~銃弾と対価~   作:クマぴょん

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【前回のBullets Price】
銃の密輸取引の際、DAのインフラ破壊したのはクルミだった。だが、喫茶リコリコの面子は笑って誤魔化せるほど許された。その光景を見たフレディは傭兵集団も一枚岩だったらいいと思ってしまうぐらいだった。
そんなフレディに、フリッツから衝撃の言葉が放たれる。


銃弾と対価
【対価】


 

 

某日

東京・某所

 

 

「なに?警察署が襲撃された?」

 

フレディの偵察報告であ然するリー。

諜報網拡大任務に専念していたフレディに押上警察署が襲撃されたとの報告が、傭兵集団の頭脳であるリーに届いたのだ。

 

「誰の仕業だ?・・・なに?真島だと?」

 

リーは最悪の事態を考えた。

真島という名は、リーが単独でアラン機関にあるリストをデータ複製し、隠し持っていたものだった。

リストを複製する理由はあった。

そのリストには、ジョージの名が載っていたからだ。

もし、ジョージが真島を仰いでこの一連のテロ事件に関与していた可能性もある。

確信ではないが5割はそのように考えられる。

意図的にDAをテロ組織に向けさせて、こちらの弱体化も容易に考えられる。

フリッツやワタナベ、ジョンにマイケル。

これだけいれば最小限で事が運ぶ。

だが、問題はジョージの部下だ。

ガウディ―やチュレンコフを始めとする古参兵の存在が大きい。

またジョージ自身も、単独のみならず複数の任務遂行を得意分野としている指揮官だ。

フレディを呼び戻すほうが正解か?

いや、フレディにはフレディにしかできない任務がある。

リーは決断を下した。

 

「わかった。すぐにDA関係者とこちらで対処する。アーチャーは引き続き、諜報網拡大に専念しろ。」

 

無線が途切れると、訓練所で待機中のフリッツ、ワタナベ、ジョン、マイケルに特定の暗号文を送った。

リーは何かを思って一瞬不安になった。

 

(警察署が襲撃をきっかけとして、”奴”が動くかもしれん。)

 

------------------------------

 

翌日

指揮官司令室にて

 

 

諜報網拡大任務から帰還したフレディと招集されたフリッツを始めとする3人とリーが居た。

 

「まさか、数ヶ月前のあの娘がフレディに伝令として接近したなんてな。」

 

フレディの諜報網の暗号の1つにフリッツ傭兵集団が入国した際、監視及び拘束された少女がフレディと接触し、ある情報を握っていた。

少女の取引材料である情報が当たっていれば、今夜にDAと共同で襲撃する手筈となる。

ただフレディ、リーは懸念材料があった。

ジョージの動きが読めない・・・いや消息を絶っていることだ。

何をしでかすか解らない。

ただこれはチャンスでもあった。

ジョージが居ない間、フレディの扇動と交渉がジョージの部下に効力があると見ていた。

すでに、リックとロックはジョンとマイケルの協力のおかげでこちら側に引き込めた。

アレクやチュレンコフはフレディを始めとする古参兵が働きかけに応じている。

問題はハリスとガウディーだ。

あの2人は長年にわたりジョージと共にしてきた連中だ。

だが、ある情報を流布すれば問題ないとジョンは指摘した。

その情報とは?

 

「ジョージをテロ組織加担者として、決定的な証拠も合わせれば、本来の敵として炙り出すに適しているはずだ。」

 

と指摘した。

そう。

ジョージがアラン機関のリストに載っていたのも当然のように、真島もそのリストに載っていた。

とすれば、彼らをテロ組織加担者並びにNSAお抱えのリストに含めれば、ハリスもガウディーも手のひら返しする可能性がある。

ただ、ジョンは渋っていた。

 

「問題はある。それは対価だ。それ相応の対価が必要だ。」

 

ジョンはジョージが裏切るタイミングはこの中の誰かが「死ぬ」ことを意味している。

彼らを引き込むには、誰かの命を落とすことで完遂できるとのことだった。

それに口を挟む若輩が言う。

 

(オレ)が行こう。」

「いや、お前じゃだめだ。」

 

フレディの提案にマイケルは首を振る。

フレディは沈黙に戻るが、何かを探っているかもしれない。

マイケルはそれでも続けて言った。

 

「お前が一番若く、お前が一番の功績者だ。お前が失った段階でこの傭兵集団は崩壊する。かと言ってリーやワタナベ、ジョン、俺だってここにいる以上、動くに動けない。」

「なら、親父が行けと?」

「それは・・・」

 

フレディの問いにマイケルは黙る。

それを皮切りに、フレディは口を開く。

 

「親父を見捨てる作戦なら(オレ)は降りる。」

 

その声は冷酷でもなければ、哀しみに聞こえない。

憤りを感じる声だ。

フリッツはフレディを制する。

 

「フレディ。ちょっといいか?」

「何だ親父?」

 

ぶっきらぼうに答えるフレディにフリッツは・・・

 

「お前が”後を継げるか”?」

 

フリッツのまさかの答えにフレディは目を見開く。

 

「おい・・・冗談だろ?」

「冗談じゃない。お前以外の全員が話し合って決まった結果だ。」

「親父!ふざけるな!テメェの命は軽くねぇんだ!30年ぶりに娘さんに会えるチャンスでもあるんだ!」

 

フレディは親父であるフリッツの胸倉を掴む。

周りは黙って見守るほかなかった。

フリッツの決定事項は、傭兵集団の将来の道に従うことに匹敵する。

フレディも約20年間、そうしてきた。

今回は拒む理由がフレディにはあった。

養子時代のたった数ヶ月の親父と”英雄の息子”という肩書を捨ててまで、20年近くも付きしたがった傭兵集団の頭首がフレディが思う親父だからだ。

親父であるフリッツが居たからこそ、フレディ自身が居ると。

そう常々思ってきた。

そんな親父が、対価に見合うほど命を軽々と見捨てるリスクなんてない。

偶然にも日本に、しかも依頼主であるDAに置いてきた1人娘も居る。

易々とチャンスを捨てるような男ではないことは、ここにいる全員が何よりも知っている。

その結果がこのざまだ。

フレディは諦めなかった。

 

「親父!変わってくれ!(オレ)が何とかする!」

「駄目だ。」

 

フリッツの言葉と覚悟を決めた視線が、フレディにショックを与えた。

そしてフリッツの胸倉を離して、その場で崩れ落ちる。

一瞬で気が変わったのか、再び立ち上がってはリーの指揮官司令室から出ていこうとしたとき、

 

(オレ)はこの作戦から降りる。親父を失って得られる対価何ぞ存在しないからだ。」

 

と吐き捨てて出て行った。

いつものことながら冷静沈着で時には残酷のフレディが、ここまで揺らぐとはフリッツ以外予想できず、ただそこに立ち尽くしていた。

先程まで覚悟の座った目をしたフリッツは悲しい目をしていた。

 

「奴は・・・俺の子でもある。だが、奴には俺を超えてほしいのだ。あの()の様に”また”伝えられなかった。」

 

そう言ってフリッツは涙を零す。

自分の子である娘も全く赤の他人のフレディも、フリッツとしては平等に子として扱っていた。

だから心に響くモノがあった。

それは”後悔”。

後悔の積み重ねが今の現状を作り出してしまった。

零れ落ちる涙が1滴がコンクリートの地面に落ちた時、フリッツは残っていたこの場に残っていたリー、ワタナベ、ジョン、マイケルの4人に作戦実行を通達した。

同時に彼はこの作戦でもって、消えると同意義だった。

ジョンが再度、フリッツに確認を取る。

 

「本当にいいのか?命のギャンブルに投じる羽目になる。どっちに転んでもアイツが許すと思うか?」

「構わない、続けろ。あとリー。」

「なんだ?」

「DAのみならず、今回はLimaにも救援要請をしろ。」

「何故だ?」

「証人だ。この傭兵の後継者をフレディと解らせるための証人が必要なのだ。」

「フリッツ、いいのか?」

 

リーでさえ、ジョンと同じように確認を取る。

 

「構わない。」

「了承した。ブリーフィングの前に要請する。」

「あともう1つある。」

「なんだ?」

「俺が死んだら、娘に会いに行ってくれ。彼女には30年前の約束がある。それを果たしてくれないか?」

 

フリッツの言葉に重みをつけるかのようにリーに頼み込んだ。

 

 

次回⇒【シロアリ】




小話【楠木司令とフリッツとその娘】

DA本部の司令室に楠木がある暗号文の資料を読んでいた。
それはかつて同級生のリコリスの父親からだった。

(下らないな。)

と思ったのと同時に、1つの哀しみが有った。
それは自分の命を見捨てる行為が、楠木をかばった同級生と一緒だからだ。
彼女もまた、密かに心に傷を負った人間でもある。
その同級生は一命をとりとめたが、二度とDAとして足を踏み入れることはなかった。
そして、その父親でさえ、入国するまで内地には踏めなかった。
踏めない理由が稼いだ分を娘、つまり楠木の同級生の生活費や医療費に充てていた。
なんて娘思いなのだろうか。

・・・とか思っていたが、楠木の誕生日プレゼントまで用意していたのが驚きだった。
年を重ねても、何十年もその人は欠かさず、娘と楠木にプレゼントを渡していた。
正直言ってうんざりしていたが、幼い頃に見たあの男の背中は、誰よりも頼もしく、誰よりも「平和の守護神」として熱く物語っていた。
それがあの子の父親の本質なのだろう。
出来ればもう一度、居ない娘の代わりに逢いたい。
だが司令官という立場上、会いに行けない。
春川にカメラを持たせることも考えた・・・

楠木しかいない部屋で、楠木だけが感じる哀しみの時が過ぎていくだけだった。

~Fin~

それでは、次回までごきげんよう。

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