今まで、ありがとうございました。
そんな訳で初投稿です。
その姿はどれだけ時間が経とうと色褪せる事はなかった。
病に伏せた時も、彼の姿に希望を見た。
症状が悪化し呼吸困難な時があっても、彼等の勇姿を忘れる事はなかった。
一度は死に、新たに生まれ変わっても、彼等から貰った元気と勇気、そして熱さを忘れる事はなかった。
原点。後藤甚田が最初に目にした
そんな彼が、記憶と一切の齟齬なく其処にいた。
「───嘘だ」
思わず、そんな言葉が出てきてしまう程には衝撃的な光景。
「ん? 嘘って……オラ別に嘘なんかついてねぇぞ?」
「おいカカロット、本当にこんな奴が俺達よりも強い奴なのか?」
「⬛⬛⬛様が言うにはそうらしいぜ? でも、確かになんかボケーっとしてんな? なぁ、お
名前を聞かれ、我に返った甚田は反射的に応えた。
「………甚田、後藤甚田だ。あんた達はその、本当に悟空とベジータ、なのか」
「おう。て言うか、本当にオラ達の事も知ってるんだな」
「フンッ、気味が悪いぜ。一方的に知られているってのは────なっ!」
「ッ!」
瞬間、目の前に拳が飛んできた。咄嗟に掌で受け止めれば、これ迄
「ほう? 今の不意打ちを防ぐか。どうやら少しはやるようだ」
「おいベジータ! お手付きは駄目だって言われてるだろ! コイツとの戦う条件、忘れたんか!」
背筋が凍る程の敵意を向けられ、意識が否応なしに戦闘のソレに切り替わる。そんな甚田を見て、ベジータはより凶悪さを増した笑みを浮かべるが、悟空からの待ったに舌打ちを打つ。
「………チッ、本当にやらなきゃならんのか」
「仕方ねぇだろ。⬛⬛⬛様からキツく言われてるんだ。約束破ったら破壊されちまうぞ」
物凄く不服そうな顔をして、ベジータは引き下がる。言葉の節々に何者かの意図が含まれている様だが、甚田にそこまで追及出来る余裕はなかった。
「一体、あんた達は………」
何故、自分はここにいるのか。どうして、彼等が目の前にいるのか。困惑や戸惑いはしているものの、既に甚田の中に目の前の彼等が嘘や偽物という疑問は無かった。
「あー、詳しい事を教えてやりたいのは山々なんだけんどもよ。オラ達がここにいられるのも、お前をここに留まらせておくのも時間が無いんだ」
ただ……。そう続ける孫悟空はその顔に挑戦的な笑みを浮かべて。
「オラ達は、本気のお前と戦いてぇんだ」
「─────」
その顔で、そう告げてくる彼に、後藤甚田は息を呑んだ。
「何も不思議な事じゃない。俺達は戦闘民族サイヤ人だ。相手が誰で、何処にいようと、戦いの衝動からは逃れられん!」
貴様もそうだろ? と、それ以上は語る事なく目で訴えてくるベジータに、甚田は無意識に口角が吊り上げる。
「おし、じゃあ始めんぞベジータ」
「………クソッタレ、このポーズだけは何とかならんのか」
「文句は⬛⬛⬛様に言ってくれ」
何かを始めるつもりなのか、互いに距離を取って両腕を伸ばす。左右対称に、まるで鏡写しの様に振る舞う彼等に甚田は嘗ての記憶が想起する。
光が、渦を描く。
あの頃見た時と何も変わらない構図で。
あの時と目にしたモノと何一つ変わらない動きで。
心と体、魂すらも重ね合わせて融合する二人の戦士。
目映いほどに輝く光の中から現れるのは、金髪碧眼の合体戦士。
【
「────ゴジータ」
思わず、口に出してしまう。
「「さて、早速だが始めるとするか────行くぜ!!」」
「ッ!?」
瞬間、衝撃と鋭い痛みが甚田を襲う。これ迄味わってきた事の無い痛み、防御できたのは唯の偶然だった。
両腕が吹き飛ぶと錯覚する程の衝撃。吹き飛び、視界で火花が散る。
そんな甚田を追撃せんと、かの合体戦士が迫る。
「「そらそらどうした! ドンドン行くぞォッ!」」
打たれる。拳で、蹴りで、嵐のごとくの勢いで振り掛ける打撃の数々。
「グッ、このォッ!!」
一方的に打たれ続ける状況、それでもと甚田は僅かに見えた大振りの一撃を腕を振って弾き、お返しとばかりにがら空きの脇腹に蹴りを打ち込もうとするが……。
「「残念、見え見えだ」」
「ッ!?」
受け流される。タイミングは完璧に合っていた筈の甚田のカウンター、しかしそれすら読んでいたゴジータは待っていたと言わんばかりに甚田の蹴りを受け流し。
「「カウンターってのは、こうやるんだよ!」」
見本を見せてやる。そう豪語するゴジータの回し蹴りを直に受けて、ゴジータは遥か彼方へと吹き飛んでいく。
いつのまにか、真っ白だった世界は何処かの荒野へと変わっていた。幾つもの岩石を砕き、一際大きな岩盤に叩き付けられた甚田。痛みと衝撃で断絶になる意識が回復するのを待っていると、上からゴジータがゆっくりと現れる。
「「おいおい。⬛⬛⬛様から強いと聞いていたのに、肩透かしも良いところだ。これなら、フュージョンするまでもなかったか?」」
両腕を組み、余裕の笑みを浮かべて煽ってくるゴジータ。
それを見て、甚田はほくそ笑む。
「───あぁ、そうだな」
「「ん?」」
「ここが夢なのか、どうしてアンタがここにいるのか、色々と疑問はあるけど、今はそんな事はどうでも良い」
力を込める。拳を握り締めて、全身に力を巡らせる。
例え、今自分の置かれている状況が誰かの意図で、この戦いが仕組まれたモノだとしても。
「ハァァァァ………ダァァァァッ!!」
負けっぱなしでは、いられない!!
力を解放させ、自らも超サイヤ人へ姿を変える。
ゴジータと同じ姿になる甚田、貼り付けになっていた岩盤は余波で砕け、身に纏う黄金の炎は天を穿つ程に解放させ、次の瞬間には瞬時に自分と同等の気へ抑え込む。その様子とは裏腹にドンドン気を高めていく自分と瓜二つの超戦士に。
「「ハッ、そう来なくちゃな!」」
ゴジータは笑みを浮かべる。
「勝負は、ここからだ!」
目の前の合体戦士に挑む。その意味を今は横に置いて我武者羅に挑んで来る甚田に、ゴジータも組んでいた両腕をほどいて迎え撃つ。
繰り出される拳と拳、ぶつかり合う一撃は周囲を凪払い、衝撃が大空と大地を蹂躙していく。
互いに全力の一撃。しかしそれでもまだまだ余裕のある両者は、これから起こる戦いに互いに胸を高鳴らせる。
「「ゼァッ!」」
仕掛けるのは、やはりゴジータ。打ち合った拳の一撃が互角だと知ると、直ぐに体を回して会心の回し蹴りを放つ。
「「ッ!?」」
突然の動きの良さに、今度はゴジータが目を剥いた。
「そら、お返しだ!」
会心の一撃を受け流しからの
「「グォッ!?」」
(あ、当たった!?)
当てられたゴジータよりも、当てた本人が驚きを露にする。自分が
故に。
「アガッ!?」
当然、呆けていた甚田の隙を見逃す訳がなく、ゴジータの振り抜かれた拳によって、顎が跳ね上がる。
「「ボーッとしてたら、一瞬で終わらせるぞ!」」
ゴジータからの叱責を受け、それもそうだと首を横に振りながら、改めて甚田は身構える。
「まだ、まだぁッ!!」
「「こいッ!!」」
時にはエネルギーの塊を撃ち合い、時にはラッシュを打ち合い、時には絞め技、更には関節技など様々な技を互いに繰り出す。
甚田は
「「やるじゃねぇか。まさか此処まで出来るとはな。流石に予想外だったぜ」」
「………」
既に、甚田の体力は六割近く削られていた。息は荒く、肩で息をしているのに対し、ゴジータの顔にはまだ余裕があった。
戦って分かった。今の甚田とゴジータには其処まで差はない。その意味を深く考えないようにしている一方で、ヒーローとしての………否、戦士としての甚田の直感が目の前のゴジータとの“ある差”を明確に告げている。
それは、経験の差。目の前のゴジータはこれ迄数多くの強敵達と戦ってきた達人の中の達人、あの世とこの世を含めて5本の指に数えられる超人、中でも互いにライバルとして高め合う二人が合体した戦士なのだから、
けれど、同時にゴジータも甚田の異常な成長速度に内心で驚愕していた。初見でこそ遅れを取られる場面はあったが、二度目から此方の技が通じる事は殆どなく、まるで此方の技を吸収していく様に甚田の動きは磨かれ、洗練されていった。
戦闘民族サイヤ人、その戦いの才能は間違いなくこれ迄見てきた中でトップクラス。
甚田の成長性を鑑みれば、もっともっと彼には先があるだろう。
故に。
「「だから───見せてやるぜ。今の俺の本気を」」
「ッ!」
気を高める。今の全力を越えた更なる力を具現化させるために、ゴジータは今の己に出せる最大を解き放つ。
大気が、大地が、空が、世界全体が揺れる力の波動。ビリビリと肌を突き刺す程伝わってくる感覚に、鳥肌が立つ。
そして。
「「ダァァァッ!!」」
力が顕現する。黄金の輝きを放つ髪は蒼く揺らめき、力の象徴である黄金の炎もまた蒼く、荒々しい黄金から神々しさへと切り替わる。
「なん、だ………それ?」
それは甚田の記憶には無い変身だった。どれだけ記憶を遡っても、目の前のゴジータの姿はなかった。蒼く燃える炎を纏う彼の姿、初めて目にする超サイヤ人の変化に、甚田は今までで一番驚愕した。
「「説明するのに時間が掛かるからな。簡単に言えばこの姿は【超サイヤ人ブルー】と、俺達はそう呼んでいる」」
「超サイヤ人、ブルー……」
不敵な笑みを浮かべるゴジータに対し、甚田はただその名を反芻させる。初めて目にした新たなゴジータの姿。圧倒的だった力が更に膨れ上がり、最早予測不可能な領域まで達したゴジータに甚田はただ戦慄していた。
そして、同時に思い知る。今のままの自分ではどうあっても目の前のゴジータには敵わないと。
自分との戦いで、遂に本気を出したゴジータ。その力は圧倒的で、いっそ清々しい。このまま戦えばきっと自分はボロカスに負けるだろう。
「へ、へへへ………」
「「ん? どうした? 何か面白い事でもあったか?」」
「いや、嬉しいんだ。俺の憧れたアンタは、俺なんかよりずっとずっと強くなっていた。俺の妄想なんか飛び出して、ずっとずっと遥か遠くに飛び出してしまっている。その事実が、この上なく嬉しいんだ」
ゴジータは、自分の知る最強合体戦士は、自分の予想や想像など簡単に超えてしまう。それが、堪らなく嬉しくて………。
だから。
「俺も、出すよ。今の自分に出来る精一杯の全力を!!」
「「なに?」」
自分も、もうなりふり構わない。目の前の
「ハァァァァァッ!!」
高めるのは野生の力、それは神の気を修め、窮めたブルーとは対極に位置する“サイヤ人の力”。
即ち。
「───これが、今の俺の全力だ」
超サイヤ人4。サイヤ人の特性を窮めた後藤甚田の成れる最強の戦士。
その姿に、ゴジータの目が丸くなる。自分とは異なる限界を超えた姿。ここに来てゴジータの裡にいる悟空とベジータは自分より強い存在の意味を知った。
「「───ハハハ。まさか、これ程とはな」」
憧れからの手放しの称賛。けれど、今の甚田にはそれに応える余裕はなく。
「だが、生憎この姿でいられるのにまだ慣れていなくてな。………時間がない」
「「そうだな。ここから先は無駄口は無しだ。決戦も決戦、超最終決戦と行こうぜ」」
瞬間、ゴジータは蒼炎の闘気を。甚田は、黄金の嵐を身に纏い。
「「行くぞッ!」」
「オォッ!!」
互いに同時に飛翔し、その拳に力を込めて。
打ち放たれたエネルギーは行き場を失い。世界の境界を、
◇
「────あれ? 何だろう、あの空」
「て言うか、なんか割れてね?」
「………なんか、光ってる?」
空に映し出される異様な光景、硝子の様に砕かれた空間が突如として
激突する蒼と赫、ぶつかり合う度に亀裂は広がり、それぞれが放つ光が衝突する度に世界を越えて振動が伝わってくる。
軽く天変地異を思わせる光景に世界は慌てふためくが、一部の者達の様子は違った。
「ハハハ! 見なよサー! 久々のガチ本気のゴジータだ!」
「あの馬鹿者め、そういう事は事前に伝えろとアレほど……」
喜ぶ者、呆れる者。
「アハハ、どうしよ。また引いちゃった」
『坊主! それどころじゃないから! アレ! アレェッ!!』
『ワァー、No.1は凄いや』
『相変わらず呑気だな
ある者は驚き、ある者は見守り。
「っしゃあー! やっちまえゴジータ!」
「……なぁ委員長、なんかゴジータが二人見えるような気がするんやけど」
「奇遇だな、俺にもそう見える」
ただ戦いを見守る者がいる傍らで。
「頑張れ、ゴジータ」
「負けるな、ゴジータ」
「勝ちやがれ、ゴジータ!!」
戦いの行く末を見守り、思い、焚き付けられた者も等しく空を見上げ続けた。
「────HAHAHA! つくづく君は驚かせてくれるな!」
そんな中、今日も
「───頑張れ
◇
「───成る程、ビルス様はこれが見たかったのですね」
「まぁね。正直、此処までとは思わなかったけど」
異なる世界でありながら、同じ光景を目にする破壊の神は、手元にあるジュースを啜りながら従者に返事を溢す。
下を見ればナメック星人が笑みを浮かべて戦いを見守り、小さな二人の少年は大はしゃぎをして、各々の母親に叱られている。
相変わらず騒がしい奴等だと思いながら、その神は上機嫌だった。
「しかし、驚きましたよ。まさか高次元の魂を勝手に余所の世界へ転生させるなんて」
「大神官様には、くれぐれも内密に頼むぞ」
「では、どうして彼処まで彼の事を? 何かビルス様の琴線に触れましたので?」
「……………」
思い返すのは何年か昔、ふとした拍子で次元の壁を破壊してしまった時の事だ。
その時、吹けば飛ぶような弱々しい魂が目に入ってきた。珍しい、そう思いながら好奇心でその魂に触れた時だ。
その魂の憧憬。淡く、脆く、それでいて輝いている宝石のような魂に、破壊神は一瞬目が眩んだ。
何処までも純粋な想い。純粋過ぎるが故に歪んで消えてしまいそうなその魂に触れてしまった破壊神は、とある星よりも大きな願いの玉を使い、魂に一つの願いを叶えさせた。
しかし、弱々しい魂であるが故に願いは半端な形で叶えられ、その魂は此処とは違う別の世界へ落ちていった。
即ち、子供からのやり直し。そこからどうやって憧れへと近付けるかは、あの魂次第だった。
「フンッ、ただの気紛れさ」
「その割りには全王様のお相手、随分真剣になさっていましたよね?」
「煩いぞウイス」
ギロリと従者を睨むと、嘗ての師はオホホと笑いながら離れていく。ようやく静かになったと、破壊神は今一度割れた空を見上げた。
激突する二人の超戦士、互いにボロボロになりながらそれでも楽しそうに戦う彼等に破壊神の口角も自然と吊り上げる。
「全く、本当に逞しく育ったじゃないか」
あの日、何も無い虚無で消える筈だった魂。“憧れ”だけで世界を超えた弱々しくも強い魂が、今、その憧れそのものと互角に渡り合っている。
その事実が、どうにも嬉しくて。
「フッ、もし此方に来たら本気で相手してやろうかな」
きっと、自分の事など覚えてないだろう。
それでも、破壊神が彼を見つめる眼は、らしくない程に慈愛に満ちていた。
◇
───一体、どれ程戦っていただろう?
一時間? 二時間? それとも、一秒にも満たない刹那の合間か。
ぶつかり合う力と力は際限なく高まっていく。
殴り殴られ、蹴り蹴られ。
互いに渾身の力を放ち、防ぎ、流し、時には直撃する。
痛覚など
なのに。
「ハァッ!!」
「「だりゃあッ!」」
楽しい。
この時間が、この刹那が、目の前の
打たれているのに笑っている自分、蹴られているのに笑っている相手。
この日、この時、この瞬間、自分達は確かに楽しんでいた。
知らなかった。全力を出せる相手がいることがこんなにも嬉しい事だったなんて。
知らなかった。全力を出しても倒せない相手がいることがこんなにもワクワクする事だったなんて。
力をぶつけ合う度に全身が震える。心が、魂すらも砕けてしまいそうな衝撃だと言うのに、楽しくて仕方がなかった。
もし、もし叶うのならこの時間が永遠に続いて欲しい。そう思える程に、後藤甚田はこの戦いを楽しんでいた。
けれど。
「「オグゥッ!?」」
「アガァッ!?」
もう、終わりの時は其処まで来ていた。
互いに体はボロボロ。弾かれる二人、既に満身創痍な筈なのに………その顔には、共に笑みが浮かんでいた。
「「───どうやら、此処までみたいだな」」
「──あぁ、そうだな」
唐突に始まった戦いは、唐突に終わろうとしている。根拠はない。ただ、確信的な直感があった。
この奇跡の様な出会いの時間は間もなく終わる。理屈ではなく、心で理解した二人は、互いにある構えを見せる。
それは、まさに鏡写しで。
「「楽しかったぜ。あぁ、俺と此処までやれたお前はもう誰がなんと言おうと本物のゴジータだ」」
「アンタも、俺が想像───いや、それ以上だったよ。だから、もう本物も偽者も関係ない」
「「だが」」
「勝つのは」
「「「オレだ!!」」」
纏い高める蒼い炎と光の嵐。まさか、二人の戦いを見守っていた世界の人々は身構える。
「「かぁー……」」
「めぇー……」
「「はぁー……」」
「めぇー……」
高まり合うのは光の奔流、其処に全身全霊を超えた超限界突破、欠片も残さずに己の全てを込めて。
「「「波ァァァァァッ!!」」」
放たれるのは極光と極光、激突する光は宇宙を白に染め上げ。
そして──。
◇
「いやぁ~! スンゲェ強かったなアイツ! オラ久し振りに滅茶苦茶ワクワクしたぞ!」
「フンッ、次は俺一人でやってやる。カカロット、手を出すなよ」
「ちょ、そりゃないぜベジータ! 次があるならオラが先だ!」
「良いだろう。ならば順番は勝った方が先だ!」
「ちょっとベジータ! 戦いたいなら余所でやってよ! 家が壊れるじゃない! 孫くんもよ!」
女房に窘められ、舌打ちしながら言われた通りに場所を移すライバル。負けられないなと、悟空も後を追おうとするが、一瞬だけ立ち止まって振り返る。
其処に彼の姿はなかった。見上げた空は何時も通りの青空で、だけど、あの空の先で
「───またな!」
それだけを言い残し、孫悟空もまた遥か空の彼方へ飛び立っていった。
◇
「──────ん?」
気づけば、ゴジータは見知らぬ場所で寝転んでいた。
今までのは夢? 確かめるよりも先に、遠くから助けを求める声が聞こえてきた。
同時に感じる禍々しい気、これは急いで助けないと、一歩踏み出すゴジータだが。
「──────」
ふと、聞こえてきた声に足が止まる。振り返ってもあるのは草原と青空が広がっているだけで誰もいない。
けれど、あの時聞こえてきた声は決して聞き間違えではなかった。
「あぁ、またな!」
世界を越えて聞こえてきた激励。再会を誓う言葉を胸に、
終わり
今まで拙い自分の作品にお付き合い下さり、ありがとうございました。
また、何処かで会いましょう。
それでは。
燃えていく。何もかもが燃えていく光景に、彼女は何も出来なかった。
どれだけ走ってもその手は届かず、焔の悪魔はただ此方を嗤うだけ。
「逃げて、逃げて下さい!!」
吠えても、叫んでも、その結末は変わらない。若くして騎士団長にまで上り詰めた女騎士は、敬愛している王女を救うべく、必死に走る。
そんな女騎士を、焔の悪魔は嘲笑って聖王女に手を伸ばす。
「あ、アァァッ!」
熱い。皮膚と骨が鎧ごと溶かされそうな痛みに、麗しの王女は苦悶に喘ぐ。そんな王女の悲鳴すら、悪魔にとっては贄でしかなく、嗤い、喜悦に震えるだけ。
軈て振り上げられる腕、悪魔のしようとしていることを悟った女騎士は最悪の未来を予見する。
「止めろ、やめろぉぉぉぉッ!!」
断末魔にも似た女騎士の雄叫び、それすら悪魔は己の愉悦を満たすスパイスとして堪能するだけに終わり……。
斯くして、聖王女には悪魔の棍棒として降りおろされ───。
「──────は?」
そんな間の抜けた声を溢したのは、先程まで喜悦に浸っていた焔の悪魔。
今まで握り締めていた聖王女の姿はなく、何なら自分の手すら無い。伝わってくる痛みに顔を歪め、ボタボタと溢れる血を抑えながら、理解できない現象に困惑し、辺りを見渡す。
何が起きたのか、未だ混乱する思考で周囲を見渡していると………いた。
先程まで自分の手にあった聖王女が、見知らぬ男の腕に抱えられていた。
「悪い。遅くなったな」
「あ、あなたは………」
「なに、ただの通りすがりさ」
何が起きたのか、それは悪魔だけでなく聖王女も同様のようで、その男を見上げている。
優しく、女騎士に王女を手渡した男は、自然と道を開ける騎士団の前を通り、焔の悪魔へと相対する。
「貴様、一体何者だ!?」
至高の御方の意向によって生み出され、超常の化身である悪魔が狼狽えながら訊ねる。
怒りと憎しみの業火を燃やし、恐怖と絶望を撒き散らす悪魔に対し、男はただ不敵に笑った。
「俺か? 俺は───」
何処に行っても、誰と何度も戦おうと、彼の言葉は変わらない。
何故なら。
「俺は、貴様を倒すものだ!!」
彼は、ゴジータなのだから。