サイコバグなお兄ちゃん、Vtuberになる。   作:にいるあらと

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誤字脱字等の報告本当にありがとうございます!


『それなら逃げられませんね』

 

 強迫観念に駆られている感は否めないが、働き者になってくれたロロのおかげで矢も洞窟の探索分は用意できそうだ。

 

 武器のほうはなんとかなりそうだから、あとは探索しながらアイテムの素材を集めて、帰りにウミガメしばいて甲羅を回収すれば、簡易的だが装備は整う。

 

「ジン、まずは見つけたっていう住居を見に行くぞ。道中で素材拾いながら行ってりゃいい感じに集まるだろ」

 

『そう、ですね。……ロロさん? あまり思い詰めずにゆっくり作業してくださいね?』

 

『がんばるっ! ロロがんばるよっ! うんっ!』

 

『だ、大丈夫ですか? なんだか、背中に銃でも突きつけられてそうなくらい声が逼迫(ひっぱく)してるんですけど……』

 

「働いてくれんなら問題ねーな。よし行くぞジン!」

 

『どうやら壊斗さんも人の心を持ってくるの忘れたみたいですね……。はあ……行きましょうか。こちらです』

 

 森のどこを歩いていようと方向感覚が狂うことがないジンの後ろに続いて進むことしばらく、目的の建物が見えて来た。

 

〈ロロの必死さに胸が痛い〉

〈がんばってから回るロロ尊い〉

〈やっぱ人の心ないなこいつ〉

〈まじで頭の中に地図入ってんのか〉

〈一直線で草〉

〈マッピング完璧かよw〉

 

「住居……ってよりは、住居跡だな」

 

『ですね。住居跡にくっつけるような形で建築はできるようなので、ここを仮の拠点にすることはできそうです。今はまだ仮拠点を設営する余力はありませんが』

 

「言ってまだ二日目だからな。たぶんのんびりプレイしてたらまだ拠点周りでちょこちょこやってるくらいの時期だ。俺たちはだいぶ生き急いでんだよ」

 

〈そういえば二日目(三日目)〉

〈サイレン鳴らないなって思ってたらこれ二日目か〉

〈幻の一日目があったからなw〉

〈難易度至難とは思えんくらいの進み方〉

 

『それもそうですね。もっとゆっくりやってもよかったかもと思い始めてます。敵が強いと聞いていたので抵抗する力が必要だと思って焦っちゃってましたね』

 

「まさか石ころでキメラントに対抗できるやつがいるなんて俺の想像の埒外(らちがい)だった」

 

『ていうかっ、生き急いでるのは壊斗くんが難易度一番高いのにするからじゃん! ロロもジンさんものんびりキャンプ生活するつもりだったのにっ!』

 

〈バトル強いやついるだけで安定感が違う〉

〈石ころ強すぎんよw〉

〈そういえばそう〉

〈それはそうw〉

〈貴弾で傷ついた心を癒すためのサバイバル生活だったのにw〉

 

「うるせーなー! 俺が気を利かせて難易度上げてなかったらジンだけで無双して終了だったんだぞ! ちゃんと配信が成り立つような難易度に合わせた俺を褒めてもいいくらいだ!」

 

『……たしかにっ! ナイス壊斗くんっ!』

 

『認めちゃうんですね』

 

「おーっ! さんきゅーっ!」

 

『なんだかどんどん僕のハードルが上がっていってる気がします……』

 

〈至難以外だと手応えねえわな〉

〈ひりつきがないもの〉

〈まじでただのキャンプになるw〉

〈ぬるくなるよな〉

〈ハードルもくそもないw〉

〈石ころの価値を変えたやつがなに言ってんだ〉

 

 誰もがハードル走のハードルを想像していたのに、勝手に棒高跳びくらいの高さのバーを飛び越えているようなバケモンがジンだ。なんの心配をしているのか知らんが、そのままふつうにプレイしていればジンなら期待を超える活躍はできる。

 

 気にする必要のないプレッシャーを感じているジンを尻目に、俺は住居跡周辺を漁る。

 

「布にロープ。ここらへんは助かるな。入手場所が限られてっから」

 

『鍋がありましたよ。これで次イノシシを倒したら牡丹鍋ができますね』

 

『やったーっ!』

 

〈ロープあつい〉

〈ロープまじで使うからな〉

〈鍋!〉

〈スープ作れるようになるのでかい〉

〈ぼたんなべw〉

〈のんきw〉

〈一応強い敵なんだわ……〉

〈ろろかわよ〉

 

『他にも空き瓶というのもありました。これには先ほども言っていた、鍋を使って作るという回復アイテムを入れるのでしょうか?』

 

「そうそう。あとは使い捨てになっちまうけど、油と布を足してクラフトしたら火炎瓶にもなる。ラッシュの時には切り札になるぞ」

 

『それじゃその、空き瓶? たくさんほしいねー。鍋もゲットできたんならこれから回復アイテムも作れるようになるし』

 

「回復アイテムの場合はその前に薬草を畑で作れるようにしときたいな。いざという時に使い惜しみそうだし」

 

『薬草は畑で育ててるよー。今も広げていってるところで、薬草のあとに木の実植えていこっかなって考えてるけど』

 

〈ビンなんかいくらあってもいい〉

〈いくらあっても足りないんだ〉

〈今後ラッシュでばかほど使うしな〉

〈回復持ち運べんのでかい〉

〈やっぱ住居跡は物資おいしいな〉

〈探索は危険な分物資うまい〉

〈ロロ!〉

〈ロロナイスすぎんか?〉

 

『ロロさんっ!』

 

『ぴゃあっ?! なにっ?! ロロちゃんと働いてますっ!』

 

『すごいですよっ! 大活躍じゃないですか! 矢を作るための鳥小屋に、回復アイテムのための畑。弓矢は僕のメインになりますし、回復アイテムは戦闘の生命線です。ロロさんっ、大活躍ですよ!』

 

「いやこれはマジでロロ、大戦果だぞ。まさか二日目で畑が稼働するとは思わんかったわ……」

 

〈草〉

〈ちゃんと働いてます草〉

〈ロロ大活躍〉

〈二日目で畑やってんの草〉

〈そうかそのための鳥小屋か〉

〈仕事がはええ!〉

 

『ふへっ……ほ、ほんと? へ、へへっ……役に立ってる?』

 

『え、ええ。も、もちろん。はい、役に……とても活躍してますよ』

 

『へっ、ふへっ……やったぁっ!』

 

「いや笑い方きもっちわるっ……」

 

〈いや笑い方w〉

〈笑い方の癖強〉

〈こんな綺麗なオタク笑い聞いたことない〉

〈ジンドン引きで草〉

〈初めて壊斗に同意した〉

 

『はぁ?! がんばった人にそんな言い方なくないっ?! 壊斗くんはジンさんを見習いなよっ! 女の子との話し方を学べっ!』

 

「いや……ジンも引いてたぞ。男がどうとか女がどうとか言いたくねーけど、少なくともかわいい女の子なら絶対しない笑い方してた。それだけは確実」

 

『ひ、ひどいっ! みんなのためにがんばった女の子に対して言うことじゃないよっ! ジンさんっ、壊斗くん言いすぎだよねっ?! ねっ?!』

 

『…………そう、ですね。言葉を選ぶことはできたはずですし……』

 

『じ、ジンさん……? フォローにもなってないけど……? オブラートに包めよって話になってない? ジンさん……?』

 

「さっきより間が長くなってたしな」

 

『……水飲んでました』

 

『つまり本心ってことじゃんっ! うわああぁぁんっ! 誰かかわいい女の子の笑い方教えてよーっ! ロロそんなの知らないよーっ!』

 

「あーあ。ジンがロロ壊した」

 

〈いや……〉

〈こればっかりは……〉

〈さすがの悪魔もこんな悪送球拾えん〉

〈ヘラったw〉

〈ロロw〉

〈今日のロロ情緒不安定で草〉

 

 ジンが絡むとロロはおかしくなりやすいみたいだ。

 

 そういえば雑談コラボを組んだのもロロの私的な理由が主だったみたいだし、シンプルに推しなんだろうな。今回のコラボ配信前にロロと二人で話していた時も、自分の立場を利用した職権濫用みたいなコラボを計画していた。ジンのことを知った今、ロロの私欲を満たすようなあの計画は白紙に戻すべきだと俺は思うが。

 

『えっ、ちがっ……。ろ、ロロさん、あれはあれで可愛いと思いますよ』

 

『…………』

 

「だはははっ! 疑ってるっ、ジン全肯定信者のロロがジンのこと疑ってんぞ!」

 

『うるさい人がいますね……。さっきは初めてあの独特な笑い方を耳にしたものだから、ちょっと驚いてしまっただけなんです。それ以外に他意はありませんよ』

 

『……ほんとに? 引いたんじゃない? 嫌いになってない?』

 

『引いてませんし、そんなことで嫌いになったりしませんよ。笑い方一つ奇抜だっただけで、ロロさんの本質が変わったわけでもないのに』

 

『んふっ……ふ、ふへへっ……。それならいいやっ! よっし、お仕事するぞー!』

 

「扱いうまいなー」

 

 ロロが単純な思考回路をしているのは事実だが、それでも転がすのがうまい。

 

『壊斗さんが余計なこと言うせいなんですけどね……そちらは漁り終わりましたか? こちら、住居跡の中は全部見ました』

 

「こっちも周囲は終わった。ここらへんの枯れ草や枝を刈り取ったら戻るか」

 

『そうですね。海岸線にも寄らなければいけませんし、戻りの途中で動物がいれば狩りもしておきたいですし』

 

「あ、その前に丘を見に行こうぜ」

 

『丘? 何かあるんですか?』

 

「トリ型のキメラントが丘に出てくることがあんだよ。トリ型を倒せば肉はもちろん、確率で(くちばし)も出てくるし、なによりこれから俺たちには必要になる羽根を大量に提供してくれる」

 

『鳥小屋は作ってもらっていますけど、鳥小屋でどれだけ貯まるかわからないので余分に確保しておきたい、ということですか』

 

「そういうこと。んー……いない! 撤収!」

 

『あははっ、撤収しましょう。長居していられません』

 

 森から少し外れたところにある丘へとトリ型を求めて足を運んだが、姿がなかったのですぐに引き返した。

 

 丘には、森に生えている大木とは比にならないくらい馬鹿でかい木がぽつんと(そび)えており、そこにトリ型が巣を作っていることがある。その馬鹿でかい木に巣があるかどうかでトリ型がポップしているかどうかが確認できるのだ。

 

〈おらんかったか〉

〈いやいたらどうすんだよ〉

〈遠距離武器持ってないだろ〉

〈飛ばれたらなんもできなくなるぞ〉

〈悪魔の石ころ頼みかよ〉

〈槍が届く相手じゃないんよ〉

 

「ん? ……ぶふっ! た、たしかに……っ」

 

 手が空いたのでコメント欄をちら見したら、リスナーが正論をぶつけていた。思わず笑ってしまった。

 

『どうしました?』

 

「いや……リスナーに言われて気づいたんだけど。トリ型って飛ぶんだよ」

 

『はあ……まあ、トリ型ですもんね。ニワトリやダチョウみたいな種類でなければ飛びますよね』

 

「飛ばれたら、遠距離武器で攻撃しねーと降りてこないんだわ」

 

『空にいたほうがトリは安全ですしね。敵の頭を押さえるのは戦の常……ん? それって……』

 

「トリいても戦えるのジンだけだったわ!」

 

『危なすぎるでしょ! なぜそれで戦いに行こうなんて言い出したんです?!』

 

〈なにわろとんねん〉

〈ぜんぶ悪魔に任せんなw〉

〈歴でいえば後輩なんだぞ!〉

〈トリ相手にも石ころは無謀で草〉

〈なんなら弓矢でも一人じゃきついからw〉

 

「だはははっ! いやぁっ、忘れてた! 羽根が手に入るってことしか考えてなかったわ!」

 

『あまりに油断しすぎではっ? 基本的な身体性能はキメラントのほうが圧倒的に上なんですからね! イノシシの時は僕らが有利になるよう立ち回っただけなんですから!』

 

「わりわり。なんかジンがいたらどうにかなんだろーって感じだったわ」

 

『いや……それはもう期待というより無茶振りですよ……』

 

〈勝った時のことしか考えてないなw〉

〈なんとかなりそうではある〉

〈たしかにw〉

〈やってくれそう感はあるよなw〉

〈ワンチャンある気がしてきて草〉

〈よく考えたらありえねえよw〉

 

 幸か不幸かトリ型と遭遇しなかった俺たちは帰宅の道中で素材を持てるだけ貯め込み、小鳥を発見した時には(ジンが石ころを当てて仕留めて)羽根も回収した。

 

 今回の探索では動物型のキメラントとは遭遇せず、ヒト型と散発的に出会っただけだった。槍は交戦距離が斧よりも離れている分安全だし、IGL(ジン)の的確なオーダーがあるおかげで立ち回りも不安はなかった。

 

 日課になりつつある海岸線のチェックをして、拠点へ帰還する。

 

「ただいまー。なんかいろいろ増えてんな!」

 

『あれは物見櫓(ものみやぐら)ですか? ロロさんありがとうございます。作ってくれていたんですね』

 

『うんっ! 〈三日目に備えて作っといた方が安心だぞ〉ってリスナーが言ってたから。なんかラッシュっていうのがあるらしいよ』

 

〈増えとる〉

〈拠点っぽくなってる!〉

〈ロロほんとに働いてたw〉

〈貢いでんなぁw〉

〈家の後ろに畑があんのか〉

〈やぐらもあるw〉

〈あと壁があればちゃんと拠点だな〉

〈ロロやるじゃん!〉

〈できるメンヘラ女やw〉

〈ラッシュ対策か〉

〈弱いラッシュなら悪魔だけでいけるなw〉

〈悪魔と弓矢とやぐらがあれば勝つる〉

 

『ラッシュ? そういえばちょくちょくラッシュがどうのというコメントを見かけましたね』

 

「ああ。サバイバル三日目にはラッシュっつー、キメラントが大量に押し寄せてくるイベントがあるんだよ。たしか……三日目と、七日目、十三日目、とかだったか」

 

『……イベントの発生する日が素数なのは、何か関係があるんでしょうか?』

 

〈最初は簡単だしいけるいける〉

〈たぶんいって三か四だろ〉

〈三日目のラッシュで三以上は引いたことないな〉

〈素数w〉

〈草〉

〈たしかに素数w〉

 

「素数? たぶん関係ないんじゃね? ちなみにラッシュの日は朝に島中どこにいても聞こえるくらいのサイレンが鳴るんだ。そのサイレンの鳴る回数でラッシュのレベルがわかる。ちなみに前回は七日目のラッシュでサイレンが四回鳴って全滅した」

 

『え? 拠点があればリスポーンするんですよね?』

 

「ラッシュで押し寄せるキメラントは拠点をぶっ壊しにくるんだわ。拠点を守るために戦って、キメラントに囲まれてダウンして、その間に拠点ぶっ壊されてリスポーン地点消滅、ゲームオーバーってコンボだ。しかもラッシュの時は種類が違ってもキメラント同士協力して襲ってくる」

 

『ひ、ひどすぎる……やだっ! お家壊されたくないっ!』

 

〈人数少なかったからな〉

〈焦らなかったらいけたんだけど〉

〈七日目でレベル四は引き悪いほうだった〉

〈ゾンビアタック不可〉

〈いっそのこと拠点捨てるって手ならある〉

〈拠点壊されたくないよな〉

〈ロロの気持ちはわかる〉

〈いやだよなー〉

〈拠点愛着湧くんだよなぁ〉

 

『……ダウンした時に、ダウンの回復を待つか、すぐに死んでリスポーンするか選べたはずですよね? ダウンされてもすぐにリスポーンすれば』

 

「一回ダウンしてリスポーン選んでも復活まで時間かかるし、仮にラッシュ中にリスポーンできたとしてもダウンの前に持ってたアイテムや装備は死体に残ったままだ。装備を取りに行こうにもラッシュ中は周りは敵でいっぱい。漁れずに死ぬ。あるいは漁ってる最中に死ぬ」

 

『……予備の装備を拠点に置いておけば、そこからでも戦えるのでしょうけど……』

 

「ああ。今はまだそんな余裕はないからな。死ぬこと前提で装備やアイテムを出し渋って拠点に置いとくなんて考えも本末転倒だ。一回死んだら終わりだと思っといたほうがいい」

 

 こんな仕様がある以上、死に戻りしてもう一度戦いに行く、みたいなゾンビアタックはできない。死なないように全力の装備とアイテムで戦い、拠点の周囲を罠や柵で固めて立ち回ったほうが堅実だ。

 

『……ラッシュのキメラントは、プレイヤーを狙うんですか? それとも拠点を?』

 

『どういうこと? プレイヤーを狙ってるから拠点にくるんじゃないの?』

 

「いや、ロロ。ぜんぜん違うんだわ。プレイヤーを狙ってラッシュがくるんなら、プレイヤーは拠点から離れてりゃ拠点は守れる」

 

『はっ! なるほど!』

 

「でも残念なことにラッシュは拠点狙いだ。拠点をぶっ壊しにくる。その邪魔をするプレイヤーがいればプレイヤーを攻撃するって感じだった」

 

『……ああ、そうですか……。それなら逃げられませんね』

 

「だっは! お前優しいなーっ」

 

〈すぐ気づく〉

〈頭回るなー〉

〈そうなんだよな〉

〈拠点狙いなのよ〉

〈最悪逃げりゃええ〉

〈そんな強いのこんだろうけど〉

〈ロロに甘すぎんかw〉

〈あくまっ〉

〈優しすぎw〉

 

 拠点を狙うかプレイヤーを狙うかという点に気づけるジンならすぐにラッシュの対応策に気づいただろうに、その策は考慮すらしなかった。優しいやつめ。

 

『え? え? なに? どういうこと?』

 

「プレイヤーよりも先に拠点を狙うから、ラッシュを捌けないなって思ったら拠点を捨てて逃げれば死ぬことはねーんだ。ラッシュが終わってからまた拠点を建築すれば、手間はかかるが立て直せる。でも、建築したやつは全部ぶっ壊されて更地にされる。それだとロロが悲しむだろうから、逃げることはできないなってジンは言ってんだよ」

 

『せっかくロロさんがここまで頑張って建築して、たくさん設備を増やしてくれたんです。壊されるなんて嫌ですからね』

 

〈逃げソッコー捨てるやん〉

〈かっこよ!〉

〈あくま……〉

〈頼り甲斐ありすぎる〉

〈レベル三までなら悪魔一人でいける〉

〈至難はレベル上限ないけどいけるのか〉

〈言ってみてぇ〉

〈かっこええ……〉

 

『じっ、ジン゛ざん゛っ゛……』

 

「つっても三日目のラッシュだ。そうそうやばいレベルはこないだろ。前回やった時は三日目はサイレン三回だったけど、それでもレベル高いほうだったし。ジンがいりゃあどうにかなる」

 

『ジンざんごべんねっ……(だよ)りにじでばずっ……』

 

『あははっ、いえいえ。気にしないでください。みんなのお家ですからね。頑張って守りましょう』

 

〈それをロロに言わないのもかっけーわ〉

〈ロロ感涙w〉

〈何回泣くんだw〉

〈ロロの涙腺はぼろぼろ〉

〈今回は悪魔がおる大丈夫や〉

〈悪魔と壊斗おりゃなんとかなるやろ〉

 

 難易度もあいまってラッシュイベントはかなり脅威だが、サバイバル生活の日にちが浅いうちは高レベルのラッシュは発生しにくいという話も聞いたことがある。低レベルならヒト型が多いくらい、あるいは動物型が一体出てくるくらいのものだ。

 

 仮にヒト型と動物型の混成部隊でラッシュがきても、俺が動物型のヘイトを買って時間稼ぎに徹していれば、ジンならその間に一人でヒト型を殲滅できる。ヒト型を片づけられたら、あとは俺とジンで動物型を挟み討ちにしてタゲを交換し合えば遮蔽物のない拠点近くでも倒し切れるだろう。

 

 問題はない。余裕だ。駄目押しで罠でも仕掛けておけば、午前中は洞窟攻略に行けるくらい余裕だ。

 

「よっし。そんじゃ今日は飯食ってさっさと寝るぞ! 帰りにシカ取ってきたから! ジンが!」

 

『ぐすっ……取ったのジンさんなのに、なんで壊斗くんがどや顔……』

 

「いいだろが。俺も手伝いはしたんだ」

 

牡丹(ぼたん)鍋にはできませんでしたが、紅葉(もみじ)鍋にはできました。お肉取れてよかったです』

 

『もみじ鍋?』

 

『シカ肉を使ったお鍋ですよ。木の実があるんでしたっけ? 人間様によると鍋にお肉と木の実を入れると効果が高くなるそうです』

 

『そうなんだ? それじゃあ作ってみるねっ!』

 

「薬膳スープっつって、回復量とか、あとバフもつくんだわ。あ、でもロロ気をつけろ。薬膳スープって名前のわりに、薬草使うとなぜか効果が落ちる。木の実しか使えねーんだよ」

 

『薬膳なのに……』

 

『名ばかり薬膳スープですね。それではロロさん、こちら食材と、あとお鍋。お渡ししますね』

 

『うんっ。二人ともちょっと待っててね。……焚き火の上に置いたらいいのかなぁ』

 

「建築でかまどってのがあんだろ。それ作りゃいい」

 

『そういえば焚き火のページのところにあったね。わかった。薬膳スープにもいろいろ種類があるみたいだし、ぜんぶ試したいなぁ』

 

『いずれは全部作りたいですね。他のお肉も取ってきますね』

 

『ジンさんありがとーっ!』

 

「とうとうキメラントのこと肉として扱うようになったな……」

 

 そうしてお喋りしながらできた薬膳スープを食べてスタミナの最大値とカロリー、加えて水分ゲージまで回復し、二日目終了。次の日に待ち受ける洞窟攻略にわくわくし、ラッシュにはちょこっとびくびくしながら、俺たちは眠りについた。

 

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