向かい合う、その瞬間。
視線は交差し、思いが混ざり会う。
でも、だけど。
その陰にある真意は、果たして。

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とりあえず読み終えて、頭焼けそうなまま書きました。
今週のジャンプは強烈過ぎましたのよ。


アオのハコ#76 SideB

 ――また適当な事言ったな、あいつと来たら。

 菖蒲に予備の機材を取ってくるよう頼まれたそうで、雛はさっきから用具庫を弄っていたが見当たらないようだ。どんなのかと聞いても「予備の音響機材らしくて、行けば分かるって言ってた」との事。なんだそのフワフワした話。

 それは多分、担がれたんじゃないかな。よくあるんだ、そうやって人を無駄に走り回らせてケラケラ笑ってたりさ。どうもあれは、人をからかうのが生き甲斐みたいな女だから。仕事はするんだけど、余計な事はもっとやらかす。特に意味もなく嘘を吐くと言うか、天然の魔女と言うか。若しくは宇宙人だな、うん。

 ふと眺めた窓の外では、もうキャンプファイアーが始まっている。こうして体育館の中から見ていると、まるで違う世界のようだ。

「ね。……ちょっとここで、見ていようよ」

 急にそんな事を言い出した雛の声は、いつもより少し震えているように思えた。

 本当なら、さっさと戻るべきなんだろう。余興とはいえ一応全員参加なんだし、抜け出して別の事していたとなると色々良くない。それに雛だって、形だけでも菖蒲に報告しなきゃいけない。本当に必要だった、とかなると面倒事になってしまう。

 だけど、でも。

「確かにちょっと疲れたし、ここでゆっくりしてくか」

 俺はそう答え、腰を下ろしてしまう。たまにこうして、立ち止まる時間が欲しかったのは事実だ。良い口実、とまでは言わないけれど。

 

 暗い体育館の中、外から入ってくるキャンプファイアーの光と月灯りを頼りにして、お喋りは続いていく。

 中学の頃から一緒だし、話のネタはいくらでもある。キャンプの時ケイドロした事、俺が修学旅行中も朝のランニングしたくて旅館抜け出した事、一緒に花火を見た中一の夏の事。数えきれない位の思い出が、楽しい時間を終わらせない。

 バカにしたりされたり、小突いたり小突き返したり。

 まるで――昔に戻ったみたいだ。

 雛と俺は親友で、いつだって一緒。バカやって笑いあう、最高の友達。

 いつまでもそうやっていられると、俺はこの間まで本気で思っていた。

 そんな事、出来っこないのに。

 一月前のあの瞬間、俺たちの関係は変わってしまったから。二度と元には、戻らない。

『好き。大喜の事が、好き』

 突然のその告白は、正直――嬉しかった。こんなの初めてだし俺は千夏先輩を好きだし、どうしていいか分からなくなったけど。

 でも。……でも俺は、そこから気付いてしまった。少しずつ自分の気持ちが、澱んでいくのを。ちょうど同居が中断して、先輩と過ごす時間が日常から失われたのもそれに拍車をかけた。

 もし春の俺なら、雛と先輩を天秤に掛けたりはしなかっただろう。なのにいつの間にか、どちらを選ぶかとさえ考えるようになっていた。

 雛の事が嫌いな訳じゃない。でも先輩相手に抱く「好き」とは、根本的に違うんだ。けどそれを形にできず、ずっと悩み続けていた俺。

 そんな堂々巡りの思考を漸く終わらせてくれたのは、やっぱり――千夏先輩だった。

 昨日の夜、俺はやっと分かったんだ。好きになるって、直感なんだと。雛を意識するようになったのは事実だけど、それでも俺は変わっていない。

 俺は千夏先輩が、好きだ。憧れでも仲間意識でもなく、大切な人として。

 

 こんな俺を好きになってくれて、ありがとう。

 千夏先輩を好きなままで良いと言ってくれて、ありがとう。

 本当は辛い筈なのに俺を気遣って平気なふりをしてくれて、ありがとう。

 空に浮かぶのは、赤い月。アオい俺たちを見下ろすように、ただ輝いている。

 冷たい空気に抱かれ、雛と向き合う。

 これ以上、雛を傷付けない為に。

 これ以上、雛を迷わせない為に。

 これ以上、雛を苦しませない為に。

「ごめん。雛とは、付き合えない」

 俺は偽りの無い気持ちの刃を、降り下ろした。

 それがどんな結果を生むか、俺は全部分かっている。そして俺には、それを全部背負う覚悟がある。

 だから、だから――ごめん。

 俺は雛を、好きにはなれない。

 


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