変身せよ、強き自分へ 臆病者は変われるか? 作:カフェイン中毒
ロストドライバーに強引に叩き込んだジャンプメモリがアクティブに作用して俺の全身を変異させていく。ゼロワンドライバーで変身した時とはまた別の力の沸き上がり方だ。フォースドーパント、乗っ取られたトニーさんの方を見据えて構える。
「トニーさん、貴方を止めます。でも俺だけじゃ足りない、抗ってください!」
ビリ、バリバリと変身が完了したはずなのに俺の全身を蒼いイナズマが駆け巡って黄色の肉体に蒼のラインが迸った。翔太郎さんが口をパクパクとして言葉を発せない様子ではあったが彼は即座に動いてスティーブさんを助け起こす。流石は超人兵士、意識を保っていた様子だ。
キリキリキリ、と踏み出そうと力を込めた足から俺のものじゃない音がする。思わず足元を確認すると俺の右足にジャッキのようなものが装備されているのに気づいた。あー、専用武器的なやつあるんだ、急ごしらえなのに。気をとられた瞬間に紅い閃光が見えた、即座に回避行動!
バゴンッ!とその小ささからは想像できない轟音を立てて稼働した右足のジャッキが想定以上の速度で俺を撃ち出した。こ、これライジングホッパーよりも速度でてないか!?かといって左足で踏み出すと予想以上にパワーが低い!なんてアンバランスな!紅い閃光を避けつつ接近し、拳を繰り出す。
元はアイアンマンスーツだったんだ、ドーパントになってる以上リミッターだのなんだの考えるのは死にに行くようなもの!トニーさんには申し訳ないけど本気で!閃光を放っていた手を握って格闘戦の構えに入ったドーパントではあったが俺の方が一拍早くクロスカウンターのような形で殴り飛ばすことに成功する、が
「そりゃあ、大天才が作った最新スーツだもんねぇ……!」
「ハル!使え!今の僕よりは君の方が相応しい!」
「おい!やらせんのかよ!?状況わかってんのか!?」
「……わかってないのは君の方だ、ショウタロウ。彼は……アベンジャーズなんだぞ」
殴り飛ばしたのに全くの無傷だ、自信なくすよ?後方から投擲された盾がフリスビーのごとく俺の手元に飛んできた。あまりの高温に塗装が剥げてしまっているが形そのものには傷一つないアメリカの魂の象徴。俺はそれを迷うことなくキャッチしギリギリ形を残しているレザーに手を通した。託してもらったんだ、やるしかない。
いつもと違ってゼアのアシストはない、ピンチヒッターのJ.A.R.V.I.S.も沈黙している。初めて使うライダーシステムな上にパワーはかなりピーキーでアンバランス。だから何だ、俺は今アメリカの象徴ともいえる超人兵士に託されたんだぞ。信じてもらったんだぞ、消えそうな勇気を奮い起こせ。恩人を助けるんだ。
ぶっつけ本番アドリブだ。いつものことだろう。そう楽観論を呼びこして今度は両方の手をこちらに向かって向けるドーパントに向き直る。立ち位置を調整して流れ弾が二人に当たらないようにしつつ、もう一度まっすぐ突っ込んだ。
どうやらドーパントは専守防衛、と聞こえはいいが突っ込んでくる奴を優先的に攻撃するような感じらしい。二人に流れ弾が飛ばなくて安心だ。襲ってきたのはミサイル、弾幕のように殺到するそれに対して盾を構えて当たるの上等で突き進む。
案の定ミサイルは俺を直撃するが直撃の瞬間俺は右足のジャッキを稼働させて無理やり前に進む。煙が晴れた先では……奴が手を紅く光らせて完璧に俺に狙いを定めていた。発射される閃光に考えるより先に動いていた。右手の盾を斜めに構えて振り払うように閃光に当てる。受け流すような形になった閃光は斜め上に飛んでどこかへ消えた。一拍のインターバル、すぐさま懐へ飛び込む。
キャプテンアメリカの十八番、盾を使ったコンビネーションパンチ。胼胝殴りにするかの如く拳の弾幕を張り続ける。吹き飛ばさないように立ち位置を入れ替え全方位から拳と盾のラッシュを叩き込み続ける。されるがままのフォースドーパント、行けるじゃないかとそう思った瞬間だった。
「ぐああっ!?げほっ、ぐっ……」
「ハルッ!?」
「無事です!だからこないで!」
何をされたのかは体で理解した。俺の胸ど真ん中を貫いていったのはアークリアクターからのビーム、ユニビームだ。変身していなかったら間違いなくお陀仏だった。気づいて恐怖がこみ上げる。知るかそんなの!
「おいハルトォ!このまま突撃し続けてもジリ貧だ!賭けるしかねえ!メモリブレイクだ!メモリのスロットを差し替えろ!」
「……わかりました!」
翔太郎さんの言う通りこのまま殴り続けてもラチが明かない。強化された仮面ライダーのパワーでもってヴィヴラニウムの盾を叩きつけても応えてないのだ。一か八かのメモリブレイクで事態が打開するのを祈るしかない。
ロストドライバーからジャンプメモリを取り出し、腰のマキシマムスロットへ差し込もうと視線を落とす。そして気付いた、右足のジャッキにもマキシマムスロットがあることを。何かの確信をもって俺はジャンプメモリを手放す。するとメモリはこちらに向かってきた時のように勝手に動いて右足のジャッキのマキシマムスロットに収まった。わかってんじゃん、お前。
「JUMP!マキシマムドライブ!」
「……ライダーインパクト」
無言のドーパント相手にライジングインパクトと仮面ライダージョーカーのライダーキックの名前を借りてぽつりとつぶやく。右足のジャッキが拉げるような勢いで引き絞られていくのを感じながら俺は蒼い稲妻を纏って飛びあがった。撃墜されてもいい、あのビームがぶち当たろうと俺はもう止まらない。トニーさん、貴方を元に戻すまで。
「はああああっ!!!!」
右足を向けて流星のようにドーパントに向かって急降下していく。当然ドーパントは左手をこちらに向けて紅い閃光を発射した。衝撃に備え歯を食いしばろうとするが、閃光は俺の隣をすり抜けてどこかへ飛んで行ってしまう。思わず目を向けるとドーパントが左手を右手で掴んで無理やり狙いを逸らしているのが見えた。
トニーさんが自らの意思をもって抗ったのを見た俺はいつの間にか上がっていた口角を仮面で隠して全霊の一撃を見舞う。右足が接触した瞬間ジャッキが全力で稼働して周囲に衝撃波を放つ勢いでぶち当たる。アークリアクターを粉砕したそれが余波で溶けたアイアンマンスーツを砕き、そうしてガイアメモリが排出される。右手でそれをキャッチして握りつぶすほどに握り締めるがびくともしない、腹立つなこれ。
「げほっ、ごほっ……あー、どうなった?誰もキスしてないよな?」
「キスしたのは俺の足の裏ですよトニーさん」
「……そりゃ結構」
胸部装甲がごっそりと粉砕されたのに中身のトニーさんは打撲で済んでいる、最新版だけあってパーツ自体は分割されても生きている様子だ。マスクが上にせりあがってトニーさんの顔が露出し咳き込みながらいつも通りのジョークを交えて無事を報告してくれる。俺はそれに胸をなでおろしてロストドライバーを腰から外した。
「やあトニー、気分は?」
「この状況見て最高って言えるほど僕はマッドじゃない。迷惑かけた、すまない。それで君がこいつの専門家か?」
「専門家って言えるほどじゃねえが、これ絡みの事件を中心に追ってる。で、あんたの家大丈夫なのか?」
「何度目かはわからないが立て直すからまあ心配するな。ただ、分析できるラボがなくなったのは痛いな。ニューヨークに行くか?」
「……でも、ガイアメモリがばらまかれたのってこの辺りなんですよね?」
俺がこの状態でアメリカの端から端に移動したら他のドーパント出た時にまずいんじゃあ?という話をしたら超人兵士と鉄の男と仮面ライダーは同時に沈黙を返してくる。ただ、スターク邸という拠点が吹き飛んだのは確かにちょっと痛いし、なんだったら翔太郎さんは今ビザどころかパスポートも持ってない状態だ。空港にいったら一発で掴まる。
「僕のスーツも見事にイカれた。自信作だったのに見事にだ。それにスティーブ、君も戦線離脱だろう?その両手、いかに君が超人兵士だろうと戦うのは無理だ」
「そういう時は、二手に分かれるのがいいだろ。しかし、嫌なタイミングで来ちまったのか?勘弁してくれよ」
「クリントさん!?どうしてここに!?」
「みょーなもんが俺に向かって降ってきてな。撃ち落してやったら動かなくなったんだが……こういうのはスタークが詳しいだろ?触らずに持ってきたんだ」
後ろから声をかけられる。この状況ってことは警察か!?と思ったら見知った顔だった。弓を背中に背負ったクリントさん、つまりホークアイ。S.H.I.E.L.D.の後釜的な組織に再就職したみたいなこと聞いたけどこんなところで会うなんて思いもしなかったっていうかそれ!?
「ガイアメモリじゃねえか!?アンタなんともなかったのか!?」
「日本語?あー、ごほん。いや……実は何度か浮かび上がったんだがそのたびに銃で撃ち落したりしたんだよ……おかげでゴム弾とはいえ車内がベコベコだ。なんなんだこれ」
「これからは自動射撃システムをラボに取り入れることにするよ。僕のはFだったが……バートンのは……Hか」
「Horizon……ホライゾンですか。とにかくこれで3つですね」
ホライゾン、和訳すると地平線とか水平線とかそんな意味になるけど広義的には境界とかそういう広いものの境い目の比喩に用いられることもある。おそらく後者的な意味だろうね、ガイアメモリだと。しかし、できるかできないかで言えばできるんだろうけどやってるあたりこの人射撃なら何やらせても百発百中なんじゃないの?
「まーなんだ、道すがら事情は聴くからスタークとロジャース、お前ら病院行け。フューリーの息がかかった治療施設が近くにあるから」
「なんで僕の家の近くにそんなものがあるんだよ」
「お前がパラジウム中毒やってたせいって聞いたぞ」
「あっそ。もう大丈夫だから取り壊してくれてもいいのに」
パラジウム中毒?何のことやらと俺が首をかしげているとトニーさんは居心地悪そうにごっほんとわざとらしい咳ばらいを一つ。ついでにアイアンマンアーマーも地面にバラバラと捨てた。もったいな。
「とりあえずバートンの言う通りにしよう。スティーブ、君は平気かもしれないが僕たちにとってそれは心臓に悪い。原因として付き添うから呑み込んでくれ」
「ああ、わかった。ハルト、盾は君に預ける。持ち手の皮の予備は僕の荷物のサイドポケットに入ってるから交換してくれ。そのベルトはショウタロウに返すんだろう?」
「……お借りします」
「地下まではイカれてはないな。J.A.R.V.I.S.も無事だ。スティーブ、多少凹んでるだろうが文句言うなよ」
「軍じゃ傷がない車を見る方が珍しかったよ。乗れれば文句ないさ」
そう言って二人は仲がいいんだか悪いんだかという言い合いをしながらスターク邸の地下に降りていった。片方は両手がとんでもなく焼け爛れてるのにそれをおくびにも出さずに平気な顔してるんだから怖いもんだよ。で、俺はガサゴソと不時着した車から貴重品とか諸々を救出してスティーブさんに言われたとおりに盾のベルトを交換した。やっぱこの盾は綺麗じゃないないとね。
「……なぁ、この世界じゃこういうの当たり前なのか?順応性高すぎやしないかお前ら?」
「最近座右の銘を更新しましてね。『ありえないことはありえない』んですよ」
「ハル、お前スタークに似てきたぞ。やめてくれよ」
「そりゃあ、サムさんを除いたら一番付き合いが多いですからねえ。ともかくです、宇宙人とドンパチやってアメリカ大統領誘拐事件も巻き込まれたんですから驚きの天井は高くなってるわけなんですよ。別の世界だってほら、ソーさんっていう人がいるらしいじゃないですか。神様」
鉄火場慣れはしてしまってるとは思う。翔太郎さんとは別ベクトルで荒事には巻き込まれてるから。仮面ライダーからそんなこと言われるとは思ってなかったけどね。翔太郎さんに返したドライバーとメモリが3本、事情を話した後暫くクリントさんの車に揺られていると唐突に翔太郎さんが口を開いた。
「なあ、ハルト。お前何もんだ?」
「何もんっていわれても……アベンジャーズ(見習い)ですかね?今のところ」
「そうじゃねえ。お前慣れてるだろ、ライダーシステムによ。初めて使ったにしちゃ戸惑いがなかった。まるで使い方をはじめから知ってるみてえにドライバーを使った。よく考えりゃおかしい」
「おかしくはないぞ、ヒダリ。君がライダーシステムと呼ぶそれ、似たようなものをハルはもってる、それだけのことだ」
「……お前、仮面ライダーだったのか?」
「いや、ちがいますけども」
俺は翔太郎さんの言葉を思いっきり否定した。そりゃそうだ、翔太郎さんの世界じゃ仮面ライダーは町の人が名付けた正義の都市伝説。今の問いはいろんなライダーと交流を経た翔太郎さんのお仲間なのか質問だけど……俺はまだあなた達に並べるほどの心の強さを持ててない、まだ胸を張ってそう言えない。翔太郎さんはちげえのかよ!とガクッとしているがまあ、そういう事にしといてください。
仮面ライダージャンプ ブルーライトニング
ハルトがロストドライバーとT2ジャンプメモリで変身した姿。魂が世界を跳躍してこの世界に産まれたハルトと『跳躍』の記憶を持つジャンプメモリがあまりにも相性よすぎたせいでエターナルと同じ現象が起こった。黄色一色のカラーに蒼い稲妻模様が全身に入っている。専用武器として右足にジャッキ状の武器『ジャンプインパクター』を装備している。パワーバランスが右足に集中しているのでとてもピーキーな仕様。なおこの後出番があるかは不明。