった場合であり、CIAの依頼である銃密輸は”密輸ルート”さえ押さえてしまえば、日本に入国することさえないのだ。

だが、DAは判断を誤り、全て隠ぺいした上で謎を残したまま、フリッツ傭兵団に依頼させて協力を仰いでしまったことが、フレディの中で懸念事項とされていた。

フレディは先の戦争から完治せずに、そのまま日本に入国して2ヶ月間、DAから追跡されつつも諜報網を7割程度しか広げられなかった。

フレディのため息はそこから生まれていた。

無理してまで動いた身体がそろそろ限界に近づいて来た証拠でもある。

 

「す、すまん・・・」

「謝るなら最初からやるなっつーの。」

「で、どうする?たきなお嬢?」

「そうーだ、たきな。アンタは被害者なんだから、言っちゃいな。」

「どーすんの、たきな?やっちまうかぁ?」

 

ミズキと千束が煽る。

フレディは黙って空のジョッキをミズキに渡し、ジョッキいっぱいまでそそがれてフレディに渡しては、ソレを一気に飲み干すフレディ。

それでもフレディは酒に酔った気配は無い。

 

「千束お嬢はクルミになんか言わないのか?クルミ(奴さん)のせいで襲撃された事も含まれているんだ。」

「んー・・・たきな次第かな?」

「お、おいっ!千束まで・・・フレディもやめろっ!」

「アンタに拒否権は無いのよ。寝ている彼まで叩き起こしたのもあるんだから。」

「うぐっ・・・」

「それは気にしていない。お嬢の”どっちか”が脱落したら、こっちはまともに動けない。協力してやらんとまた仕事にありつけないからな。」

「だってさー。良かったわねー。」

 

ミズキの煽りにすかさずスパイスを入れるフレディ。

 

「ただ、この失態は許されざる行為だ。己なら眉間に1発、手足に4発ってところだろう。残りの1発は生存確認だな。」

「くっ・・・あっ、ごめん。たきな!」

 

四方八方からの攻撃に耐えられず、クルミはたきなに向き直って頭を下げた。

店内に響き渡るクルミの謝罪。

部外者のフレディはともかく千束たちを巻き込み、更には一番の被害者であるたきなに対して、彼女なりの懸命な謝罪だろう。

それでもたきなは赦した。

口元を緩めては息を漏らす。

 

「あれは私の行動の結果で、クルミのせいじゃありません。」

 

解決した。

フレディの扇動で一時的にどうなるかと思ったが、喫茶リコリコは結束力が段違いだった。

たきなの言葉で、千束とミカは笑い合い、ミズキは面白くなさそうに酒を仰ぐ。

フレディは思う。

 

(傭兵らも一枚岩だったらどんなにうれしいことか・・・)

 

とデカいため息を吐く。

ミズキがフレディの空になったジョッキを見て、酒を注ごうとしたがフレディは丁寧に断り、代わりにトマトジュースが欲しいと頼んだ。

ミズキは重い腰を上げて、冷蔵庫から原液のトマトジュースをフレディに注ぎ、それを確認したフレディはまたもや一気に飲み干す。

ミズキが席に戻ると、たきなは言う。

 

「でも、アイツは捕まえる。最後まで協力して貰いますよ!」

「も、もちろんだ!早速だがー」

 

クルミが動く前にフレディが動いた。

 

「奴の名前は知っている。リーが血眼で探していた人物だ。」

 

店にいる全員がフレディの顔を向く。

全員の顔がフレディを向いたのを確認した結果、こう言い放つ。

 

「奴の名は・・・真島だ。だろ?千束お嬢。」

 

今度は千束に目線が移る。

 

「そうー言えば確かに。あれ?たしかフレディさんの口から言ってたような・・・」

「まぁ千束お嬢の記憶力がどうなのかはどうでもいいとして、証言者がここにいるということは確かだ。なぁ?オーバーロード。」

<<あぁ、そうだ。確証は得られていないがな。>>

 

と、居ないはずリーの声がフレディの左腕から出てきた。

再びフレディに凝視する喫茶リコリコの全員。

 

<<盗み聞きしようと思っていなかったが、フレディが酒飲んで饒舌になってたもんで、黙っていた。申し訳ない。>>

「要らん情報まで流すな。まぁ確信ではあるが、あくまでこちらが確信を得ただけの話であって、そっちも後ででいいから確認が取れればいい。」

「千束、奴の顔は見ましたか?」

 

たきなの問いに、千束は少し考えるがあんまりパッと出てこなかった。

むしろ、真島よりも傭兵集団の制圧力にびっくりしたぐらい記憶が飛んでいるらしい。

すると必然的にフレディを見る。

 

「証拠はないが、緑髪で天然パーマというやつか?あと目元に何かしらの傷があったのを覚えている。何らかの原因で一時的に目を失っていると考えると、千束お嬢と同じだ。他の五感のどれかが優れている可能性がある。(オレ)みたいに脳内レーダーがあるわけでもないはずだ。」

 

とんでもないことをサラッと言うフレディ。

だが、本人は気づかず、一息ついて話を続ける。

 

「とりあえず、奴さんが密輸関係者・・・いや、リーダー格といっても過言ではない。問題はどうやって武器を密輸したが、これは前回ほぼ答えは出ている組織で間違いないだろう。まぁ、そちらも確認は必要だが。」

 

何かを隠して含みのある言葉を操るフレディ。

問おうしても絶対に割らないだろう。

フレディは立ち上がって帰ろうとした。

 

<<これからフレディは休まなきゃならん。睡眠不足でぶっ倒れたら困るからな。>>

「そういうこった。酒代はまた来た時に渡す。じゃあな。」

 

とそそくさに帰って行った。

クルミが呟く。

 

「睡眠平均時間が2時間なのは、本当らしいな。」

「「2時間!?」」

 

クルミの言葉に千束とたきなは叫んだ。

ミカが険しい顔になりながらぼやく。

 

「彼はそんな状態で戦っていたのか・・・」

「・・・そういや前来たときは、お酒は3年に1回ぐらいしか飲まないとか言ってたような。」

「ってことはアイツは久々に酒を飲んだってことぉ!?」

「多分。」

「でも、酔わなかったわよ?」

 

ミズキの問いにたきなが答えた。

 

「マイケルさんから聞きました。生死の境目に陥るほど過酷な訓練をして無の表情を保っているって。」

「謎だらけね・・・ホントっ。びっくりするぐらい一気飲みするんだし。体に悪いんじゃないかって思ったわよ。」

「それ、ミズキが言うのか?」

 

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喫茶リコリコの笑い声が外まで聞こえる。

リーから連絡が入った。

 

<<まだ帰らないのか?>>

「あぁ。何だか懐かしい気がしてな。」

<<そうか。お前が気が済むまでそこに居ろ。>>

 

フレディは首を振った。

 

「いや、いいんだ。本当の家族を探すなんて馬鹿馬鹿しいからな。それが”(オレ)の道”と言った瞬間笑われる。」

<<初耳だぞ。>>

「今言ったからな。(オレ)の親父はフリッツだけだ。敬愛されないまま傭兵として過ごすしかない。さて、今から帰還する。」

 

と言いいフレディは騎乗し始め、喫茶リコリコから離れ、常世の闇に消えていった。

その背中は哀しみを背負った男の背中だった。

 

 

次回⇒【対価】




小話【己の道】

己の道・・・
己は何を求めていたか?
それは家族だ。

母親にも見捨てられ、ビルマの親父でさえ捨てた。
今いるのはフリッツが己の親父だ。
血は繋がっていなくとも、人生の9割を叩き込まれた立派な偉人だ。
戦い方も銃の使い方も全部、フリッツのおかげだ。

己はフリッツの”犬”だろう。
たきなお嬢には言えんが、己も”犬”だったとは言えん立場ではある。
だが、DAとは違う意味での”犬”だ。
むしろ、一匹狼ほどの単独行動を許されている身だ。

それぐらい親父が偉大だった。
認めてくれた。
それだけで嬉しかった。

だが、喫茶リコリコのような団欒はなかった。
ひたすら訓練と戦争していくだけの生活。
どうあがいても「平和」な笑顔なんて無かった。
血みどろの戦争に団欒なんて必要なかったと思っていたが・・・
あの笑い声を聞いてしまったからには、もう己の道なんてないのだろう。

そう彼は思い詰めていた。

~Fin~

それでは、次回までごきげんよう。

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