クロスベルへ
さて、年末年始の行事を無事やり遂げた俺は、落ち着いたタイミングでクロスベル入りすることに。
気温も少し上がって過ごしやすくなり、新調した服もいい具合に馴染んでいる。
ちなみに今回は和装での行動です。
代理戦争の報酬でいい生地が手に入ったので、チヨメとシズナの二人で仕立てていました。
そしてクロスベルだけど、ちょうど70周年記念祭とかでとても盛り上がっているらしい。
その分色々と大変そうだだけど、今回は観光なので目立って動く予定はない…はずだったけど、バルクホルン先生から手紙が届いたのでちょっとお仕事が。
なので、まずはその手紙を確認するべく適当な場所に向かうことに。
「とはいっても適当な所ってな…。アリオスのいるギルドは昼からの予定だし、レオンハルトはマイスターの所。姉さんは分からん。朝から飲むのもなぁ…」
どうしようと考えていると、ふとある事を思い出したのでその場所に向かうと、何やら小さな騒ぎの様なものが発生していたので、近くの住宅の屋上に移動。
気づかれないように様子を確認すると、見覚えある人物がチェイスバトルをしている所だった。
その見覚えある人物というのがエステルとヨシュア。
それと……赤毛の青年と緑髪の青年。
後の二人は…うん、知らない顔だね。
「ワジはともかくランドルフまで…ん-星座を率いてるのはシグムントか…。この様子だと行かない方がいいかな。今日はホテルでゆっくりと休んで明日からかな。っとその前に連絡っと」
懐からある導力端末を取り出してある所(と言ってもレオンハルトだけど)連絡してから遊撃士ギルドに。
ギルドにいたのは受付のミシェルと、アリオスの二人。
他に二人いたはずだけど、気配が無いところを感じるに休暇か仕事のどちらかだろう。
「あら…?誰か来たわね」
「どうも、そちらのお兄さんお借りしても?」
「ご指名みたいねアリオス…アリオス?」
「……」
俺の顔を見てとても何か言いたそうな顔を浮かべているアリオス兄弟子。
暫く俺の顔を見続けてから二階に顔を向けたので移動して対面で座ると、兄弟子は早速聞いて来た。
「その姿はどうした?気配で気づいたからいいが、どう見てもおかしいだろう。服装と言い」
「あぁ。いい和装だろ?パートナー達が仕立ててくれてね。桜色ってのも中々いいだろう?」
「確かに言われてみてれば中々見れない生地だが…まて。質問に答えて貰おうか」
「ちっ…逃れられないか…。まぁ…レオンハルトやレンに会ってそうだしちょっとぐらいならいいか」
ある程度は隠しながらリベールでの事を一通り説明する。
何も聞かずに聞いていたアリオスを見ていると、カシウスのおっさんと同様ジジイから何も聞いていなかったようだ。
となるとリィンのアレも知らなさそうだな、露骨に隠してる辺りちょっと引っかかるけど。
「まぁ…内に何かあるのは分かっていたが…そういうことはあの時に伝えておくべきだっただろう?」
「それは下種眼鏡に言ってほしいかな?俺だってそんなつもりなかったし」
「その辺りの話はヨシュア達から聞いてはいるが…」
「だったら俺の方から話すことはないかな。っとそうだアリオス。シズクちゃんにお土産」
袋に入っていた少し大きい箱をアリオスに渡す。
お土産と言ってもちょっとした装飾品だけど、ちょっとしたお守り替わりぐらいにはなるかな。
「それで…クロスベルでは何をするんだ?」
「何も…と言いたいけど、バルクホルン先生から手紙を預かっていてね。もしかすると特級遺物でもあるのかも」
「遺物…」
何か知っている素振りをするアリオス。
ここクロスベルは色々と抜け道使って悪いことをしている連中が多いからな。
例えばハルトマン議長とかね。
「まぁお前の事だから派手な事はしないと信じているが…
「分かっているよ兄弟子。せっかくの記念祭だし俺も観光を楽しむよ。姉さんにも怒られるし…ってそうだ。姉さんは?」
「姉…あぁアズサの事か。彼女は依頼で出ている。伝言があれば伝えておくが」
「いいよ。あとで連絡する。ちょっとある人から便利な導力端末を貰ったから」
懐から端末を取り出して姉さんに連絡。
会えそうか聞いてみるけど記念祭の最終日以外は仕事がみっちり詰まっていると返事か届く。
となると最終日までは一人で観光…仕方ないか。
「忙しいなら仕方ないかな。一人で観光でもしよう」
「その前に手紙の確認をしなくてもいいのか?」
「ちゃんとやるよ。えっと……」
手紙を開封すると、内容は近況の報告がメインで、何でもバルクホルン先生も帝国に出向くそうだから機会があれば色々と手伝ってほしいとのことだった。
まぁそれならと思っていると、最後に『クロスベルのある場所で古代遺物を回収してほしい』と書かれてあった。
「ある場所…オークションか」
「確かにあの場所ならあり得るが…しかしどうして゛彼゛に頼まない?」
「ワジは別件だろ。アッバスもそうだけど。まぁいいよ。何もしないよりマシだし」
「だがどうやって入る?あの場所には……いや潜入は十八番だったな。聞かない事にする」
「一応忍びの技も心得ているので。さてと、じゃあ行くよ。先入りているチヨメと合流したいし、シズクちゃんに宜しく。時間があったら奥さんの墓参りも行かせてもらうから」
アリオスの前に共和国の珍しいお酒を置いてギルドを出る。
空を見上げると既に日が沈み始めていた。
ふむ…姉さんとも会えない以上はこのままホテルに行くしかないかな。
「カジノとかもいいけど……」
「…そんなところに行ける顔かな?」
「うぉっ!?」
いつの間にか背後に立っていた相棒のチヨメ。
こう見えて俺も気配感知には自信があるのだが、カエデの様に観の眼を潜り抜けてくるし。
「言っておくけどカジノとか行かないから。観光とはいえ節度を持ってください」
「分かってるよ。あとちょっと傷ついた。そんな顔してる?」
「服装と相まってとても可愛いですよ若」
「……なんか複雑。まぁいいけど」
この姿を弄られるのは運命なので受け入れるとして、この姿は色々と苦労を掛けそうな場面が多そうだ。
この間だってお酒を飲むときに身分証明求められたし。
運よく教員免許を更新してたからよかったけど。
「ところでアズサ姉さんはどちらに?ご挨拶に伺わないと」
「お仕事で最終日まで空いてないって。それまでは情報収集かな?俺もお仕事入ったから」
「成程。ではホテルの戻って打ち合わせを。運悪くお部屋は一つしか取れませんでしたが」
「まぁ問題ないでしょ。ひとまず移動だ」
ホテルに移動する前に適当に食料を買ってからホテルに向かう。
チヨメが取った部屋はかなり大きく、色々と動くには都合がよさそうだ。
ベッドは一つしかないのはアレだが、大きいソファもあるし寝るにも支障はないだろう。
「この手紙読んでおいてチヨメ。俺は潜入手段を考える」
「はい。えっと……」
チヨメが手紙を読んでいる間に、机にクロスベルとジオフロントの地図を広げる。
競売が開かれるのはミシュラムにあるハルトマン邸だが、護衛にルバーチェの連中が居る。
真正面は入るには招待状が必要だし、紛れ込むのも指南の問題だが……。
「うーん…流石に潜入は難しいから、正規の方法で入るしかないかなぁ…。こっそり入りそうな人は居そうだけど
「それって誰の事だチヨメ?」
「あぁリーシャさんですよ。黒月と契約しているとかでクロスベルに」
「成程。道理で顔を見ないと思ってたけど。ルバーチェとやり合ってるって噂だし。あの子ならやりそう」
そこをうまく利用する手はアリだけど、個人的にはご贔屓にしたいし。
となるとチヨメの言う通り正攻法だけど……。
正直なところ頼れる人があまりいない。
アリオスには釘を刺されているし、警察方面の知り合いはあの堅物眼鏡とガイさんぐらいだし。
「ダドリーのおっさんは嫌だし、ガイさんは奥さんの事を考えるとややこしいことに巻き込むにはな…」
「あ…ガイ殿の事ですけど、2、3年程前にお亡くなりになられたそうです。今は弟さんが特務支援課という場所に配属されているそうで」
「……おぅまじですか(となると昼間に見たのが例の弟か)」
さてさて、こうなると本当に頼れるのが片手になってくるわけだが…ここは素直にあの子に頼るか。
レオンハルトにはお小言を貰うかもしれないけど。
「チヨメ」
「はい。レンちゃんに連絡しておきますね。報酬は言い値でお支払いしておきますので」
「助かるよ。さてと…色々と詰めますか」
地図とターゲットを再度確認し、チヨメと一緒に徹底的に作戦を詰めるのであった。