~銃弾と対価~   作:クマぴょん

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【前回のBullets Price】
4人中3人が戦死した陽動分隊の唯一の生き残り、フレディの蘇生措置が終えた。リコリスたちは明るく振る舞うのだが、ある傭兵の核心のついた言葉で、少女らは再びどん底に叩き付けられる。


【最後の血を引く男】

 

 

東京・某所

DAお墨付きの病院の待合室にて。

 

「アイツは15年前の戦争で左半身を失っただけじゃない。脳も失ったんだ。だから脳も含めて左半身を機械化させざる負えなかった。」

 

ジョンの答えでフレディの人体が明らかになり、待合室に居たリコリスは・・・

絶句。

呆然。

絶望。

釈然としない。

と、混乱を極めた。

彼が2ヶ月間、DAから追われても諜報網を広げたのも。

彼が生死を問わず完璧に任務遂行するのも。

彼が心が読めたり、鷹の眼で見極めているのも。

彼が痛みを感じないのも。

彼が酔わないのも。

彼が睡眠を必要としないのも。

数え切れないほど彼がもたらした力はーーー

全て機械化された力であり、彼に合わせて最適化された調整に仕上がった”人間(機械)”そのものだった。

すると、開きもしないはずの手術室の扉が開く。

姿を現したのは左腕を”ぶら下げた”フレディだった。

ジョンが呼びかける。

 

「調子は?」

「悪いが、そうも言ってられないだろ?」

 

歯切れの悪く、ノイズ音が入ったくぐもった言葉を発するフレディ。

 

「だな。ドクター、悪いがこいつはこちらで預かる。」

「本当に申し訳ないわ。」

 

山岸医師は傭兵らに平謝りした。

そんな山岸の左肩をポンポンと叩くフレディが居た。

 

「ドクター、気にするな。補助動力が動いている。」

「・・・車椅子は必要?」

 

山岸は半身で立つフレディを見て、右足が震えているのを気付いた。

だが、首を振るフレディ。

 

「そこに椅子があるなら必要ない。」

 

と言って義足を引きずりつつ、たきなの横にドカッと座る。

”死”を恐れぬ人間が真横にいる。

そう思って僅かに震えるたきなにフレディは義足をいじりながら言う。

 

「そんなに怖いのか?たきなお嬢。」

「・・・」

「まぁ無理もない。こうやって今日まで生きのこれたのはこの”力”あってこそだ。本来ならば15年前に死んでるのだからな。」

 

と言って、不気味に笑い出すフレディだった。

マイケルの傍に居た名も知らずベージュのリコリスが、マイケルを離れてフレディの元にやって来た。

が、少女が言う前にフレディに遮られる。

 

「お礼は、密輸取引(テロ)が終わってからにしろ。今言われたら、死ぬときに悲しむからな。」

 

と言って、義足を右手だけで整備していた。

名も知らずベージュに包まれた少女の事を一切、気にしていない。

いや、正しくは「気にする余裕がない」というべきか。

フレディは一刻も早く最前線に立つ為に身体を動かせようとしていた。

丁度、その時だった。

リーからの通信が入る。

 

<<こちらリー。ジョン、フレディの様子はどうだ。>>

「こちらジョン。調整が必要だ。」

「いや、不要だ。リー、最低限のデータだけよこせ。」

「ダメだ。このままだと本当に死ぬぞ。15年前の二の舞を踏むつもりか!」

「じゃあ、(オレ)の変わり誰が諜報網を形成するんだ?結局のところ(オレ)がやるしかない。」

「今は休め!ただでさえ説明が無いまま、リコリスのお嬢ちゃんたちを暗闇に叩き落とすつもりか!」

「関係ないな!所詮、駒当然の”人形”なんだろ?DAもリコリス(ヒガンバナ)も”リリベル(スズラン)”も腐った納屋と当然の組織に何ができる!」

 

ジョンは遂にフレディの胸倉を掴んだ。

 

「誰のおかげで生き延びたんだ?誰のおかげでジャッカルの様に狡猾な犬になったんだ?言え!!」

親父(フリッツ)だ!」

 

とジョンの腹部に右膝蹴り喰らわせ、フレディから離れてはフレディを睨み、殴りかかった。

ジョンとフレディの殴り合いが始まった。

この2人の間に傭兵らは誰も止めなかった。

流石に感化出来ない千束が止めに入ろうとしたがたきなに止められ、フキやサクラ、DAのリコリスらも千束同様にマイケルによって止められた。

この殴り合いはフレディの動力が落ちるまで続くと思われた。

だが1人の声で場は制された。

 

「辞めないか。2人共・・・」

 

その場にいた全員が振り向く。

声を発したのは、楠木司令だった。

何か感情を押し殺していた。

怒りなのか?

はたまた哀しみなのか?

その場にいた少女たちは解らなかったが、傭兵連中は薄々感じた。

彼女が会いたかった”2人”に会い、その感情を押し殺しているのだと。

それは損傷しているフレディも感じた。

楠木司令は半壊しつつあるフレディを見て言う。

 

「烏羽・・・お前の存在をもっと早く知るべきだった。」

「今更、お世辞か?親父を失って、自暴自棄になっている(オレ)を慰めるための言葉なんぞ要らん。」

「いや、フリッツ・・・”黒山茂”に”甥”がいたなんてな。」

 

楠木司令から放たれた言葉はフレディの顔を歪める。

甥?

自分が親父の親戚?

楠木司令はフレディにトドメを刺すかのように言った。

 

「お前は叔父である傭兵頭の甥で、お前の母親は黒山晴で”茂の妹”だ。」

「なにっ!?」

 

フレディは驚きを隠せなかった。

それでも楠木司令は続ける。

 

「強いて言えばお前の名付け親は茂、本人だ。お前の本名である”烏羽”は黒山茂の祖先の姓のものだ。お前は黒山の血を引く、最後の男と言えばわかるか?」

 

楠木司令の言葉に驚いたものの、不敵な笑みを浮かべるフレディがそこに居た。

 

「何を笑みを浮かべている?」

 

楠木司令が指摘するとフレディの笑い声が出てきた。

悪魔ように。

笑い声が止まるとフレディがあることを口にした。

 

「今まで”力”を解放していない理由が解った。フッ・・・親父がなぜ『不殺』を(オレ)に言って貫き通させたのは、このことだったか。まるで”千束お嬢の様に”不殺を15年も貫いたが・・・もう辞めだ。」

 

そして傭兵らを見る。

殴られたジョンにDAの動きを制していたマイケル、楠木司令の護衛に入っていたアレクとチュレンコフ。

通信で依然として沈黙を貫くリー。

そして元ジョージの部下であるロックとリック、古参傭兵のハリスとガウディー。

フレディは大々的に発言した。

 

「お前ら、この依頼が終わるまでに狡猾的に生き残れ!野郎どものこめかみに銃弾によって頭が真っ二つになるようにな!それぐらい気を引き締めて取り掛かれ!」

 

半壊になりながらも、誰かに支えるほど必要な身体になっても、彼は彼で新たな『(オレ)の道』を見出した。

フレディの答えたが出たのを待っていたかのようにリーの通信が入る。

 

<<なんとか決心がついたようだな。ではDA司令もいることだ、本任務におけるデブリーフィングを行う。>>

 

 

次回⇒【お互い様】




小話【嵐の前に静けさにスパイスを】

作戦前のある時。
ジョンとマイケル、そしてフレディにリーが喫茶リコリコにやってきた。
どうやら長い行列が出来ていた。
この時期は寒い。
いや寒すぎるのだ。
常に世界の紛争介入や赤道直下の政治的内戦状態の不安定な国にいるのが当たり前だったので、日本の寒さにはドン引きするぐらい理解が追いついていなかった。

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行列も終わり、何とか寒さを凌いで喫茶リコリコに入れた4人。
喫茶店は客も多く賑やかで、千束を始めとする接客業はてんやわんやしていた。
日本人が多くいる中で外国人でも異質な4人が現れても、客は気にせず”噂のホットチョコパフェ”にありつけていた。
この4人もそれが目当てにやって来た。
味を楽しむよりかは、戦場前の英気を養う為である。
ミズキが4人に気が付いたが、傭兵と感づかれない為に装って接客した。

「4人ですね。近くの席でいいですか?」
「Ok. Thank you.」

とジョンが答える。
靴を脱いで、畳を踏みしめる4人。
慣れない感触だが逆に居心地の良い畳と僅かに和の匂いがあった。
それぞれ席に着くと千束が4人に近づく。

「わざわざ来てくれたんですか!」
「まぁな。反響が凄まじいからちょいと英気を養うにうってつけでな。」
「ありがとうございます!ご注文は・・・聞くまでも無いですね!」

と千束はうきうきで厨房に入っていた。
4人の内3人は一見外国人に見えるが、どうしてもフレディだけは殺気のオーラは消せず諦めていた。
それでも作戦前の英気を養うには、この喫茶リコリコしかなかったからだ。

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客の入れ替えが激しい中、4人にお目当てのものが届いた。
たきなとクルミが持ってきた。
和を包み込んだ2人はとても可愛げのある愛嬌のある姿だ。
クルミがリーの顔を見て言う。

「なんでカズキがいるんだ?」
「クルミ、一応客として来ているんですから、そのような言葉はー」

リーは鼻で笑って遮る。

「構わんよ。所詮、俺らは客だ。」

ホットチョコパフェと引換にリーは先払いとして5万円をクルミに手渡した。

「・・・多くないか?」
「この間の酒代もあるからな。俺たちは細かい金よりパーッと金を使った方が、あの世で足が付かなくて済む。」
「つまり・・・”あっち”に行ったら手に入れたお金を持ってこれないってことですか?」
「Of course.」

そう。
死んだら、金も名誉も無くなる。
だから死ぬ前に使い果たせば、後悔も無いし遠慮なくあの世に行ける。
名誉は単なる肩書に過ぎない。
そして彼らは届いた順にホットチョコパフェを食べ始めた。
甘く香ばしいチョコと温かみのある熱さ。
程よくマッチングして食べやすい。
形が”アレ”であっても、旨いものにはありつけた方が良い。
もしかしたら、この後の作戦で”何人か死ぬのだから”。
そう思いつつ、余韻に浸かる4人だった。

~fin~

それでは、次回までごきげんよう。
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