サイコバグなお兄ちゃん、Vtuberになる。   作:にいるあらと

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ここからしばらくは脳天気に話を進められそうです。
宅飲みでへべれけになってるお姉さん二人。


あの表情が好きだ。

 

「いつも仁義君はねー、私にすぐメッセージ返してくれてねー」

 

「へ、へー……そうなんだ。配信してる人って時間にルーズな人多いからめずらしいね。そういえばレイちゃんも返信すごく早いんだよね。やっぱりきっちりしてるところは兄妹で似るのかな?」

 

「そー。今日だってねー、仁義君は私に昨日のこと謝っててねー……私が悪いのに、優しくてねー……」

 

「そ、そっかー、やっぱり恩徳さん優しいよね」

 

 ばきばきにアルコールが回っているあーちゃんは、頬を上気させながら恩徳さんとの裏でのやり取りを語尾を間伸びさせながらふにゃふにゃと語っていた。ふだんが四角四面な言動ということもあいまって、落差がとんでもないことになっている。いつもならあーちゃんがここまでお酒を入れることはないのだけれど、頭の中身を吹き飛ばしたくなるくらいに恩徳さんやレイちゃんとの軋轢がつらかったのだろう。

 

 ちなみに私も今つらい。

 

 ずっと恩徳さんとのやり取りの自慢話を聞かされ続けている。違う話ならともかく、似たような話をずっと繰り返している。タイムリープしてる気分だ。

 

 恩徳さんとこれまでコミュニケーションを取る時間は少なかっただろうし、あーちゃんも押しが強いタイプではない。口ほどには雑談している回数は多くないと見た。情報の引き出しが少ないのだ。

 

 レイちゃんを見習ったほうがいい。あの子は機会があるたびにお兄さんトークを機関銃の如く繰り広げてくるけれど、一度として同じネタを出してきたことがない。恩徳さんと一緒にいる時間が段違いに長いこともあるのだろうけれど、なんとも恐ろしい情報収集能力だ。ぽろりと口からこぼれでる個人情報のいくつかは、いくら距離の近い妹であったとしても得られないくらい、得るには法に抵触する行為が必要な気がするくらいプライベートなものもあった。末恐ろしい。やっぱり見習わないほうがいい。

 

「あ、あれ? あーちゃん、スマホ着信きてない? 音するよ」

 

「んー? あー、ほんとねー」

 

 どうにか話を変えたかったわたしは、バッグの中でヴーヴー唸っているスマホの音を聞き逃さなかった。あーちゃんの意識を他に向けることでようやく一呼吸つくことに成功する。

 

 あーちゃんがバッグをごそごそしている間に、わたしは何かつまめるものを買い置きしていなかったか調べておこう。晩御飯を用意したかったところだけど長時間席を外すことができなかったため、なんだかんだでお酒の他にはおつまみくらいしかお腹に入れられていない。明日の朝までアルコールが残る気配をすでに感じている。

 

 宅配サービスを利用するのも考えたけれど、今更がっつりご飯食べるのもなぁ、などと考えながら、ビールのおかわりと温めた冷凍食品と、戸棚の奥のほうで眠っていたお菓子を持っていく。年頃の女とは思えないラインナップに涙を禁じ得ない。

 

 何度か往復して持ってきたそれらをテーブルに置く。そこそこ時間は経っていたのに、あーちゃんはバッグの傍らで正座して、まだスマホを見下ろしていた。

 

「あーちゃん? なにかお仕事のメッセージでもきてたの?」

 

 今はこんなのでも普段は実に優秀なあーちゃんは、担当外の業務についての相談もたびたび受けている。

 

 今回もそういうメッセージが届いたのかと思い、わたしでも手伝えることあるかな、などと考えを巡らせながらあーちゃんの背中に近づいた。

 

 あーちゃんはちょうど、メッセージの返信を打っているところだった。

 

『私は仁義君のことをずっと考えています。あなたを(ないがし)ろにするようなことは一切ありません。この際、一度私の正直な気持ちを打ち明けようと思います。私は仁義君をとても大切な存在だと思っています』

 

「…………」

 

 ストーカーからの手紙かな。

 

 この重たいにも程があるメッセージを送りつけられる被害者は恩徳さんのようだ。

 

 何が届いたらこんなメッセージを返すような事態になるのだろうか。

 

 恩徳さんからのメッセージの内容がどういったものかはこちらからでは見ることができないのでわからないけれど、彼から色恋に関連する文面が送られてくることはほぼ確定的にないだろう。そんなに関係が進展するほどの絡みはなかった。なんなら先日の件によって進展どころか後退したくらいだ。

 

 どんな化学変化を起こせばこんな話になるのか。理解が及ばない。

 

 すぐ後ろで絶句しているわたしに気づくことなく、あーちゃんは文章の作成を続ける。

 

『このまま距離が離れてしまうのはとても悲しいです。仁義君は私の気持ちを勘違いしているように思います。このような終わり方は本意ではありません。一度、直接会ってお話ししませんか』

 

 なんだか『お互い仕事が忙しくなって時間が合わなくなり、自然消滅的な別れを予期した女が男を引き止めようとしている』ような内容に思えてくる。脳内でそんなイメージが強烈に湧き起こってくる。

 

 なんだこれは。

 

 恩徳さんがどんなメッセージをあーちゃんに送ったのか知らないが、その内容がどんなものだったとしてもこんな怪文書で殴られてもいい道理はない。

 

 怪文書を書き上げたらしいあーちゃんは、一つ満足げに頷いた。

 

 その動きで全てを悟ったわたしは即座に手を伸ばした。

 

「……よし、送」「待って」

 

 メッセージを送信するボタンに指が触れる寸前で、その手を掴んで止める。危なかった。先んじて動いていなければ手遅れになっていた。

 

「……なにかしら」

 

「なんて不服そうな顔……。それよりも、いったい恩徳さんに何を送りつけようとしてるの」

 

「誤解されたままでは堪えられないから、いっそのこと私の気持ちを余すことなく伝えてしまおうかと」

 

「その結果があの怪文書? なんにしてもやめてあげてよ……ただでさえ心労が重なってるのに、とどめ刺しちゃうことになっちゃうよ……」

 

「怪文書とはあんまりな物言いね。決意表明文でもあり、嘆願書でもある。ロマンティックに言い換えれば……そうね。ラブレターと言っても過言ではないわ」

 

「その三つの言葉が等号で繋がる文字列なんてこの世に存在しちゃいけないんだよ。もういい、恩徳さんからどんなメッセージが届いたのか見せて」

 

「……いやよ。これまでの彼とのやり取りを見られるなんて……恥ずかしいじゃない」

 

「この怪文書以上に恥ずかしいものなんてないよ! いいからスマホ貸してっ、この酔っ払い!」

 

「あぅ……」

 

 酒に呑まれているあーちゃんとは話にならないので、その手からスマホを掠め取る。酔っ払いはそこらに転がしておいた。

 

「えーっと……」

 

 何か操作ミスがあってはならないので、怪文書は細心の注意を払って削除してから恩徳さんからのメッセージを確認する。

 

 そこには、まず昨日の謝罪の後、とても丁寧な文章でもうすぐ配信を始める旨が綴られていて、時間に余裕があれば見てほしいと締め括られている。

 

 おかしいな。おかしいところなんて見当たらない。あんな怪文書が産み落とされる原因なんてない。何を拗らせたらあんなふうにとち狂うのか、皆目見当もつかない。

 

 仕方なく、わたしは本人に訊ねる。

 

「……なんであんな……えっと、なんだったっけ? 犯行予告文だっけ? あんなの送ろうとしたの?」

 

「ラブレターよ」

 

「愛よりも先に恐怖が伝わりそうなお手紙だったね」

 

 のそりのそりと体を起こしたあーちゃんは、俯きがちに口を開いた。

 

「……以前はもっと距離感が近かったのよ。それがあんなに……営業先を相手にするみたいな文面になってしまって……。仁義君は昨日のことで、何度も繰り返し謝っていたの。だから……もしかしたら仁義君は私がとても怒っていると誤解しているのではないかって思ったの。だから……」

 

「だからあんなのを……。ちょっと落ち着こ? 一度新鮮な空気でも吸おう。ついでにお水も飲もう」

 

「お水……日本酒かしら」

 

「水だって言ってんでしょうが。隠語とかじゃないんだよ。はい、立って。ベランダ出てて」

 

 腕を掴んで引っ張り上げて、足を引き摺るような速度で歩くあーちゃんの背中を押してベランダに出す。

 

 日が暮れてしばらく経っているのに、外はまだ少し蒸し暑い。涼しい風でも浴びて頭を冷やせられれば一番よかったけれど、まあいい。外の空気を吸うだけでも気分転換にはなる。

 

 ベランダに放り出した後、わたしは冷蔵庫からミネラルウォーターを取り、あーちゃんの元まで急ぐ。

 

「…………」

 

 あーちゃんはベランダの手すりに体を預けながら、物憂げな表情で遠くを眺めていた。闇夜に溶けるような濡烏(ぬれがらす)の髪を夜風に踊らせている。

 

 映画のワンシーンのような、思わず息を呑む光景だった。あの怪文書の著者とは思えない。

 

「はい、お水。飲んで、しこたま」

 

「別に酔ってはいないわよ」

 

「せめてお酒のせいにしてよ。シラフであんなの書いてたほうがわたしとしてはショックだよ」

 

 あーちゃんは長い髪を手で押さえながら、わたしが手渡したミネラルウォーターに口をつける。それだけの仕草が、なぜかこうも絵になる。アンニュイな表情とほんのり上気した頬が色っぽい。

 

 黙ってさえいれば美人なんだけどなぁ。ふだんは杓子定規でストイック過ぎて近寄りがたいイメージを持たれがちだし、お酒に呑まれるとネジが外れて思考回路がショートを起こすし、いい具合の均衡を取ってくれないものか。

 

「ふぅ……それほど涼しくはないけれど、まだ夜だと心地よく感じるわね」

 

「わりと高層階だからね。風もあるし。……ちょっとは冷静になったみたいだね。やっぱりお酒強いなぁ」

 

「一度休息を挟めば落ち着くわよ。それで、あの文面の何がいけなかったのかしら?」

 

「ほんとにあの文章はお酒とは関係……なかったの? ちょっとやめてよ、怖いよ……。シラフであれはわたしには荷が重いよ……」

 

「ふっ……冗談よ。彼との関係修復を少し急ぎすぎたわね」

 

「膝から崩れ落ちそうなくらい安心した。それはそうと、その表現やめてくれない? ぎくしゃくする前は深い仲だった、みたいな印象操作。配信者と一スタッフでしょ」

 

「いいのよ、嫉妬するのもわかるわ。雫は仁義君と関わりないものね」

 

 つい一〜二時間ほど前まで『嫌われたーっ』って泣いてた人と同一人物とは思えない発言だ。こんな軽口を叩けるくらいまでメンタルが回復したのだとしたら、それはそれで喜ぶべきだろう。一歩ぶんくらいの小さなリードで勝ち誇った顔をしているあーちゃんにはちょこっとイラっとするけれど可愛げもある。

 

「いや……わたしはあーちゃんほどに強い感情を恩徳さんに持ってないから……。もちろん仲良くはなりたいけど」

 

「ふふ、そういうことにしておきましょうか。……それで、そろそろスマホ返してもらっていいかしら? 返事すら返さない人と彼に思われるのは嫌なのだけど……」

 

「あ、そうだった。テーブルに置いてるよ」

 

「そう。……雫は、どう返事すればいいと思う? 私はどうにも……返事の内容が極端になりがちのようなのよ」

 

「あ、自覚はあったんだ……。そうだなぁ……あんまり踏み込み過ぎないで、でもしっかりと理解はしていますよってことを表現できたらそれでいいと思うよ。今回の場合だと、相手が謝ってきてるからこっちも一言謝るくらいでさらっと流して、あとは配信について触れればいいんじゃないかな? 最後に応援していることを伝えておこう。それで気分が悪くなるような人なんていないだろうし、問題はないと思うよ」

 

「……なるほど。私も一言謝って、配信を観ると伝えて、最後に応援。……わかったわ」

 

 険しい表情をしながらあーちゃんは頷いた。同時に、手に持っているミネラルウォーターのペットボトルがくしゃりと音を立てる。なんだか悲壮な覚悟をしているところ悪いけど、そこまで難しいことを言った覚えはないよ。

 

「だ、大丈夫だよ? リラックスして、肩の力抜いてこ? 今の距離感なら淡白なくらいがちょうどいいんだから」

 

「そう、そうね。ゆっくりと歩み寄っていけばいいのだから……そう、そう」

 

 若干の不安を残しながらも、思考回路は正常に機能し始めたので部屋に戻る。

 

 あーちゃんはスマホに一直線。

 

 わたしはというと、配信の視聴準備だ。デスクトップのほうだと二人では一緒には見づらいので、ノートPCを取り出してテーブルに置く。

 

 おつまみとお酒はテーブルの端っこに寄せておいた。配信を観ながら飲み続けるつもりである。

 

「わぁっ……ちょっ、ちょっとあーちゃんっ、見て見て!」

 

「どうしたの?」

 

「いいからはやくっ」

 

 恩徳さんの配信の待機所に移動したわたしは驚きのあまり、メッセージの返信を打っていたあーちゃんをすぐに呼びつけた。

 

「彼の配信で良くないチャットがあったの? そうだとしたら内容とユーザー名をすべて控えておいてほしいのだけど」

 

「ちがうよ、いい意味ですごいの! 昨日の配信では待機画面ってもっと質素な感じだったよね? なんか……なんかすごいイラストがっ!」

 

 待機所では、緻密に描き込まれた美しいイラストがお出迎えしてくれていた。

 

 拳銃を握るジン・ラースとアサルトライフルを掲げるレイラ・エンヴィの二人が、荒涼とした大地に立ち、今まさに敵へ突撃を敢行する、といったイメージの構図だった。

 

 メインの二人の表情や衣装、アクセサリーはもちろん、背景や光の加減に至るまでとても細かく手が込んでいる。主張はしないのに目を引くポイントが散りばめられていてメッセージ性も感じられた。

 

「これが礼愛さんの言っていた、知り合いにしていたというらしい依頼なのかしら……すごい腕ね」

 

「画力もすごいんだけど、ストーリー性っていうのかな? ワンシーンを切り取った静止画なのにここに至るまでにあっただろう戦いが頭の中で思い描けるっていうのがすごいよ。これイラストレーターは……『ゆきね』さん?」

 

「……私は聞いたことないわね」

 

「わたしもないや。これまでVtuberのイラストとか同人誌とか描いてなかった人なのかなぁ……」

 

「それにしては画力が卓越している気がするけれど……」

 

「そうだよね。……それに、なんだか……絵の雰囲気に見覚えがあるような気も……」

 

 これだけ情感のあるイラストを描ける人ならスタッフの間で話題に上がりそうなものだけど、わたしたちの耳には届いていなかった。

 

 『New Tale』はスタッフもオタク趣味に傾倒している者が多い。漫画やアニメやゲーム、そして同人誌など、己の好きな物を布教する者もまた多い。これまではそれらのレーダーをすり抜けていたのだろうか。

 

 イラストについてあーちゃんと話しているうちに配信の時間になったようだ。画面が切り替わる。

 

『それでねー、お兄ちゃんとFPSやるって言ったらutacoさんが応援するよって言ってくれたんだよ!』

 

『それならなおさら今回頑張らないと。格好悪いとこ見せられないね』

 

『うん! お兄ちゃんがオーダーしてくれるんだもん、問題ないよ!』

 

『あ、僕がオーダーやるんだ』

 

『あたりまえでしょっ! 今日はお兄ちゃんのFPSの上手さを伝える配信なんだからね! 配信つけたよ!』

 

『僕としてはレイちゃんの格好よさと可愛さを見せつける配信のつもりだったんだけど。こっちも始まってるよ』

 

 配信初手から悪魔兄妹の仲のいいトークで始まった。

 

 これまでのレイラ・エンヴィのイメージを覆すような、お兄ちゃんに懐いているハイテンションな妹レイちゃんだ。以前の配信でもたまに嬉しいことがあったりした時や同期や後輩とコラボしている時にテンションが上がって声のトーンが高くなることはあったけれど、こんなに甘えるような振る舞いはなかった。

 

 レイちゃんは同期や後輩が相手だとお姉さん的な立ち位置になりがちだ。なんなら先輩であるはずの一期生とコラボしていても引率していることが多い。どのゲームをやっても大抵レベルが高いし、みんなで集まって雑談するとなっても自分が話すよりもまず他の人から話を引き出したり話題を振ったり、その性格と能力もあいまって面倒を見る側に回ってしまう。

 

 みんなのお姉さんをやっている時も楽しそうに見えたけれど、恩徳さんとの絡みを見ているとやはりレイちゃんの素の部分は妹なのかなと思えてくる。

 

「……とても活き活きとしているわね、礼愛さん」

 

「水を得た魚って感じだね。こんなに率先してがんがん話すこともそうそうないもんね、レイちゃんって」

 

「そうね。聞き手になることが多いもの」

 

 話を引き出したり、話しやすいようにいいタイミングで相槌を打ったり、リスナーにも伝わりやすいように都度適切な補足をしたりと、レイちゃんは気配りが行き届いている。そのせいで聞き上手なのだなという印象があったけれど、本質的にはお喋りするほうが好きなのだろう。

 

 思い返せばお兄さんのことを話す時もレイちゃんはすごく楽しそうにしていた。これまでは配信上の盛り上がりを考慮して聞き手に徹していたのだろう。レイちゃん以上に、おかしい部分にはズバッと突っ込んだり話をオチまで綺麗に誘導したり小さな話題から雑談を膨らませることに長けている者がいないからだ。

 

 結果、同期や後輩、一部の先輩も加えた自由奔放個性豊かな暴れ馬たちの手綱を引いて取りまとめる役目をレイちゃんが担っていた。そのことにレイちゃんは不平を鳴らしたことはないけれど、もしかしたら口に出すほどではないくらいの不満はあったのかもしれない。

 

『はい、皆さんこんばんは! 昨日も観に来てくれた人はまた来てくれてありがとうございます! 今日初めて観に来たよって方は初めまして! SNSやとある匿名掲示板などを賑わせている「悪魔兄妹」のカップルチャンネルへようこそ! ぜひゆっくり寛いで観ていってくださいね!』

 

『冒頭からさらっと嘘つくのやめて……。人間の皆様、こんばんは。『New Tale』所属の四期生、ジン・ラースです。そして隣で自己紹介もせずに存在しないチャンネルの名前を挙げていたのが『New Tale』所属の二期生、レイラ・エンヴィです。昨日の配信を観てくださった方も、今日初めて観に来てくださった方も、お忙しい中、足を運んでいただきありがとうございます。お会いできて光栄です』

 

『はい! 「悪魔兄妹」妹の方、レイラ・エンヴィです! 始まりの挨拶も何か定番のやつが欲しいとこだねー』

 

『もう既にお分かりかと思いますが、大変テンションが上がった妹と一緒に配信させていただきます。よろしくお願いします。……始まりの挨拶「も」って言ってるけど、終わりの挨拶も定番になってるわけじゃないからね? 昨日初めてやったコラボ配信で「いつもの!」って言われて僕がどれだけ困惑したことか』

 

『昨日予告した通りに今日は「貴弾」やっていっきまーす!』

 

『おや? 回線の調子が悪いのかな? もしかして僕の声聞こえてない?』

 

『聞こえてませーん!』

 

『確認できましたね。ネット回線は大丈夫なようです。大丈夫じゃないのは礼ちゃんの頭の回線だけみたいですね』

 

 配信開始の時点からエンジン全開のレイちゃんに、恩徳さんは淡々と、時にエッジを利かせながら返す。この会話の温度感とテンポの良さが聞いてて癖になる。

 

「『貴弾』……彼が応募動画で『New Tale』に送ってきた時にやっていたのと同じゲームなのかしら」

 

「いや、あれとは違うよ。どっちも同じバトルロイヤル形式のFPSだけどね。ちなみに貴弾は略称だよ。正式名称は『Noble bullet(ノーブル バレット)』」

 

 これから恩徳さんが配信で行うNoble bullet、略称貴弾というゲームは応募動画でやっていたものとは違うけれど、どちらもFPSで系統としては似通っている部分もあるタイトルだ。それに、ことあるごとにレイちゃんは『自分よりもお兄ちゃんの方がうまい』と口にしていた。きっと目を(みは)るようなプレイを見せてくれるのだろう。

 

『それでお兄ちゃん、エイムの感覚は取り戻せた?』

 

『うーん……おそらく? とりあえず止まってる(まと)には合わせられるから、あとは実戦で、って感じかな』

 

『「絶望圏(ぜつぼうけん)」ばっかりやってるから感覚鈍るんだよ?』

 

『ADZ、もしくは絶対国防圏と言ってほしいね』

 

『呼び方が違うだけじゃん』

 

『僕はADZが広まらない一因に略称が影響してるんじゃないかって思ってるんだよね。ただでさえゲームシステムが鬼畜だなんて言われてるのに「絶望」なんて恐ろしい名詞がついてたら手が出にくくもなるよ』

 

『難易度もそうだったけどUIも相当癖があったよ。何よりあのゲーム性が人を選……くふっ。……ふふっ、コメントで〈あれはFPSじゃなくてホラーゲーム〉って言われてるよ。〈ゲームじゃなくて精神修行の教材〉だって! あははっ』

 

『それは……間違ってるとも言えないんだよね……。結構メンタルに来ることあるからね……。で、でも、ちょっと前に大型アップデートがあって、UIもかなり改善されたし、リリース直後から仄めかされていたスキルがとうとう本格的に追加されたんだよ。それがだいぶ難易度の緩和に繋がったから、ぜひ皆様もこの機会に一度、お試しでもいいので触れてみてはいかがでしょうか?』

 

『なんで今日配信するゲームとは違うのを宣伝してるの!』

 

『プレイ人口が少ないんだ……。このままじゃ街を守れないんだ……。〈布教活動助かる〉……どうやら数少ない同胞が配信を観に来てくれているようですね。ありがとうございます。いずれADZのプレイ配信もやりたいと思っているので、その時までどうかご無事で』

 

『やらせませーん! お兄ちゃんはずうっっっっと私と貴弾やるんですーっ! というわけで、さっそくやっていこうと思います、け、ど! その前に一つね、自慢させてもらいたいことがあるんですよ』

 

『僕のほうのコメント欄でもざわついていた待機画面にも使っていたイラストについて、だね』

 

『そう! あのイラストすっごくいいでしょ?! 私の配信を前から見てくれている眷属さんはご存知だと思うけど、ちょくちょく話題に出していた親友、ゆーが描いてくれたんだよ!』

 

『もう一度、画面にイラストのほう出しておきますね』

 

『おー! 私も出しとこっと!』

 

 恩徳さんはそう言って、画面にもう一度イラストを登場させた。何度見ても引き込まれるような完成度である。

 

「あの『ゆー』さんが……こんなに画力高かったんだ」

 

 レイちゃんは配信でも時折ゆーさんについて話していた。いつかの配信で、ゆーさんは絵がとても上手だと評していたことがあったけれど、まさかプロのイラストレーターにも比肩するほどの腕をお持ちとは思わなかった。

 

「ゆーさん?」

 

「うん。レイちゃんがとても仲良くしている子らしくて、わりと頻繁に名前を出してたんだよ。ユーモアのある子みたい。つい最近もお兄ちゃんと話している時に愉快な勘違いをしていたって、レイちゃんが」

 

「……ゆーさんとやらは、仁義君と直接お話するくらいの関係なのね……」

 

「あー……まぁ、レイちゃんのリアルのお友だちなわけだし……。お家で遊んだ時に恩徳さんと顔を合わせることもあるよ、きっと」

 

 初めてゆーさんの話をした時、レイちゃんはつい口が滑ったという印象で『ゆー』と言っていたけれど、『ゆきね』さんの頭を取って呼んでいたようだ。愛称なのだろう。

 

『本当にこのイラストすごいよね。僕、最初見た時言葉が出なくなるくらい驚いたんだ。描き込みの密度が途轍もない。圧倒されたよ』

 

『だよねだよね! 私も最初送ってもらった時すっごいテンション上がっちゃった!』

 

『そのまま僕の部屋まで来たくらいだもんね』

 

 レイちゃんが自分の部屋に駆け込んできた時のことを思い出したのか、恩徳さんはくすくすと穏やかに笑った。その柔らかな微笑は、どこか裏がありそうなジン・ラースの表情すらも善良な青年のそれに変えさせた。

 

 きっと恩徳さんは今、面接の時にも一瞬だけ見せた心の底からの笑顔を見せているのだろう。

 

「……あぁ、やっぱり」

 

 わたしは彼の、普段よりもずっと幼く見えるあの表情が好きだ。

 

『ここでリスナーのみんなにお知らせでーっす! 配信の最後に言おうかと思ってたんですけど、タイミングがいいので今言いますね! 実はゆーにお願いして、私たち「悪魔兄妹」の手描き切り抜きを描いてもらえることになりました!』

 

『ゆーさんもお忙しいでしょうからどれほどの頻度になるかは未定ですが、よければそちらの動画も見ていただけると嬉しいです』

 

『概要欄にゆーのチャンネルのURLを貼っておきますので、よければ私たちのチャンネルと一緒に登録してくださいね!』

 

 華やかな声で宣伝するレイちゃんに、意外というか、意表を突かれた思いだった。

 

 レイちゃんは事務所的な良し悪しは別として、あまりVtuberとしての人気というものに固執しない性格だと思っていた。

 

 たまにリスナーからおすすめされたゲームをプレイしたり、同期や後輩と多人数でできるゲームをすることはあっても、基本的には自分がやりたいと思ったことしかレイちゃんはやらない。

 

 配信中も大多数の男性リスナーの好みに寄せて声を作ったりもしない。なんなら普通に話している時よりも声が低くて素っ気ない。塩対応がデフォルトになっている子なのだ。

 

 そんな子なものだから、配信の終了間際に他の子たちがやっているような、チャンネル登録やSNSのフォローを勧める文言もない。だいたいいつも配信の感想を話して、リスナーのコメントやスーパーチャットにお礼を言って、それでさよならだ。実に後味さっぱりな配信である。

 

 今になって配信者の人気のバロメーターの一つであるチャンネル登録者数を増やそうと方針を転換したのは、恩徳さんのことがあったからだろう。ファンを増やすことが、恩徳さんの配信活動の安定に繋がると判断した。

 

 それほど強いこだわりはなかったのかもしれないけれど、お兄さんの為ならこれまでやってきたやり方をすぐさま放り投げられるレイちゃんの決断力は尊敬する。その決断力、覚悟や胆力がわたしにもあれば、今の状況も何か変わっていたのかもしれない。

 

「信頼できる知り合いに仕事を依頼している……礼愛さんが言っていた件はこれだったのね」

 

 沈思黙考していたわたしの耳に、あーちゃんのそんな呟きが届いた。

 

「依頼?」

 

「ええ。『悪魔兄妹』というブランディングで活動するにあたって、知り合いに依頼していたらしいの。プロモーションの一環、ということだと思うわ」

 

「いくら配信頻度が高くても、配信自体が面白くても、初見の人をライブ配信に来させるには限界があるもんね……。レイちゃん以外にコラボしてくれる相手もいない。切り抜いてくれる人もすぐには現れないだろうし……。そこで先んじて画力のあるイラストレーターに切り抜きのイラストを依頼するっていうのは、名前を知ってもらう方法としては理に適ってるね……」

 

「打てる限りの手を、礼愛さんは打っていたのね……。……なのに、私は……っ」

 

「わたしたちは、わたしたちのできることをしよう。配信の後でレイちゃんに連絡して話を聞いて、ゆきねさんにコンタクトを取ろう。『New Tale』から公式の認証をしておけば、いちいち許諾の申請も省けてゆきねさんもやりやすくなるだろうし」

 

「そう、そうね。……ごめんなさい」

 

「いいよ。あーちゃんには実務のほうを任せるし」

 

「ええ。任されたわ」

 

 体を傾けて、ぽんと軽く肩をぶつける。すると、まだ多少は固かったけれどあーちゃんは小さく頬を緩めた。

 

 気を取り直せたようでなによりだ。

 

 もうわたしたちには、うじうじと落ち込んでいる権利すらないのだ。落ち込んで俯いてなんていられない。顔を上げて、やれることを探さないといけない。

 

『それじゃ、そろそろ始めようか。配信始まってからしばらく経ってるのにまだ訓練場から動いてないからね』

 

『おお! そういえばそうだった! さっそくマッチンあ、お兄ちゃん!』

 

『はい、こちらお兄ちゃんです。どうしたの?』

 

『あれ見せてよ、左右端の(まと)にぱっぱっぱって当てるやつ!』

 

『フリックショットね。僕としてはフリックよりもトラッキングエイムやリコイルコントロールの練習の方が有意義だと思っているんだけどね』

 

『お兄ちゃんの主義は知らないよ。私がお兄ちゃんのフリックショット見たいって言ってるの! やって!』

 

『お望みとあらば』

 

 急におねだりするレイちゃんに、恩徳さんは反論することなく了承する。すぐさま標的が撃てる場所まで移動していく。

 

「……本当に、仁義君と一緒にいる時の礼愛さんは、私の知っている礼愛さんとはどこまでも違うのね……」

 

「わ、わたしもこんなに駄々っ子なレイちゃんは見たことないなぁ……」

 

「……でも」

 

「ん?」

 

「とっても愛らしいわね……」

 

「わたしも思った! はちゃめちゃに可愛いよね!?」

 

「急に声大きいわね……」

 

 いつもはお姉さんの役回りをしているレイちゃんの甘えんぼなところというのは、ギャップもあいまってとってもきゅんきゅんくる。

 

 わたしも頼り甲斐のあるお姉さんムーブをすればこんなふうに甘えてくれるのかな。いや、無理だろうな。ゲームの腕然り、言葉遣いやネットリテラシー然り、勉学やマナー然り、PCの操作然り、多方面においてしっかりしているレイちゃんに対して、わたしがお姉さんぶれるような分野はない。なんなら前に送ったメッセージの誤字をオブラートに包みながら優しく指摘されたくらいだ。すでに頼り甲斐のあるお姉さんのメッキは剥がれている。勝っているのは無駄に重ねた歳くらい。そんなもの負けているのと同義だ。泣きそう。

 

『それじゃあやってくね。画面酔いしやすい人は十秒くらい目を瞑っててくださいね。はい、左、右、左、右ー』

 

『お、おっ、おーっ! あはははっ! お兄ちゃんのこれ好きー! 気持ちいいんだよね!』

 

『何が楽しいのか僕にはわからないけど、礼ちゃんが楽しそうで僕も嬉しいよ』

 

「うっ……っま。なにこれ……」

 

「少し酔ってしまいそうね……こんなに素早く画面が動いているのに、よく当てられるものだわ。ところで、私はFPSゲームに触れた経験がなくてわからないのだけれど、これは上手いほうなのかしら?」

 

「はちゃめちゃに上手いよ……。レイちゃんが無闇にお兄さんを持ち上げるものだから、わたしの中でかなりハードル上がってたけど……ここまでだとは」

 

 いくつも立ち並ぶ人間大のシルエットの標的、その左端へ一発撃ち込めば、次はすぐさま右端の標的へと撃ち込まれる。その次は左端から二番目、次は右端から二番目の標的へとエイムカーソルが飛び移る。その要領で段々と中央の標的へと近づいていき、中央の標的の両隣まできたらリロードを挟み、折り返すように再び左、右と銃口が振られていく。左端から二番目、右端から二番目、左端、右端へと正確に標的を撃ち抜いて、ようやく銃声は鳴り止んだ。

 

 驚くべきことに、一発としてミスショットがない。しかも二発を除いて他はヘッドショットという冗談みたいな結果だ。FPSをメインに配信している元プロのストリーマーみたいな驚異的な腕前に、もはや言葉もない。

 

「やっぱり上手なのね。さすが仁義君だわ」

 

「そんなにあっさりと……やったことない人にはまったく凄さが伝わらないのがくやしいっ」

 

 とんでもないシーンを見たというのに、あーちゃんのリアクションは淡々としたものだった。そういえば恩徳さんが送ってきた応募動画を見ていた時も、あーちゃんはボイスドラマについての感想は濃密だったけれどプレイ動画については小並感チックなものだった。

 

 まぁ仕方ないけどね。あーちゃんは最近ようやくゲームも嗜むようになってきたとはいえ、FPSは食指が動かないみたいでやってない。

 

 実際に自分が経験した事がなければ、こういったプレイがどれだけすごいのかは十全に伝わらない。やっている人が簡単そうにやってのけてしまっているからだ。なんだか凄そうなことやってるなー、みたいな印象でしかないだろう。

 

『うん、満足した! ありがと、お兄ちゃん!』

 

『それはよかった。それじゃそろそろ戦いへと赴こうか。クラスマッチでいいの?』

 

『大丈夫ー。せっかくだからお兄ちゃんのオーダーで今日はポイント盛らせてもらおっと』

 

『ぐっと肩が重くなったよ、責任感で』

 

 レイちゃんは甘えるようにプレッシャーをかけ、恩徳さんは緊張とは無縁そうな自然体の声で返す。二人が仲の良さをこれでもかと浴びせてくる。そのうち蒸発してしまいそうだ、尊さで。

 

「クラスマッチ……。オーダー……。雫、専門用語が多すぎてよくわからないわ」

 

 そうだった。あーちゃんは、これからレイちゃんと恩徳さんがやるNoble bullet(貴弾)はおろか、FPS自体もほとんど知らないのだった。初心者よりも初心者のあーちゃんには、専門用語が乱れ飛ぶ二人の会話は理解が追いつかないだろう。ところどころで解説を加えておいたほうがいいかもしれない。

 

「えっと、まずこの貴弾っていうゲームを遊ぶモードにフォーマルマッチとカジュアルマッチっていう二種類があるんだよね」

 

「フォーマル、カジュアル……スーツみたいね」

 

「……たしかに。適当なイメージだけど貴族感あるね」

 

「中身がまるでないふわっとしたイメージね」

 

 ゲーム内でのマッチングの種類としか見ていなかったのでそんなこと考えたこともなかった。

 

「それで、そのフォーマルマッチっていう形式のほうだと、勝ったらクラスポイントっていうポイントがもらえるの。それをたくさん集めるとプレイヤーの階級が上がるんだよ。逆に負けたらそのポイントは下がっちゃうから、プレイヤーはみんな頑張って勝ち続けてクラスを上げようとしてるの。クラスを上げるほうのマッチングってことでクラスマッチって呼ばれることも多いね」

 

「なるほど、そのクラスという階位システムがプレイヤーの実力の証明になるのね。……さっき、仁義君のコメント欄に〈妹にキャリーしてもらうのかよ〉っていうコメントがあったのだけれど、それはつまり、強い人を仲間に加えて勝ちやすくすることで自分のクラスを上げようとしている、というニュアンスで捉えていいのかしら?」

 

「り、理解が早すぎる……そ、その通りだよ」

 

 専門的な単語の意味やゲームの仕様について無知なだけで、あーちゃんは基本的に物事の呑み込みが早い。概要をおおよそ理解できれば、あとは英単語の意味や前後の文脈から推察して芋蔓式に理解していけるのだろう。なんと説明しがいのないことか。

 

「オーダーというのは?」

 

「貴弾だけじゃないんだけど、チーム戦のFPSって指示出しが重要なんだよ。戦いの時とかだと、そうだなぁ……貴弾の場合だと三人一組のパーティになるんだけど、自分たちのパーティーよりも先に相手チームの人数を一人減らせたら戦いがすごくやりやすく進められるから、全員で敵一人を優先的に狙って人数差で有利に進めようとしたりとかするんだけど、オーダーの人がここにいる敵を狙おう、とかって指示を出すの。他には……この手のバトルロイヤルって広大なマップにプレイヤーが散らばって戦っていくんだけど、どんどん自由に移動できるエリアが縮小していくの。場所によって建物や地形、周囲の障害物に違いがあって有利不利が発生するから、どうやって移動してどの場所を陣取るかもすごく大事なんだよね。どの敵をまず攻撃していくとか、どこに移動するとか、そういう指示を出す人のことをオーダーとかIGLとかって言うんだよ」

 

「オーダーというのはそのチームの指揮官、ということなのね。ありがとう、よくわかったわ」

 

「……うん、なんだかわたしの説明した分以上によくわかってそうで怖いけど、力になれたんならよかったよ」

 

『そういえばお兄ちゃんのクラスって今どこだっけ? 一緒に行けるのかな』

 

『礼ちゃんと一緒だよ。いつ誘われても一緒にできるようにクラスは常に調整してるから』

 

『あははっ、さすがーっ! ……ん? くふっ、ふへへっ……』

 

『え、どうしたの……き……笑い方して』

 

『気持ち悪いって言いかけなかった? ねえ、お兄ちゃん? ねえ』

 

『ううん、ぜんぜん、まったく? 可愛い礼ちゃんにそんなこと言うわけないでしょ? 綺麗って言おうとしたんだよ。ちょっと言葉に詰まっちゃっただけ』

 

『それならいいけど……。あ、そうそう、コメント欄でね? 〈キャリー配信〉って言ってる人がいて、おもしろいなーって』

 

『え、キャリーには該当しないと思うけど……礼ちゃんと僕、同じクラスだし』

 

『コメントした人、きっと私がお兄ちゃんよりも強いって思ってるんだろうね。実際は逆だけどね。私がお兄ちゃんにキャリーしてもらうんですーっ! へへー、いいでしょー』

 

『待って待って、レイちゃん。せめて一回勝ってからそのセリフ言ってもらっていい? 始まる前から勝ちを確信されるのは少々プレッシャーが……』

 

『三連続で一位取ります!』

 

『これだけ言ってどうしてさらにハードル上げたの? お兄ちゃん動けなくなっちゃうよ。プレッシャーでエイム震えちゃうよ』

 

『さあ、行くぞー!』

 

『……頑張ります』

 

 レイちゃんの威勢の良い掛け声と、反比例するように萎んでしまった恩徳さんの声で訓練場からマッチングの待機画面へと移った。

 

 




FPSに詳しくない人だと専門用語とかわからないところもあると思うので、こんな形になりました。ここからしばらくゲーム配信です。

誤字脱字修正報告ありがとうございます!助かります。

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ナコトさん、スーパーチャット、アリゴトゴザイマァス!
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