~銃弾と対価~   作:クマぴょん

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【前回のBullets Price】
彼ら傭兵集団は高齢故に解散となる。それぞれ帰国したが唯一、リーだけが日本に。しかもDAに志願した。しかも突拍子も無い発言を残して。千束たち喫茶リコリコの面子はハワイに向かった。


【彼を探して】

 

 

常夏の島であり、常夏の都でもある。

ハワイ・ホノルル。

 

延空木事件から幾つかの月日が経過したころ、喫茶リコリコの面子はここハワイに居た。

表向きは出張版喫茶リコリコ。

本当は恩人探しであった。

 

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ハワイに向けて出国する1週間前のこと。

クルミが再三の頼みでリーが口を割ったのだ。

クルミだけじゃない。

千束を始めとする子供たちの頼みもあってこそ生まれたもので、強いて言えばフリッツの娘である黒山茜の頼みでもあった。

クルミや喫茶リコリコの面子なら無視していたが、楠木司令の同期でフリッツの娘の頼みでようやく重い腰を上げた。

そして、彼は出国を決めた千束たちに言い放った。

 

「奴の場所は教えるが、下らないことは考えるな。お前たちの為に命を落とす覚悟があった漢だ。下手な事言ったら、回れ右しろ。」

 

と、データを寄越した。

場所はハワイ。

ハワイの緯度経度を記したピンがホノルルにあった。

ただ詳細等は教えなかった。

 

「クルミがいるからあとは任せた。楠木には適当にゴマすっておく。」

 

と言って一方的に切ったのだ。

 

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そして、ホノルルに戻る。

現地時間1900時、日本時間にして0000時。

5日滞在しても見つからずに居た。

明日の昼までには日本に帰国するため、ダニエル・K・イノウエ国際空港に向かう必要がある。

2人はもう逢えないと思っていたが、クルミが千束とたきなの元に駆け寄った。

”彼”を見つけた。

それは目と鼻の先に隠れ家があったのだ。

しかも、特殊な暗号化を施されていて、クルミは日本の出国から先ほどまで四六時中唸っていた。

この暗号はリーが施したものではなく、”彼”自身が施したものであった。

 

「今すぐに行くしかない。取り返しのつかなくなる前に!」

 

クルミは、千束のスマートフォンにデータを送りつつ焦っていた。

千束が聞くと、

 

「かつての非正規部隊と組んで、明日にはブラジルでの絶対王政革命に参加するんだ!早く行って来い。ミカたちには言っておくから!」

 

と、ミカを探し始めて去っていく。

千束とたきなの2人は顔合わせて頷き、クルミから貰ったデータに基づき”彼”の隠れ家に向かう。

歩いて僅か3分。

本当に目と鼻の先に”彼”の隠れ家と思わしき場所を見つけた。

無骨な鉄の扉にはドアノブが無く、内側からしか入れない仕組みになっている。

あるのはー

ドアチャイムの代わりに合金で作られたドアノッカーしかない。

千束はドアノッカーを2回叩く。

が、反応しない。

千束が首をかしげると、今度はたきながドアノッカーを3回叩く。

すると、無骨の扉の向こうから男の声が聞こえる。

 

「このシマを”トイレ”呼ばわりとは気に食わない。まぁいい。ガキ共、何の用だ?」

 

悪意のある声でどこからか2人を観察している。

千束が扉に向かって言う。

 

「フレディさんは居ますか?」

「・・・」

 

男は反応しない。

それでも千束は続ける。

 

「居るんですよね?お願い致します。フレディさんとー」

「合言葉は?」

 

悪意のある男の声の代わりに聞き覚えのある声が聞こえる。

2人にとっては聞き覚えがある人物だ。

 

「フレディさん!千束でー」

「合言葉を言え。さもなければ帰れ。」

 

扉の向こう側に居る男は、千束の答えに反応しない。

むしろ、合言葉を言わないと帰れと申したのだ。

そんなのは千束は知らない。

 

「合言葉なんて・・・知らない・・・ここまで来てー」

「用はないな。帰れ。貴様らとは会うべき時間でもない。」

「そう言うこった。ガキどもは大人しくファミリーとおねんねしな。」

 

扉の向こうでは笑い声が聞こえる。

まるで千束を嘲笑うように。

ケタケタと笑っていた。

千束は泣きそうになるが、たきなは諦めずにとある”合言葉”を言った。

 

「『Dim the Lights for Birds at Night.』」

 

たきなの声に響いたのか、笑い声がピタッと止まる。

するとヒソヒソ話が出てくる。

 

「おい、どうする?」

「敵だったらやべぇだろ!始末しよう!」

「・・・そうだなー」

「黙れ。」

 

男の声にヒソヒソ話は止まる。

 

「もう一度・・・次は”日本語”で合言葉を復唱せよ。」

「『渡り鳥のために夜は消灯しましょう』。」

 

無骨な扉は重厚な金属音を立てつつ開く。

中は暗闇だ。

その暗闇から、”煙”が吹き出して2人はその煙を吸って倒れる。

そして2人は暗闇に引きずり込まれていく。

重厚な扉は閉まる。

2人が居た痕跡も何もなく、あたりは靄がかかり始めていた。

 

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「あぁ、そうだ。そっちの首尾はどうだ”ハンス”?ー」

 

聞き覚えのある声がたきなの耳に入る。

ゆっくりと起き上がると、隣には千束が猫のように丸まって眠っている。

どうやら気を失っていたようだが、服装は破られておらず、所持品もベッドテーブルに山積みに置いてある。

そしてたきなの目の前には、数ヶ月前に生死不明になっていたフレディの姿だ。

ただ、前に会った服装ではなく、黒い外套を羽織り機械も黒く装飾していた。

たきなの視線に気づいたのか、フレディは通話を速めた。

 

「ん、あぁ・・・可愛らしい来客だ。兎にも角にもハンスも正規軍や国連に気を付けろよ。ーーーあぁ。分かっている。それは互いに分かってるだろう。気を抜くなよ。じゃあな。」

 

と、長い通話を切った。

1つのため息をつくと、

 

「たきなお嬢・・・なぜ来た?」

 

と睨みつけた。

延空木の時と一緒だ。

あの憎悪と殺意が入り乱れた赤い目でたきなを見ていた。

たきなは恐れることなく言う。

 

「お礼を・・・言いに来ました。」

 

たきなの言葉にフレディは鼻で笑う。

 

「殺人者にお礼参りとはいい度胸してるな。」

 

たきなは疑問に思った。

なぜ自分をそこまでこけ落とすのか?

フレディは2人に向かって、仕込み刃を展開しつつ歩み出した。

たきなは冷や汗が背筋に向かって落ちていく。

まるで”殺人者”と黒い風貌がマッチして、2人に襲い掛かる。

たきなは今度こそ『死』を覚悟した。

だが、刃はー

2人に括り付けていたロープを貫いており、2人には実害を及ぼしていない。

ため息をつくフレディはたきなに言う。

 

「ったく・・・肝っ玉がちゃんと座っているな。たきなお嬢。見直したぜ。」

 

顔上げたフレディは、2人に優しく接するような顔をしていた。

チョコパフェ以来”彼”の笑顔は見なかった、たきなにとって半年ぶりであった。

 

「五重暗号を破るとはな。流石クルミと言ったところか・・・まぁいい。元気だったか?」

「えぇ。私はともかくー」

 

たきなは寝ている千束を見た。

フレディもそれを見て、大きなため息を吐く。

 

「やはり、千束お嬢には辛かっただろう。起きたら謝るとしよう。」

 

たきなは”あの時”のことを聞きたかった。

 

「あの・・・」

「うん?」

「なんで、自分の命を差し出してまで守ろうとしたんですか?」

「ミカの旦那か楠木司令、傭兵連中或いはリーから聞いていないのか?」

 

フレディの問いにたきなは首を振る。

 

「いいえ、特には・・・」

「・・・そうか。リーの阿保野郎が。」

「・・・」

 

彼の愚痴を聞いて、たきなはシュンとした。

フレディは慌てて言い直した。

 

「違うんだお嬢。あの状況下で子供の命が無くなるのが・・・嫌だったんだ。だからー」

「だから・・・?」

「ぅん?」

 

たきなの様子が先ほどまでと違う。

どこか憤りを感じた。

 

「千束がそれで許せると思ったんですか!?」

 

たきなはフレディに向かって吠える。

獣のようにかみつくたきなは、フレディに喝を浴びせた。

 

「千束はずっと貴方たちと一緒に居たかったんです!なのに、貴方は千束の考えを拒み、命を落とそうとした!違いますか?」

「それは、仕方がないんだ。あの手しか考えられなかった。」

「あの手しか?貴方はもっと利巧だと思っていたのに、その程度ってことですよね!?」

「そう・・・だな。たきなお嬢の言う通りだ。」

「何が『殺人者』ですか。結局は、周りを鑑みずに1人で駆け抜けた結果、千束たちをー」

「たきな・・・もうやめて・・・」

 

たきなとフレディは、起き上がる千束を見た。

千束はたきなの服を握ってたきなを抑えようとした。

たきなが口を開こうとした瞬間ー

 

「フレディから離れろ!」

「ガキの癖に生意気な行動を起こすな!」

 

2人の男がたきなを狙っていた。

だが、フレディがたきなを庇う。

 

「ホーンズ!ミハイル!武器を下せ。」

「ネガティブ。そいつらは日本の治安組織から来ているんだろ?」

「DAって奴だな。お前を殺そうとしているに違いない。」

「違う。DAとは戦友だ。」

「今でもか?」

「そうだ、ホーンズ。だから下ろしてくれないか?」

「・・・チッ、ミハイル行くぞ。」

「早くガキを追い払ってくれ。イライラして煙草が美味しくならん。」

「わかったわかった。」

 

2人の男が出ていくと、フレディが千束とたきなに言う。

 

「支度しろ。行きつけのバーに行こう。」

 

------------------------------

 

「ここなら大丈夫だな。」

 

暗闇とまではいかないものの、バーには数人のごろつきがたむろしていた。

だた、そのごろつきがフレディを見るや否や出て行った。

 

「なぁに、鉄拳制裁したぐらいで逃げて行った連中は気にするな。」

「「・・・」」

 

2人は黙ってしまった。

 

「千束お嬢、元気か?」

 

千束は頷く。

 

「なら良い。お前さんが生きていれば大丈夫だろう。たきなお嬢もDAもー」

 

フレディは1本の葉巻を取り出した。

葉巻に巻かれている紙には『Jose L Piedra(ホセ・L・ピエドラ)』と刻まれていた。

キューバ産ブランドの1つで近年では手に入ることはめったにないぐらい高価な葉巻だ。

安くても1500円で手に入るが、安価かつ粗製乱造品の1500円とあるだけであって本物は1本2500円を上回る。

フレディはパイプなんぞ付けず、そのまま火を付けた。

2人はフレディが煙草を吸う姿を見たことがなく、不思議な目で見ていた。

フレディは遠い目で語り出す。

 

「この葉巻はフリッツの忘れ形見さ。親父も葉巻は大好きだった。その最後の1本さ。さて、どこから話すべきか・・・千束お嬢庇った理由からか?それとも心臓から話した方が良いか?」

「両方でお願いします。」

 

たきながそう答えるが、フレディは良しとしなかった。

 

「千束お嬢に聞いているのさ。この葉巻が切れたらタイムアウトだ。いいな?」

「千束・・・」

「分かってる。」

「ならー」

「そう催促するな。たきなお嬢・・・」

 

そう葉巻の匂いを嗅ぎつつ、Le Mat Revolverを懐から出して、『無防備宣言』をしているようだ。

 

「千束お嬢が秘めていただろう心臓から辿るか。人工心臓の件は千束お嬢が襲撃される直前に判明した。とある暗号に吉松シンジという名がヒットした。」

「だれの・・・暗号ですか?」

 

千束の弱弱しい言葉にフレディは言う。

 

「ジョージだ。」

「「えっ!?」」

「驚いただろう?害虫が旧電波塔事件のテロリズムの影役者って聞いたら・・・奴は単独でラジアータの壁を越えて旧電波塔の真島を救い出して、もう1人の子供を上司である吉松シンジに渡るよう仕向けた。わかるな?千束お嬢。ジョージが全ての原因で引き金でもあったんだ。泣けるぜ。」

「そんな・・・っ・・・」

 

千束は俯いて拳を握り締めた。

たきなはそんな千束を見て、千束の頭を撫でた。

 

「無理もない。直後に千束お嬢が襲撃された事によって、(オレ)の運命が決まったようなもんだからな。」

 

フレディの”答え”に千束は肩震わせてポロポロと泣き出した。

泣き出した千束の代わりにたきなが質問する。

 

「質問です。旧電波塔の時、吉松を見逃したのはなぜですか?」

「簡単さ。奴らには直ぐに神の裁きが下されるってね。まさか身内から裏切るとは思っていなかっただろうな。ケッケッケ・・・」

 

不気味な笑いがバー全体に広がる。

流石に質問を変えよう。

あっという間に葉巻が半分を過ぎている。

あんなに早く消えていく葉巻が存在ー

いや、目の前にいる男は機械化された人間だ。

この程度なら容易く出来る。

葉巻がタイムリミットだ。

急いで質問を探す。

が、フレディが口を開く。

 

「最後だ。千束お嬢を庇ったのは至極単純だ。目の前で子供の未来が散った時、どう思う?特に幼馴染の女子(おなご)が散った時・・・それは・・・虚無だ。」

 

そう言ったフレディは葉巻を左手で握りつぶし答えた。

立ち上がっては千束に歩み寄り、千束の頭を撫でた。

 

「助けられなかった弱さと虚無感に襲われたら、再び二度と助けられないと思ってな。だから、覚悟を決めて死に向かった。千束お嬢、一方的な約束だが、”俺”以上に長く生きて欲しい。”俺”以上にたくさんの人を助けてほしい。それだけなんだ。」

 

と言っては、彼の懐から”神の十字架”を2つ取り出した。

彼は2人を置いて出ていこうとした。

出口で立ち止まるフレディは最後に、

 

「もう逢えないかも知れん。でもな、その神の十字架はお嬢ちゃんを最後の最期まで見守っているからな。身に着けていろよ。」

 

と言って出て行った。

もう逢えないと言われて、ありがとうも言えず後悔が募る千束とたきな。

誰もいないバーに2人は頼れる大人が消えてしまった孤独感を感じてしまう。

ついにはたきなも千束同様に泣き出す。

 

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2人が泣き出してからちょっと経過した時にミカとミズキ、クルミが慌てて、バーに入って2人を救出した。

ミカ曰く、

 

「”彼”がSOSのモールス信号でクルミに伝えたんだ。」

 

とー

最後の最後まで、2人は逢えなくなる彼に助けられている。

だが、彼の消息はクルミに追わせたものの、既にハワイを出ていたという。

しかも2人が出会う直後には居らず、ピンはブラジルに刺さっていたというのだ。

幻覚だった?

いや、確かに彼は居た。

が、千束には違和感があった。

頭を撫でられたとき、確かな生身の右手で撫でられたのだが、温かみのある手ではなかった。

謎が謎を呼ぶ。

彼ではない何か?

謎は深まるばかり・・・

タネあかしは日本にいるリーが答えた。

 

<<あぁ・・・奴なら既にブラジルにいる。お嬢たちと逢えると期待したが、逢えない可能性もありえるとして、ホログラムを用いた通信を行った。不自然なことが起きたのであれば、阿片による幻覚だろうな。何かしらの煙を吸ったのだろう。あれが阿片だ。中毒にならなくてよかったな。奴なりの匙加減でー>>

 

と。

結局のところ、実体を持たない彼に騙された。

ただー

あの”神の十字架”は内ポケットに入っていて、これだけは”本物”のようだ。

千束とたきなはお互いに顔を見せあいつつ首を傾げるが、これで良かったかも知れない。

実体じゃないけど、通信で逢えたのが何よりも嬉しかった。

今度は私たち2人で彼を助けよう!

と意気込み、日本に帰国することになった。

ーしかし、”彼”は二度と内地に踏めずに再び消息不明となった。

この情報は彼女2人だけではなく、リーだけが情報を握ったまま、時間が過ぎていく。

 

「これがお前が望む世界なんだな。DAに黙ってほしいのは自分自身を隠すためか。わかったよー」

 

リーはボソッと呟く。

そう、これは”彼”が望んだ世界だ。

その世界は、今も太陽と輝く星々たちに照らされて生きている。

DAや千束とたきな関係なく、万人の上で照らし続けている。

 

~fin~




オマケ:制作秘話

ここまで読んでいただき大変お疲れさまでした。
本作品は、主人公(傭兵集団)は犠牲になっても千束たちを始めとするDAを幸せに導きたい。という意図的な物語に仕上げている。この流れを決めたのは初期案であり、決定案となったのは9話【喫茶リコリコ】である。
如何にリコリスたちを欺けるか?如何に犠牲者を出しつつリコリスたちをHAPPYエンドにするかは、この9話の時点で確立していた。既に犠牲者となる人物は初期案から決まっており、廃案になったのが傭兵集団全滅ルート。だが、七人の侍をベースとしているので、何人かは残さなきゃならん。というのを残しつつ完成へ導いた。

途中で、他のハーメルン作家さんの影響を受けて翻訳を変えたものの、原文の味が無く結局、原文ベースで最後まで描いた。まぁ、原文は英文+α用いて、1話に1.25万文字を描いていたが、日本語に翻訳すると約5000文字前後に留めるという無駄な時間を割いた。もうこんな非効率な作業は出来ないねぇ。まぁリコリス・リコイルが好きだからこんな非効率な作業になっても、別に後悔していない。寧ろ勉強になった。

兎にも角にも、最後まで読んでいただいて誠にありがとうございます。
私用でpixivに展開中の小説も止めざる負えない状況だが、私用を優先として動くことになった。まぁ私用なんてそんなもんよ。手に負えない事ばかりだからな。
それではごきげんよう。

2023/11/09 08:30
執筆終了
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