ミカたちを呼んで”大人たちの話”で発覚した千束の心臓と余命。フレディは狼狽えるミカに”やる”か”やれない”の選択を押し迫り、ミカたちは遂に”やる”という選択をした。ソレを見たフレディは次なる一手を繰り出すことにしたー
【もう1人の黒幕】
東京・某所
カタフラクトにて。
「ーなるほど。人工心臓かぁ・・・アランしかできない芸当だな。」
ジョンが運転しながら言う。
「で、千束お嬢を襲撃は単なる”襲撃”じゃないってことか。」
「あぁ、単純にこの世から消しに来たとしか思えない。」
フレディはジョンとリーに情報を共有していた。
その情報を元に、リーがとある情報媒体を探り当ててフレディの肩を叩いた。
フレディは無言でリーが操作する画面を見ると・・・
15年前、フレディとリーとの交渉に来た人物の情報媒体が出てきた。
リーは言う。
「どう思う?」
「間違いない、奴が主犯だ。」
画面に表示されたのは、
『吉松シンジ』
と表示された情報媒体と人物像。
そして女性秘書という名の守護神、
『姫蒲』
という存在だ。
「この女のミドルネームは?」
「不明だ。だが、こちらから連絡は取れる。」
リーがそう言うと、運転しているジョンが口を開く。
「こっちから出向くか?」
フレディは首を振る。
「あぁ、力づくで脅す。まずは先に戻ったマイケルからの情報を待とう。話はそれからだ。」
フレディたちが乗ったカタフラクトはアジトに戻る。
その一方で喫茶リコリコの面子、特にたきなは千束の”心臓”について驚きを隠せないまま時が過ぎて行った。
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東京・某所
ブリーフィング室
傭兵集団全員が、ブリーフィング室に集められた。
フレディとリーを筆頭にジョンが補佐でマイケルがジョージの穴埋めだ。
ジョージの元部下たちはフレディに忠誠を捧げており、いまでは全員がフレディの精神的支柱となって支えている。
リーがホログラムで情報を床に照らす。
マイケルの情報と照らし合わせて今回の襲撃事件に発生した人物像を中心に話が進められていた。
フレディが声を張って言う。
「吉松シンジ。15年前、
「その理由は?」
ハリスの質問にリーが答える。
「ジョージが隠し持っていたデータにコイツの名前が入っていた。奴は俺たちを始末する代わりに、コイツはその裏で日本にモノを流していたというやり取りがあった。」
「なるほど、で?銃密輸の数は?」
ハリスの更なる質問にマイケルが答える。
「ロックの調べで照らし合わせ見たが、少なくとも1000挺の密輸取引は判明している。大小問わず・・・にな。」
「大小問わずに1000となると・・・ややこしくなるな。」
ジョンが険しい顔になる。
大小問わずに銃が密輸された場合、探し出すのに一苦労する。
中口径の自動小銃ならまだしも、小口径の拳銃や小銃は石油由来の合成樹脂を使用している銃が多い為、金属探知機に引っかかる可能性が少ない。
ジョンは顔を上げて、リーに質問する。
「探し出すのは得策じゃない。コイツの・・・吉松シンジが何をしでかすかで行動パターンが変わる。違うか?」
「その通りだ。そのためにマイケルに協力を仰いだ。マイケルの情報を見てみろ。」
リーはホログラムを切り替えて、マイケルが集めた情報を前面に出した。
マイケルの情報は、千束に対しての電流装置の出所と吉松シンジらの思惑がそれぞれの情報として映し出されていた。
出所はアラン機関。
吉松シンジの思惑は”千束の始末”。
ざわめく傭兵集団。
フレディが傭兵集団を制する。
「千束お嬢の始末は、ごく真っ当な思惑だ。かの10年前の電波塔テロにてほぼ単騎で制圧した千束お嬢だ。が、アクシデントが発生し、それを救い出したのがコイツらアランの出番だった。千束お嬢が人工心臓を抱えて今も生きているならば、吉松が様子見にしてくるのは何ら不思議ではない。ただ・・・」
「ただ?」
マイケルが首を傾げる。
リーが代わりに答えた。
「アランの道義として、吉松シンジはその道義を犯してまで千束お嬢の面倒を見ていた・・・とでも言うべきか?」
「すまんな、リー。」
「構わん。アランの道義にはアランチルドレンの接触を許されておらず、アランチルドレンが正しい道標を”間接的に”作るだけの存在だ。だが、コイツの場合は違った。明らかに千束お嬢を”直接的に”道標を作っていた。」
「
リーの推測。
フレディの知識。
それらの意味では『吉松シンジは千束に”何かしらの”メッセージを書き残す』つもりでいた。
だが願いは叶わず、女性秘書の『姫蒲』に頼んで手を下すつもりだった。
自らの手で下さない辺り、出来の悪い官僚や政治家気取りとそっくりである。
そして最後にフレディが傭兵集団に対して質問を投げかける。
「千束お嬢が、なぜ
リーを除く傭兵一同は考える。
フレディの隠密能力は傭兵随一だ。
それは亡きフリッツや裏切り者のジョージ、ここに居るマイケルすら足元にも及ばないほどだ。
入国以来、フレディの隠密が発揮したのは、喫茶リコリコに訪れた時だった。
フレディは”わざとらしく”千束の前で隠密能力を披露した。
千束の能力を看破したのが、フリッツであり、リーでもある。
ジョージの裏切りというフレディの策略でもあり裏切るだろうという示唆だった。
フレディには解って傭兵らは解らない。
いや、少なくともリーは知っている。
何故ならば今は亡きフリッツの過去を知っていて、ジョージを始末することを念頭に置いていたのだから。
短時間で気配を消せる隠密能力を看破した千束が持つ”力”とは?
とリーを除く人間らがフレディの顔を見た。
「”眼”だ。お嬢が秘めている力は”眼”にある。」
「それで看破したっていうのか?」
ジョンの答えにフレディは頷く。
マイケルが頷きながら言う。
「なるほど。その”眼”ならば俺たち隠密も看破出来るわけだ。」
「唯一の弱点は暗闇に反応できないってところだ。」
「
「そうだ。」
フレディが頷くとリーが話のよりを戻す。
「話は良いか?」
「あぁ。続けろ。」
「吉松シンジに対するコンタクトだが・・・いつがいい?」
「奴を脅すなら、早い方が良いが・・・吉松と真島に対する手がかりが無い。」
フレディの険しい顔にロックが言う。
「いや、ある。」
「なに?」
「銃密輸取引を駆け引きにするんだ。」
「もっと詳しく。」
フレディが食い気味で聞く。
ロックがリーにある情報媒体を転送していた。
その情報媒体をホログラムで映し出す。
ロックが説明した。
「テロリスト共はほとんどが東側兵器だが、銃密輸取引に関わるものは大半が西側諸国のモノもあった。」
「その情報は確かか?」
「兵站のプロに疑う余地があると思うか?」
「少なくは、な。」
疑うフレディにロックは鼻で笑って具体的に説明した。
「まぁ説明してやる。アランの連中が考えそうなことだ。テロリスト共は東側で銃密輸は西側。これは日本に両陣営からの圧力・・・或いは紛争地域としての緩衝材を失った日本を混乱に貶めている。イエローケーキ戦争でもそうだったろ?」
確かに、イエローケーキ戦争は西側東側関係なしに発生した戦争で、両陣営が肩を並べて戦った戦争だ。
トルコ・イラク国境線という東側と西側の緩衝材で発生した事件がそのまま戦争へと導いたものだ。
仮に、日本が今回の密輸テロで両陣営の緩衝材になった場合、第二次冷戦が起きることだってないわけではない。
テロリスト共の仕業とは言え、秘密警察組織が明るみになった場合、両陣営は代理戦争という名目で肩入れして、最終的にアランが両陣営の共倒れを見守りつつ、日本を占領し、足掛かりとして橋頭堡を手に入れる・・・
馬鹿げた夢物語だが、ありえなくない。
むしろ論理的である。
「なるほど。”餌”を蒔いた甲斐がある。リー。」
「やるのか。」
「あぁ準備してくれ。」
リーが頷くとホログラムを消して、軍事用のパソコンを弄り出す。
フレディらは次なる一手を、
『吉松シンジ・・・強いてはアラン機関に対する”宣戦布告”という手段』
を、取ることにしたのだった。
次回⇒【宣戦布告】
小話【密輸取引の裏側に】
喫茶リコリコで発生した出来事の後日
東京・某所
この情報は、まだフリッツ傭兵団だった時で過去の話だ。
アメリカ情報局ことNSAがある情報をリーに流した。
それは”毒ガス”である。
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東京・某所
廃ビル
現場にはフレディ、ジョン、マイケルが居た。
彼らの目の前には、”合金で覆われた樽”があった。
マイケルが、
「これか?」
というと、ジョンが答える。
「あぁ。GA剤のTabunだ。」
神経ガスのG剤の1種である”タブン”。
1936年にドイツが開発した毒ガスで、GB剤のサリンやGD剤のソマンより毒性は弱いものの、浸透力や吸収力は先の2つに引けを取らない神経ガスの1つである。
その毒ガスが、NSAからリーを経由してこの日本に密輸されていたということだった。
しかも、貯蔵は銃密輸取引より前からであり、DAすらこのことは気づいていなかった可能性もある。
NSAは、奇妙な情報を握っていた。
それは、
・東側でもなければ西側でもない、第三者機関によって密輸・貯蔵
である。
この情報を知ったリーは薄々思っていた。
”アラン機関”による日本掌握。
NSAがここまで嗅ぎ付けてきたのは、イレギュラーによるものだと焦っていた。
可能な限り日本且つ、西側で”事”を起こされた場合、東側が動き出す可能性だってある。
だから、フットワークが軽く国際法に認められた傭兵に依頼したことだろう。
さて、この”樽”は『貯蔵タンク』の隠語であり、1つとは言えど何かのトリガーで作動したら現場に居る3人は即死する。
現在、トリガーとなるものをフレディが調査している最中だ。
アランが関与するならばジョージの手引きが真っ当だろうが、銃密輸取引以前となるとジョージはCIAとしか嚙んでいない。
となると、消去法だと別の”梟”が関与している。
フレディはあるコードを切るとジョンとマイケルの2人に振り返って言う。
「トリガーは消した。あとは”3-5-I”に運ぶだけだ。」
「「了解。」」
3-5-Iは羽田空港であり、化学兵器の後処分はCWCこと化学兵器禁止機関が運ぶことになっている。
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CWCに”樽”を渡した3人は、帰路に着いた。
3人にはリーから情報を受け取っている。
が、リーはジョージや”梟”のことは伏せて、”テロリズム”ではない何者かが”関与しているだけ”で送った。
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この時はまだ、傭兵全員に”ジョージが裏切る”、たきなが傭兵の保護下という過去の話である。
このログを残したのは今は亡きフリッツ本人であった。
フリッツは何もかもお見通しだったかもしれない。
だが、現在は過去の遺物として、或いは英雄の遺物として消えたー
現在、その傭兵団は世界から消し去り、栄華を勝ち誇った1つの逸話として語られている。
~fin~
それでは、次回までごきげんよう。