サイコバグなお兄ちゃん、Vtuberになる。   作:にいるあらと

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一足先にわたしは上に行くぜ。

 

 映画を観終わったわたしたちは、ゲームセンターに足を運んだ。

 

 クレーンゲームで大きくてもふもふのかわいいぬいぐるみを見つけたけど、二、三回試して取れる気配がまったくしなかったので泣く泣く諦めた。こんなことならゆー姉にコツでも聞いておけばよかった。

 

 ゲームセンターの奥のほうには好きなリズムゲームがあったのだけど、二人はリズムゲームはやったことがないらしいし、わたしがゲームをやっている間待たせるのも悪いので今回は控えた。

 

 代わりに三人で比較的操作が簡単なレースゲームをした。

 

 この手のゲームは自信があったけど梓ちゃんがやたらとうまくて、三回やったけど一回も勝てなかった。由紀ちゃんには勝てたんだけどなぁ。

 

 由紀ちゃんはこの手のゲームが苦手らしい。小さい頃に梓ちゃんにぼこぼこにされたトラウマがあってあんまり触ってないんだとか。

 

 梓ちゃんのせいだった。接待プレイという言葉を知らないようだ。

 

 ゲームセンターで遊んだあとはファミレスで映画の感想を言い合ったり、ゲームセンターのクレーンゲームのアームにみんなでケチをつけたり、レースゲームのハンドルにもケチをつけ始めた由紀ちゃんに二人でツッコんだりして駄弁っていると、唐突に由紀ちゃんが歌いたいと言い出した。ストレスを発散したいのだろう。クレーンゲームのアームについては共感できるけど、レースゲームについては由紀ちゃんが下手だっただけなんだよね、わたしも人のことは言えない腕前だけど。

 

 でもわたしも最近行ってなかったし、久しぶりに梓ちゃんの歌も聴きたい。ということでカラオケ店に向かったのだけど、お店に入る前から今日はダメそうだなと思った。

 

「人やば多いじゃん……」

 

「夏休みだもんね」

 

「えっと……どうする? 時間どれくらいかかるか、一応お店の人に訊いてみる?」

 

「訊く前から答えは出てない? だって、お店の前にいる人たち、たぶん待ってる人だよ?」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

「いやっ! わかんないし! もしかしたら団体なんかもしんないじゃん!」

 

「この人数が入れる部屋はパーティルームとかじゃないよ。ホールだよ」

 

「あはは……でも、訊いてみるだけ訊いてみようよ、寧音ちゃん」

 

 このカラオケ店はかなり規模が大きい部類だ。パーティルームはいくつかあったような気はするけど、さすがにホールまで備えていた記憶はない。というか待っている人たちは確実に同じグループの人じゃない。

 

 結果は見えているけれど一応訊いてみるようだ。由紀ちゃんは人波をかき分けてずんずんと進み、カウンターまで辿り着く。このお店の部屋数でお店の外まであふれるくらい人が待っているのだから、かなり望みは薄そうだ。

 

 店員さんに訊けば、予想通り部屋は満室だった。待ち時間は二時間から三時間。部屋が空く頃には中学生は追い出される時間になる。

 

「んー……店員さん、なんとかならん?」

 

「由紀ちゃん、店員さんを困らせない」

 

「そうだよ。待ってる人たちがいるんだから、今日は諦めて帰ろう?」

 

 どうあっても無理なのはわかるのに粘ろうとした由紀ちゃんをわたしと梓ちゃんでカウンターから引き剥がす。店員さんの引きつった苦笑いが忘れられない。ごめんなさい。

 

 外に出ようと扉に向かうと、同じタイミングで入ってくる人たちがいた。ぶつかりそうになったので、慌てて止まる。

 

 謝ろうとしたら、先に声をかけられた。

 

「あ、寧音さんたち」

 

「わぁっ、お兄さんっ?!」

 

 見上げれば、少しだけ目を見開いたお兄さんがいた。お兄さんはそこまで驚いた様子はなかったのに、わたしは声まで上げてしまった。恥ずかしい。

 

「おー! イケメンの(あん)ちゃんじゃん! 奇遇だし!」

 

 ついさっきまで不貞腐れていたのに、お兄さんを発見した途端に由紀ちゃんは元気になった。それどころか、たたたっ、と軽快にお兄さんに駆け寄って不躾にも肩をぺしぺしと触っている。なにしてるんだやめろ失礼だろ羨ましい。

 

「あれ? 寧音ちゃんたちカラオケきてたの? 入れ違いだね」

 

「あー、それがね、れー姉……」

 

「兄ちゃん。部屋埋まってっから入れないぞ。二時間から三時間待ちだってさ。さすがにそんな待てんし、ちょい早いけど帰ろっかって話してたんよ」

 

 お兄さんの後ろからひょこっと顔を出したれー姉にわたしが答えようとしたら、ボディタッチを繰り返している由紀ちゃんが先に言う。カラオケに入れなくて残念がっていたとは思えない満面の笑顔だ。クラスの男子が見てもきっと由紀ちゃんだと気付かないくらいに気が緩んだ表情をしている。懐きすぎでしょ。

 

「二時間から三時間……すっごいなぁ」

 

「ねぇ? やばいっしょ」

 

「ゆ、由紀ちゃんっ、寧音ちゃんのお姉さんにそんな口……」

 

 ゆー姉にもわたしたちと変わらない口調で話す由紀ちゃんの手を梓ちゃんが引っ張った。梓ちゃんの目は『相手は歳上なんだから敬語使ってよっ』と訴えている。雄弁な瞳だ。

 

 そんなに気にしなくてもいいのに。内心では思うところはあるかもしれないけど、ため口で話されたからといって語気を荒らげて怒るような姉ではない。

 

「あ、はは……いいよ、べつに。梓ちゃん、だっけ? 梓ちゃんも話しづらくなるくらいなら、敬語使わなくたっていいからね」

 

「ほら、梓。大丈夫って言ったっしょ。いい女は器が大きいんだって。余裕があっからちっさいことにこだわんないのよ」

 

「この子……いい子だ」

 

 そういえば由紀ちゃんはゆー姉とお兄さんが付き合っていると思い込んでいるんだった。だからすらすらと褒め言葉が出てくるのだろう。

 

 由紀ちゃんは相手を褒める言葉も相手を怒らせる言葉もすらすら言えちゃう子だ。裏表がない。それが長所になるか短所になるかはその時の状況次第。

 

「寧音さんたちもカラオケ入りたかったんだよね?」

 

 褒められたら気を許しちゃう姉の短絡さに呆れていると、お兄さんに訊ねられた。

 

「え? は、はい……そうです、けど……それが?」

 

「寧音さん、ちょっと待っててね。礼ちゃん」

 

 戸惑っているうちにお兄さんは歩き去ってしまった。なんだったのだろう。

 

「はーい、任せといて。……ここだと他のお客さんの邪魔になっちゃうし、端っこに寄ろっか。はい、寄って寄ってー。夢結ー」

 

「はいはい。由紀ちゃん、梓ちゃん、壁際に寄ってね」

 

 お兄さんとバトンタッチするように入れ替わったれー姉は、わたしたちをお店の動線から離れる位置まで誘導する。ゆー姉にも声をかけて、由紀ちゃんと梓ちゃんも移動させていた。

 

「映画どうだった? おもしろかった? 私も気にはなってたんだよね」

 

 端っこに寄って間髪を容れずにれー姉が切り出した。

 

 れー姉もああいう恋愛物に興味あるんだ。あの手の映画って、その時話題の俳優さんを起用して作られてたりするけど、れー姉は俳優さんとかには関心なんてないと思っていた。

 

「うん。おもしろかったよ。王道って感じがして。かっこいい人とかわいい人と美人な人しか出てこないし、画面映えはいいよね」

 

「いや、寧音……その言い方だとストーリーはそんなだったって言ってんのと同じだし」

 

 実際ストーリー展開は目を引くところはなかった。もう恋愛映画の設定や展開は出尽くした感がある。あまりに奇を(てら)うとターゲット層がぼやけるし、仕方ないところはあるけど。

 

「でもまぁ……実際そんなきゅんきゅんはなかったけど。映画の前に聞いた兄ちゃんと夢結の姉ちゃんの話のほうがきゅんきゅんしたくらい」

 

「うん……そっちの話のほうがインパクト大きかったもんね。ほんとに、なんだか物語みたいで、きらきらしてましたっ」

 

「や、やめて梓ちゃん……。そんな無垢な目であたしを見ないで……」

 

「あははっ」

 

「笑ってんな礼愛! もとはといえばあんたがおもしろがるからっ」

 

「あ、そういや礼愛お姉さんたちのほうはどうだったん? おもしろかったん?」

 

「っ……」

 

 由紀ちゃんがれー姉に劇場版アニメの話を訊いたら、なんでかゆー姉が妙な反応をした。なんなんだろ。

 

「うんっ! とってもよかったよ! 感動しちゃった! 由紀ちゃんは劇場版観る予定あるの?」

 

「梓に訊いてみたらおもろいって言うし、礼愛お姉さんたちもおもしろかったって言うし、そんじゃあうちも観てみよっかなーって気になってるとこ」

 

「おっ、そうなんだ? くふふ、それじゃああんまり私からは話さないほうがいいかなあ。ネタバレになっちゃうと楽しみ半減しちゃうしね」

 

「ちょっ、その言い方気になるし!」

 

「私から言えることは、放映版にしっかり目を通して劇場版を観るとより深く楽しめるよ、ってことだけかなあ?」

 

「気になるっ。梓、頼むわ」

 

 れー姉は好奇心をくすぐるような言い方で由紀ちゃんを乗せていた。うまいなぁ、そうやって言われたら気になってきちゃうもんなぁ。わたしも俄然劇場版を観たくなってきた。

 

「ふふっ。うん、あたしの家にきた時に一緒にしっかり観ようね。寧音ちゃんもね」

 

「うん。放映版観てから時間経ってるし、ちょこちょこ記憶抜けちゃってるかもしれないしね。れー姉がこんな言い方するんだから、予習しとかなきゃ」

 

「寧音は知ってたけど、梓ちゃんも放映版観てたの?」

 

 意表をつかれたような顔でゆー姉が梓ちゃんに問いかけた。

 

 梓ちゃんがアニメやマンガに詳しいと思ってなかったみたいだ。

 

 梓ちゃんは由紀ちゃんプロデュースでおしゃれなコーディネートをしているし、顔の作りはもともとかわいいし、そこからさらに由紀ちゃんが軽くメイクも施している。容姿だけならトップカーストの陽キャ女子だ。梓ちゃんのことも由紀ちゃんと同じようなタイプの子だとふつうは思うよね。アニメやマンガ、二次元沼にどっぷり浸かっているようには到底見えない。

 

 外見ではわからないで言うなら、由紀ちゃんを除いた全員がそうだけど。サブカル趣味持ちがここには揃っている。真の陽キャギャルは由紀ちゃんだけだ。

 

「は、はい。観ました……三、四周ほど」

 

「三、四周?! 二クールあるけど?!」

 

「観ました。観るたびに『ああ、ここはあの時の伏線になってたんだ』っていう新しい発見があって……」

 

「わかるっ! あれ気づいた? 主人公が家を出る時……」

 

「あ、わかりますっ。わかりますけど、由紀ちゃんはまだ観てないから言っちゃだめですっ」

 

「あっ、ごめんごめんっ」

 

「むー……。なんかうちだけはぶ(・・)みたいだし。礼愛お姉さんも寧音の姉ちゃんも観てんだなぁ……寧音も観てるっつってたし、梓からもオススメされてたし、うちもぜったい観る」

 

 自分だけ知らなくて話についていけないというのが寂しかったのか、少しいじけながら由紀ちゃんが言う。元気なところももちろんかわいいけど、いつも元気な分しょぼくれた由紀ちゃんもかわいい。ギャップがいいのだ。

 

 みんなで笑いながら由紀ちゃんを慰めていると、お兄さんが紙を手に持って戻ってきた。

 

「お待たせ。大丈夫だって」

 

「よかったあ。せっかく仲良くなれたのに、これでばいばいは寂しいもんね」

 

「え、え? どういう?」

 

「お兄さんはカラオケが混むことを予想して部屋予約してたんだって。それで店員さんに、予約してた人数から増えたけど、それでも入って大丈夫でしょうか、って聞いてくれたんだよ」

 

 ゆー姉が二人の会話を要約してくれた。なぜあの会話で伝わるんだ。よく読み解けるものだ。

 

 というか、え。それってつまり。

 

「そういうこと。よかったら一緒にどう?」

 

「え、えっ、えっ?! い、いいんですかっ?!」

 

「寧音さんたちがそれでも問題なければ、だけど」

 

「も、問題ないですっ! あ、ありゅ、あり、ありがとうございますっ!」

 

 なんということだろう。妄想すら超えた展開になった。手も声も震えている。ありがとうございます、ですら噛み噛みだ。

 

 お兄さんの歌を聴けるのか。れー姉が配信で絶賛していたお兄さんの歌を。同じ部屋という特等席で聴けるのか。どうしよう、すでに心臓が高鳴っている。

 

 おいおいおい、まじかよ。すいませんね田品ロロさん。お兄さんのコラボ相手にして名誉リスナーの地位を得た田品ロロさん。お兄さんとオフでカラオケに行こうとか画策していた田品ロロさん。あなたが切望していたお兄さんの歌声をわたしは一番近くで浴びさせてもらいます。一足先にわたしは天国()に行くぜ。

 

「マジ?! イケメンの兄ちゃんはやることまでイケメンじゃん! あんがと!」

 

「恥ずかしいからその呼び方だけはやめてほしいな……どういたしまして。梓さんも、大丈夫?」

 

「ぁっ、ぅっ、っ……っ!」

 

 お兄さんに確認を取られたけど、梓ちゃんは咄嗟に声が出てこない様子だった。

 

 致し方ない。好きなマンガのキャラに似てて好きな声優さんの声に似てるとなれば、推しの二乗みたいなものだ。時間をもらって幸せ空間に順応できたならコミュニケーションも取れるだろうけど、梓ちゃんには慣れるだけの時間が用意されていない。推しを目の前にすればオタクは平常心ではいられなくなるのだ。こうしてこくこくと頷いて意思表示できるようになっただけ、梓ちゃんはよくやっているほうだ。とってもがんばった。えらい。

 

「そっか。よかった。それじゃ部屋に行こうか」

 

 少しだけ成長できた梓ちゃんをお兄さんは笑顔で見届けて、あてがわれた部屋へと移動を促す。

 

「いぇーっ! 歌うぞーっ!」

 

 そんなお兄さんの腕を取り、由紀ちゃんは陽気に歩き出した。部屋の番号も聞いてないのに、どこに向かうつもりなのだろう。

 

 部屋の番号を知らない由紀ちゃんがなぜか先頭になり、お兄さん、梓ちゃんと並び、道幅の関係でわたしとゆー姉、れー姉が後ろに続く。

 

「まずいなぁ……アニソンとか以外だとまともに歌えるの限られるんだけど、あたし」

 

「べつに好きなの歌っていいんじゃない? 電波系以外なら。由紀ちゃんも気にしなさそうな子だったしね」

 

「まぁ、それもそっか。ほんと、寛容な子でよかったわ……」

 

「んー? なに? 由紀ちゃんがどうかした?」

 

 ゆー姉とれー姉が話しているところに混ざりに行く。由紀ちゃんの名前が聞こえたけど、どうかしたのかな。さすがに距離感や言葉遣いが目に余ったのかな。

 

「ああ、寧音ちゃん。あのね、お兄ちゃんも夢結も、由紀ちゃんはアニメとかマンガとか、そういうオタク文化に忌避感とか拒絶反応とかないのかなー、って心配してたんだよ」

 

「……まぁ、砕いて言えばそんなところかな」

 

「なにゆー姉の反応……煮え切らないなぁ。由紀ちゃんは自分から歩み寄ることはしないけど、極端にオタクを毛嫌いしてないよ? 由紀ちゃんと梓ちゃんは幼馴染なんだけど、昔から梓ちゃんがマンガとかアニメとか好きだから、梓ちゃんの部屋によく行く由紀ちゃんもある程度理解はあるみたい」

 

「はー……なんだ、そうだったんだ。そこまで気にしなくてもよかったんだ。なんかあたしとは違って本物のギャルっぽかったから、もっと否定的なのかと思ってたわ。オタク死すべし慈悲はない、みたいな感じで」

 

「あははっ、よかったよね。そういう子じゃなくて。お口は悪戯っ子だけど、根は真っ直ぐないい子みたいだし」

 

「れー姉は人を見る目があるよね! そうなんだよ、由紀ちゃんいい子なんだよ!」

 

「なんだ『れー姉()』って。なんで有り体にあたしを除外した」

 

「ゆー姉細かいなぁ……言葉の綾じゃん。由紀ちゃんはねー、ちょっと距離感バグってるとこあるし、考えたことがそのまま口から出がちだけど……その分変に気を遣わないでもいいし、ファッションにも詳しいからよく教えてもらったりしてるんだ。意外と面倒見もいいんだよ、由紀ちゃん」

 

「へえ、そうなんだ? 本当に意外かも。最初の印象だと、もっと女王様気質なのかと思ってたんだよね。お兄ちゃんに懐いてるとこ見てると、女王様っていうよりお転婆な王女様って感じだけど」

 

「あははっ、わかるそれ! わがまま言っても大抵のことは許されるけど、だめなことはしっかりだめって注意されてるとことか王女様とお付きの騎士みたいだわ! いいなぁいいなぁ、そういう設定もおいしいなぁ……」

 

「ゆー姉……きもい妄想だだ漏れなんだけど……」

 

「きもい言うな。これはあれだから。ブレインストーミングみたいなもんだから。自由な発想でイラストのアイデアを閃くトレーニング、みたいな。これも勉強なわけよ」

 

「そんな曲芸みたいな自己弁護ができるなんてゆー姉はほんとに頭が柔らかいなぁ……」

 

「褒めてないことはあんたの顔を見ればわかる」

 

「言葉と声でもわかってほしいところだね」

 

「生意気な妹だなこいつっ……」

 

「あははっ、二人は本当に仲がいいなあ」

 

「仲良くないよれー姉!」

 

「礼愛? よく見ろ? ただの小生意気なクソガキよ、こいつ」

 

 ころころとかわいく笑うれー姉に抗議していると、お兄さんが扉を開いているところが見えた。あの部屋のようだ。

 

 扉を開けて中に入ろうとしたら、お兄さんが扉を開いた状態で待ってくれていた。ごく自然に振る舞われる細やかな優しさにうれしくなる。

 

 舌を空回りさせながらお礼を言って中に入ると、わりと広めの部屋だった。六人で使ってもまだ少し余裕があるだろう。少なくとも、三人では広すぎる。

 

 まさか、お兄さんはわたしたちのことを誘う前提でこの部屋を予約していたというのか。わたしたちがカラオケに行くところまで行動を読んでいるなんて、お兄さんすごすぎる。

 

「私奥座るー!」

 

「それじゃ、あたしは礼愛の隣にしよっかな。寧音は私の隣でいいんじゃない?」

 

「う、うん。わかった」

 

 真っ先にれー姉が動いて席を確保し、れー姉に続くようにゆー姉も自分の席も決めていた。ゆー姉はわたしに隣に座るよう誘導してくる。どこに座ればいいんだろうと迷っていたので、こうして指示してくれるのは正直ありがたい。

 

「んじゃ梓は寧音の隣、うちは梓の隣の端っこね! うちカラオケきたらおしっこ近くなるんだよねー」

 

「こら由紀ちゃん! 女の子がそんなこと言わないの!」

 

「わはーっ、ごめんってば礼愛お姉さん!」

 

「由紀ちゃん……」

 

 わたしたちだけで行く時と言葉選びがなんにも変わらない由紀ちゃんに呆れつつ、大きな部屋にU字型に置かれているソファの真ん中付近に腰を下ろす。

 

 いざ座ってみて思ったけれど、考えようによってはわたしや梓ちゃんの位置って上座になるのでは。いいのかな、わたしたちが座ってても。

 

 わたしがきょろきょろあたふたしている間に、目の前のロングテーブルには手前側と奥側にマイクが置かれていたり、曲を予約するためのタッチパネル式の機械やフードメニューを注文するためのタブレット端末、飲み物や食べ物が載ってるメニューも、みんなが取りやすいように並べられていた。

 

 手際がいい。メニュー見たいなぁ、などと言う前どころか思う前に用意されている。

 

「フードメニューは好きなように注文していいからね。でも晩御飯もあるだろうから、食べ過ぎないようにだけ注意しようね」

 

「なんでもいいの?! いぇーっ! 兄ちゃん太っ腹! アルコールもいいの?」

 

「いいわけないよね。二十歳未満の飲酒は禁じられてます。そろそろ本当に悪いことばっかり言うその口、取っちゃうよ?」

 

「ちょっ、冗談じゃん! 本気にすんなし兄ちゃん!」

 

 由紀ちゃんはやんちゃな子だけど、悪い方向にやんちゃな子ではない。お酒も、もちろんタバコもやらない。やってる中で悪いことといったら、夜遅くまで遊んでいるくらいのものだ。

 

 なのでアルコール云々の話はお兄さんのツッコミ待ちみたいなところがある。

 

「いいよって言ったら本当に頼みそうだからなあ、由紀さんは。怪しい子がいるので改めて言っておくと、飲み物はソフトドリンクだけです。好きなように注文していいのはフードメニューだけです」

 

「もうっ、わかったってばーっ! さらしもんにすんなしっ!」

 

 迂闊な発言のせいでお兄さんに目をつけられていた。

 

 でもいじられて『やめてよー』って言ってるわりに、由紀ちゃんの表情は明るい。嫌がってたり、不快な感じの声でもない。もともとツッコミ待ちだったというのもあるけど、まるでお兄さんに構ってもらえるのがうれしいみたいに見える。犬なのかな。

 

「あははっ! だめだよー、由紀ちゃん。お兄ちゃんはこういうところすごく厳しいからね。そうだ、夢結、パーティプレート注文しといてよ。ほら、前きた時気になってたやつ!」

 

「ああ、二人で頼むには量が多そうで諦めたやつね。了解。お兄さん、いいですか?」

 

「確認取らなくて大丈夫だよ。寧音さんと梓さんも好きなもの頼んでね」

 

「ぴゃっ……は、はいっ、ありがとうございますっ」

 

 由紀ちゃんに向いていたお兄さんの目が急にこちらに向いた。油断していたせいで奇声を発するところだった。

 

「は、はい……」

 

「梓ちゃん、なに飲む?」

 

「えっと、あたしは……」

 

「それじゃ先に飲み物ぱぱっと注文しちゃいますね。はい、みんななに飲むか言ってってー」

 

「最初は私から歌うね。席順で歌ってこ!」

 

「食べ物はパーティプレートとみんなでつまめそうなデザート頼んでる。メニュー見て他にほしいのがあったら言ってね」

 

「ファミレスでもちょっと食べたし、それで十分かも? ありがと、ゆー姉」

 

「あいよ」

 

 飲み物とか歌う順番とか、こちらから言い出しづらいところをゆー姉とれー姉がぱぱっと手早く決めてくれた。

 

 れー姉がとても頼りになるのは知っていたけど、ゆー姉もここまで頼り甲斐があるなんて思わなかった。お兄さんがいるので気を張っているのか、それともわたしには見せていなかっただけで外では意外としっかりしていたのか。やるじゃんゆー姉。

 

「あー、あー。ちゃんと歌うの久しぶりだ、声出るかな? あー、よし! 一曲目行くよー!」

 

 最初に入れる曲はすでに決めていたようで、れー姉は端末を操作して一曲目を入れると端末をゆー姉の目の前のテーブルに置いた。

 

「きゃー、礼愛ー、歌姫ー」

 

 れー姉から回ってきた端末に目を落としながら、ゆー姉は感情のこもらない声で声援を送る。

 

「夢結やめて? プレッシャーがすごい。棒読みだし」

 

「いぇーっ! 礼愛お姉さんいぇーっ!」

 

「歌う前からテンション高い子もいるなあ!」

 

「あはは……由紀ちゃんは誰と行っても変わんないんだなぁ……」

 

「す、すごいよね……。あたしにはぜったいできないよ……」

 

 今日初めて会った人が多いこの環境下で盛り上げるような役回りを自ら担いに行くあたり、メンタルの強度が違う。気後れとかいう言葉はインプットされてないんだろうな。

 

 わたしは実姉と何度も会ったことのあるれー姉がいても、目の前に回ってきた曲入力用の端末を見ると緊張してどうにかなってしまいそうだ。

 

 歌う順番はれー姉が一番手、ゆー姉が二番手で、わたしは三番目に歌うことになる。もっともハードルの高い一番槍はれー姉が務めてくれたけど、三番目であっても緊張はする。お兄さんにわたしの歌を聴かせるなんて、緊張しないわけがない。こんな状態でわたし、声出るのか。

 

 でもわたし以上に梓ちゃんは緊張しているはずだ。部屋にいる人数の半分が初対面なのだ。人見知り属性を持っている梓ちゃんには精神的な負担が大きいだろう。

 

 最大限に照明を明るくしてもなお暗めのカラオケの部屋。そんな部屋の中でも梓ちゃんの顔色が悪いことがわかる。

 

 わたしが、梓ちゃんの緊張をほぐしてあげないと。

 

 そう意気込んでいるうちに、れー姉が入れた曲が始まった。最近動画共有プラットフォームで公開された、人気の音楽ユニットが出した歌だ。アップテンポでノリのいい曲だけど、キーの高低差が大きくて音程を合わせるのが難しそうな歌。

 

 自分の番がくるのは緊張するけど、それはそれとしてれー姉の生歌は初めて聴くのでわくわくしてしまう。

 

 イントロが流れて、れー姉がマイクを握る。

 

 すると、妙なタイミングでれー姉はちらりとわたしたちに一瞥を投げて、隣に座っていたお兄さんにぱちぱちと不自然な瞬きを送る。

 

 どんな意図があったのかわからないけれど、お兄さんはれー姉に慈しむような笑みを浮かべた。心臓がきゅぅって握り締められるような、そんな表情を見せたお兄さんはれー姉の頭に手を置いてぽんぽんと撫でて、席を立つ。

 

 由紀ちゃんや梓ちゃんは曲のタイトルとMVが流れているモニターを見ていたみたいで気づいていなかったが、不意打ち気味に見てしまったわたしはパニックだ。

 

 なんだ。なんなんだ。なんなんだ急に。てぇてぇが過ぎる。

 

 とても尊くて純粋な光景を盗み見てしまったような、そんな罪悪感すら覚える。二人は仕切りもない空間でやっているのだから盗み見るもなにもないんだけど、それでもなぜか見てしまったわたしが悪いような、目を背けなかったわたしが無神経だったんだと思い込んでしまうような感覚に襲われている。

 

 なんだこれ。よくわからないけど、とりあえずありがとうございます。

 

 席を立ったお兄さんは邪魔にならないように姿勢を低くしながらモニターの前を通り、U字のソファの反対側の席、由紀ちゃんの隣に腰を下ろした。

 

「お、兄ちゃんどしたん? うちらと喋りたかったん?」

 

「あはは、そうだね。みんなは歌う曲って何にするか決めたのかなって」

 

「うちはもう決まってっし! でも端末がまだ回ってこんのよね。寧音で止まってんの」

 

「あっ、ご、ごめん。ちょっと迷ってて……すぐ決めるから」

 

「まだ礼ちゃんの歌の途中だし大丈夫だよ。梓さんは?」

 

「ぁ、っ、あた、しは…………迷ってて……」

 

 端末を操作しながら、お兄さんの顔を覗き見る。明るいところで見るのもいいけど、影が差している表情もいい。

 

 お兄さんは少しだけ身を乗り出すように梓ちゃんの顔を見る。

 

 照明のあたり具合、なのだろう。梓ちゃんを見つめるお兄さんの瞳は吸い込まれそうになるほど綺麗なのに、どこか無機質で、心を見透かされそうな静かな迫力があった。

 

 姿勢を正したお兄さんは一拍置いて、口を開く。

 

「そうなんだね。ゆっくりでいいよ。そういえば映画館で別れたけど、その後ってどこか遊びに行ったりした?」

 

「えっと、映画観終わったあとは……ファミレスで感想言い合ったんだったかな?」

 

「その前にゲーセンな。うち二人にレースゲーでいじめられたし」

 

「えっ、梓さん、由紀さんのこといじめてたの?」

 

「ち、ちがっ。あれは……由紀ちゃんが勝手に壁に突っ込んでただけですっ。あたしたちが妨害アイテムを使う間もなく自分から壁にぶつかりにいってて……」

 

「そうだよね? あれは由紀ちゃんが自滅していっただけだもん」

 

「なんだか話が違うみたいだけど、由紀さん?」

 

「自滅って言うな! うち悪くないし! ハンドルが悪くて曲がれなかったんだし!」

 

「ハンドルがどうこうじゃなくて、由紀ちゃんはアクセルから足を離さないからそうなるんだよ……」

 

「ベタ踏みだもんね、由紀ちゃん」

 

「アクセル踏まなきゃ進まないじゃん! ちょ、兄ちゃん聞いて? 二人とも自分らはがんがん使ってんのに、うちにはドリフトのやり方とかも教えてくんなかったの。ひどくね?」

 

 由紀ちゃんからのタレコミに梓ちゃんは血相を変えてお兄さんに説明する。

 

「ち、ちがいますっ、お兄さんちがいますからね? 由紀ちゃんはまず、テクニックがどうとか以前の話だったんですっ。まっすぐ走れてない人にドリフトとかショトカなんてふつう教えませんよね? まずはまっすぐ走れるようになるまで待つと思うんです。あたしは由紀ちゃんを待ってたんです」

 

「待っててもこなかったみたいな言い方やめてくんね?! 最後のレースは寧音の後ろにつけてたし!」

 

「それは……ドリフトも知ってるのに遅い寧音ちゃんが悪いかな……」

 

「わぁっ! わたしにまでトゲが飛んできた!」

 

「あははっ、とても楽しかったみたいだね。僕もレースゲームすればよかったな」

 

「ん? 兄ちゃんもゲーセン行ってたん?」

 

「うん。僕たちのほうもゲームセンター行って、僕はガンシューティングとクレーンゲームやったんだ」

 

「えっ?! お兄さんがガンシューやってたんですか?!」

 

「そう。初めてやったんだけど、操作がわからなくて大変だったよ。銃にセーフティ以外にスイッチがついているだなんて思わなくて気づかなかった。それでも十分面白かったけどね」

 

 お兄さんがガンシューティングをやってただなんて、それはぜひ見たかった。

 

 銃を構えて敵を撃っているお兄さんは抜群にかっこよかったはずだ。ゆー姉、写真なり動画なり残してくれてたりしないかな。

 

「クレーンゲーム……ふふっ」

 

「梓さん、クレーンゲームがどうかしたの?」

 

「あっ……えと、クレーンゲームで大きなぬいぐるみがあって、ほしいなって思ってやってみたんですけど、やっぱり難しくて……。そしたらその後に行ったファミレスで、由紀ちゃんがっ、ふふっ……」

 

「ん? ああっ! たははっ、あれか! 兄ちゃん聞いて聞いて? クレーンゲームのアームがめちゃ弱くてさ、うちが『アーム弱すぎっしょ。じいちゃんばあちゃんの肩でも揉んでんのかよ』ってグチったら、梓飲んでた紅茶噴き出してたの。まじウケた」

 

「ふふっ、くっ……あははっ」

 

「だって、由紀ちゃんが怒った顔しながらわけわかんないこと言うからっ……」

 

「あれおもしろかったねっ、ふふっ。しかもね、お兄さんっ。その後、店員さんからそっと台拭きとおしぼり追加でもらったの。ばっちり店員さんに見られてたみたいで」

 

「すごく恥ずかしかったっ……」

 

「でも見てるうちらはめちゃおもろかったし」

 

「うん。めちゃくちゃ笑ったよ」

 

「ひどいっ」

 

「ふふっ、くくっ……とても、っ、とても楽しくお喋りしてたんだね」

 

「兄ちゃんっ、半笑いっ。たははっ」

 

「うぅ……」

 

「ごめんごめん。でも、だいたい行くところとかやることとか、僕らとそれほど違いはないみたいだね」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。僕らはファミレスじゃなかったけど、喫茶店で映画の感想とか言い合って、それからゲームセンターに行ったんだ。そこからカラオケっていう流れだったね。ほとんど同じだよ」

 

「へー。高校生もそこまで変わんないんだ」

 

 意外とでも言いたげな表情で、由紀ちゃんが呟く。

 

 由紀ちゃんのその言葉を聞いて、少し離れた位置に座るわたしや梓ちゃんにも聞こえるように、お兄さんは再び体を傾けた。

 

「そうだね。カラオケ行きたいって思うところまで同じわけだし、中学生も高校生も梓さんが思ってるほど大きな差はないんだよ。だから梓さんには、あんまり気にしないで好きに歌ってほしいな。寧音さんもね。楽しく歌ってるところを見れたらそれだけで僕は楽しいし、きっとみんなも楽しいよ」

 

 そう言って、お兄さんはわたしたちに微笑みかけてくれた。

 

 そうか、お兄さんがこちらのわざわざこっち側の席に移動してきたのは、緊張していたわたしと梓ちゃんをリラックスさせるためだったのか。それもそうか。お兄さんなら自分が近くにいないほうが落ち着けるだろう、とかって考えそうだし、あえてこっちに座る理由はない。

 

 気配りはもちろんうれしい。気にかけてくれてるんだなってことがわかるだけで、それだけでもうれしい。

 

 でもそれ以上にわたしたちに合わせてリラックスさせようとしてくれたのが、なにより胸に響く。

 

 梓ちゃんは誰かと一緒、誰かと同じっていうことに安心するタイプだ。わたしはこの部屋のメンツがどうこうというよりも、お兄さんに自分の歌を聴かせるなんて恐れ多いという気持ちから緊張していた。

 

 今日初めてあった人の性格なんて、ふつうわからない。それでもお兄さんは、どうやったら楽しい時間を過ごしてくれるかなと気遣ってくれて、よく観察して、たくさん考えて、わたしたちがどう思っているか、なんで緊張しているかを読み解いてくれたのだ。それがなによりも、心を揺さぶる。

 

「っ……は、はいっ、わかりましたっ」

 

「ありがとうございますっ。寧音ちゃん、寧音ちゃんのお姉さんの歌、もうすぐ終わるよ」

 

「あっ、ま、まずいっ……はやく入れとかなきゃ」

 

 お兄さんとの話に夢中で、端末を膝に乗せてそのままだった。

 

 歌いたい曲は思い浮かんでいるので曲名から検索をかける。

 

「っ?!」

 

 似た曲名が並ぶ検索一覧から目当ての曲を探していたら、隣から息を呑むような、心底驚いたような、あるいは絶句したような声がした。梓ちゃんだ。

 

 目をまん丸にした梓ちゃんの視線を辿ると、なんかお兄さんにばかほど密着している由紀ちゃんがいた。

 

 わたしたちにちゃんと聞こえるよう話すために前のめりになっていたお兄さんの首に、下から回すように由紀ちゃんは手を伸ばし、お兄さんの頭を引き寄せていた。お兄さんの側頭部に顔をくっつけるような、そんな近さだった。由紀ちゃんは距離感が絶対的におかしいけど、これまでの距離感とは確実にステージの違う近さだった。

 

「っ? っ??」

 

 声が出なかった梓ちゃんの気持ちが、今わたしはとても共感できる。一から十までわけがわからない混乱の極致に至ると、言語が飛ぶ。

 

 わたしの脳内がクエスチョンマークでひしめいている間に、由紀ちゃんはするりとお兄さんから離れる。今まで見たことのない表情で笑みを浮かべ、手の甲でぽんっ、とお兄さんの胸元を叩いた。

 

 言語機能がとっ散らかったままでもいいから、由紀ちゃんになにしてんだお前はと詰問したかったけれど、絶妙なタイミングで妨害が入った。

 

 こん、こん、と扉を叩く音のあと、がちゃりと重い音で扉が開かれる。

 

 ゆー姉が注文してくれた飲み物などを店員さんが運んできてくれたのだ。

 

 お兄さんは立ち上がって店員さんから受け取る。量が多かったからか、店員さんはカートで運んできていた。店員さんは勝手に閉まろうとする扉を足で押さえながらカートからお兄さんに手渡し、お兄さんは店員さんから受け取ってテーブルに並べるという分担作業をしていた。

 

 誰に対してもお兄さんは対応が変わらないようだ。お客さんなのに、なんならこの場で一番の年長者なのに、率先して動いている。なにやってんだ年少者三人は。

 

 飲み物はお兄さんとれー姉だけは同じだったけれど、それ以外はみんな違っていた。なのに一度も『これ誰の?』などと訊ねることなく、お兄さんは頼んだ人の近くに頼まれた飲み物を置いていく。注文を取りまとめたゆー姉ならともかく、なんでお兄さんが憶えているんだ。その時お兄さんははれー姉と話していたはずなのに。

 

「っ、ゆっ……」

 

「寧音。はい、マイク」

 

「っ、あ、ありがと、ゆー姉……」

 

「ん? うん、どういたしまして。由紀ちゃんも梓ちゃんも、適当につまんじゃっていいからね」

 

「いただきまぁーっす!」

 

「い、いただきますっ」

 

 店員さんが出て行ったので話を戻そうかと思ったら、出鼻をくじかれる形でゆー姉からマイクが回ってきた。

 

 自分の歌の番が回ってきてしまった。結局由紀ちゃんを詰めることはできなかったけど、むしゃくしゃした感情を乗せて歌ったことで緊張を一切感じずにいられた。

 

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