憑依転生ランスロット(偽)   作:影後

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最終決戦

「あーやべ、降ろすってそう言う事か……」

 

「お父さん?」

 

ランスロットの流した言葉に皆が何かと見る。

 

「くっそ……完全に復活してる。

そりゃあそうだよなぁ…英霊の座なんて下級なもの、

我が女神様にかかれば玩具箱に等しい。

お気に入りの玩具を取り出すのも容易い事だ」

 

40代の壮年騎士、この中では見た目は一番年老いているが、

その活力は若々しく藤丸やマシュにも負けていない。

 

「生きてるって最高だ、こうして馬に乗るのも」

 

「は?生きてる?!」

 

「英霊の座から我が女神の方へ行ったからな。

肉体が帰ってきた。今だけだが……」

 

砂漠を進みながら自身の無精髭を軽く撫でる。

そして数多の騎士達の姿を見た。

そして、モードレッドは一息つくと指示を飛ばした。

 

「……リッカを中心に防衛陣を。

私と父上の宝具で道を切り拓く!

宰相、ケイ卿、キリエライト卿は

マスターとキャスターの護衛を!」

 

「行きますよ、モードレッド!」

 

「私に指図するな、騎士王!!」

 

「この灯りは星の希望、地を照らす生命の証。見るがいい!『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』ーーーー!」

 

「我が剣よ、民を守る為に、生き抜くために。

『気高き我が意志の剣(クラレントッッ)!!!!』」

 

金色の光と赤き閃光が数多の騎士達を呑み込み、

砂漠を硝子に変えながら進む。

 

「陛下達に続け!」

 

「最後の戦いだ!命を惜しむなぁ!」

 

「まったく……マスター、キリエライト卿、キャスター。

行きましょう!」

 

ランスロットとケイは馬を一気に走らせる。

ランスロットは何処から取り出したのか、

巨大なメイス〘鬼王の枉駕〙を片手で振るい戦っている。

馬に乗りながら、自分の身の丈程もあるそれを

振るい、数多の騎士達を屠る。

血が返ろうが、ランスロットは高笑いをあげる。

 

「どうした!貴様ら、その程度では

このランスロットの首は取れんぞ!!!」

 

「テメェ、目立ち過ぎだ!!」

 

「懐かしい…懐かしいぞ!

ブリテン時代を思い出すわ!!!

ククッ……クハハハハハハ!!!」

 

「全くだな!!」

 

ランスロットの様に過激ではないが、

それでもケイも騎士剣を振るい数多の騎士達を屠っていく。

前には騎士王と叛逆王、そして仲間がいる。

大軍に対して、少数で戦いをする。

数多の武勲を挙げるというのは、

やはり騎士の、戦士の誉れだ。

 

「ランスロット卿、少しは私達にも」

 

「ベディヴィエール!済まぬな、だが……

アヤツの首、私が貰おうぞ!!」

 

それは太陽の如く輝く騎士。

ランスロットはアロンダイトをその騎士に向けて投げつける。

無論、その騎士は容易く弾く。

だが、それは攻撃のためではない。

馬の上に残像を残し、ランスロットと太陽の騎士は

鍔迫り合う。

 

「卑怯な手ではなく、真正面から………

それほどの気概もあり、騎士道も持ち合わせる貴方が!」

 

「お前達は私を過大評価しすぎているな!

私は理想の騎士等ではない!泥水を啜り、腐った肉を食べ、

卑怯な手を使おうと生にしがみつく凡夫よ!!」

 

太陽の如く輝く騎士。ガラディーンを携え、

ランスロットの獰猛な笑みに対し、怒りを顕にする騎士。

 

「一騎打ち…受けると言うのか!」

 

「凡夫だが、弱者相手へ手加減は知っている。

陛下、お進みください。

この男、彼女の敵で仇でもあります」

 

「自分で殺しておいて抜け抜けと……」

 

皆が去り、ガラディーンを構えるガウェイン。

それに対するのは、アロンダイトを向けるランスロット。

 

「貴方を、かつては尊敬さえしていたのが悔しい。

まさか、召喚されたその日に裏切るとは」

 

「ケイの奴を処刑しようとした時点で獅子王は…

アルトリア・ペンドラゴンではない。

俺の仕える主君ではない」

 

「……貴方は常に言っていたな。

自分は卑怯と罵られようと、忠義を全うすると。

だが、何故あの時殺した!貴方を愛していた騎士を!」

 

「……居ない筈だった。

俺は汚名を受け入れるつもりで、騎士を殺した。

ガレスは居ない筈だった」

 

「黙れ!殺したのは貴様だ!」

 

ガラディーンとアロンダイトが衝撃波を生みながら、

何度も何度もぶつかり合い、砂塵が巻き上がる。

それは二人と外界を別けるが如く壁になる。

 

「獅子王も我らが王だ!貴様は……それを知りながら!」

 

「……知ったさ、ベディヴィエールに話された!

最初の違和感、アレは人形だ!意思などない!

お前達は、民を殺して騎士の誉れを得るのか!」

 

「…それでも!忠義を貫かんよりは良い!!」

 

宝具攻撃なんてない。ランスロットは手加減している。

本当なら簡単に殺せる相手を、ランスロットは身体能力のみで

相手をしている。バフなどない。残虐だが、一種の試合。

それが聖都の正面で行われているものだ。

 

「フンッ!」「がぁ…?!」

 

ランスロットはガラディーンを奪うと、

そのまま顎をアロンダイトの柄で殴り吹き飛ばす。

 

「来い、若造!貴様に最強の壁を見せてやる!!」

 

「武器などなくても!」

 

ランスロットはガラディーンも、アロンダイトも捨てる。

そして、ガウェインの正面にボクサーの様に立つ。

 

「オォォォ!!」

 

「猛るか!若造!」

 

顔面を砕かんとする右ストレートを

ランスロットはいなしながら、

柔道の要領で掴み背負い投げる。

無論、ガウェインの重量だけではなく己の肉体のスナップも

効かせたさらなる一撃。

それで地面に、砂漠に打ち付けられる。

 

「ぐぁ…つぅ……」

 

「どうした?殴り合いは嫌いか?

貴様、かつて教えた事を忘れたか!」

 

「忘れてなどいない…貴方に教えられた!

武器を無くそうとも立ち上がれ!

己の命、尽きる迄戦うときが来る!

それまでは汚名を浴びようとも生きて帰れ!」

 

「俺はそうした!そうしてきた!

今までも、そして…これからもかわらない!

俺は俺だ、貴様らの騎士道にも一定の理解は示そう。

だが、本質は騎士とは懸け離れたただの戦士よ!」

 

「そこに憧れた!俺の…俺達の師匠だった!

強く、そして、確かな騎士だった!

なのに…なのに…裏切った!」

 

「過大評価だと言っている!」

 

「その評価以上をなしてきたくせに!」

 

ランスロットはその言葉を受けて理解した。

ランスロットは道化を演じながらも、

その実力は余すことなく同僚達へ示して来たのだ。

例え『魔法』を使わなくとも、剣術や知識。

誰よりも先に動き、救い、悲しむ。

円卓の騎士達が出来ない事をただ一人行っていた。

悲しいから悲しみ、追悼し、復讐し、殺す。

泥に塗れても、血に汚れても、忠義をもって戦い続ける。

 

「…俺達は、貴方を…貴方を俺は…」

 

「俺の息子は……たった一人だ。

それは、お前ではない!」

 

ガウェインの懐にランスロットが

召喚した賢王の剣が突き刺さる。

そして、一気に左へと斬り裂いた。

溢れ出る血と、痛み。

しかし、ガウェインはじっとランスロットを見つめる。

 

「……間違いだ。お前のその感情も。

お前達円卓共の俺への評価も。

眠れ、ガウェイン。できれば悠久の彼方に消えてくれ」

 

トドメは回収したガラディーンで着けた。

己の得物で殺される、それがせめてもの慈悲なのだ。

己の信じた忠義で殺される。

ランスロットの敵を屠る為の刃に殺されるよりは、

ずっと良いだろう。

 

「ガラディーンは返す。貴様の墓標だ」

 

ランスロットは自信が手にした物を防具として奪える。

だが、このガラディーンだけは手放した。

不必要だからではない、それがせめてもの慈悲。

ランスロットが、アーサー王の敵対者にかける初の情。

敵を屠り、反逆者を虐殺し、騎士王の治世の為に、

裏の全てを背負った男。

その男が見せた最初で最後の慈悲なのだ。

 

「聖杯戦争で出会ったなら……優しくするさ。

今は眠れ、太陽の騎士」

 

ランスロットは兜を付け、聖都の中に向け再び馬に跨る。

 

「…ハィヤー!」

 

殺戮者としての演技も、道化としての演技も止めだ。

ランスロットはランスロットとして、聖都に乗り込んだ。

 

 

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