真島を制した3人。しかし、フレディは真島を”餌”に生かせることにした。
これから始まるのは、シェイクスピアのマクベスのような『喜劇と悲劇』を千束たちに襲い掛かる。そう、味方である傭兵らによってーーー
3-6-Lこと旧電波塔・第二展望台にて。
たきなが現れて、一気に戦局が傾いた。
ジョンがたきなに向かって言う。
「遅かったな。危うく始末するところだったぜ。」
「すいません・・・でも、2人が来てくれたおかげ千束はー」
「”お勉強”は後だ。コイツを始末するぞ。」
フレディの一喝で場は引き締まった。
真島は焦燥感が顔に出ていた。
だが、フレディが壁を蹴っては真島の後ろに回り込んで退路を防ぐ。
「お嬢たち、やっちまいな。
「「はい!」」
ジョンが、光度エネルギーが大きなライトを千束とたきなの後ろから照らし、戦場が良く見える。
真島にはその光としては眩しく、腕で隠しながら2人の攻撃を躱す。
だが、真島の退路にはフレディが立ちふさがる。
ちょくちょくちょっかいを出しながら、真島の行動範囲を狭めて、ついには千束が真島を掴んでは残った左耳に発砲音が響き渡る。
発砲音の衝撃で、もがき苦しむ真島が手摺りにもたれかかると、たきなが射出型の拘束ひもで真島を拘束した。
一件落着である。
失神状態なのか真島はだらんと下を向いていた。
千束とたきなが一息ついて互いに研鑽し合うの見ながら、フレディとジョンが真島に歩み寄る。
ジョンが小声でフレディに耳打ちする。
「・・・今やらないのか?」
「いや、まだ”泳がせる”。真島を始末するのは後にした方が”喜劇”だと思ってな。この程度でくたばると物足りない。」
「んじゃ、俺は2人と”一緒”に吉松を探す。」
「頼んだ。」
フレディにはある策略があった。
千束の手で吉松を始末させるという”喜劇”。
真島の始末というのは建前で、救いの手を差し伸べた人間を始末させるという”悲劇”の始まりの序章に過ぎない。
ジョンはフレディの狡猾さは15年前から変わっていないのを、感じながら千束とたきなと合流した。
------------------------------
悲劇が始まる1時間前のこと。
真島は目を覚ました。
目の前には憎き外套の男が居た。
男は商談があると真島に依頼した。
「ーで、ここで開放する代わりに延空木でもう一度争えと?」
「あぁ、だがDAに悟られるな。DAの連中が来たら始末していい。子供は殺すなよ。」
男は頑なに”子供”を心配しており、大人は始末しても良いと考えている。
真島は暫しの沈黙の後に言う。
「お前、どっちの味方だ?」
「
と男は、真島に縛っていた拘束ひもを1つずつ切る。
「まだ動くなよ。DAが来てから動け。」
「お前はどうする?」
「どうだろうな?決められた”
と男は真島から去っていた。
真島は思う。
(DAよりもあの男の方がよっぽどやべぇじゃねぇか・・・どっちが本当の敵が解らねぇ・・・)
そう思いつつも真島は、男に言われた通りに微動だにしなかった。
------------------------------
さて、悲劇に戻ろう。
千束は究極の選択を迫られていた。
自分の命の為に吉松を撃つのか?
それとも、自分を代償に相棒を助けるのか?
肝心のジョンは”別ルート”で吉松を探しに行っている為、応援を呼べない。
そしてー
千束は吉松に対して発砲した。
後悔と雪辱の音が千束の心に響き渡る。
感情のコントロールがままにならない千束は叫ぶ。
吉松は千束から放たれた弾丸を受け止めて、後ずさり倒れる。
感情のダムが決壊した千束には力がなかった。
だが、とある男がラペリングで空中から檄を飛ばした。
「千束お嬢!気をしっかり保て!」
千束に檄を飛ばしたのはジョンだった。
ジョンは旧電波塔の展望台の屋上からフックをかけて、ほぼ空中状態のままラペリングしていた。
足が地につかない状態でもジョンは、千束の後ろに居る姫蒲を狙い、たきなを援護する。
「千束お嬢!そっちにフレディが向かっている!たきなお嬢はこっちで持つ!千束お嬢が思う行動を行え!」
千束は涙を浮かべつつ、旧電波塔内部に入っていく。
たきなは、ジョンと共同で姫蒲の脅威を排除すること。
だったが、全く援護がなかった。
というより銃を下して、展望台の中に入るジョンの姿があった。
たきなはハッと思った。
(もしかして・・・
そう思いつつ姫蒲と一騎討ちが始まる。
------------------------------
ジョンが展望台に入った場所にフレディが居た。
「首尾はどうだ。」
フレディが言う。
「お前さんとリーが思い描いた通りだ。これで・・・いいんだな?」
険しい顔をするジョンが改めて確認すると、フレディは頷く。
「そうか・・・彼女たちの・・・特に人工心臓に関しては傭兵は関係ないと。」
「あぁ。アレに関してはお嬢たちの問題であり、
フレディの”悲劇”を簡単に話す。
悲劇の筋書きは以下の通りだ。
・傭兵はあくまでも吉松シンジの”始末”だけ絞っている
・ただ、そこに千束をはじめとする人間らが人工心臓の件で関わっている場合は深く関わらない
・真島は”餌”として生き残らせて、DAとの共同作戦を欺瞞する
・”餌”は始末しても構わないが、子供たちには”現実”を突きつける
というものだった。
フレディは、人工心臓に関わる千束たちには深く関わらないとしている。
理由としては、『自分の運命に第三者が関わってはいけない。
だから、千束たちの運命は千束たちが決める。
傭兵は部外者だ。
”始末”することだけを考えているので、彼女たちは作戦上、邪魔でしかならない。
とはいえ、彼女たち・・・子供を始末するのは看過できない。
自分の信条に反する上に矛盾しているからだ。
だから、”事”が終わるまで待機する他なかった。
するとー
上の階で発砲音が2人の耳に届く。
フレディがジョンに対して頷くと、2人は彼女たちの元に向かった。
途中、フレディらと吉松らがすれ違うものの、フレディは背を向けて吉松に言い放った。
「もう長くは持たない。千束よりもお前はな。」
「・・・皮肉かい?君は私を・・・始末するんじゃなかったのか?」
「さぁな。だが、
とフレディとジョンは階段を昇って、”
姫蒲に肩を貸しながら、吉松はため息をつきつつ、下の階へ向かっていった。
直後、彼らは消息不明となる。
------------------------------
フレディらは千束たちと合流したが、千束はともかくたきながフレディに噛みつく。
深い息を吸っては吐いて、フレディに銃口突きつける。
(弾も尽きている銃に何ができるのか?)
と心の中でボヤくフレディが居た。
だが表情は変わらず、たきなを見つめていた。
たきなは叫ぶ。
「貴方は!なんでいっつも邪魔するんですか!?」
「たきな・・・」
千束はたきなの腕を取ろうとしたが、たきなは銃弾の尽きた拳銃をずっと変わらずにフレディに突きつける。
「千束が襲われた時も!私たちを駒にして自壊させたのも!貴方は私たちの邪魔でしかありません!」
そう吠えるたきなに、フレディはー
たきなの拳銃弾を弾倉に込めては、たきなの足元に投げつける。
そして”狼”は答える。
「なら、それで
たきなはすぐさま弾倉を拳銃に装填して、フレディに狙いを定めた。
独り言のようにフレディは言う。
「それで
「え・・・あ・・・」
千束がしどろもどろに答えるもたきなが制する。
「千束は関係ありません!貴方さえいなければ千束はもっと早く救えました!」
「そうかい?ならばー」
フレディはたきなに向かって歩み出した。
「動かないで!」
「フリッツは
「動くな!」
とたきなは吠えて、拳銃弾を放つ。
放たれた拳銃弾はフレディの・・・
”生身”の右肩を打ち抜き、フレディはよろめき膝をつく。
だが、すぐに起き上がった。
不気味なぐらいに。
たきなは”ソレ”を見ては恐れて撃ち尽くすまで放つものの、フレディは無防備で居ながら全て受け止めて血を散らす。
華のように散らした血。
止血せずともフレディは、たきなの銃を握りしめて取り上げる。
取り上げられた銃は千束に渡してフレディは膝をつき、たきなの目線に合わせる。
そして最後の言葉のピースを嵌め込むフレディ。
「現実を受けとめろ。これがフリッツから言われた言葉だ。」
たきなは涙を浮かべて首を振る。
現実を受けとめられない”
それはもう、戦場を知っている”
次回⇒【露払い】
小話【グレードゲームの始まった要因】
「そう、あれはフレディがアランの連中に宣戦布告した時だった。」
リーはある人物を目の前に呟いていた。
------------------------------
アイツが狡猾な正体を現したのは、アレが初めてじゃない。
奴が傭兵加入後、そう10歳の時にはその片鱗があった。
既に革命戦争で血を染めた奴は、まるで”死神”のようだ。
これは比喩じゃない。
命を刈り取る神様が目の前に居たんだ。
俺だけじゃない。
あのフリッツですら、手のつけようがなかった。
ただ、一言で言えば・・・
子供を守る執念の塊ー
とでも言うべきか?
軽く1万人の血で染まった人生を歩んだアイツの執念が、”全ての始まり”で先のグレードゲームだ。
それがアイツにとっての”子供を守る”精神に繋がった。
だからな、旦那ー
千束お嬢やたきなお嬢だけじゃなく、DAの全ての子供たち全員に救いの手を差し伸べようとしたが、アランによって無駄に終わったんだよ。
だからグレードゲームの始まりに過ぎないアラン機関に対して、”宣戦布告”を行ったんだ。
ー”ミカの旦那”、これで解ってもらえるか?
------------------------------
リーの話し相手はミカだった。
険しい顔で瞼を閉じるミカの姿はそこにあった。
だが微動だにせず、ただひたすらリーの言葉を信じる他なかった。
もうこの時には”全て”が終わっていたからだ。
~fin~
それでは、次回までごきげんよう。