サイコバグなお兄ちゃん、Vtuberになる。   作:にいるあらと

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拠点完成イノシシ焼肉パーティ

 

 俺が援護にくるまでの間に相当なダメージをジンは一人で与えていたらしい。イノシシ型は断末魔のような絶叫を最後に動かなくなった。

 

『わあ、大きな声ですね。なんです?』

 

 驚いているふうのセリフと、驚いているとはまったく思えないジンの声。こいつの驚きの声には微塵も切迫感というものがない。

 

「断末魔だな。イノシシがお亡くなりだ。……俺、ほとんどなんもやってねーよ」

 

〈わあw〉

〈断末魔えぎぃ声してる〉

〈義務びっくりで草〉

〈悪魔驚いてねぇやろw〉

〈イノシシ討伐!〉

〈石ころつえええw〉

〈悪魔つええええ!〉

 

『いえいえ、壊斗さんのおかげで最後畳みかけることができました。ありがとうございます』

 

「まぁ、ジンがいいんならそれでいいんだけどさ」

 

『わぁーっ! すごいっ! ほんとに二人で勝っちゃったんだ!? すごーいっ!』

 

『最後は壊斗さんが決めてくれたんですよ』

 

『壊斗くんやるじゃん!』

 

〈トドメ奪ってるやん〉

〈いいとこ取りしやがったw〉

〈キルパクしとる〉

〈キルパクやんけw〉

 

「いや、待って……待ってくれ。それだと俺、ラストアタック()(さら)っただけのクソ野郎になっちまう……。ほとんどジンが一人で削ってたんだ……俺は最後ちょちょんって小突いただけだ」

 

『みなさーん! みなさん聞いてくださーい! 壊斗さんが! 壊斗さんが僕の窮地に颯爽と現れて! イノシシをやっつけてくださいましたよー!』

 

『わーっ! 壊斗くんかっこいーっ! わーっ!』

 

「やめてくれっ! やめてくれよ! 俺はこんな形で喝采は浴びたくない! ちゃんと活躍して褒められたいっ!」

 

『ふふっ、くくっ』

 

『きゃははっ! きゅふっ、きゅっ、あははっ!』

 

〈新人の努力の成果を先輩が持っていくんですねなるほど〉

〈LA泥棒だ!〉

〈草〉

〈草〉

〈この悪魔w〉

〈隙見せるからw〉

〈壊斗にも良心が残ってたかw〉

〈まだ人の心はあったんだなw〉

〈イルカ鳴いてるw〉

〈イルカ帰ってきてて草〉

 

『はあ……ふう。なにはともあれ勝ててよかったです』

 

「マジでなんで勝ってんだよ。しかももしかしてノーダメか?」

 

『はい。一発でも受けて怯んだら終わりだと思ってましたからね。攻撃を受けないように安全第一で立ち回ってました』

 

「安全第一ならそもそも一人で戦うことが間違ってんだよ」

 

〈イノシシ初見ノーダメまじ?〉

〈初期装備でアーマーもなしだもんな〉

〈この難易度で一人で勝つのはバケモン〉

〈それはそうw〉

〈戦うのがもう安全じゃないのよw〉

 

『怪我なくてよかったね、ジンさん』

 

『ありがとうございます。ロロさんの応援のおかげで気合が入りました』

 

『そっ、そんなことないよぉっ! まったく! 帰ってくる時も気をつけてね!』

 

「あ、ロロ! 森と拠点の中間あたりに木ぞり置きっぱなしなんだ。回収して使っといてくれ」

 

『はーい』

 

〈しれっと褒める〉

〈ジンぜったいモテますこれ〉

〈見習え〉

〈照れロロ〉

〈ロロがかわいい〉

〈ロロってかわいかったんだな……〉

 

 倒したイノシシ型をジンと二人で解体する。解体といっても死体に斧を振り下ろすだけだ。キメラントをしばき回して死体にして、解体する時は死体をさらにしばき回す。やってることは死体撃ちみたいなもん。

 

『イノシシ硬かったです。早くも石ころの限界が見えました』

 

「そもそも石ころを武器にしてんのはお前だけなんだよ。てか動物型には効き目が浅くても、ヒト型には変わらず使えるわけだしな」

 

『そうですねえ……これはこれで使い勝手が良いので、やはり相手によって使い分けることが大事なようです。ヒト型ならともかく、イノシシには時間がかかりすぎますから』

 

「時間さえありゃあどうにかするんだもんな、お前は」

 

〈エイムとキャラコンで石ころを武器にした男〉

〈イノシシやクマ相手はきついだろうな〉

〈ネコやイヌならまだ使えそう〉

〈石ころの運用方法考えてんの草〉

〈ふつうは焚き火の材料くらいにしか使わんのよw〉

〈注意そらす時に一回使っただけだわ〉

 

『時間効率もそうですけど、先に弾がなくなりそうでしたよ。弱点に当てても比較的防御の薄い部分を狙っても、大してダメージ入っているようには見えませんでした。途中でなるべく斧を使うようにシフトしたくらいです』

 

「……弱点? 防御の薄い部分? なにそれ」

 

『イノシシにもヒト型でいうところのヘッドショット判定みたいなものがあったんです。ヒト型と違って頭は頑丈だったんですが、鼻先が弱点でした。あと胴体は毛皮や脂肪で装甲が厚いみたいです。足を狙っていたのはそういう理由です』

 

「攻撃箇所によってダメージ違うのか……」

 

『ダメージエフェクトの色味や大きさで判別できるようになってるみたいですよ』

 

〈おい経験者〉

〈知らんかった〉

〈まじかよ〉

〈適当に殴ってても勝ててたから……〉

〈ちゃんとジャンピの時弱点あててたぞ〉

〈ディフ出てます〉

〈難易度で弱点ダメに補正かかる〉

 

『なんで壊斗くん経験者なのに知らないのー?』

 

「いや、知らねーもんをなんで知らねーんだって言われても知らねーもんは知らねーよ! リスナーにも知らなかったやついるし! 〈難易度で弱点ダメに補正〉? 難易度が高いほうが弱点ついた時のダメージ倍率が上がる、って意味でいいのかこれ?」

 

『難易度が高いと敵の体力も多いらしいですし、ちゃんと弱点を狙えてたらダメージがたくさん入るから難易度が高くても倒せるよ、ということなのかもしれませんね』

 

「はー……なるほどな。しっかり弱点とか防御の薄い部分を狙っていくキャラコンを要求されるわけだ。サバイバル生活に慣れてもバトルが不慣れだったら、難易度上げたら生きていけないってことか。アクションっぽい難易度調整だな」

 

『そういえばこのゲームってアクションゲームでもあったんだっけ? なんにしたってロロはあんまり得意なジャンルじゃないけど』

 

『僕はロロさんとは反対で建築が苦手なので、そのあたりは役割分担ですね』

 

『うんっ! 後方支援は任せてね! はやく家庭菜園作りたいなー! 作れたらもっと役に立てるのに』

 

「薬草とか木の実を使った時にたまに出る種が必要だからな。薬草とか木の実を収穫するのに袋がいるから、まず袋を作るとこからだ」

 

『道のり長いよぉ……』

 

『ふふっ。いくつか皮は拾えています。それで袋を作りましょうね、ロロさん』

 

『いいのっ? やったーっ!』

 

「……まぁ、回復アイテムになるからいるっちゃいるけど、ジンはロロに甘くねーか?」

 

『そんなことありませんよ? やれることがないと退屈してしまうでしょうし、回復アイテムならいずれ必要になりますからね。先行投資です』

 

〈薬草は探索し出したら大事だな〉

〈悪魔甘いw〉

〈甘やかしてんなぁw〉

〈回復アイテム使う機会あんのか?w〉

〈未だノーダメの悪魔がなにか言ってます〉

〈こいつ体力ゲージ減るんか?w〉

 

「先行投資……まぁ、大事だしなぁ……」

 

『解体もできましたね。イノシシの頭……何に使うのでしょう? 防具ですか? ヘルメット代わり、みたいな』

 

「なんだろうな。インテリアにでもなるんじゃね?」

 

 前回でもイノシシは何度か倒したが、イノシシの頭なんていうアイテムは見た覚えがない。俺が拾ってなかっただけなのかもしれないが、後輩らからもそんなのを拾ったとは聞いていなかった。

 

『あー、そういうの豪邸とかにあるイメージですね。剥製とか飾る感覚で頭も飾るんでしょうか』

 

〈レアじゃん〉

〈焼いて骨にして防具だ〉

〈イノシシヘッドはあんま出ないぞ〉

〈運いいな〉

〈頭部破壊ボーナスみたいなんもあんのか?〉

 

「あ、防具になるらしいぞ。なんか知らんがレアらしい」

 

『防具ですか。防具ってつけたらキャラクターの見た目も変わるんですか?』

 

「おう、変わるぞ。アーマーとかも装備したら胴体部分が変わったりする」

 

『あははっ、それは見てみたいですね。他に何か素材が必要なんでしょうか。すぐに作れたらいいですけど』

 

「作業台で見てみないとわかんねーな」

 

『ねーっ! お喋りは戻ってからにしなよーっ! もうすぐ暗くなっちゃうよーっ!』

 

「うおっ、やっべ。ジン、戻ろうぜ」

 

 日が出ているうちでも森の中は薄暗い。これで日が暮れてしまっては本気で帰り道がわからなくなる。なんなら今の時点で帰り道の記憶は黄昏時くらいに輪郭がぼんやりとしてきている。記憶が生きているうちに帰りたいところだ。

 

『待ってください。もともとこの開けた空間にきたのはイノシシと戦うためじゃなくて、焚き火を設置できる場所を探してたからなんです。倒したヒト型を火葬したくて。壊斗さんは焚き火作っててもらっていいですか? 僕は遺体を拾ってきます』

 

「おっけ。ぱぱっとやっちまおう」

 

 燃やした時に出てくる骨は建築からクラフトまでありとあらゆるところで要求される。日暮れ間近というこの状況ではもちろん時間は惜しいが、素材も惜しい。回収できる時に回収しておきたい。

 

 俺が焚き火を作っている間にジンが俺のすぐ隣にヒト型の亡骸をぽんぽんと並べていっていたので、それを近いものから順に火の中へと放り込んでいく。

 

 急いでるにしたって無言で置いてくなよ。暗い森、冷たい地面の上で落ち窪んだヒト型の眼窩(がんか)が俺を見つめてたんだけど。超怖い。

 

 一つ、二つ、三つ、四つと軽快に放り込んだ。

 

「……四つ? えっ……一つ、増えてる……」

 

 なんだこれ、ホラーか。ジンはワンパ倒したとか言ってたから、ヒト型の死体は三つのはず。なぜ四つあるんだ。山小屋で夜が明けるのを待ってたら一人増えていた、みたいな怖い話なのか。

 

『燃やしておいてくれたんですね、ありがとうございます。追加はこれで最後です』

 

 まさかの五つめを担いできていたジンは、歩みを止めずに焚き火に近づいて遺体を放り込んだ。

 

「ってやっぱお前かよ?! 追加ってなんだよ!」

 

『最後の一体を回収しに行った時、遺体の前でヒト型がうずくまっていたんですよ。悲しそうな声を出していました。倒された同じ種族の死を(いた)むという感覚がヒト型にはあるんですね』

 

「おお、お前……なんてことを」

 

『周りをまったく警戒できていなかったので、後ろから斧を振り下ろしておきました。頭一発です』

 

「ほんとに人の心がないなお前は!」

 

『戦場で仲間の死に動揺するなんていう愚かなことをしているからこうなってしまうのです。死を悼むのは仲間の(むくろ)を安全な場所まで連れ帰ってからするべきです。そんなことだからミイラ取りがミイラになってしまうのです。同情はできませんね』

 

「言ってることは正しいんだろうけどっ! でも俺の心の奥のほうがその考えは間違ってるって叫んでる!」 

 

『死んでしまった彼らはそう主張することもできないのです。負ければ賊軍。敗者は追われ、奪われるのみ。僕らも装備を整えなければいずれそうなります。彼らの命を無駄にしないためにも、僕たちは精一杯生きなければなりませんね。命大事に、です』

 

「お前の『命大事に』は意味が違うんだよ……」

 

〈慈悲はない〉

〈戦場で気を抜いたらそうなるよ〉

〈やりにくるんだからやり返される覚悟はあるでしょ〉

〈命大事にw〉

〈間違ってないんだよなー〉

〈不利なのはこっちだしな〉

〈なにかが違う命大事にw〉

〈悪魔の言う命大事には完全に勝者側の考えなんだw〉

 

『ねーねーっ! 今二人とも帰ってきてるんだよね?! もう周り真っ暗だけどっ、帰ってきてるんだよねっ?!』

 

「うおっ?! マジで真っ暗じゃん!」

 

 ヒト型を処分していく焚き火を眺めていたせいで日が沈んだことに気づいていなかった。

 

 焚き火の火や音にはリラックス効果があるとかって聞いたことがあったが、こういうことか。深い森の中にいるという状況も忘れて無駄に落ち着いてしまっていた。

 

 まずい、帰り道がわからない。

 

『だからお喋りは帰ってきてからにしてって言ったのにっ!』

 

「ちげーって! ジンが仕留めたヒト型を焼いてたんだよ! 焼いてる間に真っ暗になってたんだ!」

 

『もーっ! 森の入り口に焚き火置いとくから、火の光を目指して早くこっち帰ってきてよ!』

 

〈あるあるや〉

〈真っ暗です〉

〈焚き火の灯りしかないw〉

〈ロロ怒ってる〉

〈ずっと待たせてるしなw〉

 

『あはは、すいません。もう素材も回収できたので、今から戻りますね』

 

『気をつけてねー』

 

「俺の時とは態度が違うよなぁ!?」

 

〈悪魔には優しくて草〉

〈悪魔はちょっとトロールしてもこれまでの功績貯金があるからな〉

 

 人によって態度を変える狡猾なロロに噛みつきながら、俺は辺りを見渡した。

 

 焚き火の光によってイノシシとの戦場になったこの小さな広場は照らされているが、少し広場を外れると森の奥は真っ暗だ。ロロが森の入り口に焚き火を置いてくれているらしいが、ここからは見えない。この広場は入り口から結構踏み込んだ場所なので大木によって遮られているのだろう。

 

 どうしよう、迷子だ。

 

〈あーあw〉

〈きょろきょろで草〉

〈母親探してる小学生かよw〉

〈悠長なことしてるから〉

 

『壊斗さん、ついでなのでイノシシが伐採してくれた木材を持って帰りましょう』

 

「あ、ああ……そういやイノシシの突撃で木がぶっ倒れたとか言ってたな。いや……それはいいんだけど、帰り道わかんのか? 真っ暗だぞ」

 

『ふふふ……マップが表示されないADZでは、プレイヤー本人が各ステージの地形や道、建物や漁る場所を記憶しておかなければならないんです。脳内マッピングはADZ民の必須技能です。こちらです』

 

「マジかよ! ADZ民すげーっ!」

 

〈ADZ民すげー!〉

〈まじかよ〉

〈ADZすげーw〉

〈ADZ民すげー!〉

〈ADZ民でまとめないで……〉

〈ずっと攻略サイト開きながらやってる民もいます〉

〈黒兎が特殊なんです……〉

 

 木材を担いだジンは迷うことなく広場を抜け、森の中へと駆け出した。

 

 ジンの異常としか表現できないプレイヤースキルは『絶望圏』──いや、ADZで(つちか)われたものだったのか。ADZやってればFPSうまくなんのかな。俺もやろうかな。

 

 ジンの背中を追いかけ続けること数十秒、大木の隙間から焚き火の光がちらちら見えてきた。本当にまっすぐ森の入り口まで走っていたらしい。どんな方向感覚してんだこいつ。

 

『あー、帰ってきました。光を見ると安心しますね』

 

「やっぱ暗闇って怖いな。どこにキメラント潜んでるかわかんねーし。どっかで襲われんじゃないかってびくびくしてた」

 

『きっと夜行性の種類もいるでしょうし、夜戦うのは怖いですね。見えないとどうしようもありません』

 

『やっと帰ってきたーっ! 遅いよっ!』

 

「わりーわりー」

 

〈コンパス持ってんのか?〉

〈正確すぎる〉

〈まっすぐかよ〉

〈完成しとるやん!〉

 

 拠点で待機していたロロは、拠点入り口の近くに置いた焚き火の前で仁王立ちで待っていた。

 

 揺らめく炎に照らされた拠点は、しっかり屋根まで木材で覆われている。俺がジンの援護に向かう前にはまだ建築途中だったが、あの後ロロは完成させていたようだ。

 

『すみません、ロロさん。お待たせしました。拠点完成したんですね。とても立派なお家です』

 

『でしょー?! がんばったよ!』

 

『すごいです。ありがとうございます』

 

『えへへっ』

 

「建築しかしてないんだから、こんくらいしてもらわんとな」

 

〈ロロがんばった〉

〈やるじゃん〉

〈ほんとこいつw〉

〈どうしようもねぇな〉

〈そういうとこだってw〉

 

 斧を振りかぶったロロを見て、俺は即座に後退した。

 

 ぶぉん、と斧が俺のすぐ目の前を通過していった。動いていなかったら確実に当たっている軌道だった。俺を大木で一回ダウンさせただけじゃ足りなかったのか。

 

「あっぶねぇっ?! お前っ、何回俺を殺す気だよ!」

 

〈惜しいw〉

〈もうちょい早ければな〉

〈頭狙え頭〉

 

『素直に褒めるってことができないのっ?! みんなで喜んでる時にわざわざ水差してさぁっ! もっかいくらい死んっ……あ゛っ゛』

 

『はーい、やめましょうねー。せっかく拠点が完成し……あ』

 

〈あ〉

〈あ〉

〈草〉

〈ああーw〉

 

 俺を庇うように間に立ったジンだったが、二回目の攻撃に備えて振りかぶっていたロロは攻撃を止めることも方向を変えることもできなかったらしい。そのままジンの胴体目がけて斧を振り抜いた。

 

 がしゅっ、という音と血飛沫が舞う。

 

 ジンの記念すべき初めてのダメージはロロの攻撃だった。すごいな、イノシシ型やヒト型フルパでさえジンにはダメージを与えられなかったというのに。

 

「ロロ、お前……ジンまで手にかけるのか……」

 

『うわああぁぁっ?! ごめんっ! ごめんなさいジンさんっ!? ロロ、ロロそんなつもりじゃっ……ジンさんを殺すつもりなんてなくてっ!』

 

「俺を殺すつもりではあったのかよ」

 

『大丈夫、大丈夫ですよ。命に別状は……ない、こともないですが、死んじゃうダメージではないですから』

 

『お薬っ! 最初の箱でお薬あったから、これ使おう!』

 

〈悪魔初ヒット〉

〈ろろつえーw〉

〈こいつのせいでw〉

〈壊斗が諸悪の根源〉

〈ロロはイノシシよりつよいw〉

〈おくすりw〉

 

『ロロさん、ロロさん? 大丈夫ですよ。今は敵もいませんからね。お肉を食べれば体力も回復するそうですし、これから晩御飯を食べれば減った分の体力ゲージも元に……』

 

『ジンさんっ、ジンさん死んじゃうっ……お薬、手に持って……これで使えるのかなぁ? すぐっ、すぐ治すからっ!』

 

〈回復ここで使うんかw〉

〈拠点でw〉

〈涙目ロロかわいい〉

〈パニックw〉

〈ロロ必死w〉

〈かわいすぎる〉

〈壊斗が悪い〉

〈あかんかわいいが過ぎるw〉

 

 テンパってるロロがおもしろいので眺めていたら、右手に斧を持ったまま、左手に薬剤っぽいアイテムを握った。

 

 敵のいないこんなところで保存も利く上に回復量も多い貴重な薬剤を使う理由なんてまったくないのだが、おもしろいので黙って鑑賞しておく。

 

 このゲームでは回復アイテムは自分だけでなく仲間にも使える。お腹のあたりを血まみれにさせているジンに薬剤を使おうと、ロロは奮闘していた。

 

『ロロさん、回復アイテムは使わなくてもお肉食べれば回復するらしロロさん? ロロさんっ?!』

 

『え、えっ、えっ! えっ?!』

 

〈先に斧しまったほうが〉

〈斧直しとけ〉

〈斧はずそう〉

〈あ〉

〈あーw〉

 

 左手に包まれた薬剤はそのままに、ロロは右手に握った斧を振り上げ、ジンの頭部めがけて振り下ろした。たぶんクリックなりキー入力なりの操作を間違えたんだろうな。

 

 キメラントに弱点部位があるのだから、プレイヤーにもあるのだろう。ヒト型と同様にプレイヤーも頭が弱点なようで、斧の振り下ろしによって頭蓋を叩き割られたジンはダウンした。

 

「だぁっあっははっははははっ! だははっ! おまっ、ロロお前っ! 味方どんだけ殺すんだはぁっははっはっはっ!」

 

〈ロロw〉

〈草〉

〈だwうwんw〉

〈お前のせいだろ!〉

〈しっかり頭はいったw〉

〈味方ダウン二回ともロロw〉

〈ロロが最強だw〉

〈悪魔を倒すのはロロだったかw〉

 

 口を挟まずに傍観しておいてよかった。最高のシーンを画角に収めることができた。

 

『いやああぁぁっ!? ジンさんっ!? ジンさんっ!?』

 

『ロロさん、落ち着いてください? いいですか? ダウンを回復させるキーが表示されると思うので、まずそれを落ち着いて押しましょう。まだダウンしただけですから』

 

『ロロっ……ロロ、そんなつもりじゃ……っ。うあぁっ……っ、ロロが、ジンさんを……っ! 償うっ! ロロっ、死んで償うからっ!』

 

『待ってロロさん! ダウンしただけですから! 死んでませんから! 壊斗さんっ、回復してもらってもいいですか!』

 

「だはははっ、ひっひゃはははっ! や、やってる……やってるぅっ、くははっ……」

 

『なにそんなに笑ってんですか! ロロさーん! 死んでませんから僕! ロロさーん!』

 

「血まみれにはっ、かははっ! なってるけどなっ!」

 

『うるさいですねあなたはっ! ロロさん! ……崖、見づらいけどっ……』

 

〈ロロがこのパーティでいっちゃん強いんだからw〉

〈パニックで草〉

〈なにわろとんねん〉

〈確死はいってないぞ!〉

〈ロロー!〉

〈ただのダウンやw〉

〈身投げw〉

〈つぐなうw〉

〈判断がはやいっ〉

 

 頭からも腹からも血を流したジンが起き上がり、ロロが走っていった崖のほうを向く。

 

 一瞬走るモーションが入ったかと思えば、すぐに投げに移った。

 

 投擲する際のキャラコン、走り投げだ。走り投げを最初に発見した時は一歩二歩分くらい動いていたのに、今は半歩分くらいしか動いていない。効率よく使えるようになってる。

 

『痛っ……え、石ころ? ジンさんっ?!』

 

「うええぇぇっ!? マジかよ! 当たってんのかよ!?」

 

〈は〉

〈うそやんw〉

〈あてたんか?〉

〈見えてないぞ〉

 

 松明も置いていない真っ暗闇に走っていったロロの背中に、ジンはどうやらしっかり石ころを当てたようだ。

 

 いやどうやって当てたんだよ。

 

 距離のあるここから、姿の見えない真っ暗闇の中で崖に走っていくロロに当てるって、神業かよ。

 

『そうですよー、ロロさーん。僕死んでませんよー』

 

『う、うっ……うわああぁぁんっ! ジンさーんっ!? ごめんなざい゛ぃ゛ぃ゛っ゛……っ、んぐっ、回復ぅっ、ぐすっ、回復しようとっ、思ったらぁっ、ぐすっ……勝手にこいつがぁっ、勝手ぐすっ、勝手に斧振ってぇっ……ひっぐ』

 

『大丈夫ですよー。みんなわかってましたからねー。きっと間違えちゃったんだろうなってことは、みんなわかってますからねー、大丈夫ですよー』

 

「だっはははっ! あー、腹いてー。大丈夫だって。キー入力とクリック間違えたんだろうなーって、みんなわかってっから!」

 

〈石ころの神様かこいつw〉

〈ロロ!〉

〈ロロのせいじゃないぞ〉

〈ロロ悪くない〉

〈かわいそかわいい〉

〈ロロ号泣〉

〈目の前に味方いるのに斧振るキャラが悪いw〉

〈FFあるのが間違い〉

〈わかりにくいゲームが悪いよなw〉

〈あんなんクリックしちゃうよ〉

〈泣き声刺さる〉

〈ロロへの庇い方がすごいんよ〉

〈笑ってんじゃねーよ〉

〈お前のせいだろw〉

〈画角完璧だったなw〉

〈反省しろよw〉

 

 俺はロロから攻撃されかけた被害者なのにリスナーからの罵倒がすごい。なんでだ。うちのパーティのエース・ジンを二回も攻撃してダウンまでさせたロロは論理を無視したフォローのされ方をしてるというのに。おかしい。

 

『大丈夫、大丈夫ですよ。死んでませんからね。ほら、晩御飯にしましょう。イノシシのお肉ですよ。鍋はないので牡丹(ぼたん)鍋はできませんが、牡丹焼肉ならできます。焚き火で焼いて食べましょうね』

 

『うん、うんっ……ぐすっ。……食べる』

 

『はい、食べましょう! 拠点完成のお祝い、落成祝賀会です!』

 

『ら、らく、せ……お祝いだぁっ!』

 

「いえー! 食おうぜー!」

 

『壊斗くんは干したカメの肉でも食べてなよっ!』

 

「なんでだよっ?! 俺も手伝っただろ!」

 

『離れたとこで食べてっ!』

 

「なんでだよっ?!?! 俺らチームだろっ?!」

 

『仲良くみんなで食べましょうよー』

 

 ジンが間に入って取りなしてくれたおかげでどうにか俺も一緒に拠点完成イノシシ焼肉パーティに参加することができた。マジで俺だけハブにしようとしやがってロロのやつめ。

 

 一回目の一日目と同じくらい大量のハプニングが発生しながらも、どうにか俺たちはサバイバル生活一日目(二回目)を乗り切ることができた。

 




とても賑やかなサバイバル生活です。
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