テロ加担者であるジョージの排除は出来たが、それ以上に損害が大きかった。フリッツとワタナベは戦死。フレディは意識不明。HotelのDA組とLimaの喫茶リコリコ組のリコリスたちは士気崩壊まで陥る。だが傭兵らは”フレディ”という存在があるだけでマシだったー
東京・某所
DAお墨付きの病院にて。
手術室にてフレディの蘇生措置が始まってから数分前のことであった。
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今作戦において士気崩壊に陥ったDAと喫茶リコリコ。
フキは最古参のフリッツとワタナベを失ってうなだれていた。
サクラでさえも、パートナーと思っていたジョージがテロ加担者と思っておらず、意気消沈していた。
エリカは老兵らの笑顔が脳裏に横切る。
それでもフレディが生き残っていることに涙ながら感謝していた。
エリカの横でヒバナは、エリカを慰めていた。
そして、彼らの死を目の当たりにした喫茶リコリコの2人は、どこか遠く意識が飛んでいた。
アレク達が積極的に激励を飛ばしても、立ち直るのは不可能だった。
たきなの命を最後の最期まで救ったフリッツ。
唯一の日本人でフリッツの守護神であるワタナベ。
Foxtrotが壊滅になっても命を張ってまで時間稼ぎを行ったフレディ。
そして、裏の顔があったジョージ。
全員、千束とたきなにとって命の恩人であることは間違いない。
例え裏切り者であるジョージも、2人にとっては味方と思ってーーー
いや信用して当然だった。
ただ、Foxtrotの唯一の生き残りであるフレディが、まだ蘇生措置が取れる段階だったのが不幸中の幸いだった。
そんな少女たちが暗い表情に比べ、ジョンとマイケルの古参らは比較的落ち着いていた。
損害は大きいものの裏切り者を始末できたことと、フレディがまだ生きている希望的観測、そしてリーの仮説が正しければ、より大きく真犯人に近付けることが出来るだろうと思っていた。
ただ、リーの仮説を真説になるにはフレディの力が必要となる。
だから傭兵らはフレディを待つ他なかった。
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それから数時間後のことだった。
傭兵やリコリスが待つ待合室に扉の開閉音が聞こえた。
手術室ではなく、廊下側からだった。
傭兵らは銃を構えるそぶりもなく、その扉と大勢の少女に守られながらとある人物を見た。
ジョンが言う。
「よう。楠木司令。」
その言葉で士気崩壊していたリコリスが顔を上げて振り向く。
そう、待合室に現れたのがDA上層部の1人である楠木司令だった。
そして楠木司令は口を開く。
「”彼”は?」
「まだ中さ。」
「そうか・・・では、”黒山茂”と”渡邉洸”は?」
黒山茂という名を聞いて、マイケルが答える。
「死体霊安室にいる。」
「そうか・・・」
楠木司令が落ち込む。
それでも傭兵の態度は変わらなかった。
マイケルは続けて言う。
「なぁ、”フリッツ”に会ってどうする?アイツは娘を”ここ”に置いて、娘やアンタの為に国外で戦ってきた戦士だ。今更会って、どうするつもりだ?」
楠木司令は沈黙を貫く。
司令という立場より私情が混みあがって、吐きそうだった。
ジョンが楠木司令に救いの言葉を差し伸べた。
「フリッツに会いに行け。フレディに会ってからじゃ後悔するぞ。アレク!チュレンコフ!楠木司令をフリッツとワタナベのところに案内しろ。」
「「了解した。」」
楠木司令は小さく小声で、
「済まない。」
と言った。
マイケルは、
「その言葉は、本件が終わってからにしろ。まだフレディが帰ってきていない。」
と顎で行くように促す。
楠木司令は護衛に来たリコリスたちを置いて、アレクとチュレンコフと共に死体霊安室に向かった。
一息ついたかと思ったが、護衛の1人が傭兵たちに近づいた。
そのリコリスはベージュの制服を身にまとい、DAという存在を傭兵たちに知らしめ、フレディが捕まえたリコリスだった。
「あのっ!」
ジョンとマイケルがその少女を微笑みながら見つめる。
「どうしたんだ?お嬢ちゃん。」
「俺たちにまだ何か用があるのか?」
「あ・・・えっと・・・あの時はありがとうございました。」
と名も知らずのベージュのリコリスはお辞儀をした。
「なんだそんな事か。お礼を言うのは俺たちじゃない。フレディに言え。」
「マイケル、そんなことよりお前がこの子にちょっかい出されたのを思い出すな。」
「馬鹿言え!あの時はこの子と巻き添えにあってフレディに殺されるところだったんだ。アイツの優しさの半分は狡猾で出来ているのはお前も知ってるだろう!」
「そういえばそうだったな。」
ジョンとマイケルが笑い出すと傭兵たちも笑い出した。
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もう幾分経ったのだろうか?
その笑いには過去を懐かしむ嬉しさと同時にフルメンバーじゃない哀愁を感じる。
それでも傭兵たちは笑いを続けた。
それが最も早く、過去を忘れるようにとフリッツが言った言葉だから。
リックらの元ジョージの部下たちも遠慮なくジョンやマイケルに茶々を入れて笑っていた。
その場にいたリコリス全員は・・・
その傭兵を見て、余りにも異質な存在で実力派集団ならではの談笑だった。
笑う中、ジョンが名も知らずのベージュのリコリスに言う。
「お前さんを高所から捕まえたり、先輩らを撃ったのはフレディの代わりとして申し訳ない。情報がなきゃ俺たち傭兵は生きていけないからな。」
「そんな事、思ってないです・・・」
少女は俯く。
それを見かねたマイケルが焦げ付いたタクティカルグローブを外して、その少女の頭を撫でた。
「気にするな!フレディのやったことは俺ら傭兵の責任だ。なに、お前の責任じゃねぇ。」
その言葉を聞いたのか、それとも肩の重荷がはずれたのか少女は泣き出した。
それに応じてマイケルは我が子のように撫でた。
そんな姿を見てロックが茶々を入れる。
「マイケル、まるで父親だな。」
マイケルは鼻で笑う。
「あぁ、18年ぶりだな。」
それを聞いた傭兵らは昔を懐かしむ。
もう戦い続けて何十年経過したのだろうか・・・と。
すると手術室の扉が開いた。
山岸医師が血の付いたゴム手袋を脱ぎながら、待合室にいる全員に言う。
「手術は成功したわ。」
手術結果を聞いて待合室にいたリコリスはワッと明るくなっていった。
だが、傭兵らは険しい顔をしていて、まだ聞いてないことがあった。
マイケルが少女を慰めながら核心的な質問を言う。
「アイツの左半身はどうなった?」
それを聞いた山岸はためらった。
マイケルは続ける。
「義腕と義足は再起不能か?それとも修繕の余地はあるのか?」
「・・・どちらともいえない。」
「んじゃあ無理だな。」
「最善の手は尽くしたけど・・・申し訳ないわ。」
「構わん。アイツの左半身は”有って無い”ようなもんだからな・・・」
マイケルの言葉に頷く傭兵ら。
その意味を知らないリコリスたち。
千束はその意味を聞く。
「フレディさんの左半身は有って無い・・・ってどういうことですか?」
千束の質問に山岸は戸惑いを隠せなかった。
山岸の代わりにジョンが質問で返す。
「アイツの義腕と義足はどうやって動いていると思う?」
「え?」
千束はジョンの質問に困惑する。
千束だけじゃない。
ここにいる全リコリスが不思議に思った。
「アイツは15年前の戦争で左半身を失っただけじゃない。脳も失ったんだ。だから脳も含めて左半身を機械化させざる負えなかった。」
ジョンの答えでフレディの人体が明らかになり、待合室に居たリコリスは・・・
次回⇒【最後の血を引く男】
小話【もう1人のアラン機関】
「ほう・・・彼が・・・」
1人のビジネスマンが言う。
彼の女性秘書が、ジョージの安否をただひたすらにそのビジネスマンに告げて言った。
ひとしきり聞き終えた彼は言う。
「彼ももう高齢だ。その役目は終えたと同時に私がやらなければならない。」
彼は1つのリストを眺めた。
そのリストはジョージが発信した報告書と共に傭兵らのリストがあった。
「15年前、アラン機関を断った2人に会えるなんて、奇遇か・・・それとも・・・」
沈黙に近い2人しか居ない部屋が、悪魔的交渉の部屋に生まれ変わろうとしていた。
それは、役目を背負った者しか解らない”どんな手段”でもやり遂げるビジネスマンとそれを守護する女性秘書。
温和なビジネスマンが豹変して、手段を選ばない悪魔に陥った歪んだ顔で言った。
「やるしかないのか・・・彼らと・・・厄介な人間を誘うべきじゃなかった。」
「ええ。特に”彼”はデータを見る限り、私以上の存在です。」
「フレディ・・・いや烏羽竜司と呼んだ方が良いか。私の救いの手が無ければ、とっくに死んでいたはずなのに。アラン機関と敵対してからこの15年で”狡猾”に生きた人間だ。私も気を付けたほうがいいな。」
そう言って立ち上がっては外を見つめる。
「彼の存在も大きいが、私にとっては錦木千束・・・彼女の方が容易いと思うが、どうなるんだろうね?」
秘書に振り返える笑顔。
ビジネスマンの笑顔は”二重の意味”での笑顔だった。
~fin~
それでは、次回までごきげんよう。