ジョージの裏切りにより、陽動は失敗。ここまでは良かった・・・だが、ワタナベの戦死とフレディの損失で作戦継続どころじゃなかった。フレディの最後の発信によりリーは撤退命令を発令したが、千束の諦めない姿を見てジョンも立ち上がったのだった。
東京・旧芝浦ふ頭
撤退命令から1分後
ジョンは、味方の攻撃によって崩れた出入口の瓦礫を取り除き、その瓦礫を身体で支えて千束に入るように促す。
ジョンに促されて千束は素早く入っていく。
倉庫に敵はおらず、所々爆発や瓦礫によって崩れていた。
千束は足元に何かの塊に気づく。
それは笑みを浮かべた死に顔のフリッツだった。
千束は口を塞ぎ、後退するとジョンにぶつかる。
そしてジョンも絶句した。
フリッツが死んでおり、少し離れたところにワタナベの死体がある。
2人の腐敗臭が漂い、血の海が広がっていた。
そして、低い唸り声が千束とジョンの耳に届いた。
声の元をたどると、満身創痍のフレディがジョージの急所、しかも数十ヶ所に銃剣や大型ナイフによって刺され、ジョージは半ば力を失う。
刺した当の本人、フレディは崩壊していく倉庫に向かって歩き出そうとした。
血を零しつつ、虚ろな目で小言を吐いて、自らも消えようと試みていた。
その光景を見た、千束とジョンはフレディを止めようと試みる。
しかしフレディは2人を回避しつつ、足取りが定まらず転倒しても這いずって崩壊へと向かっていく。
遂に2人はフレディを止めた。
「フレディさん!」「しっかりしろ!」
千束とジョンの呼びかけにも一切動じないフレディ。
彼は、完全に戦意喪失していた。
意識も遠のく彼に、ジョンはオーバーロードに連絡を入れて救援をよこした。
「千束お嬢!フレディに呼びかけ続けろ。俺はフリッツとワタナベを外に出す。」
千束は頷く。
「マイケルがお嬢のところに来たら退避だ。」
「ジョージ・・・さんは?」
千束は息絶えたジョージに目線を移す。
「奴は、密輸取引のテロに加担したんだ。諦めろ。」
ジョンは千束だけに簡易的ながら本質を話した。
千束はそれを聞いて衝撃が走る。
あの老齢で優しい側面を持つ人が、DAに対して裏金工作をしていた?
千束はにわかに信じられなかった。
そんな千束から離れて、フレディは這いつくばって倉庫の奥へ向かっていた。
それに気づいたジョンが、
「あの馬鹿っ!」
とフレディの右脚をつかもうとする。
ジョンはフレディの血で滑る中、それでも引き留める。
千束も一緒に加勢し、フレディの動きを止めた。
すると、崩壊していく倉庫からマイケルが現れる。
装備を失いつつも、真っ先に駆けつけた。
「ジョン!大丈夫か!」
「大丈夫に見えるか!?マイケル、フリッツとワタナベを外に連れていけ。」
「わ、わかった。フレディを頼んだ!」
マイケルは倉庫の出入口を少量の爆薬で瓦礫を吹き飛ばして、引き摺ってでもフリッツとワタナベを外に出そうとした。
マイケルの入れ替わりでアレクがジョンの元にやってきた。
ジョンは驚く。
フキと共に退避していたはずだったからだ。
「アレク?Hotelと共に退避したはず?」
「馬鹿言うな。ここでフレディを失ったら、元も子もない!」
とフレディの左肩を必死に持ち上げて言う。
「さっさとしないとオーバーロードが泣き出す。帰還するぞ。」
「あ、あぁ。解った。」
ジョンはフレディの右肩を持ち上げるが重い。
原因は
染み込んだ外套が重さに拍車をかけていた。
それでもジョンとアレクは諦めずに1歩、また1歩と倉庫の出入口を目指して運ぶ。
だが、重武装で血を吸い込んだ外套は、大人2人でも厳しかった。
後ろで見守っていた千束が黙って、フレディの外套を取り外そうと試みた。
それに気づいた2人は、千束と一緒に外套を外した。
30本近い大型のナイフと手榴弾や弾倉など、この作戦の為にだけに抱えた外套内部が露わになった瞬間だった。
そして大人2人は軽くなったフレディを運び出して、千束には外套を抱えて倉庫を出るように促した。
千束は頷いては先に出て言ったのち、フレディを運ぶ大人たちも倉庫を出た。
倉庫にはテロ組織に加担したジョージが残るが、背信行為に走ったかつての味方に慈悲なんてなかった。
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崩壊した倉庫を背後に、先に撤退したはずのHotel、Lima、生き残りの傭兵らが居た。
フキが率いるHotelは最古参傭兵を失い、テロ加担者が居たことを知って呆然と立ち尽くしてしまう。
千束とたきなの2人は後悔が募り、カタフラクトに籠った。
たきなは自分の責任と呟き、千束は救えなかった命を目の前にして涙を流していた。
それでも傭兵集団・・・特にオーバーロードことリーやジョン、マイケルを筆頭にまだ戦意喪失していなかった。
Foxtrotの唯一の生き残りフレディが居るからだ。
だが、そのフレディさえ意識がない。
一刻も早く蘇生しない限り、彼は再びフリッツに会いに行く選択を取るだろう。
オーバーロードの連絡を待つとともに、フレディの蘇生措置を試みる傭兵ら。
数十秒後、オーバーロードから緊急の通信が入る。
<<総員、DA本部お墨付きの病院に向かえ。そこでフレディを蘇生しろ。また今回の任務の詳細等はフレディが”帰還した”後に改めて伝える。以上だ。>>
と一方的に途絶える。
ジョンはマイケルと話し合ったのち、Hotelと残りの傭兵に伝える。
「マイケルはHotelを。そして残りの連中はフリッツとワタナベを連れていけ。」
「「了解。」」
「アレクは俺と一緒にLimaとフレディを連れていく。リックは運転頼んだ。」
「了解だ。」「了解。」
「最後に。任務は終わってない。ここにいる連中が生きて帰るまでが任務だ。現場で会おう。解散。」
と傭兵たちは散り散りになり、自分たちの車輌に乗っていく。
現実を受けとめきれないHotelは、マイケルの一喝で士気を立て直しては車輌に乗り込む。
希望の芽はまだ摘まれていない。
フレディという希望の芽が残る限り・・・は。
次回⇒【唯一の生き残り】
小話【謎の人物像】
DAと喫茶リコリコ、傭兵の共同作戦が失敗し、現場から撤退した数分後。
とある部屋にて、真島とロボ太が居た。
「おい、あの爺さんから連絡はまだか?」
真島が言うと、ロボ太は首を振った。
「ない・・・いや、消滅したと言った方がいいのか?」
「・・・やり損ねたってことか?」
「解らない。でもでも!最後の発信で親玉と守護神は・・・」
ガンッ!
「ひぃぃぃ!」
真島は苛ついていた。
あの白外套の男まで消していないことに苛立ちを隠せず、ロボ太が所有するテーブルを蹴り、テーブルは真っ二つになったのだ。
(アイツは・・・自ら心が読み取れると言っていた・・・ならアイツの暴く必要がある・・・)
真島はドスの聞いた声でロボ太に呼びかける。
「おい・・・」
「ははは、はいっ!」
「例の件は覚えているか?」
「は?え?」
ロボ太の戸惑いに真島は拳銃を引き抜く。
「覚えてる・・・いや覚えてます!」
「なんとか引き出せたか?」
「あの爺さんからもらったデータと照らし合わせても、謎すぎて解らない。爺さんのデータで分かっているのは、日本に来てから血を染めているそうだ。」
「ほう?前の情報は、世界中に血の痕跡を残すぐらい暴れていたが、近くにいた爺さんだからこその情報だな。他は?」
ロボ太はまた首を振る。
「それが・・・情報が開示されていないんだ。あの手この手で開けようとしても、何重にもロックされていてはコンマ何秒遅れれば、傭兵側に通報されるシステムだ。僕以上の手練れのハッカーがいるのは間違いない。」
「ソイツはどうなんだ?」
「それについては判明している。名はリーで20年前の上海テロを無血開城させた奴らしいが、その後の消息は不明。だけども爺さんのデータで分かった。」
真島はため息をつく。
「なら、そのハッカーと白い奴とはタッグを組んでいるな。」
「可能性はあるかも。」
「そっちに集中してくれよ。マイ・ハッカー。」
と真島は立ち上がり、ロボ太の部屋から立ち去る。
部屋には呆然としたロボ太と真っ二つになったテーブルがそのままであった。
~fin~
それでは、次回までごきげんよう。