千束が襲撃された。敵性人物を撤退させたものの、フレディは千束に眠る心臓に気づく。そして、彼はたきなにミカをはじめとする喫茶リコリコの面子を呼ぶように打診したのだったー
東京・某所
山岸先生の病院
喫茶リコリコの面子が来る前にマイケルが現場入りした。
「”例の件”か?」
「直接的ではないかもしれないが、おおよそは合っている。お前こそ大丈夫か?」
「あぁ。互いに家族を失っているからな。そろそろ20周忌だから、嫁に娘の墓参りをお願いした。」
たきなは衝撃の事実を知った。
マイケルが既婚者なのは、以前の来店で知っていたが・・・
子を失っているなんて・・・
そんなことを他所に2人は会話を続ける。
「お前も
「そうだな。さっさと楽になりたいものだ。」
「んだな。」
フレディは吹っ切れたように息を吐く。
フレディとマイケルの2人は千束に括り付けていた装置を調査している時、たきなはふと思う。
(やっぱり・・・私たちと彼らの境遇は違う。DAと彼らを一緒にしてはいけない。彼らは”
人生や年齢では計り知れないモノが、たきなには感じ取れる。
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数分後。
喫茶リコリコの面子が集まり、そしてこの病院の責任者である山岸も来ていた。
まだ寝ている千束とたきな以外の面子は険しい顔をしていた。
特にマイケルはたきなに言う。
「千束お嬢のそばに居てやれ。コッチで話をつける。」
そう。
大人だけでの会話で済ませたかった。
たきなには、大人の重圧には耐えられないとマイケルが判断したのだろう。
大人だけで事を済ませたら、千束とたきなに打ち明けることにした。
かつて、子を持っていたマイケルなりの優しさでもある。
たきなは黙って大人たちから離れ、千束がいる病室に向かっていく。
たきなが出て行ってから暫くの間、沈黙が続いた。
始めに切り出したのはミカだった。
「千束の心臓については黙っていたつもりだったが・・・君たちにとっては手遅れかもしれない。」
フレディとマイケルの2人は黙ってうなずく。
「そうか・・・無理もないか。」
ミカは頭を抱えた。
マイケルが切り出す。
「お嬢は何故、人工心臓に頼ったんだ?」
「・・・」
ミカは押し黙ってしまう。
「言い方を変えよう。何らかの形で心疾患を患っていたんだな。」
その問いにミカは頷く。
「あぁ・・・そうとも言える。」
言葉は濁したがミカはそう答えた。
マイケルが息を吐いて、目を伏せる。
「先天性ならともかく、後天性だったらもっとたちが悪い。俺の娘のようにな。」
マイケルが放つ言葉にミカが抱える肩の重荷が増した。
フレディが話を断ち切る。
「マイケル、それは後にしよう。ドクターに聞く。」
「・・・なにかしら?」
「あの電流装置は、異常なまでの放電が可能な電流装置だ。普通の人間ならば死に値する電流装置だ。あれは前からあったのか?」
山岸は首を振った。
「いいえ。ここには無かったものよ。」
「となると、奴さんが持ってきたものか・・・マイケル、出来るか?」
「あぁ。やってみる。」
「なら、本題に入ろう。ミカの旦那に聞く。」
フレディは未だに頭の抱えるミカを見る。
ミカの心は何かと動きを見せていたが、フレディはソレを読み取れない。
「元来、千束お嬢の寿命は?」
「・・・」
ミカは言うのを躊躇った。
フレディはミズキとクルミに目線を移すと2人は首を振る。
千束の安否を最後まで知っているのは”ミカしか居ない”ということになる。
フレディはさらに歩み寄った。
「頼む、旦那。時間との勝負で焦っているのは
「・・・成人まで持つかどうか・・・だ。」
ミカの答えにフレディは少しばかり考えては言う。
「となると、今回の件でどれぐらい縮まったかが”鍵”となるな・・・ドクター。ドクターから見てどう思う。」
「ハッキリとは言えないわ。ただ言えるとしたら・・・」
「したら?」
「持って2ヶ月が限度・・・」
と、山岸はあるデータをフレディに渡した。
受け取ったデータを横からみるマイケル。
そこには本来維持しなければならない電流値と本件で発生した電流値が記されていた。
維持するための値よりも、数十倍の電流値が千束の人工心臓に流れていたことがデータから見て取れる。
長引いていたら千束は死んでいたかもしれない。
フレディはマイケルにデータを渡した。
マイケルは苦虫を噛み潰したような顔になりながら言う。
「おいおい、これじゃあ人工心臓に余計な負荷が掛かって、潰れてしまうぐらいじゃないか・・・奴は一体誰なんだ?」
マイケルの言葉に反応したのかミカは「まさか」と思い僅かながら、動きを止めてしまった。
フレディはそれを見逃せない。
「旦那、何か知っているか?」
「深くは言えない・・・」
「なら良い。」
フレディは素っ気なく答える。
ミカは2人に頭を下げる。
「・・・済まない。君たちまで巻き込んでー」
「旦那、気にするな。
「違う。君のせいではない。私が千束にー」
「旦那!」
フレディはミカが段々と退くのを制した。
「その答えは誰も期待しちゃいない。”時間”との勝負なんだ。ここで絶望の淵に立たされたとしても、やり遂げることが大事なんだ。それが”今できる”かの問題だ。」
「・・・そうかもしれない。だがー」
「気持ちは解る。それでも超えなきゃ行けない壁がお互いにある。千束お嬢を襲った奴の件はこちらが受け持つ。そっちはお嬢2人を見ていて欲しい。いいな?」
フレディの真っ直ぐな意見と目線、そして決断力がミカたちを動かした。
ミカは焦りながらも頷く。
「わかった。君が味方で良かった。」
「それは千束お嬢たちが生き残ってから言ってほしいものだが・・・まぁいい。マイケル、リーからの連絡は?」
「既に何件かは。」
「なら急ごう。マイケル、先に戻れ。」
「わかった。」
とマイケルは山岸にデータを渡してはアジトに戻っていく。
フレディはミカたちにもう一度、念を押して言う。
「2ヶ月。この2ヶ月が勝負となる。それによって奴らが動くが、どちらにせよ止めなきゃならない。もうDAや喫茶リコリコ、傭兵だけの問題ではない。全員が”コレ”を止めなきゃならない。千束お嬢とたきなお嬢を頼んだ。」
と、彼は大人たちの部屋から出ていき、千束が眠る病室すら目もくれず、病院から出ていった。
何としてでも止めなきゃならない。
その覚悟には命を
成し遂げることができなければ共倒れだ。
と彼は思っている。
彼はカタフラクトに乗り込んだ。
次回⇒【もう1人の黒幕】
小話【真島の動き】
直近になってから真島は慎重に動いていた。
ちょっと前までは、千束と何回か”お邪魔させている”。
だが、ロボ太の情報が正しければ、今回の銃密輸に爺さん以外の人間が関わっている可能性が高いという情報を割り出してくれた。
ロボ太曰く、
「出所不明の情報なのは変わりないけど、あの爺さんのデータにとある人物とのやり取りがあった。それが銃密輸取引に関わっているかもしれない」
とのことだった。
その人物との解析は、逐一ロボ太が寄越してくれる。
ただ、真島にはちょっとした余念があった。
そう。
謎のベールに包まれた『フレディ』という存在が生きている可能性。
爺さんのデータには何かしらの細工が仕掛けてあって、奴のデータが見れない状態だった。
まさかとは思いたくないが、爺さんも傭兵に看破された挙句、あの爺さんを捨てることに傭兵集団内部では理解していた可能性もある。
だから、ここ直近では下手に動かない。
いや、動けなかった。
アランを断って尚、傭兵に居座り続け、そして日本に来てからは血を染めて、爺さんを始末したことと、爺さんのデータを改竄したこと・・・
侮れない相手だ。
奴とはもう1戦交えたいが、奴のことだろう。
無いとは言えないが、奴はしゃしゃり出ることは有り得ない。
真島も何かしらアイデアを浮かべつつ、次の一手を待っていた。
~fin~
それでは、次回までごきげんよう。