サイコバグなお兄ちゃん、Vtuberになる。   作:にいるあらと

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一章でのいざこざ、というかすれ違いの清算のお話。


『被害者』

 コインパーキングに車を駐車し、快適な車内から質量を伴っているかと思うほど燦々と照りつける日差しの下に降り立つ。

 

「はい」

 

「ん……ありがと」

 

 助手席側に回ってドアを開けて、礼ちゃんの手を取る。一言呟いた礼ちゃんは視線を下げながら車を降りた。

 

 何度も乗っている車だ、地面までの高さなんてわかっている。足元に注意しているわけではない。気持ちの問題だ。

 

 今日の服装は、僕はスーツ、礼ちゃんは制服。礼ちゃんの手には有名ケーキ店の大きな紙袋、行き先は僕たちが所属している『New Tale』の事務所。

 

「あの、礼ちゃん。僕の腕引っ張りすぎじゃない?」

 

「……気が重い」

 

 まあ、そういうことである。

 

 デビューしてからこれまでに渡ってやらかしてしまったことへの謝罪のため、とうとう『New Tale』の事務所へと(おもむ)いたわけだ。

 

「大丈夫だよ、礼ちゃん」

 

「……そうかなあ。私、安生地(あおじ)さんにひどいこと言っちゃったし……。直接顔を合わせるの、あのことがあってから今日が初めてだし……」

 

 僕がデビューしたばかりの頃、僕の配信に荒らしが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)していたことを心配してくれた礼ちゃんは僕にリア凸──配信上のジン・ラースではなく現実(リアル)の僕のほうに突撃を敢行した。そのリア凸について、礼ちゃんのマネージャーでもある『New Tale』のスタッフさん、安生地さんに通話を繋いで説明していた時、少々口論になってしまった。

 

 その一件以来、最低限の業務連絡程度はしているようだけれど、それ以上のやり取りは気まずくてしていないらしい。

 

 あれから時間を挟み、炎上騒動も解決して礼ちゃんの頭も冷えたので改めて今日この日、正式に謝罪にやってきたのだった。

 

 『New Tale』の事務所が入っているビルまで、気どころか足まで重そうな礼ちゃんを励ましながら、引き()るようにして歩かせる。そろそろ表情を取り繕ってもらわないと『New Tale』のスタッフさんたちにかえって罪悪感を植えつけることになってしまう。

 

 『New Tale』には未成年者が複数人いる。なので十八歳の礼ちゃんでも事務所最年少というわけではないけれど、でも最年少ではなくても高校生に頭を下げさせて悦に入るような性根の腐った大人は『New Tale』にはいない。

 

 謝罪にきたのに、ずっと礼ちゃんが泣きそうな顔をしていたら逆に相手を萎縮させることになりかねない。事務所の人たちに悪いことをしてしまった、と反省しているのはいいことだけども。

 

「大丈夫。真摯に謝って、ちゃんとお話しすればきっと仲直りできるよ」

 

「そう、だといいなあ……」

 

「そうだよ。謝ってもどうにもならないことなんて世の中意外とそんなにないんだから、大丈夫だよ」

 

「お兄ちゃんはちょっと反省が足りてないんじゃないかな」

 

 ずっと目線を地面に向け続けていた礼ちゃんが、ようやく上を向いた。責めるような礼ちゃんのじと目が僕の顔に突き刺さる。

 

「してるよ。反省してる。後悔もしてる。次はもっとうまくやる」

 

「違うんだよね、ベクトルが。反省も後悔も明後日のほう向いちゃってるよ」

 

「この暑さでケーキが傷んじゃう前に早く事務所に行こっか」

 

「……はあ。そうだね、せっかくの美味しいケーキがだめになっちゃったらもったいないし」

 

 よし、と小さく気合を入れて、礼ちゃんはがっしりと僕の腕を掴みながら、というかもはや抱き込みながら、ビルのエレベーターに足を踏み入れた。

 

 相も変わらずのんびりとしたエレベーターで七階に到着し、事務所のインターホンを押す。

 

 この時間にお伺いしますと伝えていたので待機していてくれたのか、すぐに応答があった。

 

 しばし待つと、がちゃりと扉のロックが外れる音がした。

 

 事務所側のインターホンで操作をすればマンションのオートロックのようにその場で解錠ができる。てっきりそうやって鍵を解除したのかと思って扉に手を伸ばそうとしたら、ドアノブを掴む前に扉が動いた。

 

「お待ちしてました。こちらへどうぞ」

 

 扉を開いて出迎えてくれたのは礼ちゃんのマネージャー兼僕と『New Tale』との連絡相談窓口をしてくれている安生地さんだった。

 

 以前お会いした時よりも対応も表情も固い気がする。それに、どこか疲れてらっしゃるようだ。僕のデビュー以前の、烏の濡れ羽色とはかくあれかしといった印象だった柳髪はどこか艶を失っていて、なにより目元のひどい隈が安生地さんの表情に影を落としている。

 

 どうしてこんなことに、と思ったけれど、これもしかして僕絡みの対応で疲弊されてらっしゃるのでは。

 

 デビュー前から炎上騒動への準備を要求され、デビュー後は対応に東奔西走南船北馬させられ、苦心惨憺しながら対応を続けていたら礼ちゃんの件で追い討ちを加えられ、僕が配信している時はモデレーターをして荒らしコメントを消して回り、ラインを越えた荒らしたちへの法的措置の際には話し合いにも参加し、荒らしていた本人と配信上でお喋りしようとしていた僕を制止し、荒らし本人を公認切り抜き師にしたいと無茶なお願いをされて面倒な手続きをさせられ、そんな中で普段の仕事もこなし、僕への連絡役も務めてくれていた。

 

 うむ、なるほど。九割方僕のせいだ。仕事量がどう考えてもおかしい。

 

「あの、安生地さん、大……寝れてますか?」

 

 大丈夫ですか、と訊きそうになったがどう見たって大丈夫ではないので改めた。

 

「え? はい、寝れてますよ。ひと……恩徳さんの例の寝かしつけ配信のおかげで睡眠には困らなくなりました」

 

「ああ、なるほど。……お役に立ててるなら、はい……よかったです。そのためにあの配信をしたようなところがありますからね」

 

「……ここにも被害者が……」

 

 ぽそりと礼ちゃんが呟いた。

 

 僕としては『被害者』なんて表現は語弊を招きかねないので遺憾の意を表明せねばならない。

 

 寝かしつけ配信以降、あの動画を流していない時は眠りが浅くなった、という声をちらほら聞くけれど、裏を返せば動画を流している時はぐっすりと眠れるということなのだから問題も被害もないはずだ。

 

 寝かしつけ配信の三日後くらいに夢結さんと話した礼ちゃんが言うには、寝かしつけ配信で僕が発した『おやすみなさい』というセリフを寝転がりながら聴いただけで瞬時に眠れるようになったらしい。すぐに睡眠が取れるようになったのはいいことだ。決して被害ではない。パブロフの犬的な反射の域に達しているけれど、断じて被害ではない。

 

 ちなみに、あの寝かしつけ配信はアーカイブの中でも再生数の伸び方がまったく鈍らない稀有な動画になっている。安生地さんや夢結さんのように定期的に視聴してくれているリスナーさんが多いことの表れだろう。

 

「では、その隈は……なぜ?」

 

 はっ、として顔を背けながら目元に手をやる安生地さん。メイクで誤魔化せていると思っていたのかもしれない。

 

「これは、えっと……今日のことで、緊張して……」

 

 そう言って、安生地さんは苦笑いを浮かべて目を逸らした。

 

「っ…………」

 

 同時に、僕の腕に絡めている礼ちゃんの細い腕が震えた。縋りつくように回す腕の力が少し強まった。

 

 安生地さんは緊張しているが、でも礼ちゃんも同じくらい緊張している。

 

 礼ちゃんから口火を切るのは難しいだろうから、僕がきっかけを作ろう。ここで話しておかなければ、こうして安生地さんとしっかり話す機会があるかわからない。

 

「安生地さん、僕のデビューからたくさんご迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした。そして、礼ちゃんを庇っていただいたこと、本当に感謝しています。ありがとうございます」

 

 僕は深く頭を下げた。

 

 安生地さんが庇ってくれていなければ礼ちゃんへの風当たりはもっと強くなっていただろう。事務所の命令を無視する扱い辛いライバーという印象にもなっていたかもしれないし、処罰も重いものになっていただろう。リア凸してからも礼ちゃんが普通に配信して、頻繁に僕ともコラボして、同期の方々とも一緒に配信ができていたのは、安生地さんが礼ちゃんの気持ちを斟酌(しんしゃく)して方々に手を回してくれたおかげなのだ。

 

 頭が下がる思いである。安生地さんの献身的なサポートがあったればこそ、礼ちゃんと僕は楽しく配信できていたのだし、今もできているのだ。

 

 謝意を示す僕に、安生地さんは強く動揺した様子だった。かつ、と背の高いヒールが音を立てて一歩引いたことが、頭を下げている僕にもわかった。

 

「そ、そんなことありません! やめてください! 恩徳さんに謝られては、私たちには立つ瀬がありません! わ、私、たちがっ……ほんと、なら、私が、もっと……っ。どう、にか……っ、できて、いれば……っ」

 

 ぽた、ぽたぽた、と続けて雫が(したた)った。

 

 その水滴の発生源はなんなのだろうと顔を上げて驚いた。

 

 理知的な安生地さんが、まるで幼子のように大粒の涙を流していた。

 

「あ……安生地、さん。あの……え」

 

 どうして安生地さんが泣くようなことになるのか、わからない。

 

 言ってしまえば安生地さんは『New Tale』に勤めているただの一スタッフに過ぎない。僕と礼ちゃんのマネージャーなので、業務内容に含まれると言えば含まれるのかもしれないが、本来であればやる必要のなかった面倒事の後処理を背負わされた立場だ。僕と礼ちゃんに迷惑をかけられただけ。礼ちゃんの言葉ではないが、安生地さんもまた『被害者』だ。

 

 炎上騒動の一件が片付くまで神経も睡眠時間もすり減らしていただろう。ゆっくりと気を休めて趣味に没頭したり、お酒を嗜んだりする時間を作れていたとは到底思えない。

 

 僕の担当だったというだけで、礼ちゃんのマネージャーだったというだけで理不尽に忙殺されていたのだから、ストレスを溜め込んでいてもなんらおかしくない。

 

 怒鳴ってもいい。怒りをぶつけたっていい。礼ちゃんに矛先を向けないのであれば殴られてもいいと考えていた。それで気が済むのなら仕方ないかな、とも。

 

「わたっ、私がっ……なにも、っ、できなかっ……っ。あなたばかりにっ、負担をっ……ごめんなさいっ……」

 

 なのになぜ、怒っていい立場の安生地さんが罪悪感を抱いているのだろう。無力感に、自責の念に、悔恨の情に苛まれているのだろう。どうして、人前で涙を見せるほどに悲しんでいるのだろう。

 

 安生地さんには非がない。罪がない。悲しむ必要なんてないのに。

 

「……お兄ちゃん、持ってて」

 

「……いっ。え、礼ちゃん?」

 

 当惑の渦中に放り込まれた僕の正気を取り戻させたのは、まるで殴りつけるように鳩尾付近に押しつけられた礼ちゃんの手だった。

 

 僕にケーキボックスが入った袋を押しつけた礼ちゃんは駆け出すように前へ出て、俯いて目元を手で覆う安生地さんの頭を包み込むように抱きしめた。

 

「安生地さん、ごめんなさい。私、安生地さんにひどいこと言いました。ごめんなさい」

 

「っ、ぐすっ……いえ。いいの、礼愛さん。あなたには『New Tale』の対応を批判する権利も、私に文句を言う権利もあるのよ」

 

「……違うんです。私は勘違いしてたんです。『New Tale』には、お兄ちゃんの味方になってくれる人はいないんだって、そう思ってたんです」

 

 礼ちゃんは啜り泣く安生地さんを抱き留めながら、囁くように感情を一つ一つ言葉にしていく。

 

「きっと今いるライバーや『New Tale』の経営を優先して、お兄ちゃんを切り捨てたんだって、そう思ってたんです。でも違った。『New Tale』の人たちはみんな、たくさんお兄ちゃんのサポートをしてくれてた」

 

「そんなこと……ないんです。当たり前のことしか、私たちにはできなかったから……できることを、まるで贖罪するような気持ちで、っ……自己満足でやっていただけでっ……」

 

「贖罪とか、自己満足とか、そんな気持ちになった時点で、お兄ちゃんを大事にしようとしてたことがわかります。そんな自罰的な気持ちはもう、捨てていいんですよ」

 

「他の子たちに被害が出なかったのも恩徳さんがみんなを庇ってくれてたからなのに……それなのに私は、助けることができなかった……っ。『New Tale』を守ってくれたのも、炎上の一件を終わらせてくれたのも恩徳さんで……私は、何もできなくてっ……」

 

「何もできなかった?」

 

 思わず口を挟んでしまった。女性の心どころか人の心を(かい)することができない僕が口を挟むべきではないと考えて見守っていたけれど、さすがにそこは黙って聞いてはいられなかった。

 

「たくさんやってくれてたじゃないですか。安生地さんは助けたつもりはないのかもしれませんけど、僕はとても助かってましたよ。メッセージでやり取りして励ましてくれて、応援してくれていた。『New Tale』や他のライバーさんの配信やSNSでの状況も事細かに情報共有してくれていた。とても助かってましたよ」

 

 コミュニケーションアプリを通じて、安生地さんとは連絡を密にしていた。配信をしている時に気分が悪くなったりしていないか、SNSで不快な思いをする投稿がなかったかなど、しきりに心配してくれていたのだ。もし僕がその時点で『このコメントが気持ち悪い』とか『この投稿で傷ついた』などと安生地さんに伝えていれば、その時点ですぐに法的措置に打って出られるように安生地さんは動いてくれていただろう。

 

 僕の都合があってそういう対処を取らなかっただけで、安生地さんはいつでも開示請求ができるように見えないところで準備してくれていたはずだ。

 

 何よりも助かっていたのは、所属ライバーの近況を教えてくれていたところだ。

 

 情報収集しようと思えばできてはいたけれど、礼ちゃんの安全を最優先にするためにタスクを多く振り分けていたので、全ライバーの配信やSNSを(つぶさ)にチェックして荒らされていないかなどの確認まではなかなか手が回らなかった。

 

 そういう忙しい時に安生地さんが持ってきてくれる所属ライバーの情報は、ヘイトコントロールする上でとても役に立ったのだ。

 

 何もできなかった、だなんてとんでもない。僕はすごく助かっていた。

 

「…………」

 

 安生地さんを抱きしめたままの礼ちゃんが首だけ回して、僕に冷たい視線を向ける。

 

 なるほど『余計なことは言うな』ということね。

 

 僕としても安生地さんにこれ以上いらぬ気苦労を与えたくない。口を(つぐ)んでおこう。

 

 顔を安生地さんのほうへと戻した礼ちゃんは優しくて柔らかい口調で語りかける。

 

「そうですよ。安生地さんはとてもたくさん働いてくれていたんです。ふだんのお仕事もこなして、お兄ちゃんの配信のモデレーターもやって、事務所とお兄ちゃんとの連絡係も務めて、たくさん頑張っていたんですから気に病む必要ないんです」

 

「でも……デビュー前に私がもっと上司と話をして、せめて恩徳さんだけでもデビュー時期を遅らせてもらえるようにしていたら、あんなに配信やSNSが荒らされることもなかったのに……」

 

「それは……安生地さんの責任じゃないです。安生地さんはやれることを最大限に努力したんです」

 

「礼ちゃんの言う通りですよ。それに、デビュー時期を遅らせていたら礼ちゃんとコラボ配信ができなくなって、僕はVtuberを辞めることになっていたでしょうし」

 

 結果論でしかないけれど、あの時デビュー時期を遅らせるという判断を上司の方が取らないでくれて本当に良かった。炎上騒動の一件は、今思えば至る所に分水嶺があったけれど、デビュー時期を遅らせるか否かという決断が一番最初の大きな岐路だったように思う。

 

「……お兄ちゃん。それどういう意味?」

 

「デビュー時期が遅れていたら、きっと界隈には荒らしグループの活動によって『男女で関わるべきではない』という風潮が定着していた。その風潮がまだ根付いていない時期にデビューしたからジン・ラースの味方をしてくれた人もいたんだよ。デビューを遅らせていたらジン・ラースを取り巻く環境は状況を覆せないほどに悪くなっていただろうね。それこそ、実の妹だから、なんて理由じゃ言い訳にならないくらい」

 

 集団でジン・ラースの配信やらSNSやらを荒らしていたグループは、ジン・ラースに目をつけるまでは男女でコラボしている配信に乗り込んで迷惑行為を働いていた。男女でのコラボ配信を荒らすことで、男女どちらの配信者にも『男女コラボは利がない』と思わせることが目的だった。

 

 実際、ジン・ラースのデビュー前の段階で個人勢企業勢問わず、男女コラボが激減していた。あのまま放置していれば『男女で関わるべきではない』という風潮は定着して広まっていただろう。もしそうなっていれば、騒動の鎮静化は一ヶ月や二ヶ月では到底できなかった。

 

 風潮が定着しきる前のタイミングでデビューできたからこそ、ジン・ラースは一部のごく少数からとはいえリスナーに受け入れられたのだ。

 

「え、と……それは、つまり?」

 

 礼ちゃんの腕の中から、戸惑うような安生地さんの声が届いた。

 

「つまりは、デビュー時期を遅らせていたら僕は『New Tale』をやめていた、ということです。礼ちゃんとコラボできない、あるいはコラボするまで途方もない時間がかかることになりますからね」

 

 きっと僕のことだ。界隈のリスナーの意識を改革することに費やされる時間と労力を考えたら、無理にVtuberになることを選びはしなかっただろう。

 

 礼ちゃんを納得させられるだけの理由があったのなら、もともとそこまで乗り気ではなかったことだし、その理由を盾に『New Tale』には辞退を申し入れていたと思われる。

 

 僕がVtuberとして──配信者としての自覚や自負が芽生え始めたのはデビュー配信の後のことだった。デビュー配信前の僕であれば、界隈の雰囲気と『New Tale』のデビュー延期という判断が下された段階で見切りをつけていたと予想できる。

 

 終わった過去のifをこれ以上思索するのもナンセンスか。選ぶことがなかった分岐へと思いを馳せるのはこのあたりにしておいて、僕は顔を上げている安生地さんの赤くなった目を見つめる。

 

「考え得る限りで現状が最良なことは断言します。そして最良の現状に至るまでに安生地さんが裏でたくさん頑張ってくれたことを、僕も礼ちゃんも知っています。だから胸を張ってください。誇ってください。あなたのおかげで、僕たちの今があるんです」

 

「お兄ちゃんの言う通りです。安生地さんのおかげで私は楽しく配信できてるんですから」

 

「っ、うぅっ、ぐすっ……ええ、ありがとう……」

 

 ふたたびぽろぽろと涙を零して、でもこれまでと違って、安生地さんは笑顔だった。

 

「なので僕たちの謝罪も受け取ってくださいね。僕は個人的な理由から好き勝手に決めて安生地さんに丸投げしてしまったし、礼ちゃんは独断専行と軽挙妄動があったのは確かですから」

 

「うぐっ……わかってはいたけど、人に言われると結構心にくるものがあるよ……。安生地さん、勝手なことして、ひどいこと言って、すみませんでした」

 

「いえ……私も未熟な部分がありました。『New Tale』のスタッフとして、年長者として、お二人を心身の健康を守ることができず、申し訳ありませんでした」

 

「どうして安生地さんが謝るんですか?! 安生地さんはしっかり自分のお仕事をしてた……それ以上の働きをしてくれてたじゃないですか! なのにっ」

 

「礼ちゃん。僕たちに負い目や引け目があるのと同じように、安生地さんにも罪悪感があるってことだよ。今すぐそういうのを全部忘れろっていうのは無理があるんじゃないかな」

 

「だ、だって……でも……」

 

「その心遣いは嬉しいわ。ありがとう、礼愛さん。でも結局のところ、恩徳さんには矢面に立たせることになってしまったし、礼愛さんにも悲しくて辛い思いをさせてしまったもの。礼愛さんと恩徳さんに責任があるというのなら、私にも責任があるわ」

 

「んーっ!」

 

「はいはい、落ち着いてね礼ちゃん。自分の罪悪感を解消するために誰かに負担を強いるのは間違ってるよね、礼ちゃん?」

 

 一番不満気だろう礼ちゃんを名指しすると、一瞬、きっ、と鋭い目を僕に見せて、礼ちゃんはふたたび安生地さんの黒髪に顔を埋めた。今日の安生地さんの柳髪には天使の輪っかは浮かんでいなかったけれど、それでも肌触りがいいのだろう。抱きしめてからずっと礼ちゃんは安生地さんの黒髪の中に住んでいる。

 

「礼愛さん」

 

「……わかった」

 

 名を呼びながら安生地さんが礼ちゃんの頭を優しく撫でると、不承不承(ふしょうぶしょう)といった様子を誤魔化すこともしないで一言だけ礼ちゃんは答えた。

 

「くすっ……ありがとう、礼愛さん」

 

 そんな年相応より若干幼いくらいの振る舞いを見せる礼ちゃんに、安生地さんは微笑みを(たた)えていた。

 

 安生地さんと礼ちゃんは二人とも艶のある黒髪で、二人とも涼やかな眼差しをしていて、そして二人とも女性の平均身長よりもよほど背が高い。共通点の多い二人が身を寄せ合っているので、なんだか姉妹のように思えてきた。とても心が穏やかになる光景だ。尊いなあ。

 

「迷惑や心配をかけてしまったぶんは、これからの活動で返していこうね。僕らが活躍できれば、それは担当している安生地さんへの恩返しになるはずだからね」

 

「まぁ、それはそうですが……私としては、お二人が楽しく配信してくれるのがこれ以上ないご褒美になります」

 

「だそうだよ、礼ちゃん」

 

「むう……んううっ! ……わかった、わかったよ、もう。……たしかにそうだよね、自分がすっきりしたいがために安生地さんに負担を押しつけるのは間違ってるもんね。他のスタッフさんたちにも謝ったら、引き摺るのはそこまでにする」

 

「ありがとう、礼愛さん。それじゃ、そろそろ放してくれないかしら」

 

「…………」

 

「あの、礼愛さん? 冷静になって考えると今だいぶ恥ずかしいことになっていると気づいたから、できれば放してほしいのだけれど……」

 

 囚われの安生地さんがそう訴えるも、礼ちゃんはなかなか解放しようとしない。

 

 何をしているのだろうと思って盗み見た横顔から察するに、礼ちゃんはなにやら悪巧みしているようだ。

 

「私たち、仲直りできたってことでいいですよね?」

 

「え? ……ええ。礼愛さんがそう思ってくれているのであれば、私は嬉しいわ」

 

「これだけ胸襟を開いてお話ししたんですから、なんならかえって仲良くなったって言っても過言じゃないですよね?」

 

「そ、そうなのかしら? でもたしかに以前はこんなふうに話すことはなかったわけだし、仲が縮まったと言えるのかも……しれないわね」

 

「そうですよね? だから、これからは美影(みかげ)さんって呼んでもいいですか?」

 

「礼愛さん、それって……」

 

「私、もっと仲良くなりたいです。私たちが楽しく配信活動できるように親身に考えてくれて、罪悪感と自責で精神的に苦しくなるほどお兄ちゃんのことを大事にしてくれる優しい人と。これまで通りじゃない。これまで以上に、仲良くなりたいんです。……だめ、ですか?」

 

 ぎゅうっと安生地さんを抱きしめて囁くように礼ちゃんは言う。

 

 その礼ちゃんの腕に安生地さんは手を当てた。

 

「礼愛さん。腕、放してもらっていいかしら?」

 

 安生地さんの要望をどういうニュアンスで受け取ったのか、礼ちゃんは躊躇いがちに抱きしめていた腕を緩ませた。

 

 視線を斜め下に向けつつ、礼ちゃんは震える声を絞り出した。

 

「あ、あの……私、あ、安生地さんと……もっと」

 

「あら、美影さんと呼んでくれるのではなかったの?」

 

「っ!」

 

 礼ちゃんは下がっていた顔を勢いよく上げて安生地さんを見つめた。

 

「もう二度とこんなふうにお喋りできないかもしれないって、あの日は思ったわ。それがまさか、もっと仲良くなりたいと言ってもらえるだなんて、夢にも思わなかった。とても言葉では表現できないくらい……私、嬉しいのよ」

 

 言葉で表現できなかったからなのか、これまでとは逆に安生地さんが礼ちゃんを抱きしめた。身長的な意味でも年齢的な意味でも、やはりこちらのほうがしっくりくる。逆は逆でそちらも尊いけれど。

 

「わわっ……」

 

「ありがとう、礼愛さん。私、かなり面倒な人間だという自負はあるけれど、これからよろしくお願いするわ」

 

「ぐすっ……っ。えへへ、大丈夫。これでも面倒な人間にはお兄ちゃんで慣れてますから! よろしく、美影さん」

 

 そこからしばし和気藹々と、二つ隣の駅の近くにフルーツパーラーのお店があるからまた今度行こうだとか、服の好みも近そうだから休みの時買い物行きましょうだとか、それこそ姉妹のように二人はお喋りしていた。

 

 こういう時は、僕は息を潜めて存在感を可能な限りゼロにする。僕は壁だ。あるいは観葉植物だ。礼ちゃんが楽しそうに女子トークしている現場に立ち会えただけで満足である。

 

「ひと……じゃない、恩徳さんもありがとうございます。礼愛さんとの仲直りの橋渡しをしてくれて」

 

 黙って心暖まる会話に耳を傾けていたのだけど、安生地さんが気を遣って僕に話を振ってくれた。ほったらかしにしてしまったと思ったのかもしれないけれど、楽しそうにしている二人の邪魔をするくらいなら僕のことは年単位でほったらかしておいてくれてもいい。

 

 とはいえ、話しかけられた以上、残念だけれど僕も参加せざるを得ない。礼ちゃんも安生地さんとのお話には満足したみたいだし、頃合いだろう。

 

「いえいえ。僕がいなくてもきっと仲直りできてましたよ」

 

「私は、臆病なので……自分からは言い出せずに、もしかしたらずるずると長引いていたかもしれません。助かりました」

 

 実際、おそらく僕がいなくてもどうにかなっていた節はある。

 

 僕が事務所に行くと言った時に、僕からは『礼ちゃんも一緒に行く?』とは誘わなかったのだ。礼ちゃんは自分から一緒に行くと言った。自分から一歩踏み出したのだ。礼ちゃんには謝る意思があったのだから、そこまで大きく結果は変わっていなかっただろう。

 

 なんなら僕と安生地さんの親密度が修復されていないことのほうが、僕は気がかりになっている。

 

 炎上騒動前はもっとフランクだった安生地さんの話し方が、騒動が終わった後もお固いままなのだ。

 

 さすがに問題起こしすぎたから不信感が残っちゃってるのかな、と頭を悩ませていると、首を傾げていた礼ちゃんが口を開いた。

 

「美影さん。苗字で呼んでると私を呼んでるのかお兄ちゃんを呼んでるのかわかりづらいので、お兄ちゃんのことも名前で呼んだらどうですか?」

 

「え゛っ……」

 

 びくっ、と安生地さんは肩を跳ね上げさせた。体は礼ちゃんの方向を向きつつ、視線がちらちらと僕に近寄ってくる。視線が近寄ってくるだけで、僕の視線と交錯することはない。奇妙な動きだ。

 

 動揺している安生地さんに、礼ちゃんが続ける。

 

「時々お兄ちゃんの名前呼びそうになってるし、スタッフさんたちと話す時は名前で呼んでるんじゃないんですか?」

 

「え……あ、いや、あの……」

 

 言い淀みながら、安生地さんの顔はどんどん下に向けられていく。視線はとうとう僕に近寄りもしなくなり床を這いずっている。

 

 『New Tale』には僕と礼ちゃんの他にもう一組、苗字が同じ人がいる。そちらは兄妹ではなく姉妹だ。三期生の方なので、僕にとっては先輩であり、かつ礼ちゃんにとっては後輩のお二方である。

 

 双子の姉妹という設定でVtuberをやっている、本当に双子の姉妹だ。現実から設定に落とし込むパターンもあるらしい。僕と礼ちゃんのセットで『悪魔兄妹』と呼ばれているのと同様に、姉妹お二人が揃っている時は『ツインズ』や『ジェミニ』などの愛称で呼ばれている。双子座モチーフな様子。

 

 そちらの双子姉妹を呼び分ける時にスタッフさんたちは名前で呼んでいて、その流れを踏襲して僕たちのことも名前で呼び分けているのかもしれない。『恩徳さん』だけだと、僕のことを指しているのか礼ちゃんのことを指しているのかわからないだろうしね。

 

「構いませんよ、安生地さん。呼びたいように呼んでくれたらそれでいいですから」

 

 すごく躊躇っている安生地さんに助け舟を出しておく。

 

 たしかに名前呼びのほうが、どちらのことを指しているのか確認するという余計な手間が省けていいかもしれないけれど、知り合って間もない上に親しくもない男の名前を呼ぶのは抵抗があるかもしれない。

 

 別に普段通り『恩徳』呼びでも大丈夫ですよ、と予防線を張っておく。名前呼びを強制するつもりはないのだ。

 

「そ、そうですか? それなら……ひ、仁義君……」

 

 あ、そっちなんだ。

 

「はい、なんですか? 安生地さん」

 

「い、いえ……あの、呼ん──」

 

 名前を呼ばれたので返したのだけれど、『呼ん』の後は安生地さんが顔を覆いながら、か細い声で喋っていたのでなんと言っていたのか聞き取れなかった。

 

 無理をして名前呼びしているとかなら苗字呼びに戻してもらうところなのだが、僕から見た限りでは無理をしているとか嫌がっているとか、そういう様子は見て取れない。シンプルに恥ずかしがっているようにしか思えない。

 

 精神的に苦痛を感じていないのなら、あえて苗字呼びに戻す必要はないか。

 

「あ、そうだ。安生地さん、僕に敬語は使わなくていいですよ。僕のほうが歳下なんですから。前みたいに砕けた感じでいいですからね」

 

 ついでとばかりに言葉遣いもフランクなものに戻してもらおう。言葉遣いとか態度とかって、今日みたいな機会がないと言い出しづらいしね。

 

「は……え、ええ。わかったわ。ひとっ、仁義君」

 

「はい、安生地さん」

 

「こうなってくるとお兄ちゃんだけ『安生地さん』呼びって逆に違和感あるよね」

 

「ん? どういうこと?」

 

「私は美影さんって呼んでるし、美影さんは私たちのこと名前で呼んでるわけでしょ? それなのにお兄ちゃんだけ美影さんのこと苗字で呼んでたら、なんだかお兄ちゃんが美影さんに対して壁作ってるみたいじゃない?」

 

「え? ……そう、かな?」

「そうだよ」

 

 礼ちゃんの独特な感性に疑問を呈したのだけれど、なぜか自信満々な礼ちゃんは僕の疑問に食い気味で肯定した。

 

 僕自身はあまりそのあたりを気にしない性分だけれど、他人に対しての呼び方呼ばれ方というのはわりと神経質になる人もいる。

 

 安生地さんはどちらなのだろうと窺ってみると、礼ちゃんのほうを向きながら目を見開いていた。どちらなのだろう。見てもわからなかった。

 

「安生地さんは嫌だったりしませんか? 名前で呼ばれるのって」

 

「わっ、私は全然まったく、これっぽっちも嫌ではならりません。名前で呼ばれたほうが親しくなれたような気がしたような気がして嬉しいなのでぜひそうしていただけると嬉しいです」

 

「だってさ、お兄ちゃん」

 

 最初は動揺していたような挙動だったけれど、途中から安生地さんは感情を削ぎ落としたような固い顔と、捲し立てるような早口で言い切った。

 

 言語野の変調が若干どころではないくらい心配ではあるけれど、まあ言い間違いの一種なのだろう。言葉は乱れていても嫌悪感があるというわけではなさそうだからいいのかな。僕もできれば安生地さんとは仲良くやっていきたいと思っているし。

 

「それじゃあ……美影、さん?」

 

「──っ、これまで……何度も心が折れそうになったけど頑張ってきて、よかった……。もう後悔はない」

 

「えっと……すいません。いろいろと苦労も面倒もおかけしました」

 

「あはは、美影さんっておもしろい人だったんだねー」

 

 灰色に燃え尽きてしまいそうな勢いの安生地さん改め美影さんを見て、礼ちゃんはからからと笑っていた。車を降りた時とは表情が正反対だ。懸案事項を一つ片付けられてよかった。

 

 そろそろ美影さんには正気を取り戻してもらい、事務所のスタッフさんたちが集まっている場所へと案内してもらおう。おそらく最も迷惑をかけただろう美影さんには謝って仲直りもできたけれど、迷惑をかけてしまったのは美影さんだけではないのだ。スタッフさんみんなに謝罪しなければいけない。

 

「美影さん。廊下の真ん中でずっと立ち話を続けるのもどうかと思うので、そろそろ」

 

「え、ええ、そうね。ごめんなさい。話しておきたい事もいくつかあるのだし、行きましょう」

 

 目元の涙を拭ってから、美影さんは僕らに背を向けて歩き始めた。

 

 今日は事務所には謝罪にこさせてもらったわけだけれど、用事はそれだけではない。スタッフさんたちに相談があって、それも事務所に足を運んだ理由の一つである。

 

 なんと同期の一人、僧侶なんだかシスターなんだか判然としないイヴ・イーリイさんが配信中に、ジン・ラースとコラボしたいという旨の発言をされていたのだ。社交辞令の部類なのかもしれないけれど、仮に社交辞令だとしてもとても嬉しい。

 

 正直、この規模で問題を起こしてしまったので同期の方たちからは記憶からジン・ラースの存在を抹消されているかもしれないとすら思っていた。

 

 イヴ・イーリイさんが配信上でコラボしたいという旨を発信したのはリスナーの反応を見るためだろう。

 

 現在活動している中で言えば『New Tale』唯一の男性ライバー、そしてデビューしてからつい最近まで炎上していたジン・ラース。いつまたどこから火をもらうか、あるいは自然発火するかわからない危険物ならぬ危険人物。今回の炎上騒動は方がついたとはいえ、リスナーがどう感じるかはわからない。

 

 実の妹であるレイラ・エンヴィとコラボするだけ、という現状であれば『New Tale』を箱推ししているリスナーさんたちも落ち着いているように思えるけれど、他のライバーさんに接触しようとした時、リスナーがどんな反応をするか。

 

 配信上でジン・ラースとコラボしたい云々の発言をしたのは、そういった瀬踏みのような意味合いがあるのだろう。今の段階で過度な拒絶反応が現れればコラボを見送ることもできる。急に『この日にコラボします!』などと打ち出すよりよほど安全だ。

 

 僕のほうから同期の方たちに『コラボ配信しませんか?』などと誘うことはできないので、イヴ・イーリイさんのほうから申し出てきてくれたのは非常に助かる。

 

 もう少しリスナーがジン・ラースという存在に慣れてから礼ちゃん以外とのコラボ配信をしようと考えていたので、僕の計画では同期の方たちとコラボできるのはもっと先になると想定していた。こんなに早く機会が訪れるだなんて、とても嬉しい。

 

 コラボの時は何をしようかな。イヴ・イーリイさんはわりとゲームをされる方だからアイクリなどのゲーム配信でもいいし、お互いのことを知るということで雑談配信などでもよさそう。夢が膨らむ。

 

 いや、コラボ配信はリスナーの反応次第ではお蔵入りというか企画倒れになるし、スタッフさんたちと相談してから決めることになる。あまり期待して青写真を描くのは危険だ。控えておこう。

 

 そう。まずはスタッフさんたちへの謝罪からなのだ。先のことばかりに(とら)われず、目の前のことに集中しよう。

 

「……お兄ちゃん、嬉しそうだね?」

 

「そう? ……うん、そうかもね。前に進めてる気がして、ちょっと浮き足立ってるのかもしれない」

 

「……お兄ちゃんが喜んでくれてるなら、私も嬉しいよ」

 

「そうだ。ありがとね、礼ちゃん。あお、じゃないか……美影さんを説得する時に前に出てくれて。ああいう、気持ちに寄り添う、みたいなことは僕にはできないから助かったよ」

 

 そう礼ちゃんに感謝を伝えると、ぱぁっと表情を明るくさせて、事務所に入る前と同じように僕の腕に自分の腕を絡ませた

 

「くふふっ。まったくもう。お兄ちゃんは私がいないとだめなんだから」

 

「本当だよ。僕もまだまだ半人前だ」

 

「んっ、くふふっ……。大丈夫だよ、私が隣にいてあげるからね」

 

「それなら安心だ。ありがと、礼ちゃん」

 

 僕の腕を取っていなければスキップでもしてしまいそうなほど上機嫌に、礼ちゃんは僕の隣を歩く。

 

 どこかしょんぼりしていた雰囲気がなくなってよかった。やっぱり礼ちゃんには、なにより笑顔が似合うのだ。




不憫だった安生地さん(あーちゃん)の救済でした。

次はイヴ・イーリイ視点です。
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