皆様、いつも誤字報告と感想、誠にありがとうございます
『………!………!!………!!』
今の私にとっては睡眠からの起床に値する再起動直後、デラシオンとの対合の内容が蘇り私は思わず衝動のままベッドに寝転がりながら頭を抱えて右に左へと左右に転がる。もし生身の肉体のままであったらさぞかし汚い低音の声が口から流れでていたのは確実であった為、私は僅かに残った冷静さで転生してから何回目かも分からぬがこの機械の身体に改めて深く感謝した
「(あぁっ! 私はどうしてこんな二度とは無いような機会であんな失態をしたのですか………!!)」
自分の行いを振り返るだけで今にも強烈な自己嫌悪に陥いり益々、身悶えしたくなったが、これ以上激しく行えば間違いなくベッドから落ちてしまう。そうなれば間違いなくこの私の機械の身体は床に落ちると共に激しく打ち付けられ音を立てるだろう
そうすなれば折角、修理して貰ったばかりの身体が実に下らない理由で損傷してしまいかねない。それだけでも悪いのだが、私が出会った光の国の人達と言うのはウルトラ兄弟達は当然として名も知らないような所謂モブトラマンと言うような人達全員が私が良く知る地球の人々とくらべて圧倒的に優しく、事情を知ってたとしても申し訳なさを感じるくらいに私を気遣って暖かい言葉をかけてくれている
「(だから、こんな下らない事で負傷するなんて絶対ありえません……落ち着くんだ私………)」
この身体では、やっても意味も無いしそもそも出来ないので、せめてものと心の中で精一杯深呼吸を繰り返しながらベッドの上で背中を丸め、精神を落ち着かせる。そんな事を数分程繰り返しているとどうにか盛大に乱れていた精神はゆっくりと落ち着きを取り戻し、やがて問題なくベッドから降りる事が出来るようになった
「(今の私が出来る事はただ一つ、間もなく入隊する宇宙警備隊に備えて決して奢らず日々の鍛錬を欠かさない事です……!)」
そうして私はベッドから慎重に降り、別に悪い事をした訳でもないが自分への戒めとしてそそくさと訓練室と向かっていった
◇
と、言うような決意をしてからはや一ヶ月。その間に聞かされていた通りゾフィー隊長による宇宙語等を始めたとした学習プログラムと授業が始まった
とは言えゾフィー隊長はその役職に故、私に付ききっちりになる訳には行かず、都合の悪い時は他の兄弟達が代わる代わる私の勉学に付き合ってくれた。それ自体は大変光栄すぎると言うか、萎縮してしまう気持ちを興奮で誤魔化してどうにか授業を受けていたのだが、これがまた信じがたい程に難易度が高い
私の学力が高ければその限りでは無かったのかもしれないが、生前の私の学力は上の中の上とか言う他人が見れば誤植としか思えない中途半端な物でしか無いため、全く触れた事もない言語やら地球の遥か先を行っている宇宙学を相手に必死に頭を動かし、過去自分が大学受験等でどうやって学習していたかの記憶を呼び覚まし、どうにか指1本、それも僅かでも油断すれば剥がれそうなレベル………と、言った具合であり余裕など毛程も無かった
そんなギリギリの生活を繰り返し続け、本当にギリギリの所でゾフィー隊長からお墨付きを貰い、晴れて本日、私は話の通り宇宙警備隊に入隊する事になった
当然と言うべきか事前に予想していた通りに私は同級となる訓練生達、特にエースに憧れていたり、地球に特段に興味があると言う生徒達から注目と質問を浴びせられる事になり初日から緊張の連続だった。そもそも我が事ながら改めて考えて見てもウルトラマンエースと同じ姿をし、それでいて中身は地球人の魂が入っている私は情報の塊でしかない。寧ろこの程度で済んでいるのは光の国の人々が私の知る一般的な地球人より精神的に発達していると考えてもいいだろう
………さて、先程から一人語りを続ける事で若干の現実逃避をしつつ、その隙に冷静さを取り戻そうとしていたがそれも限界が近い。記憶が今に追い付いた辺りで、いい加減に現実を直視しよう
現在、私がいるのは宇宙警備隊の訓練生用に作られたトレーニングルーム。現在は戦闘トレーニングの授業の時間、授業内容が教官監督の下、訓練生同士での光線技禁止の模擬戦だった。故に当然、私の前にも対戦相手となる一人の若きウルトラ戦士がいた
「あれが噂の……」
「ヒッポリト星人を倒したと聞いたけど本当だろうか………?」
当然と言うべきか注目される事になっている私の訓練試合は見物する生徒が多く、通りすがりの生徒や早く決着が付いた生徒、果ては教師らしい人物までもが観戦に来ていた。これだけでも既に緊張していたが私に取って目下最大の問題は目の前の生徒
「胸を借りるつもりで挑ませて貰います!」
外見から見ればシルバー族を思わせる銀と赤の肌色とそこに混じる金色、胸に輝くのは菱形のカラータイマー。尖った耳部分と教えを受けた教官に似た構え
私の目の前で対峙しているのはウルトラマンメビウスだった
当然ながらその腕に後に地球に向かう事が決まった際にウルトラの父から授けられるメビウスブレスは無い。つまり必然的にブレスを発動させて放つメビュームシュートやメビュームブレード。ライトニングカウンターはこの場では使用出来ないという事になる。が
「(だからと言ってメビウス相手に楽に勝てるなんて楽観は出来ません………!)」
そう、そもそもの話。メビウスブレスと言うのはタロウがメビウスの未知数の力を安定させる為の装備としてウルトラの父に頼んだ結果、与えられた装備でありつまりはそれだけメビウスの潜在能力が優れていると言う証明に他ならない。それを頷けるように事実、レオやGUYSのリュウ隊員のヒントがあったとは言えメビウスピンキックと言う非常に強力な蹴り技を編み出している
そして何より最大の成果があのエンペラ星人を撃破したと言う事実だ
一方の私はどうだろう。エースロボットに転生してからまだ半年と過ぎていない稼働時間。戦闘技術はヤプールがメモリーに刻んだエースの戦闘データと生前ついぞ中途半端な実力で終わった格闘技の技術のみ。勝利こそ掴めた物のどれも幸運に助けられた物が多く、到底私自身の実力とは言えない物だ。加えて私は入学初日
つまり同じ訓練性と言ってもメビウスと私の間にある差は大きく隔たりがあるのに間違いないだろう。より分かりやすく言えば勝てる見込みは殆ど無い
「(でも……だからと言って端から諦めるのは違いますよね………)」
だがしかし、私が生前尊敬と憧れを持ち続けたウルトラ戦士達はそんな事をするだろうか?
実戦では無くとも今の自分では勝てないからと分かったら諦めたり、手を抜いたりするだろうか?
そんな訳は無い
実際、目の前にいるメビウスもまた光の国の帰還命令に背いてまでインペライザーと死力を尽くして戦い『手も足も出ない』と評される程に敗北したものの彼は変身が解けてしまうまで諦めずに戦おうとしたのだ。ならば私が選ぶべき道は一つ
「(ウルトラマンに憧れたなら、その高潔な精神性に指一本でも私は近付きたい! だからどうなろうとも全力で行きます!!)」
そう考えた私は教官の開始の合図と共に真っ直ぐにメビウスに向かって走り出して行った