クサヴァーさんはメインヒロイン、それに合わせた話。

 トム・クサヴァーは無個性だった。ただそれだけだ。

 単なるそれだけで不幸はやってくるのかもしれない。

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僕のヒロインクサヴァーさん

 

 トム・クサヴァーとして、生きてきてこれほど悩んだことはない。無個性人間として、生きてきた。しかし、世の中は無個性には厳しく、個性研究所に就職はできたものの無個性とわかって解雇され、妻と息子に愛想を尽かされ出ていかれて、更に妻たちが乗った車は個性社会反対派の過激派に爆破された。そして、酒に逃げて、研究を個人的に続けるざ路頭に迷いかけたときにAFOに拾われて個性研究員として、ある個性を手に入れた。

 

 巨人の個性だ。これだけなら単なるものだが私は個性を考えて、投げるという行為をした。息子とやりたかったキャッチボールだ。研究者として学者としては嫌だったがAFOに言われたとおりに、妻たちの仇である個性社会反対過激派に瓦礫による散弾でパーフェクトピッチングを完了させた。

 

 しかし、彼らの中には子供などもいて私は悩んでいた。本当は無個性も個性も生まれてこなかったほうが良かったんじゃないのだろうか?私が生まれなければ妻や息子は死ななかった。生まれなければ苦しまなかった。

 

 個性と無個性を分けているのは微々たるものでしか無いはずなのにみんなそれを重視する。おかしい。多様性や尊重などを訴えながら無個性も個性も互いに壁を作りおかしくなる。

 

 それがこの世界の真実だ。ただ、私はあの子とキャッチボールをしたかっただけだ。そんなときだ。

 

 「クサヴァーくん。君の出番だ。」

 そうAFOから言われて、私は歩き出した。生まれてこなければよかったのなら、こんな思いをするのなら、みんないなくなった方がいいに違いない。

 

 「はい。」

 私は手に持った資料で向かうのは反逆者を探すこと。AFOはある程度わかるようだが、それでも無駄に能力を使うより、部下を使うのを好む。

 

 AFOの支配地の近くを通ると私の息子くらいの年頃の少年がいた。

 

 「どうしたんだそんなところで?」

 思わず、ポケットに入れていたお菓子を渡して息子がいたときを懐かしんだ。

 

 「おじさんは悪い人?」

 間違いなく、私は悪い人間だ私の身勝手や無個性を隠したばかりに家族が死んだ。そして、AFOに仕えている。

 

 「そうだな。悪い人だ。」

 絞り出すようにそう言うと少年はこちらを凝視した。

 

 「そうなんだ。もうすぐ、僕らは死んでしまうんだ。」

 穏やかじゃない。病気なんだろうか?

 

 「僕の両親は密かにオールマイトたちにAFOの居場所を送って助けてくださいと言ってしまったんだって、だから、もうすぐ僕たちは死ぬ。」 

 なんてことだ。私はこんな子供を処分しろと言われていたのか!?私にはできない。私にはできないよ。私の手は血に濡れているかもしれないが、息子ほどの子供を救うために私 邁進してきた。

 

 「そうなのか‥‥いや‥‥。」

 彼だけでも助けてあげたかった。子供には罪がない。大人同士の意地に子供は巻き込まれる必要はない。

 

 「こ‥‥告発なさい。」

 考えるより先に私の口から出ていた。

 

 「両親は救えなくても君はその忠誠心から助かるはずだ。告発なさい。君は悪くない。こんな環境で子供を作り、君の親は君を考えずに正義や何やとAFOを裏切る。さらに言えばオールマイトは我々全員を助けてくれないだろう。ならば、君は君が助かる道を選びなさい。まだ終わりじゃない。ま、まだ間に合うはずだ。告発なさい。」

 少年の手を引っ張るとその手は私の見立て通り、硬く厚かった。

 

 「君がなぜこんな手が固くなってるんだ?やはり、親のかわりに働いてるんだろう?親はヒーローが助けてくれたら生活が良くなるとか、AFOを通報すれば指名手配金が手に入るとかそんな理由でやったんだろ?君は悪くない。悪くないんだ。」

 彼と私は分かれてまた、うずくまる少年を見つけたボロボロの服、アトピーのような肌。そして、目がどす黒かった。

 

 その瞬間、瞬時に理解した。彼にはなにもないんだろうと。行き交う人はヒーローや心優しい人が彼を保護してくれると見過して来たのだろうと。この世界は個性とヒーローをつければ大半のことは許されると思っている地獄だ。

 

 個性が作り出したヴィランやヒーローの枠組みに人々は納まろうとする。しかし、この力は何ら意味はない。なぜならば力とは力であって、人間ではない。こうやって現に街を歩けば悩む子供たちがいるのに、見つけた人々は誰も彼らを助けようとしない。

 

 おかしいじゃないか。なら、さっきの少年ともども彼を救ってみせると思った。例えば自分が死んだとしても。

 

 「私の名前はトム・クサヴァー。君の名前はなんだい?寒いだろう。」

 そして彼は、答えない虚ろな目をしていた。

 

 「わからないのか。そうだな。君は今日から僕と同じクサヴァーと名乗ればいい。いや、クサヴァーだとこの国らしくないな。今から始めるから君の名前はくさばはじめ。草場創って書くのかなこの国だと。一緒にキャッチボールしてみないかい?」

 そして彼と私の物語を始まった。

 

 たとえ、その終わりがマイナス200点でも彼の個性がAFOが言うように崩壊だとしても、これは私が始めた物語なのだからせめて世界の子どもたちだけは救いたいと願ってしまった。

 

 彼との出会いから十年以上たった日に私は彼らのためにやるべきことをしようと思った。それは私の周りを取り囲む、荼毘などの子どもたち、AFOは私の子供に対する気持ちに気が付いていたのだ。

 

 そして、最後のAFOの命令は監獄島から囚人を脱獄させるために市街地でヒーローたちと一人で戦えということだった。いや、本当は保護した子どもたちと共に囮になるべきと言われた。

 

 だが‥‥私は彼らに何も伝えずに都心部で巨人化した。

 

 「あの火。エンデヴァーか。」

 荼毘とかはちゃんとやれるかな?とかそれだけを思って個性強化薬を身体に打ち込み、これで約束どおりになればいいと思った。社会には虐げられ踏まれても花を咲かせる雑草もある。でも、ヒーローたちなどはそれに気が付かない。彼らはすでに花なのだから。

 

 「みんな、時々思い出してくれよ。見ててくれよAFO様!」

 今日のマウンドは私の涙なのか血なのかとてもよく湿っていた。

 

 パーフェクトピッチングにはこんな湿った土は似合わないはずだ。きっと残された彼らも私が笑顔で‥‥。

 

 そう思うと視界が歪み、残されるだろう彼らに息子を重ねてこんな事をした自分が恥ずかしかった。私は自己満足のために彼らと過ごしたのなら彼らの親と何が変わらない。

 

 私が作り出した地獄なら、私だけが責め苦を受ければいいのに。後悔はあるがそれでも、それでも‥‥彼らと‥‥君たちヒーローという光に当たることだけをして、燈台の足元にいる子供や市民を助けれない、ただの金稼ぎがしたい人々に私は負ける訳にはいかない。

 

 「エンデヴァー、君の息子は生きている。が、君は彼に訓練を強いるだけで、キャッチボールすらしてあげなかった。子供を自分の道具にしようとした。君の野心がたまらなく、私に似て嫌いだ!」

 そして、顔を歪ませるエンデヴァーに私の最高の一球を投げるために荼毘の顔を思い出した。

 

 今こうやって、キャッチボールをみんな、子供とできる世の中が幸せなのだろうとキャッチボールをするための公園や住宅地は破壊されてしまった。私が壊した。だから、誰か私を罰してくれ。これがAFO、貴方より子供たちを取った私の罪なのですか。

 

 視界の端に映る親子連れ、でかい的になり、ヒーローたちが私に群がる。余波で崩れるビルを片手で支え、ヒーローたちに殴り回される。

 

 よかった、これで親がいない子供や子供を失った親が減ったんだなと薄れゆく意識で思いながら、自爆のスイッチを押した。





 なんだろうこれ

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