ポンズから連絡を受け宿泊先のホテルに向かい、ホテルの受付で手続きをしていたポンズ達に合流し、キルアとゴンが広めのツインルームに泊まり、俺とポンズは普通のシングルの部屋を取る。
流石に3日ほど泊まるとなると、ゴンとキルアはほぼ金欠状態なので、修行をするためということでまだ金銭的に余裕のある俺とポンズがお金を出す事になった。
すぐさま部屋に入った3人は早速念の修行を始めることにした。
「リュウマ。早速教えてくれるかしら、念能力って力を」
「ああ、まずは念を目覚めさせた後、最初に覚えて行く基本技を教える」
「ズシが言ってたレンとかテンって奴?」
「ああ」
俺は持っている用紙に《纏・絶・練・発》と書いたメモを置く。
「この4つのことを四大行と言う。念の全てはこの4つから始まり、この4つを極めれば必然的に念の全ての能力が上がる。要は念の基礎中の基礎だ」
「四大行……」
「まずは纏。これはオーラを体に留める技で、体を頑丈にして若さを保つことが出来る」
「わ、若さも保てるの……?」
「ああ、先輩方ハンターの中でも見た目によらず歳を取ってるハンターもいる。その辺の人とはいずれ関わる事もあるから頭の隅に入れておいてくれ。オーラは生命エネルギー、俺達は普段それを少しずつ垂れ流している状態。それを漏らさないようにして、体にエネルギーが充満するイメージは出来るか?」
「なるほど……」
「次に絶。これはオーラをゼロにする技になる。エネルギーを一切無駄にしない事で疲労回復を早めたり、気配をほぼ完全に消すことが出来る。ただし……」
「念の攻撃を受ければ、即死……」
「正解。絶は隠密や潜伏、逃走、尾行とかに主に使われる事が多い、戦闘中に使うことはまずない」
説明を真剣に聞くポンズ、ゴンとキルア。3人は下手に聞き漏らせば命に関わることを理解していた。
「そして練。オーラを通常以上に放出する。そこに感情が乗ることで圧迫感を感じさせることが出来、纏よりも攻防力は上がる。ただし、生命エネルギーであるオーラを通常より放出する事になり、長く続ければ疲労がでで空っぽになれば気を失う事もある」
「つまり、短期決戦ってこと?」
「いや。練と纏は毎日繰り返すことで熟練度は上がるし、扱える量も増える。それに練と纏が強くなれば自分より未熟な敵の攻撃はほぼ通じない、防御は貫ける。念能力者の戦いでは、この2つを疎かにしたら死ぬ」
3人はゴクリと唾をのむ。
「最後に発。これは自分のオーラを操り、自分独自の能力を作り上げる。これに関しては練が出来なければ話にならない上、イメージが重要になる為後回し。一番の問題は、どうやって念を呼び起こすかになる」
「どうやって?」
「やり方があるんじゃないの?」
「主に2つ方法がある」
俺は一通り四大行を教えた後新しいメモ用紙に『精孔』と書く。
「念は全身の精孔を開くことで目覚める。その方法はゆっくりと自分1人で開くか……他人の手で無理矢理開く方法の二つだ」
「無理矢理?」
「出来んの?そんなこと」
「も、もしかして…無理やり開く方法って、念を習得してる者が自身のオーラを他の人に当てるって事?」
「正解だポンズ」
「「!!」」
ゴンとキルアはすぐさま言われた意味を理解した。
「もちろん、俺がやる場合は害意をオーラに乗せない。体が壊れる可能性は低い。けど、もしお前らがこのまま200階に行ったら…」
「200階にいるのは全員が念能力者。そいつらと試合をすれば……」
「目覚める可能性はある。だが体に何かしらの障害が残るか、最悪死ぬ。これを200階では洗礼と呼ばれている」
「洗礼……」
「ゆっくり起こす場合、目覚めるのはそれなりに時間がかかる。お前らでも1週間以上は確実、その辺の人だったら数か月レベルになる」
「リュウマはどれくらいで目覚めたんだ?」
「俺は師匠に無理矢理開いてもらった。これは早くて今晩。遅くても明日には念は目覚める。三人とも、この話を聞いてどちらを選ぶ?」
「「無理矢理起こす」」
「私も二人と同意見」
「そう言うとだろうと思ったよ」
即決の3人に苦笑するしかなかった。
「時間がもったいないし、それに…リュウマだったら私達の事傷つけないって信じてるから」
「だな。むしろ、ここで逃したらそれこそ洗礼の仲間入りだ。だったら、お前にやってもらった方がいい」
「うん、リュウマなら信じられる。それにこのくらいやらないと、親父を探し出す事も、ヒソカの顔面を殴る事も出来ないから!」
「ははっ、わかった。なら、今からお前達のオーラを目覚めさせる。それと精孔を開く際には、上はシャツ一枚になってもらう」
立ち上がって、ゴンとキルアも立ち上がる。2人はシャツ一枚になる。
「わ、私もシャツ一枚になるの?」
ポンズは頬を赤くしながら身を守るようにこちらに聞いてくる。もちろんこうなる事は予想している。
「ポンズは俺のシャツを貸すからそれに着替えてきてくれ」
「あ、ありがとう…」
流石に男が3人いる中で女性相手にシャツ一枚はキツイだろうし、同性相手ならいいが…今は男が3人いる状態だ。俺は重りがない方の綺麗な状態のシャツをポンズに渡してそのまま洗面所に向かい着替えに行った。
「………リュウマの匂い」
ポンズは借りたシャツを手に取り、思わず小さく呟いた。ポンズは首を横に振りながら慌ててシャツを着ると、鏡の前で裾を整えた。
「(っ!……お、落ち着いて。別に変なことじゃないでしょ。服を借りただけなんだから)」
そう自分に言い聞かせながら、リュウマから借りたシャツを着込むポンズ、着替えを終えたリュウマ達の所に戻る
「お、お待たせ」
「来たか。サイズは大丈夫か?」
「ええ。少し大きいけど、問題ないわ」
「そりゃよかった」
俺は特に気にした様子もなく、ゴンとキルアの方へ向き直る。
「よし、早速お前たちの精孔を開く。開いた後、纏は最初は目を閉じて、自然体で行うのがおすすめだ。オーラが流れるイメージは血液。全身を巡らせるイメージだ。そしてオーラの流れが次第にゆっくり止まり、身体の周りで揺らいでるイメージを思い浮かべる」
「オーラって見えるの?」
「開いたら見えるようになる。ほら、背中を向けてくれ」
ポンズ、ゴンとキルアは背中を向ける。俺は纏を大きくして、3人の体を包む。3人は見えない粘膜に全身を包まれていき、背中を直接押されているような圧を感じた。しかし、嫌な感じはなさそうだ。
「……行くぞ」
そう言った直後、俺は3人にオーラを当て3人は全身に衝撃が走る。すると、体から白い煙のようなものが噴き出していくのが見えるようになった。
「おお!?」
「こ、これは!?」
「湯気だ! ヤカンから噴き出す蒸気みたいだ!」
「それがオーラだ。ほらっ、そのままオーラ出し尽くしてたらガス欠になって倒れるぞ!!」
「「「っ!!」」」
3人はすぐさま目を閉じて、自然体になる。俺は正面に回り、様子を見守る。すると、ゴンとキルアの勢いよく噴き出していたオーラがピタリと止まり、体の周りに留まる。
「(……1回くらいガス欠になると思ってたが、この二人も一発か……)」
ちなみに俺も1度で成功しレイリーに驚かれた事がある。普通なら一度精孔を無理やり開いたらガス欠となり疲労困憊で気絶するらしい。
ゴンとキルアは、自分の体を包むオーラを感じ取りながら、ゆっくりと呼吸を整えている。
その一方で――
「はぁ……はぁ……っ」
ポンズのオーラは、まだ勢いよく噴き出し続けていた。
「ポンズ、落ち着け。オーラを無理に押さえ込もうとするな。体の周りに留めるイメージだ」
「わ、分かってる……!でも、なんだか……止まらなくて……!」
ポンズは目を閉じ、必死にオーラを制御しようとする。しかし、オーラは彼女の意思に反して流れ出し続けていた。
「っ……あれ……?」
やがて、ポンズの膝が小さく震え始める。
「ポンズ!」
「だ、大丈夫……ちょっと、力が……」
言い終える前に、ポンズの体がぐらりと傾いた瞬間、オーラは消失し、俺はすぐに彼女を支える。
「……やっぱガス欠なったか」
「ご、ごめん……リュウマ……」
「謝る必要はない。精孔を開けば誰でもこうなる」
ポンズは息を切らしながら、悔しそうに俯いた。
「はぁ…はぁ、けど、ゴンとキルアは、もうできてるのに……」
「二人は生まれ持った物や育った環境って物もある。才能があるのは間違いない。だが、今の一回でお前の才能が決まるわけじゃない。それと、今は休め。無理に続ける必要はない。オーラを使い果たした状態で動き回るのは危険だからな」
「……う、ん」
そう言ってポンズは目を閉じ、意識を手放した。俺はひとまずポンズを抱え、部屋に連れて行ってベッドに寝かせた。
「ねぇリュウマ。ポンズ、大丈夫なの?」
ツインルームに戻り纏を維持しているゴンが心配そうに尋ねてくる。
「ああ。今はオーラを使い果たして眠ってるだけだ。しばらく休めば回復する」
「そっか……よかった」
「二人はオーラは安定したみたいだな。どうだ?気分は」
「……なんか……温い粘液の中にいるみたい」
「うん……重さのない服を着てるみたいだ」
「それが纏だ。それを無意識でも出来るようなるのが目標だな」
ゴンとキルアが俺に目を向ける。オーラが見えるようになった2人の目には、俺との力の差を実感できたゴンとキルアだった。
「これでお前らも今日から念能力者。けど、過信は許さないぞ?お前らの纏は熟練の念能力者にとっては紙くず程度での防御力しかない」
「……うん、分かる。今のリュウマの纏でも防げる気がしない」
「ああ…」
「まずは纏の修行に費やす。これは瞑想や禅が一番だ。さっきの自然体のように纏のイメージをひたすら続ける。200階まで行ったら練の修行も始める。ただしポンズは状況によっては自身のペースに合わせてやらせる」
「絶は?」
「キルアとゴンは出来るはずだ。キルアは殺し屋時代に尾行するときの気配を消す感覚と同じでやればいい。ゴンもハンター試験でヒソカにバレずに尾行した時に気配を絶つ事も出来ただろ?その感覚で今やってみろ」
キルアとゴンは言われた通り絶を行う。すると2人から完全にオーラが消えたのを確認した。ゴンとキルアも互いのオーラが全く見えなくなり、気配も希薄になったのを感じて驚く。
「それが絶。今日はそのまま休め。明日にはたまった疲労も吹き飛んでる。まずは100階まで行って個室をゲットしたら、そこからは1日1試合ペースで念の修行の方を重きに置く。言っておくが、200階でまだ念能力者と戦うのは無謀って言葉すら生温いのを頭に入れておけ、いいな?」
「「押忍!!」」
ゴンとキルアは俺の忠告に力強く返事をする。
「今回、念能力者の例を挙げると、ヒソカもイルミ、ハンター試験の試験官も熟練の域にある念能力者。特にゴン、念を使う以上、ヒソカを殴り飛ばすのはさらに難易度は上がったと思えばいい」
ゴンは冷や汗を浮かばせながらも、瞳を輝かせながら楽しそうに笑みを浮かべる。それを見た俺とキルアと呆れ苦笑する。
「それと、キルア…絶の状態でいいからじっとしておいてくれ…」
「…?ああ、わかった」
俺はキルアに近づきじっと見つめ、頭を撫でる。キルアも恥ずかしかったのか俺の手を思わず振り払う
「な、なんだよ急に⁉︎」
「ははは、ちょっとした呪いだ。それじゃあ俺も部屋に戻って休むから、絶の状態でしっかり休むんだぞ」
「う、うん」
「わかってるよ」
「じゃあ…また明日な」
俺は部屋から退室し部屋に戻る。
「………」
「キルア、どうかしたの?」
「いや、なんか…頭ん中、妙にすっきりしたなと思って…」
「そう言えばさっきリュウマがキルアの頭を撫でた時『呪い』だって言っていたけど…それも念なのかな?」
「さぁな。本人に聞けばわかるんじゃねぇの?取り敢えず、俺達も休もうぜ。初めての事だらけで疲れっちまった」
二人は念を開花させ始めてのことだらけで疲れていたのかベットに入ると直ぐに眠りへとついた。
「(妙にキルアから別の何かを感じたと思えば…案の定か)」
俺は部屋に戻り、右手に目を向ける。手の平の上には血に濡れた小さな針があった。キルアと初めて会った時から額に妙な気配を感じたので、素早く引っこ抜いてみた。キルアは俺に撫でられたことに動揺してくれたようで気づかなかった。
「針……となればイルミだな。操作系の能力、針にオーラを込めて特定の条件で発動する能力か…命を奪うまではないが、何かしら暗示が仕込まれていたと見ていいか」
ため息を吐きながら、俺は針をゴミ箱に捨てる。この行為がキルアにどう影響をするのか、これでキルアが何かしら変わってくれるキッカケとなる事を祈るまでだ。
「(問題はポンズだな…二人の才能はかなりの物、どこまでついていけるか…)」
こうして不安を募らせながらも、3人の念修行が始まったのであった。