~銃弾と対価~   作:クマぴょん

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【前回のBullets Price】
先の作戦で傭兵最古参3人を失った傭兵らは、フレディを跡継ぎにして継戦力を先延ばしにした。肝心のフレディは調整の為に長期的な休暇に入る。問題があるとしたら、フリッツの娘にいつ会うのかだったー


余命
【フリッツの娘】


 

 

東京・某所

指揮官司令室

 

先の作戦終了から数日後のこと。

傭兵の代理指揮を任されたジョンと傭兵の頭脳であるリーが、これからの行動をどうすべきか悩んでいた。

フレディの損傷が激しく、義足と義腕はともかく、中枢部である脳が酷かった。

任務完了までには完全に修復していればいいが、フレディ本人が拒んでいる状態であった。

彼がそこまで拒絶する理由は、大規模テロがすぐ近くまで迫ってきていることを心配していた。

時期は不明ではあるものの、そのテロが発生することを蜘蛛の糸の様に広げた彼の諜報網に引っかかり、その情報が合っていれば、やられる前に止めるべきだからだ。

フレディはそこまでして止めたかった。

他にもやるべきことがある。

フリッツの娘と出会うことだ。

彼が遺した「娘」さんだ。

住所は割り出してある。

どのタイミングで行くべきなのか?

フレディが回復してからでは遅いだろう。

 

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リーはジョンと共に日程を合わせて、立会いのスケジュールを組んでいた時であった。

リーの指揮官司令室に扉が開く。

指揮官司令室に入るためには、リーの他に設計したフレディしか知らない。

ということは・・・

 

「よう。」

「フレディ。」「お前・・・」

 

指揮官司令室に現れたフレディを睨みつけるリーとため息をつくジョン。

フレディがよろめきながら、リーのデスクに向かった。

まだまだ調整不足でありながらもフレディは傭兵の頭目として務めを果たそうとしていた。

 

「フレディ・・・」

「リー。解っている。」

「じゃあ何故来た?」

「親父の娘さんに会いに行くんだろ?なら、(オレ)も行かないと・・・親父に示しがつかないだろ?」

「だが、調整は済んでない。」

「それは後でいい。今は”これ”に集中しないとな。」

 

フレディの固い決意にリーは諦めて首を振った。

そしてジョンに目線を移す。

ジョンはリーに対して頷いた。

「行け」という合図だ。

そのを合図を見たリーは、再びデスクを見て肩を落としていた。

 

「わかった。ジョン。」

 

と言ってリーは車の鍵をジョンに投げる。

それを受けったジョンは無言で指揮官司令室を出ていった。

 

「フレディ、行くぞ。」

「あぁ。」

 

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東京・某所

車中にて。

 

ジョンが動かす車輛にリーとフレディが乗っていた。

指揮官司令室から出て北に30分程走らせたあとのことだった。

 

「こんな身体で親父の娘さんに会ったら、怪訝な顔になるだろうな。」

 

とフレディが小声で呟く。

それを聞いた2人は笑い出す。

ジョンは運転しながら、バックミラーに映るフレディを見て笑う。

 

「今更そんなこと考えていたのか?」

「外套で隠れているとはいえ、半身失った人間に会いたいと思うか普通。」

 

とフレディは外套からはみ出ている義足の調整をしていた。

フレディが言うことも正しいが、15年も前のことなんてリーもジョンも含めて、今の傭兵らは誰もそんなことを心配していない。

15年前に起きたフレディの左半身を失ったことはショックだったが、むしろフリッツやワタナベを始めとした逸材を長く生かした仲間の1人だからだ。

だからフレディがそんなこと言っても”過去は過去”。

今更言っても遅いし、決まった運命として変わることは無い。

変えることは出来ない。

 

~Sometimes things fall apart so that better things can fall together.~

 

翻訳すると、

 

「時に、バラバラに壊れてしまうこともあるかもしれません。でもそのおかげで、それ以上に良いことが訪れるんです。」

 

かの有名なアメリカ人歌手のマリリンの名言だ。

くどいようで悪いが、確かに15年前にフレディが壊れた。

だが、その結果としてこの15年間の傭兵の活躍は凄まじい勢いで世界中に響き渡った。

ひとえにフレディの力があってのフリッツの傭兵集団だ。

亡きフリッツやワタナベ、ジョージが居なくても、フレディの命が”ここ”にいる限り、永久不滅の傭兵としてあり続ける。

そんなフレディが義足の調整をし続けていると、リーが答える。

 

「お前が命を張って戦ってくれたおかげで、俺たちは助かっているんだ。フリッツも娘さんも解ってくれるだろうよ。」

「そうだといいんだがね・・・」

 

杞憂に終わると考える2人にフレディは気にくわなかった。

ジョンは思い出したかのように言う。

 

「フレディ、昔こう言ってたよな?『振り返るな。地べたを這ってでも前に進むべきだ』って。あの言葉で俺たちは目を覚ましたんだよ。」

「言ってたか?」

「お前さんがまだ10歳のころだ。革命の英雄という名誉を捨ててまで、俺たちの元に来て言ってたじゃねぇか。」

「よく覚えているな。脳を失ってからそんな記憶すら忘れちまったよ。」

 

フレディがそう言い放つとリーが答える。

 

「幼い癖には、かなり大人びた発言で驚いた。」

 

と皮肉を込めた褒め言葉をフレディに言う。

 

「そりゃあどうも。」

「これからも戦えるな?」

「やってみりゃ解る。」

 

フレディの答えにジョンが頷く。

 

「んじゃ、決まりだな。」

「そうだな。」

 

方針が決まった3人。

その乗った車は葛飾区に入った。

 

------------------------------

 

東京・葛飾区

葛飾新宿(にいじゅく)にて。

 

3人はフリッツの娘が所在とする近くに降り立つ。

ここは葛飾にいじゅくみらい公園と金町駅と目と鼻の先にある大層立派な集合住宅だった。

そんな異質の放つ3人がその集合住宅に入る。

無論、エントランスホールで警備員に止められたが、リーが事前に用意していたフレディの・・・いや烏羽竜司の戸籍謄本を見せながら説明しては通された。

3人はエレベーターで、2階のボタンを押すリーとジョンに支えながらフレディが乗る。

そして、2階のエレベーターから出てすぐにフリッツの娘がいるであろう玄関前にたどり着く。

リーがドアチャイムを鳴らす。

ドアチャイムの向こうから、ノイズの走ると共に声が聞こえる。

 

「・・・はい。どちらさまですか?」

 

リーが答える。

 

「”黒山茂”の友人です。」

 

とフリッツの本名で応えると、ドタバタと家の中から聞こえ扉を開けた。

フリッツの娘さんが現れた。

その姿は白く美しくてモデルのように細く、薄いジャスミンの匂いが漂ってくる。

まるで玉心花(ギョクシンカ)のようだ。

彼女は焦った様子で3人を見て言う。

 

「とにかく入って。」

 

3人は遠慮なく彼女の家に入る。

1人暮らしとは思えない広さだが、そんなことはどうでもよかった。

 

「好きなところで構わないわ。」

 

と彼女が言うと、またもや3人は遠慮なく座った。

彼女は、冷蔵庫からジャスミンティーの入ったポッドとコップ取り出して、フレディを除いて2人に差し出した。

そして彼女は口を開く。

 

「あなた達がここに来たってことは・・・お父さんはもう・・・」

 

3人は頷く。

彼女は重荷を下ろしたかのように言う。

 

「もう、お父さんは・・・呪われなくて済むのね。ありがとう。」

 

とお辞儀をした。

”呪われなくて済む”。

それは、”二度と戦場に立たなくて済む”ことを指す。

彼女はフレディを見つめて言う。

 

「あなたが烏羽竜司くん・・・だよね?」

「あぁ、そうだ。”茜さん”。親父・・・いや伯父から度々、聞いてはいたが・・・こういう形で出会うべきじゃなかったとお詫びを申し上げたい。」

 

フレディの言葉に首を振る、”黒山茜”。

 

「竜司くんが居たからこそ、お父さんは長生き出来たし、私もこうして生きてこれた。謝りたいのは私の方。」

 

そう彼女は立ち上がってフレディの元に歩み寄る。

損傷の目立つ義腕と義足。

機械化された脳を隠すためにグルグル巻きにされた包帯

彼女はそれらを見ながら、フレディに言う。

 

「ここまで戦ってくれてありがとう。そして、ごめんなさい。」

 

彼女はフレディに謝った。

3人、いや特にフレディは言葉が出ない程黙っていた。

なんて言葉を返せば解らないほどに。

それでも彼女は続ける。

 

「竜司くん・・・竜司くんはまだ戦うの?」

 

彼女の質問にフレディは黙って頷く。

 

「そっか・・・お父さんの跡継ぎだもんね・・・ごめんね、変なことを聞いて・・・」

 

彼女の言葉に突き動かされたのかフレディは口を開く。

 

「伯父が偉大過ぎただけで、(オレ)はその後釜に座っただけだ。何もしちゃいない。」

「そんなことないよ!」

 

フレディの言葉に否定する彼女。

彼女の目には涙が浮かんでいる。

 

「なんで・・・そんなに自分を否定するの?・・・竜司くんが居たからお父さんも私も生き残れたのに、何もしてないなんて・・・言わないで。」

 

彼女はフレディの右手を両手で掴んで、涙を流しながら訴える。

フレディは語弊招く言葉を口にしたことを後悔した。

 

「あ・・・いや、茜さん。違うんだ。(オレ)は人を助けること自体が当たり前だと思って過ごしてきたんだ。だから、命を代償に誰かを助けれればそれで良いんだと・・・そう心に刻んであるんだ。」

「でも・・・ここまでにして戦わなくても・・・いいんだよ?」

 

彼女がフレディに優しく諭す。

だが、一度決めた人生。

この漢は一文たりとも変えられなかった。

フレディは無理をしてまで、偽りの手で彼女の手を覆いかぶさった。

 

「もし(オレ)がいなかったら、伯父や茜さんの命が危うかった。だから、(オレ)が行くしかなかったんだ・・・これで伝わるかな?」

 

フレディの言葉の前に沈黙する彼女。

彼女の手は温かみのある優しい手と、犠牲になった冷たい手が重なって困惑していた。

父や自分のために跡継ぎの子が犠牲になるなんて・・・考えたくもなかった。

ここまでしてボロボロになった”弟”を目の前にして、彼女はいち早くこの世を去りたくなった。

そう思っていた時だった。

 

「おかあさん?」

 

まだ幼稚な子供の声が4人の元に届き、声の主の方向に向く。

目をこすりながら歩く可愛らしい女の子だ。

茜は立ち上がってすぐに、女の子に歩み寄った。

 

「どうしたのムギちゃん?お腹空いたの?」

「うん。・・・なんでおかあさんは泣いているの?」

「それは・・・」

 

”ムギちゃん”と言われた子供の質問に彼女は黙ってしまう。

代わりに答えたのは、リーだった。

 

「お爺ちゃんの”親戚”と久々にあったからだよ。なぁ?」

「あぁ。感動の再会だな。」

 

とジョンが頷く。

ただ、フレディだけは女の子を見つめて・・・

悲しげな顔をしていた。

そして義腕と義足を可能な限り、外套に隠した。

幼い子供が見せる姿じゃないと。

自分がこの「平和」なひと時の中で哀れになってきた。

戦場という「日常」を送っていた彼だけが明らかに浮いていたからだ。

ここに居るべき存在ではない。

そんな彼であった。

 

 

次回⇒【願い】




小話【大嵐の静けさ】

デブリーフィングから解放された千束とたきなの2人は、千束の隠れ家に戻っていた。
2人共、自ら出した食事にありつけない。
驚きと苦しみの連続で息苦しかった。
あんなに優しく接していたジョージが、真島と同様でテロ加担者だと思わなかった。
そして、ジョージを排除するために犠牲になったフリッツとワタナベ。
特にフリッツはDAを大昔から分かっていた。
ジョン曰く、

「楠木司令が幼い頃から知っている。」

と聞いたとき、この傭兵には絶対に敵にしてはならない。
そしてフレディの存在が明るみなった時、寒気がするほど怖気づいたぐらいだ。
たきなの横に彼が座った時に震えたように、彼自身が特異点だと気づいた。
そして彼が”命”を捨ててまで戦う姿。
その光景を脳裏に焼き付いていた千束は、思い出す度に吐きそうになっていた。
それを我慢する千束だが思った事を呟く。

「なんで・・・フレディさんは人生を投げ捨ててまで、私たちを助けようとするんだろう。」

その呟きにたきなは黙った。
答えられない。
が、解ったことがある。
千束が真島たちに絡まれた時には、彼がほぼ”無防備”で千束を守り通した。
それは・・・千束を失いたくない彼の気持ち。
千束の意義を反することだけど”それはそれ、これはこれ”。
ということだろう。
千束はまた口を開く。

「そんなこと・・・”私は望んでいないのに”。」

と千束はポロポロと泣き出す。
泣き出した千束に口に出そうとしたが無理だろう。
なにせ千束の信条以上に、命を投げ捨てるフレディの信条がデカい。
15年前に損失した左半身。
あれも自身の命を失う覚悟があっての行動だ。
15年前から変わらない彼の信条が、千束の心の壁を打ち破ったのだ。
たきなでさえ、千束同様に感化して泣き出したかった。
だが、それは出来ない。
より混乱を招く可能性がある。
今は、千束を寄り添うように慰めることしか今は出来ない。
たきなは、

(大丈夫。大丈夫だから・・・)

と心で思いつつ、千束の横に座って千束の頭をたきなの肩に乗せて、一緒の気持ちに慰めようと思った。

~fin~

それでは、次回までごきげんよう。
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