~銃弾と対価~   作:クマぴょん

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【前回のBullets Price】
賽は投げられた。千束と真島の間に割り込んだ機械人間は、千束を庇う。そしてー
最後の一戦がここに始まる。


【終戦の一撃】

 

 

延空木・第一展望台にて。

 

テロリズムと”非正規軍(傭兵)”。

土竜(真島)(フレディ)

対となる漢、2人の最後の闘いの火蓋が切って落とされた。

土竜と狼の闘いは一進一退の攻防戦を繰り広げられた。

狼は独壇場の接近戦闘。

土竜は空間把握を主軸とした広域戦闘。

どちらが勝てるか不明という状況下、千束とたきなの2人は2人で葛藤を繰り広げられていた。

 

------------------------------

 

「たきな!離して!」

 

千束は離れようともがくが、狼から渡された拘束紐は非常に強力で、もがけばもがくほど締め付けられ、窒息する事だって可能にしてしまう拷問器具の1つだからだ。

それでも千束は苦しくても、目の前で闘う恩人を見捨てることが出来ない。

出来るはずがない。

散々こき下ろされたけど、同時に千束やたきな、喫茶リコリコの面子、フキたちDAまで救っている事実は変わらない。

代替わりになってもより一層、強くなった傭兵集団はずっと寄り添ってくれた。

躓いても一緒に歩んでくれた。

フレディさんを筆頭にリーさん、ジョンさんにマイケルさんは命を代償にまで助けようと・・・

たきなや私に寄り添ってくれた。

ヨシさんやたきなのことを見捨てたこともあったが、アレは私の人工心臓のことには触れられないことだけであって・・・別に恨んでいない。

でも、ここまで来て・・・

目の前で死んでいくのは嫌だ!

だから、千束は必死にたきなの拘束紐から離脱を試みる。

 

「千束、お願いです!」

「なんで!?たきなまでー」

「これはリーさんからの極秘の命令なんです!」

「だからといって・・・恩人に恩を返さないまま目の前で死んでいくんだよ!?」

「それでもっ、あの人たちは千束を1日でも1時間、1分、1秒でも長生きしてもらいたいからー」

「それとこれは別なの!!」

 

千束の泣きながら嗚咽混じりの声でたきなを制する。

たきなは大変驚いた。

千束がここまで乱れるなんて思いもしなかった。

そこまでして、あの狡猾な狼と歩み寄るのか?

たきなは2つの感情の狭間に居る。

千束と一緒に歩み寄るのか?

それともー

傭兵と交わされた約束を守るべきなのか?

その瞬間であった。

フレディが真島を背負い投げて、中央にある半円形のガラスホールに真島を投げ込んだ。

すかさずフレディは追撃する。

このガラスホールは傾斜があり、登れないわけではないが自力での脱出はほぼ不可能で、入ったら最後、眼下にあるネオン街に叩き込まれるか救助を待つ他ない。

だが、フレディは命を顧みず真島を始末するべく降りて行った。

千束は降りていくフレディの目を見て慄く。

一言で表すなら、

 

「憎しみの終わり」

 

だろう。

間違いなく真島と共に終わらせるつもりだ。

ガラスの音が展望台全域に鳴り響く。

その都度、真島の苦しみの声。

そして、憎しみの塊と化した「死」を告げる声。

千束はたきなが思考を張り巡らした時に拘束紐が緩んでおり、たきなから離れて動く。

 

「あっ、千束!」

 

たきなの声に留まること知らず、中央のガラスホールを見る。

ガラスホールは限界だった。

いつ崩れてもおかしくない状態。

そんな中、真島の意識は吹き飛んでおり、フレディが振り上げた拳で最期を迎えようとしたときだった。

 

「フレディさん!今行きます。」

 

千束の声によって、拳は降り降ろされる前にピクリと止まる。

千束はフレディの元に駆け寄る。

が、

 

「来るな!貴様も死にたいのか!」

 

フレディのドスの聞いた声で千束を制する。

彼の左目は、殺意に満ち満ちていた赤い目をしていた。

辛うじて生身の右目だけが正気を保っているような目をしていた。

千束は恐る恐る尋ねた。

 

「なんでここまでしてまで、”私”を生かそうとするんですか?出会ってからずっとー」

「それは死は平等だからだ。それが遅くなればいいだけのこと。ただそれだけだ。」

 

千束の問いにフレディは簡素に答える。

つまり、

 

「千束は生きていれば安全な場所で周りに看取られる」

 

ってことである。

フレディたち傭兵集団はいつ死ぬか解らない。

死に際は選べても、死に場所は選べない。

だから、千束には周りと一緒に過ごして、1秒でも長く生き残って思い出作りに励んでほしい。

フレディの言葉にはそう込められていた。

するとー

真島がフレディの拳銃を引き抜き、千束の頭を狙う。

しかし狙いは千束から外れ、再びフレディに押さえつけられた。

フレディはたきなに指図する。

 

「たきなお嬢!最後のチャンスだ!ここで全て終わらせる!」

「っ!は、はい!」

 

たきなは最後の射出型拘束紐で千束の胴体を絡める。

 

「たきな!?待って!!」

 

千束の想いは届かず、フレディは最後の言葉を放つ。

 

「楽しかったぜ。出来れば平穏世界で逢えたら嬉しいぜ。」

 

と言い放ち、ガラスを叩き割る。

フレディは真島を抑えながら、ネオン街の夜に消えた。

足場が崩れる中で千束は、

 

「また・・・守れなかった。」

 

と涙を零し崩れゆくガラスホールに留まろうとした。

だが、フレディの使命は潰えていない。

たきなが拘束紐で千束を引っ張り上げる。

身体が悲鳴を上げても、何としてでも千束を救い、フレディから託された使命を同時に達成する必要がある。

苦しみながらもたきなは踏みとどまったのだーーー

 

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ネオン街に打ち上げられた花火が街を照らす。

たきなの奮闘により、千束はネオン街に落下せずに済み、後から駆けつけたハリスとロックの2人により、Limaの2人は助かった。

だがー

傭兵集団の戦場指揮官であるフレディは生死不明。

と同時に真島も生死不明である。

下に居たハリス曰く、

 

「血痕はあったが、その後の痕跡はなかった。生きているのか死んでいるのかは定かではない。体そのものが消えては追えるものがない。そして中枢(リー)からは引き揚げろとしか聞いていない。」

 

とのことだった。

花火の出所は真島が仕掛けたトラップであり、実物の爆弾は存在自体無いとされた。

また、真島の傘下で動いていたハッカーはクルミによって発見・逮捕され、ラジアータもクルミによって復活した模様。

地上に降り立った傭兵集団らはジョンの代理指揮の元、解散となりDAと別れ離れとなる。

だが、千束の放心状態を見たマイケルが、千束に歩み寄ってはまるで娘のように頭を撫でた。

ジョンとマイケルに託された乙女サクラの命の別状は無く、何とか間に合ったといった具合だった。

だが、リーを除く古参傭兵はもう60手前の高齢者で、これ以上の傭兵稼業は見込めないと中枢であるリーから、傭兵集団の解体を命じられた。

よって、延空木テロでもってフリッツ傭兵集団は解散となる。

1人の安否がわからないまま、解散となるのだ。

だが、これでいいかも知れない。

”彼”自身が望んだ世界を作ろうとしたのだから。

 

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後日、1人を除く元傭兵らは各々無事に帰国することになった。

ジョンは動けぬ妻子を会いに。

マイケルは娘の墓参りに。

リックとロックは家族に会いに行く前に、ウィスキーで舌鼓をしてから出国。

チュレンコフ、アレク、ガウディーはウラジオストクに寄ってから、シベリア鉄道でモスクワを目指す。

ハリスは、行く当てもなければ帰る場所も無い。

なら、今度は銃を持たずに伸び伸びと欧州旅行を楽しむと出て行った。

彼らはフキやたきな、名も知らずリコリスに楠木司令すら会わずに出国した。

もう思入れもなく、悔いなく仕事をこなせたという達成感だけが残る。

そう”3人”だけ日本に残して。

フリッツは、日本で亡くなってから各国の政府中枢から従軍記章を授かり、DA本部の敷地内に眠る。

同様にワタナベは、かつてDAの教官でありながら、DAの実態を把握しておらず、ただ単にフリッツの願いから教官に志願したという経緯を持つ。

そんなワタナベは、教官時代にDAで最高峰の医療従事者であり、彼は楠木司令を含めた何名かのリコリスまたは教官を救い出している。

まだ彼女らが10代の時だ。

彼もまたDAの敷地内で眠っている。

そして、リーは・・・

自らDAに志願して、ラジアータの総責任者となった。

ラジアータの性能面はピカイチではあるが、あまりにも高インフラしすぎて逆を突かれる場合があると指摘。

DA上層部は彼が言った言葉が正しかったのを認め、彼をラジアータが落ちた場合の代理権限を付与した。

そして、彼は突拍子も無いことを発する。

 

「アイツらは生きてる。真島もフレディも。だがそれは俺がやることではない。お前たちが調べ上げろ。」

 

と言ったのちに、

 

「アイツらの安否は確認してあるが、あくまでも俺は言わない。アイツらの情報を売ったら俺の命はお前たちによって消されるからな。」

 

と。

リーはDAに消される恐れがあって、情報を売ることは無かった。

そして彼はラジアータと睨めっこする時間が続く。

 

------------------------------

 

東京・某所にて。

1人の黒い影が、一般男性にあること語り出した。

1つの拳銃でテロリズムを再び再起するだろうという計画だった。

だが、黒い影のお話はまた別の機会にしよう。

影が動くころにはもう1つの影も動くことだろうから・・・

 

 

次回⇒【彼を探して】




小話【彼らの目的】

延空木からちょっとすぎた後のこと。
DAの敷地内に眠るフリッツとワタナベに手向けをしていたリーが居た。
その後ろには楠木司令やフキ、サクラを始めとするDA関係者やリコリスたち。
そして千束とたきなが居た。
リーの一礼が終わると女子たちがリーを見ていた。

「何か言いたそうだな。まぁいい。ゆっくり話そう。」

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なんで、あんな発言をしたと思う?・・・そうだなぁ、例えば楠木司令。アンタなら解るはずだ。フリッツとワタナベを内地に呼び寄せたのは、”任務”を依頼したわけではないよな?違うか?
あぁ・・・そうだ。
なるほど。んじゃ次にフキお嬢たちに聞こう。アイツら傭兵の動きを見て何を思った?
高齢にしては機敏に動いていた。
いや、違うよな?高齢にしてはお嬢たちを救おうしていた。違うか?
っ・・・そうだ。実際にサクラとエリカ、そして千束とたきなを救ってくれた。
だな。千束お嬢の前にたきなお嬢に聞きたい。
何ですか?
狼、いやフレディと交えて何を思った?
うむ・・・酔狂な人?
相変わらず酷い言いようだ。まぁ嫌いではない良い言葉だ。奴は、理解して欲しかったのだよ。千束お嬢を守れるのはお嬢しかいないってね。それを奴は行動や言葉で示していた。最後に奴から拘束紐を渡された時はそう感じ取れただろう?
はい・・・認めたくはありませんが。
対抗意識は良いが奴はここには居らん。そして最後に千束お嬢。傭兵全体を通して何を思った?
えっ・・・と・・・私が秘めている”モノ”を守るため?
チッチッ。
違うんですか?
お嬢の心臓以上に重要なことだよ。特にフリッツとフレディを見ていて何かわかったか?
・・・わからないです。
まぁそうだろう。
何が言いたい?
楠木司令、簡単なことだ。まだ幼い子供が”殺しの味”を占めるの良くないと思って奴らは動いていた。無論、俺もその1人だ。1人でも多く救って、1人でも多く青春を過ごして欲しい・・・てね。楠木司令、アンタもその1人だったんだよ。フリッツと何も知らないワタナベがあんなに献身的にDAと接していたのは、子供たちを救おうしたからだ。だが、アンタは子供たちを救えなかった。だから、フリッツとワタナベを筆頭に死に物狂いで奴らは、この子たちが直接手を下さない形を迎えたかった。その結果がこのざまだ。
・・・そうだったのか。降りるべきか?
それを責任逃れって言うんだ。最後までやり通せ。コイツらが死に物狂いでやっていたように、子供たちの司令官として真っ当に責任をとれ。苦しみを乗り越えた連中の壁は高い。そう心に刻み込め。

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「さて、お喋りの時間はここまでだ。俺はラジアータの点検を見てくる。じゃあな。」

と、リーは女子たちから去った。
傭兵集団はDAの子供たちの為に動いていた。
フレディだけではない。
全員が子供たちを救うべく闘い、散っていった。
それが彼らだ。
自ら”悲劇”を担いで立ち向かう戦士であり、子供たちの救世主でもあった。
唯一、リーだけが日本に残って闘う。
それは遺志を継いだ2人と生死不明の1人によって、産み出されたものだからだ。
未だに2人が眠る墓標の前に彼女たちはー
涙を流していた。

~fin~

それでは、次回までごきげんよう。
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