サイコバグなお兄ちゃん、Vtuberになる。   作:にいるあらと

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二章『administrator』
「小豆真希母上」


 

「人間の皆様、こんばんは。『New Tale』所属の四期生にして悪魔のジン・ラースです。本日もお忙しい中、足を運んでいただきありがとうございます。昨日の配信も観てくださった方はまたお会いできて光栄です。今日初めて観にきたよ、という方は初めまして。どうぞごゆっくりお寛ぎいただければと思います。本日は『admini(アドミニス)strator(トレーター)』の続きをやっていきますが、その前にご紹介させていただきましょう。はい、どうぞ」

 

「はい、えっと……お兄ちゃんの配信をご視聴中のリスナーのみなさん、こんばんは。お兄ちゃんの妹にして『New Tale』の二期生、悪魔のレイラ・エンヴィです。今日はお兄ちゃんの配信を観にきてくれてありがとうございます。『なんで妹のほうも?』と思われているリスナーさんは多くいらっしゃるでしょうけど、私もわかりません。お兄ちゃんからは『せっかくだから』と言われて連れてこられました」

 

「せっかくだからね」

 

「なにがせっかくなの、なにが」

 

〈やったー!〉

〈待ってたー〉

〈お嬢!〉

〈妹悪魔のほうは枠ないんか〉

〈前回と同じやりかたなのねw〉

〈ツッコミ担当の妹悪魔〉

〈続き待ってた〉

〈よかったレイラ嬢もいる〉

〈悪魔兄妹コラボ!〉

〈実況と進行の兄とリアクションとツッコミの妹〉

〈強制連行で草〉

 

 本日の配信はDMやアーカイブのコメントでも続編が待たれていた『admini(アドミニス)strator(トレーター)』をやっていく。

 

 前回やった時、ちょっとしたハプニングで自分の名前を呼ばれたと勘違いした礼ちゃんが僕の部屋に入ってきた。礼ちゃんは『administrator』をプレイしたことがあり、僕と礼ちゃんのゲームの進め方にはかなり違いがあったそうで、おもしろそうだからという理由で僕の配信に途中参加したのだ。

 

 僕の配信を観ているリスナーさんには、礼ちゃんの配信を観ることが多い眷属さんも大勢きてくれている。せっかく『administrator』の続きをプレイするのだから、どうせなら前回と同じように礼ちゃんにも同席してもらおうと思って誘ったのだ。僕が淡々とシナリオを進めることもあって、礼ちゃんのリアクションがほしいという声もたくさんあった。僕からは出てくることがない賑やかな反応とツッコミ役としての抜擢である。

 

 礼ちゃんがいてくれると、しっかり拾ってくれるという安心感から僕も悪ふざけしやすい。きてくれてよかった。

 

「さて、それではさっそく始め──」

 

「お兄ちゃん」

 

「──させてもら……礼ちゃん、どうしたの? まだ何か言っておきたいことあった?」

 

「お兄ちゃんはストーリーの続きをしっかり憶えているかもしれないけど、前回の配信からそれなりに時間が経ってるでしょ? どんなお話だったか忘れちゃってる人もいるだろうし、今日初めて観にきたよーって人だとストーリーがわからないからさ。軽くおさらいしておいたら?」

 

〈前回はモール終わったとこだったか〉

〈ちょいちょい忘れてんな〉

〈レイラ嬢たすかる〉

〈お嬢ありがとう〉

〈みんながみんな何周も観てるわけじゃないもんね〉

〈前回のまだ観てないから助かります〉

 

 失念していた。礼ちゃんの言う通りだ。前回の『administrator』配信から意外と日が経ってしまっているし、初めて観にきたという人もちらほらコメントしてくれている。危うく観にきてくれたリスナーさんを置いてけぼりにしてしまうところだった。

 

 さすが礼ちゃん。よく気が回る。

 

「なるほど。たしかにそうだね。教えてくれてありがとね。やっぱり先輩は頼りになるなあ」

 

「えっ? べ、べつにそんなことないよ。お兄ちゃんより先に私が気づいたってだけだし……。……えへへ、先輩……」

 

〈悪魔は人間の記憶力を過信してる〉

〈レイチェルがかわいかったってことしか覚えとらん〉

〈さすが先輩!〉

〈そういえば先輩なんだよなw〉

〈レイラ先輩かっけーっす〉

〈かわいい〉

〈かわいすぎ〉

〈えへへかわいい〉

〈先輩かわいい〉

 

 ということで、しばしざっくりとした説明の時間を作った。

 

「主人公が目覚めた時には、もうすでに街は元人間様で溢れかえっていたのです。それはそれとして我関せずとばかりに自室を漁っていました」

 

「街がゾンビに襲われてるのに気にせずにマイペースに漁るあたり本当にお兄ちゃんって感じだね。漁るって言わないで」

 

「すると知り合いらしい主任研究員さんからお電話がかかってきました。なんでも、研究員さんは仕事で手が離せない。でも街がこんな状態だと不安だから、娘を連れてきてくれないか、と。こんな得体の知れない主人公に娘を託すだなんて、なんて親なんだろうと思った僕は、最初はぜんぜんスルーしようとしていたのです」

 

「その内容の話を聞いてスルーっていう選択肢を選べるんだ……」

 

「しかし、研究員さんは言ったのです。『礼ちゃんはきっと一人で心細い思いをしているはず。守ってやってくれないか』と」

 

〈でたw〉

〈あったw〉

〈ぜんぜんレイチェルだったんだよなw〉

〈草〉

 

「レイチェルね? 私は出てきてないよ。レイチェルだからね。みなさーん、レイチェルですー」

 

「礼ちゃんが不安がっている……? ならば、お兄ちゃんが守らなければいけない。そう思った僕はすぐに向かおうとしたのですが、先にお隣さんとの騒音問題を片づけろとシステムがうるさかったので仕方なくお隣さんの部屋で問題を解消し、意気揚々と礼ちゃんを迎えに行きました」

 

〈これお嬢おらんかったら真実がわからんなるぞw〉

〈お兄ちゃんが過ぎる〉

〈空耳で草〉

〈お隣さんは見捨てられたのだ〉

 

「捏造されてるなあ……。ストーリーというか、記憶が改竄(かいざん)されてるんだよね……ここまで詳細に憶えているのに。ていうかお隣さんとの騒音問題ってなに? そんなの私は記憶にないんだけど……」

 

「物音がするからお隣さんの様子を見てこいって感じのタスクだったね。このゲームがどういうものなのかを説明するチュートリアルみたいな感じのものだよ」

 

「ああ! あったあった! お隣さんを助けるみたいな選択肢があった記憶が」

 

「すぐに研究員さんのお家に向かいたかったからどっちも撃ったんだけどね」

 

「人まで撃ってるの?! せめて撃つのはゾンビだけにしなよ!」

 

〈あったあったw〉

〈くそ笑ったわ〉

〈フリックで綺麗にヘッショだった〉

〈頭ど真ん中だったからなw〉

〈殺意しかなかった〉

 

「僕がお隣さんの部屋に向かった頃にはすでに手遅れだったみたいだから、安全確保しなきゃと思って。ほら、映画とかではゾンビに噛まれるとゾンビになる、みたいなのあるでしょ? 確死は取れる時に取っておかなきゃ」

 

「考え方はわかるけど……でも先に一番大きな理由を白状しちゃってるんだよね。レイチェルに早く会いに行きたかったからっていう」

 

「……まあ、そうだね。結果的に元人間様にやられちゃってたから、人間様からは〈死体撃ち〉って言われちゃったよ」

 

「あははっ、たしかにっ。死体撃ちだ。マナー違反だよ、お兄ちゃんっ」

 

〈漁るしフレンドリーファイアするし〉

〈死体撃ちしてたw〉

〈チーミングとか言ってたの思い出した〉

〈キャラコンはあの時からすごかったけどw〉

 

「しっかり謝ったからお隣さんも許してくれているよ、きっと。そしてそんなこんなでアパートを出て、研究員さんお家に急行したのです」

 

「道中でも頼み事とかされたでしょ?」

 

「そうそう。たくさん言われたよ。小学校が孤立してるから生徒たちを助けるのに手を貸してくれだとか、子どもがまだ家にいるのに近くにゾンビがいて助けに行けないから手伝ってくれだとか、避難所になっている学校を守るのに協力してくれだとかって」

 

「結果はわかってるんだけど、一応訊いておくね? お願い受けた?」

 

「一つも受けてない。受けるつもりは微塵もなかった」

 

「うん。だと思った」

 

「あまり長く引き留めてくるようなら、いっそのこと撃っちゃおうかとすら思った」

 

「やめてあげてよ!」

 

「礼ちゃんを迎えに行くという僕の崇高な目的を邪魔するなんて、もしかしてこの人、敵なのかなって思って」

 

〈考えずに断ってたからな〉

〈まじで第一回のアーカイブ観たほうがいい〉

〈悪魔のピストルは引き金が軽いから〉

〈セリフ覚えてるコアリスナーいて草〉

〈敵認定まで早すぎるw〉

 

「あまりにも目的に一心不乱すぎる……。ちなみにあのお願いを受けてたら銃の弾とか回復アイテムとかもらえたんだよ?」

 

「いらないかな、って。使わないから」

 

「使うよ! ゾンビゲーで使わないことないでしょ!」

 

「しっかりと銃を撃ったのって……アパートのお隣さんの部屋で二発と、この後に行くことになるショッピングモールでワンマガジン(ワンマガ)撃ったくらい、かな? ショッピングモールでは使う必要もなかったし。実質二発となると、弾はいらないよね。投げ物があったら嬉しいくらいかな」

 

「回復アイテムも持ってたら安心でしょ」

 

「使わないからいらないよ。荷物になっちゃう」

 

「回復アイテムのこと邪魔者扱いしないで! ふつうは使うのっ!」

 

〈実際使ってねーもんなw〉

〈いまだにノーダメ継続中〉

〈荷物草〉

〈回復アイテムは重り〉

〈RTAかよw〉

〈勝手に回復なし縛りしてんのかw〉

 

「今のところ銃の弾より投げ物より一番使ってないよ、回復アイテム。小さい礼ちゃんの休憩には使えたから、ありといえばありだけど」

 

「いつ攻撃喰らうかわからないのに、なんであげるかなー……。でも、お兄ちゃんのルート取りに影響がないからここでネタバレしちゃうけど、お願い事を受けてたらレイチェル(さら)われちゃうんだよね」

 

「やはり僕の判断は正しかった」

 

「結果的に血も涙もない選択が正しいのが救われないよね」

 

〈そういや唯一の回復あげてたなw〉

〈喉渇いてるだろうからっつってなw〉

〈振り返ると覚えてるもんだな〉

〈インパクト強えのよ〉

〈ルート条件そうなんだ〉

〈ちなみに一回目から通るようなルートではない〉

〈悪魔の配信楽しみたくて他の配信は観てなかったんだよな〉

〈これがお兄ちゃん力〉

〈ほかを切り捨てる判断が早すぎて草〉

 

「礼ちゃんが一番大事だからね。他の何よりも優先するんだよ」

 

「そう言ってくれるのは私はとってもうれしいけど、今お兄ちゃんが言ってる『礼ちゃん』は『レイチェル』であって私じゃないんだよね」

 

〈てぇてぇ〉

〈なんだかんだ悪魔兄妹が正義なんよ〉

〈てぇてぇなぁ〉

〈愛が深いんだ〉

〈草〉

〈レイチェルで草〉

〈お兄ちゃん……〉

 

「……さて、そうして一直線に研究員さんのお家に行きました主人公ですが、世の擾乱(じょうらん)に乗じて強盗が入っていました。なんと恥知らずなのでしょう。人と人とが助け合わないといけない非常事態だというのに」

 

「お願いをぜんぶ拒否してきたお兄ちゃんが助け合いとか言うと、言葉の重みが違うよね」

 

〈強盗のシーンはリスナーの心が一つになった〉

〈全員がやってよしだったからなw〉

〈たすけ、あい?〉

〈?〉

〈助け合いとは?〉

〈草〉

〈妹悪魔の正論パンチ〉

〈鋭い皮肉が刺さったw〉

 

「くふっ……ふふっ、たしかに。言葉の重みが違うね。軽いって意味だけど。えー、そして強盗は先手必勝で打ちのめし、どうにか小さい礼ちゃんを救い出すことに成功したのです」

 

「小さい礼ちゃんやめて。打ちのめしって、いや、お兄ちゃんなら間違ってないか。きっと頭一発で撃ちのめしたんだろうしね」

 

「うん? 銃は使ってないよ?」

 

「え? そうなの?」

 

「当たり前だよ。暴漢のすぐ近くに小さい礼ちゃんがいたんだから。すぐ間近で頭弾いたらびっくりしちゃうよ」

 

〈そういや銃使ってないんだよな〉

〈銃なくても強かった〉

〈サンドバッグだった〉

〈いっそ可哀想に見えるくらいフルボッコだったなw〉

〈気遣いがすごすぎる〉

〈自分の命よりもレイチェル〉

〈銃使えば一発だったもんな〉

 

「やさしっ……ほんともう、守る対象とそれ以外とで扱いの差がとんでもないよね、お兄ちゃんは」

 

「優先順位を決めることが判断の速さに繋がるんだよ。そういえばこの後くらいに礼ちゃんが合流したんだったね」

 

「だった、かな? 名前を呼ばれたから部屋に入ったら『本物の礼ちゃんだ』って言われて、なにを言ってるんだろうって思ったよ。偽物がいたのかよ、って思ってたんだけど、ある意味では偽物がいたね」

 

〈妹悪魔には別格に優しい〉

〈お嬢には吐くほど甘いからw〉

〈愛がすごい〉

〈てぇてぇ〉

〈合流おもろかったw〉

〈ふつうに配信に加わってたよねw〉

 

「偽物なんて呼ばないであげて。レイチェルは在りし日の礼ちゃんだよ」

 

「あんなにわがままじゃないし。それに好き嫌いもなかったし」

 

「そうだね。ニンジンとピーマンが苦手だっただけで」

 

〈ニンジンきらいっ〉

〈ピーマンやだ!〉

〈ニンジンきらいっ〉

〈ニンジンきらい!〉

〈ピーマンやだっ〉

〈ここのリスナーアーカイブ何周しとんねんw〉

 

「んああっ!」

 

「やめっ、暴れないで礼ちゃんっ……」

 

「私のほうが優位なことを忘れないでもらおう。たしかレイチェルのお家の中を見て回って、それから研究所に向かったんだったね。車を使えないから徒歩で」

 

〈草〉

〈んあー!〉

〈お嬢暴れるw〉

〈むああかわいw〉

〈ところで二人はどうやって今配信を〉

〈てぇてぇ〉

〈また膝に乗ってるのかなw〉

〈強くてくさ〉

 

「多くの自動車が横転してしまっており、道が塞がっていたのです。そのせいで小さい礼ちゃんには過酷な道のりになってしまいますが、徒歩で向かうことにしました」

 

「その途中でね。問題が発生したんだよね」

 

「……問題?」

 

「どうして忘れられるの? 途中にあったガンショップなんか見向きもせずにアパレルショップに寄ったこと、なかったことにはならないよ」

 

〈おめかしや〉

〈あのデートのやつねw〉

〈あれはアパレルショップが正解だったからw〉

〈ゆきねさんの手描き切り抜きよかった〉

 

「ああ、おめかしのシーンか。あれは問題じゃないよ。選択肢一つしかないみたいなものだったし。説明いたしますと、ガンショップとアパレルショップのどちらに入るかの選択の前に、レイチェルが肩を抱いて凍えていたのです。周りの服装を見るにゲーム内の季節は冬のようで、しかしレイチェルの部屋には強盗犯が転がっていましたからね。パジャマから着替えることもできずに家を出てしまっていたのです」

 

「服抱えて部屋の外で着替えればいいじゃないって話だよね」

 

「研究所までの道のりは長い。それなのに小さい礼ちゃんに寒い思いなんてさせられません。なので、アパレルショップでお洋服を見繕ったわけです。せっかくなのでお洒落に着飾ってもらいました」

 

「ほんっとうに悔しいけどあの格好はとんでもなくかわいかったよ。そのレイチェルのかわいい姿はすぐあとに出てくるので、リスナーさんは楽しみにしててくださいね」

 

〈あの一瞬はアイドルゲーだった〉

〈お嬢もノリノリだったよw〉

〈なんなら一番テンション高かったのお嬢w〉

〈楽しみ〉

〈コーディネートめっちゃ凝ってるんだよな〉

 

「アパレルショップでのやり取りは僕の切り抜き師をしてくれているめろさんが動画を投稿してくれてますし、手描き切り抜きを描いてくれているゆきねさんのほうだと、僕と礼ちゃんがお願いしたゴシックロリータ姿やストリート系ファッションも描いてくれています。概要欄にリンクもありますのでぜひそちらからどうぞ」

 

「すっごくかわいいから今日の配信を観たあと、時間があれば観てみてくださいね。そこから鬼門のショッピングモールだったね」

 

〈悪魔兄妹が好きならメロニキとゆきねさんはチャンネル登録しておくべき〉

〈配信みて切り抜き観て忘れてきた頃に手描き切り抜きくるから三度美味しい〉

〈まじで切り抜き師レベル高い〉

〈観てみよ〉

〈サポート体制万全なんだから〉

〈イラストのクオリティやばかった〉

〈ショッピングモールw〉

〈惨劇の地ね〉

 

「そう。小さい礼ちゃんにお着替えしてもらったあとは、イベントムービーでショッピングモールへと強制的に運ばれたのです。そこには無数の元人間様たちがウィンドウショッピングを楽しんでらっしゃいました」

 

「あははっ、ウィンドウショッピングやめてっ。あははっ、それっぽく思えてきちゃうからっ」

 

〈ウィンドウショッピング草〉

〈のんきw〉

 

「ピストルとナイフで敵う相手ではない、そう判断してなにか抜け道はないだろうかと捜索しました」

 

「ふふっ、最初はもう詰んだと思ったよね」

 

「本当にね。僕だって諦めかけながら、この制作会社様ならそんな無慈悲なことはしない、って自分に言い聞かせて探してたくらいだし」

 

〈ピストルとナイフでどうにかできる数じゃなかったねw〉

〈アサルトライフルでもむずいからな〉

〈防具もないし〉

〈レイチェルの装備だけ充実していくの笑ったわ〉

 

「そうやってお兄ちゃんが一生懸命探してるとマネキンを見つけたんです。ポンチョを着たマネキンを」

 

「その前から元人間様は少なからず知能を有しているのではないかと疑っていた僕は、そのポンチョとマネキンにヘイトを集めればいいのでは、と思いつきました」

 

「お兄ちゃんとレイチェルが入ったショッピングモールの中央には大きな広場があったんです。そこにゾンビたちを集めてスモークグレネードで一旦姿を消す。マネキンにポンチョを返してマネキンは広場の中央に置いて、お兄ちゃんはその場を離れました」

 

「スモークグレネードの煙が晴れると元人間様はマネキンに駆け寄っていったので、集まったところをグレネードで一網打尽にした、という顛末(てんまつ)です。こうしてどうにかショッピングモールを抜けることに成功したのでした」

 

〈あの閃きまじすごかった〉

〈考察刺さってた〉

〈序盤で気づいてたのまじ悪魔だわ〉

〈他のルート知らんくて気づくのはびびった〉

〈広場はお祭りでしたねw〉

〈盛り上がってた〉

〈ライブ会場だったからw〉

〈血祭りだったよ〉

 

「惨劇って呼ばれてたけどね。そのあとも酷かったよ。そう! リスナーさん、聞いてくださいよ! お兄ちゃん、レイチェルと別行動する時にわけわかんないことに回復アイテム渡してたんです。それも十分おかしいんですけど、そのあと薬局で回復アイテム補充できそうだったのに、レイチェルの朝ご飯がまだだからっていうわけわかんない理由でフードコート行ったんですよ?!」

 

「わけわかんなくないよ。研究員さんのお家にも食べ物なかったし、僕も飲み物しか持ってなかった。小さい礼ちゃんは水分補給しかできてなかったんだよ? 育ち盛りでそれはあまりにかわいそう。健やかな成長を義務づけられている小さな礼ちゃんに朝ご飯を食べさせてあげるのは、僕の責務だったんだよ」

 

〈レイチェルはあの惨劇を見てないからな〉

〈貢いでたw〉

〈あの死体の山見てたら飯なんか喉通らんw〉

〈フードコート直行やったな〉

〈ドラッグストアなんか目にはいってなかったw〉

〈草〉

〈水分補給w〉

〈いらんねん回復なんか!〉

〈減らないからな体力〉

〈めちゃくちゃお兄ちゃんで草〉

 

「わけわかんないっ! レイチェルと主人公は親しいのかもしれないけど他人だよ!」

 

「でも小さい礼ちゃんと僕は兄妹だよ」

 

「レイチェルとお兄ちゃんは兄妹じゃないよっ!? 勝手に妹作らないで!」

 

「す、すごいセリフだ……『勝手に妹作らないで』」

 

〈草〉

〈それはそう〉

〈草〉

〈勝手に兄妹になるなよw〉

〈パワーワードw〉

〈レイラ・エンヴィ「勝手に妹作らないで」〉

〈愛が減っちゃうもんな〉

〈てぇてぇ〉

〈てぇてぇんだけどなんか笑う〉

 

「お兄ちゃんはすぐべつの妹作ろうとする。そうだリスナーさんっ!」

 

「待って? ちょっと待って礼ちゃん? なんの話をしようとしているのかな?」

 

「前映画観に行った時の話」

 

「礼ちゃん? しなくてよくない? だって今日の配信、雑談じゃないんだからね?」

 

〈前にもあったみたいな言い方〉

〈なんの話?〉

〈妹作ろうとしてたのか?!〉

〈えいが?〉

〈お嬢が雑談で話してたやつか〉

〈悪魔兄妹とゆきねさんで映画観に行ったって話〉

〈こっから雑談でも一向にかまわない〉

〈くわしく〉

 

「私を呼んだ時点でこれは既定路線。素直にゲーム配信ができると思ってること自体が間違いなの。それにお兄ちゃん、リスナーさんに映画観に行った話ってしたの? してないよね?」

 

「し、してないけど……。結局まだ一度も雑談配信はしてないし……」

 

「いつもの配信のあとにでもちょろっとでもいいからしてあげたらいいのに。前に私が雑談で触れた時、悪魔兄妹で推してくれてるリスナーさんたちが驚いてたよ。兄悪魔のほうではそんな話一切聞かなかった、って」

 

「い、いやあ……人間様はそんな話興味ないかなーって思って……」

 

〈これを望んでるまである〉

〈二人のお喋りならずっとききたいが〉

〈ゲームそっちのけで草〉

〈まだタイトル画面から動いてないんですよね〉

〈映画の話聞いてません!〉

〈レイラ嬢言ってやってくれ〉

〈雑談も結局ないよな〉

〈ロロさんとのコラボでは言ってたのに〉

〈ロロさんとこで雑談させてもらうかw〉

〈興味あるわ!〉

〈してくれよ!〉

〈需要しかないんだから!〉

 

「推しがなにしてるとか、遊びに行ったとか、そういうのオタクは聴きたいもんだよ! 私ならそう! だからきっと他のオタクもそう! でもリスナー側からは言えないの! プライベートの詮索はマナー違反だから! お兄ちゃんが一回もリスナーさんから訊かれてないってことは、お兄ちゃんのところのリスナーさんはしっかり自制してくれてるんだよ! だからお兄ちゃんから話せるところは話してあげなきゃダメなの!」

 

〈助かる〉

〈オタクの必須栄養素なんだから〉

〈レイラ嬢ありがとう〉

〈もっと言ってやってくれ〉

〈そうなのよ〉

〈言えないのよ……〉

〈そういう話は毎秒ほしい〉

〈まったくきいてない〉

〈お嬢からのリークw〉

〈映画なに観に行ったんだ〉

〈兄悪魔からはその手のプライベート話まったく出てこん〉

〈妹悪魔ありがとう〉

〈言ってくれてありがとうございます〉

〈話してくれるのを待つのがリスナーのあるべきスタンスだから〉

〈少しでも話してくれたらうれしいよ〉

 

「そ、そうなんだ……。そっか、我慢させてたんだ」

 

「べつになんでもかんでも話したらいいってわけじゃないけど、話せる範囲で『こんなことがあったんだよ』って話してもらえたら、リスナーはうれしいよ。少なくとも私はうれしいもん」

 

〈がまんってわけじゃないよ〉

〈話してくれたらうれしいってだけだよ〉

〈お嬢の言う通り〉

〈レイラ嬢がリスナーの代弁者すぎる〉

〈ぜんぶ言ってくれる〉

 

「なるほど……。僕の想像力の欠如によって人間様にはご負担を強いてしまっていたようです。申し訳ございませんでした」

 

〈ちがう……ちがう……〉

〈謝らせたいわけじゃないんです〉

〈知りたいっていうオタクのエゴだから気にしなくていいんだ〉

〈話せる時に話してくれたらいいなってそれだけよ〉

〈謝ることじゃないよ〉

〈そんな重い話じゃなああああい!〉

〈身バレとかも怖いし話さなくてもいいし話せる範囲で話してくれたらうれしいってだけなんだ〉

 

「ふつうは雑談とかだと、最近こんなことがあってー、みたいなのを話題にするけど、お兄ちゃんの場合は引き出し多すぎてそういうのを話題にしなくてもお喋りできちゃうからね。人間界調査用の姿がばれちゃう可能性もあるから、そういう話は避けようってなるのもわかるよ。最初に事務所からも気をつけるように言われるし」

 

「もちろんリスクのほうも考えたけど、それ以上に需要があると思ってなくて……。どうでもいい話を長々とされても人間様も迷惑だろうし、って」

 

「んー……お兄ちゃんはリスナー目線を持ってないっていうのもあるけど、なによりも問題なのは自己肯定感の低さだよね。やっぱり定期的にロロさんとコラボして、リスナーはなにを求めているのか直接言ってもらったほうがいいのかもしれないね」

 

〈雑談待ってる〉

〈やりたい時にやりゃいいのよ〉

〈ロロさんとの雑談コラボおもろかった〉

〈話広げるのうまいんだもんな〉

〈身バレは気をつけてほしいしね〉

〈需要ある〉

〈需要しかない〉

〈兄悪魔はもっと自信持ってええぞ〉

〈傲慢も担当していけ〉

〈ロロさんは必要だった〉

〈口でか厄介リスナーだけどロロは役に立ってたんだなよかった〉

 

「ロロさんは直接的に言ってくれるからとても助かるんだよね。あ、その件で人間様にご報告を。事務所のスタッフさんと相談いたしまして、収益化とメンバーシップ開設を決定しました」

 

〈やったー!〉

〈ロロさんありがとう!〉

〈ロロさんが言ってくれたおかげだ!〉

〈役に立ってるじゃんロロ〉

〈今まで収益化してなかったのか……〉

〈収益化してなかったんだよね〉

〈メンシまで!〉

〈絶対入る〉

 

「やったーっ! いつするの?!」

 

「な、なぜ礼ちゃんが……え、メンバーシップ入るの?」

 

「入るよ! あたりまえじゃん! 一番最初に入る! で? いつするの? 前もって言っといてもらわないと初スパチャと初メンシ私が取れないんだけど」

 

〈妹悪魔スタンバイ〉

〈初スパ狙っとるw〉

〈両取りする気で草〉

〈いつから強欲まで担当したんだw〉

 

「どうしてそこまで前のめりなのかわからないけど……まだ詳しい日取りは決めてないんだ。収益化とメンバーシップは同時にやりたいと思ってるんだけど、収益化するのなら最初くらいは収益化に見合うような配信をしたいと思ってて、今いろいろ計画を立てているところなんだよね」

 

「えーっ! 計画?! なにそれ?! 私そんな話聞いてないよ!」

 

「そりゃそうだろうね。言ってないもの」

 

〈収益化あわせる必要ないでしょ〉

〈そんなに意気込んでやるもんでもないよ収益化〉

〈気楽にやってくれ〉

〈こっちは推しに感謝を送ってるだけなんだから〉

〈スパチャさせろー〉

〈もっと軽率に収益化しろ〉

〈そんなかしこまることないよ〉

〈配信は慈善事業じゃないんだから金もらえ〉

〈貢がせろー!〉

〈お嬢も知らんかったんか〉

〈レイラ嬢にも内密に?〉

 

「なんでよっ! 教えてくれてもいいじゃんっ!」

 

「だめ。内緒。きっと礼ちゃんなら僕の収益化の配信も観にきてくれるんだよね?」

 

「当然。三日寝てなくても観るよ」

 

「さすがにそんな状態だったら観る前に寝てほしいけど……」

 

「ごめん嘘。しっかり目に焼きつけたいからコンディション整えて準備万端にして観る」

 

〈妹悪魔にまで教えないとは相当だな〉

〈どんな配信するんだ〉

〈もしかして歌とか?〉

〈期待高まる〉

〈詮索するのはNGだよな〉

〈その日を楽しみにしようぜ〉

〈三日w〉

〈それは寝てw〉

〈ぜったい記憶残らんてw〉

〈心配なるわw〉

〈お兄ちゃんさんガチ勢〉

〈正味それはそう〉

〈記念すべき日だからな〉

〈体調整えてしっかり観たいもんね〉

 

「そこまでやられると逆にプレッシャーが……。でもそうやって配信を観てくれるんなら人間様もそうだけど、礼ちゃんのことも驚かせたいからね。教えちゃうと驚きが減っちゃうでしょ? だから黙ってたんだ。サプライズにしたいからね」

 

「んーっ! もうっ……好きっ!」

 

「うん。僕も好きだよ。あとはメンバーシップの特典の内容とかスタンプとかをスタッフさんと詰めてるところなんだ」

 

〈レイラ嬢にもサプライズにするんだ〉

〈お嬢大事にされとるね〉

〈しっかり考えてんだな……〉

〈リスナーのことめっちゃ大事にするやん……〉

〈すきw〉

〈シンプル好きw〉

〈告白草〉

〈兄は兄であっさり返す〉

〈照れたりもしないあたりガチです〉

〈悪魔兄妹しか勝たんわ〉

〈てぇてぇなんてもんじゃに〉

〈メンシは準備いるわな〉

〈楽しみすぎる〉

 

「特典かー。メンシ限定配信とかの内容をってこと?」

 

「そっちも相談はしたけどね。メンバー限定の配信は僕がやることだから、そっちはそこまで深く気にしてないんだ。それよりもスタンプとかの相談だったね。スタンプは僕にはどうしようもできないから」

 

「お兄ちゃんの絵は……あれはあれで味があるんだけどね」

 

「味、っていうか雑味だよね」

 

「くふっ……ふふっ、雑味じゃないよ。どちらかというと珍味かな? 数十年後か数百年後くらいには評価されるんじゃないかな?」

 

「つまり現代の価値観ではごみということでは……」

 

〈限定配信なにするんだろ〉

〈雑談の希少価値あげようぜ〉

〈メンシ限定で雑談しようw〉

〈兄悪魔の雑談は価値あるな〉

〈いまだにコラボで一回しか雑談してないからな〉

〈スタンプか〉

〈依頼だよな〉

〈ゆきねさんがやってくれそうw〉

〈ゆきねさんという最強の味方がおる〉

〈兄悪魔はセンスが……〉

〈アイクリの家はひどかった〉

〈芸術的な感性がしんでもうとるんや〉

〈そこまで言うほどなのか〉

〈逆に見たい〉

〈いっそそれスタンプにしようぜw〉

〈お兄さんが描いちゃえw〉

 

「時代が追いついてないだけだよ。それで? スタンプは依頼するんだよね?」

 

「そうだね。誰に依頼出すかは僕が決めていいって言われたから、今はいろんなイラストレーターさんの絵柄を見させてもらってるところだね」

 

「リスナーさんも言ってるけど、ゆーに頼む? たぶんゆーなら喜んで引き受けると思うけど」

 

「ゆーさんはだめだよ。今でも忙しいのにこれ以上お願いはできない」

 

〈お兄さんの芸術に触れるには現代の人間では未熟だったか〉

〈一つ二つくらいでいいから描いてくれんかなw〉

〈絵師名乗り出たら採用されるかもよ〉

〈ゆきねさん適任でしょ〉

〈ゆきねさんなら誰も文句言わんな〉

〈リスナーなら全員ゆきねさんの絵知ってるし〉

〈そうだった……〉

〈お嬢と同じく学生だった〉

〈考えたら受験勉強しつつ手描き切り抜きやるってやばい人だな〉

〈こちらイラスト描けます〉

〈ゆきねさん忙しかったか……〉

〈すぐ納品できます〉

〈わたし無償で渡せますが!〉

〈なんだここ絵師多いんか?〉

 

「んー……まあ、たしかに……。ゆーには勉強しといてもらわないといけないから……。それなら裏をかいてママに頼むってのはどう?」

 

「裏をかくって何なの……。ママっていうと、小豆真希母上?」

 

「一度駄目元(だめもと)でお願いしてみようよ。スケジュールに余裕があったら受けてくれたりしないかな?」

 

「母上も母上で多忙を極める人らしいから難しいんじゃないかな……」

 

〈ゆきねさんはお勉強か〉

〈お嬢と同じなら受験生だもんな〉

〈ママ?!〉

〈てことは小豆先生?〉

〈今一番仕事抱えてるイラストレーターじゃない?〉

〈予定詰まってそう〉

〈めちゃくちゃ忙しい人でしょ〉

〈『小豆真希』やります。描かせてください〉

〈無理そうで草〉

〈さすがに厳しいんじゃないかなw〉

〈え〉

〈え?!〉

〈かたり?〉

〈本人なのこれ〉

〈本物?〉

 

「えっ?! こ、これ……うそ、本物? 本人なの?」

 

「……母上?」

 

「お、おに、お兄ちゃん! ちょっ、ちょっと待っててっ! リスナーさん私ちょっと席外しますね!」

 

「……あはは、礼ちゃんが確認しているみたいなので、少々お待ちください。しかし、え……母上? 本当なのかな? 母上ご本人なら、僕のデビューについてご迷惑をおかけしてしまって本当に申し訳ございませんとお伝えしたいところではありますが……」

 

〈ママ配信観てんのかw〉

〈なんでROMってんですかw〉

〈コメントしてくださいよw〉

〈ママも観てます〉

〈お嬢離脱で草〉

〈確認ってどうとるの?〉

〈本物?〉

〈悪魔に責任はねーでしょ〉

〈あんなんもらい事故やんけ〉

〈被害者なんだから気にすんな〉

〈『小豆真希』あなたのせいじゃないんですから謝らないで。私も助けることができなくてごめ〉

〈悪いのは荒らし定期〉

〈荒らしてた馬鹿どもが悪い〉

〈まま……〉

〈そうだ謝るな悪魔〉

〈ママ途中で切れてます……〉

〈ママも大変でしたよね〉

〈勝手なこと言う奴らが多すぎるんだよ〉

 

「本当ならもっとお話とかもしたかったんですけどね。母上のお仕事について触れたり……そういえば最近画集出されてましたよね。買わせていただきましたよ。イラストについて僕は詳しくはありませんが、それでも圧倒されるような迫力がありました。とても素晴らしい画集でした。ネット販売もありますし、ネットのほうだと収録されている作品をいくつか観ることもできますので、興味のある人間様はぜひご検討くださいませ」

 

〈お嬢以外と配信できんかったからな〉

〈同期とすらコラボできないって異常だったよ〉

〈今もイーリイさん以外は厳しいけどね〉

〈画集?〉

〈小豆真希先生の画集買いました!〉

〈めっちゃよかったぞ〉

〈『小豆真希』ありがとうございます。言っていただけたらお送りしましたのに〉

〈見たくなるわw〉

〈営業か?w〉

〈口がうまいんだ〉

 

「ただいまーっ!」

 

「はい、おかえりなさい」

 

「本物です! 本人でした!」

 

「やっぱり本当に母上だったんだ……。モデレーター権渡しておきますね。ところで、礼ちゃんはどうやって確認したの?」

 

〈お嬢元気に帰還〉

〈おかえりー〉

〈おかえりなさい〉

〈レイラ嬢おかえりなさいませ〉

〈このテンション本人だったのか?〉

〈まじで本物で草〉

〈小豆ママ配信観てくれてるんだな〉

〈がちで本人w〉

〈どうやって確認したのw〉

 

「んー、本人から許可もらったしいっか。……騒動も終わったわけだし隠す理由もなくなったんだよね……。ゆーが小豆真希先生の妹だから、直接確認してもらったんだよ」

 

「そうなんだ?!」

 

「あれ? お兄ちゃん知らなかったんだ?」

 

「うん……。御姉妹で創作活動をされてるのは知ってたけど……」

 

〈そうだったんだ?!〉

〈悪魔も知らんかったんかw〉

〈ゆきねさんのお姉さんなのかよw〉

〈小豆先生の妹だったのかw〉

〈やけにイラストうまいと思ったよ〉

〈てことは姉妹で関わりあんのかすげーな〉

 

「そういえば名前まで教えてなかったっけ? そうなんだよね。でも言ってみるもんだね。ママに描いてもらえるなんて」

 

「それはそうなんだけど、でも本当に大丈夫なのかな? お忙しいはずだけど……」

 

〈ママ忙しいけど仕事が早いことでも有名〉

〈今は同人の作業もあるはずだしな〉

〈確実に忙しいはずだけど〉

〈『小豆真希』任せてください。完璧に仕上げます〉

〈時間あるのかな?〉

〈ママ!〉

〈小豆ママ心強すぎる〉

〈コンペ勝てない〉

〈小豆先生と競争は無理か……〉

〈メンシスタンプめっちゃ豪華やんw〉

 

「ゆーから小豆先生はめちゃくちゃ筆が速いって聞いたことあるよ」

 

「んん……それなら、ご本人から言ってもらえたわけだし、母上を頼らせてもらおうかな。母上、あとで連絡させてもらいますね」

 

「スタッフさんにも話しておかなきゃね、お兄ちゃん」

 

「そうだね。……まさか人間様に進捗の報告をしたら、母上にスタンプ描いてもらえることになるとは思わなかったな……」

 

「やっぱり言ってみるもんなんだよね。……あれ? もともとなんの話をしてたか忘れちゃったなあ……」

 

「もともとの話をするなら、今日の配信は雑談じゃなくて『administrator』配信なんだよね」

 

「きゃははっ、忘れてたっ!」

 

〈雑談でも構わん〉

〈そういえばアドミニ配信だったw〉

〈ほかに妹作ってた件は?〉

〈話が盛り上がりすぎるw〉

〈悪魔兄妹雑談強すぎで草〉

〈お嬢かわいい〉

〈声かわよ〉

〈ソロ配信では聴けない声w〉

〈兄悪魔といる時限定ボイスw〉

〈笑い方かわいすぎやろ〉

 

「忘れないで……。えっと、ショッピングモールのフードコートでレイチェルとご飯を食べてたところでしたね。モールを出たところで前回は終わったのでした。今日はその続きからとなります」

 

「前回の振り返りだけでこんなに時間かかるなんてびっくりだね」

 

「本当だよ。まさかこんなことになるだなんて。えー……それでは、長時間タイトル画面のままで大変お待たせしました。『administrator』始めたいと思います」

 

「始めまーす!」

 

 礼ちゃんの可愛らしい声で、ようやくゲームがスタートした。




ということで、次回から悪魔兄妹の『administrator』開始です。
あんまり長くはなりません。三話か四話分くらいかな? 
よろしくお願いします。
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