サイコバグなお兄ちゃん、Vtuberになる。 作:にいるあらと
『せんせー今日ごはんなに食べたー?』
『そういえば先生には訊いてなかったよね』
「さっそく雑談しようとしてんじゃねーよお前らは」
〈入りました〉
〈悪魔の晩ご飯気になる〉
〈今日も自分で作ったのかな?〉
〈雑談だー!〉
〈壊斗じゃますんじゃねー!〉
〈雑談聞かせろー!〉
〈もっとゆるくやろうよー〉
〈クリアできなくてもいいじゃないの〉
新しいステージがスタートし、各々の職場に移動して真面目に作業し始めたかと思ったら早々に朱莉が雑談を切り出して美月が乗っかった。雑談じゃなくて木を切り出してくれ頼むから。
『晩御飯ですか?』
「やめろ答えるんじゃねー。作業が遅れる」
『効率厨じゃないんだから、そんなに作業作業言わなくてもいいじゃん。ちゃんとわたしたちもやるってば』
「話してるうちに手が止まるから言ってんだよ」
『あ、晩ごはんだけじゃなくてもいいよー』
「せめて晩飯だけで終わらせてくれ?」
『今日の晩御飯はぶりの照り焼きにしましたよ』
「うまそうなのが一番きついわ……。晩飯まだなんだよ俺……腹減った」
〈お喋りに熱が入ったら動かなくなるからなw〉
〈壊斗のツッコミが冴え渡る〉
〈ぶりいいね〉
〈腹減る〉
〈ぶりは照り焼きか煮つけが一番なんだから〉
〈塩焼きもうまい〉
『ぶりの照り焼き……いいなぁ、ずいぶん食べてないや。買ってきたの?』
『はい。礼ちゃんに和食をリクエストされてましたので切り身を買ってきて、半分は煮つけにして、もう半分を照り焼きにしました』
〈あー食いてー〉
〈めっちゃ食いたくなる〉
〈やっぱ自分で作ってんだよね〉
〈ほんと器用だな〉
〈煮つけと照り焼きどっちもやってた〉
〈煮つけいいな〉
〈めっちゃ腹減るわ〉
〈晩飯食ったけど腹減ってきた〉
〈れいちゃん?〉
〈かかくかかくかのん彼女つとかじ〉
『レイちゃんさん? どなた?』
「あー、ジンの言う『レイちゃん』ってのは『New Tale』のレイラ・エンヴィさんのことで、ジンの妹さんだ」
『失礼しました。先にそちらの説明をすべきでしたね』
〈草〉
〈妹悪魔のことやね〉
〈一瞬彼女かとw〉
〈兄妹でやってんだ〉
〈彼女いるのかと思ったびっくりしたよかったー!〉
〈ガチ恋っぽいのもいます〉
『先生……自分で晩ご飯作ってるの? スーパーとかでお惣菜買ってきたとかじゃなくて?』
『自分で作ってますよ。礼ちゃんには出来たてのものを食べてもらいたいですからね』
〈毎食作ってるらしいしな〉
〈こんな執事ほしいw〉
〈家事スキル高すぎて草〉
〈理想の旦那すぎるっ!〉
〈こんなのモテないわけなくない?〉
〈悪魔俺と結婚してくれないか?〉
〈妹のためってのがまたいい〉
『すごっ! せんせー料理できるんだ?! ぶりの照り焼き難しくない? くさみが残ったりとか、身がかたくなったりとか』
『昔からやってて慣れてるだけですよ。でもそういうところに気づかれるということは、朱莉さんも結構料理されるんですね』
「めちゃくちゃ意外だけど朱莉は料理できるらしいんだよな。俺はいまだに疑ってんだけど」
『いやなんで疑ってんの。嘘じゃないから。それにちゃんとおいしいし。わたしも何回か食べさせてもらったよ』
『えへへーっ、できるんだよねー! お母さんのお手伝いしてたからね!』
〈朱莉もできるんだよね〉
〈イメージと違うけどなw〉
〈前に二人はオフコラボやってたな〉
〈お手伝いは解釈一致〉
〈親孝行めっちゃしてそうw〉
『お手伝いしながら覚えるというのが一番いいですね。朱莉さんは今日の晩御飯は何にされたんですか?』
『親子丼っ! 卵が残ってたんだー』
『おー、冷蔵庫の中の余ってる食材で作る料理を選ぶあたり慣れてらっしゃいますね。壊斗さんは晩御飯まだらしいので……美月さんは食べましたか?』
「やめてくれー腹減るってー」
〈たしか悪魔は独学だったっけか〉
〈なにもわからないとこから一人でやるってすごいよな〉
〈親子丼いいよな〉
〈宅配頼もうかな〉
〈この時間に飯の話はきちー〉
〈リスナー全員に効いてるw〉
〈朱莉みたいな嫁がほしい〉
〈女子力あるんだよな〉
〈壊斗きついなw〉
〈飯まだでこの話はつらいw〉
『わたしは……牛丼』
「……この流れで牛丼て。しかもどうせ宅配だろ?」
『なに?! 宅配使って牛丼食べたらいけないの?! 言いたいことがあるならはっきり言ったらどう?!』
「かたや自炊、かたや宅配で牛丼。女子力の差がすげーよな」
『ちょっとは言い方考えたりしないのっ?! だから言いたくなかったのにっ!』
「お前がはっきり言えっつったじゃん」
〈牛丼w〉
〈先に言った二人がねw〉
〈配信者的にはおかしくないんだけどw〉
〈宅配使う人多いしね〉
〈二人が例外なだけなんだよなぁw〉
〈流れが悪かったw〉
〈草〉
〈ここでためらわずに失言できる壊斗が好き〉
〈はっきり言いすぎw〉
『牛丼いいですよね? おいしいですし、すぐ食べれますし。それに僕だって自分一人の食事なら適当に済ませてますよ』
『そうだよ。あたしだっていつも作るってわけじゃないよ』
『聴いたか壊斗! そういうことだよ!』
「いや……料理できるやつがたまに手を抜くのと、料理できないやつが毎回宅配頼んでるのはぜんぜん違うだろ」
『先生ーっ! 壊斗がっ、壊斗がゴミみたいなこと言ってきますーっ!』
「ゴミってなんだよっ!」
〈悪魔も牛丼食うのかな〉
〈悪魔は自分で作ってそうw〉
〈一人分作るのはめんどいよ〉
〈惣菜買ってくるほうが経済的なんだよね〉
〈壊斗w〉
〈めっちゃ殴るやんw〉
〈草〉
〈言葉強すぎw〉
〈ゴミは草〉
『うーん……そうだ。この機に美月さんは朱莉さんに料理を教えてもらったらどうです?』
『おー! せんせーナイスアイデアだよっ! みっき、あたし教えるよっ!』
『えー……でも、一人の時とか絶対作らないし……』
「なんで後ろ向きなんだよ。やるかどうかはおいといて、ここまで言われたらせめてやる気は出しとけよ」
『キッチンにマイクを置いたら配信もできるんじゃないですか?』
『いいねそれ! やろうよみっき!』
『んー……やる? どうせだし、応用が利く料理でお願いね』
〈いいこと言う〉
〈いいじゃん〉
〈料理オフコラボしてくれ〉
〈美月が自炊は無理そうだなw〉
〈観たいわw〉
〈声だけでいいからやってくれ〉
〈悪魔も通話で参加してくれんかな〉
『それなら比較的簡単でリメイクもしやすい肉じゃがならいいかもしれないですね』
『肉じゃがいいねっ! カレーにもシチューにもしやすいし、調味料足してみっきの好きな丼物にもできるよっ!』
『丼物ばっか食べてる女みたいに言うのやめて? 恥ずかしいって』
「実際そうだろ」
『うるさいな!』
〈肉じゃが!〉
〈肉じゃがいいじゃん〉
〈作ってほしい料理ランキング上位〉
〈肉じゃが作れたらレパートリー増えるよ〉
〈リメイクすぐ出てくるのすごいな〉
〈まじでちゃんとやってんだ〉
〈丼w〉
〈丼系女子はさすがにいやかw〉
『お料理に慣れてきたらコロッケやグラタン、味つけ次第で具沢山のスープとかにもできますね』
『よーし! みっきとのお料理コラボは肉じゃがに決定!』
『コラボって、配信することも決まっちゃってるんだ……。いいけどね』
〈グラタンもあるんだ〉
〈レパートリーすげーな〉
〈女子力たっか!〉
〈女子力とは違うなにかだろこれw〉
〈コラボ配信楽しみ〉
〈朱莉動いてないw〉
〈お料理教室オフコラボだ!〉
「手が止まってんぞー! 言っただろー! 喋ってもいいけどせめて手も動かしてくれってー!」
ご飯話で異常に盛り上がっているところに水を差したくないが言わせてもらう。
雑談に花を咲かせながらもジンは常に動いているが、朱莉と美月は極端に動きが鈍るのだ。
三人仲良く喋ってるしリスナーの反応もいい、こいつらの雑談は撮れ高になる。配信的においしくなるなら、この際多少動きが鈍るくらいはいいかと目を瞑っていたが、とうとう朱莉が動かなくなったのでさすがに口を挟んだ。
『あははっ! はーい! はたらきまーすっ!』
『ちょっと壊斗こっちオオカミいるー』
「はいはい。ジン、進んだ先が段差に……持ってきてんだよなぁっ! ナイスー!」
『ふふっ、見えてましたからね』
〈夢中になっちゃってんだから〉
〈雑談楽しすぎたなw〉
〈壊斗もお仕事だ〉
〈段差出てきたか〉
〈クラフト持ってこんと〉
〈もう持ってきてて草〉
〈同じくらい喋ってんのにw〉
〈仕事早くて草〉
道を塞いでいた岩を美月が砕いたら、進んだ先が段差になっていた。
段差があるとトラックは進めないのでクラフトアイテムのスロープを配置しないといけない。ジンにクラフトしてもらって、段差の手前に配置してもらうために指示を出そうとしたら、すでにクラフトしてスロープを持ってきてくれていた。
仕事が早い。助かる。
『はい、美月さん。ピッケル交換しておきましょう』
『わ、ありがとう。そろそろ耐久危ないかもって思ってたんだよね』
〈教授使いこなしてんな〉
〈修復もやってんだよね〉
〈木も石も回収してるし〉
〈視野広いな〉
〈さすが貴弾でIGLやってるだけある〉
『減りが大きいですね。アビリティ使うと道具の耐久値の減少は早くなるのでしょうか?』
『あー……アビリティで岩を壊す数が増えるから、それで減ってるのかも』
『そっか、アビリティがあるんでしたね。なるほど……それも考慮して修復を回していきますね』
〈アビリティ使い始めると減り早い〉
〈壊した時に減る〉
〈アビリティで気持ちよくなって斧壊れるとかよくある〉
〈強化してるの壊したら結構絶望なんだよなぁ〉
『そうしてもらえると助かる。ありがと』
『ふふっ、どういたしまして。こちらこそ、教えていただいてありがとうございます』
『ど、どういたしまして……』
〈この二人の会話なんか好きだわw〉
〈なんかいいな〉
〈なんだろうなこの甘酸っぱさw〉
〈てぇてぇとは違う感情を味わってる〉
〈てぇてぇってかきゅんきゅんに近いのよw〉
『あ。朱莉さん。もう少し先に行ったところのステージ中央少し下側に光玉があるので、そちらの木を切ってもらっていいですか? 破壊不能オブジェクトの下側から回ったほうが早そうです』
『わかったっ! すぐ行くよーっ!』
〈発見はや〉
〈ランタン強化したら光玉の位置探すのあるけどまだ使えないはずなんだよな……〉
〈返事いいw〉
〈壊斗のオーダーの時と違うなw〉
『朱莉さんが道を作ってくださるので、美月さんは朱莉さんが出てきた後にその道を通って岩を壊してもらえますか? 僕はスロープ持っていきますね』
『ん、了解』
〈指示出し的確だ〉
〈道が一直線だから通れなくなるんだよな〉
〈めっちゃ丁寧〉
〈これIGLディフ出てます〉
〈美月も素直に聞いてるw〉
「……あれ? 俺IGL降格?」
『光玉を取った後は資材拾って修復やクラフトをしますので、ここからのオーダーは壊斗さんにお任せしてもいいですか?』
「お、おう! 任せろ!」
〈降格です〉
〈降格w〉
〈悪魔;〉
〈メンタルケアまで〉
〈悪魔だけ仕事量多くね?w〉
『先生、道確保できたよ』
『ありがとうございます。取りに行ってきますね』
〈いいね〉
〈順調順調!〉
〈常にダッシュしてんなw〉
〈できるキャラコンはやってくスタイル〉
〈アビリティないのにスタミナ使いまくってんだろうなw〉
「朱莉、トラックを通すほうの道の先の木を切ってくれ」
『んあー』
〈IGL壊斗〉
〈テンション下がってるw〉
〈明らかに声落ちてて草〉
〈かわいい〉
〈むあー〉
〈かわいいw〉
〈嫌そうw〉
『光玉取りました。ここからは建設予定地を目指して頑張りましょうね』
『ナイスー。がんばってこー』
『おーっ! ないすーっ!』
「こいつらジンの時は声量も報告量も違うな……」
〈うぇぇい〉
〈ないすー〉
〈光玉おいしい〉
〈ナイスー〉
〈声出だしたw〉
〈草〉
〈違いがw〉
俺のほうがつき合いは長いはずなのに、俺が迫害されている気配がする。
俺とジンでなにが違うんだろう。どっちもイケボで、どっちもかっこよくて、どっちも優しい。
うん、違いはなさそうなんだけどな。
『話戻るんだけどさー』
「あ? なんだ?」
『せんせーはつけ合わせなに作ったのー? あたしはねーっ!』
〈はなし?〉
〈つけ合わせw〉
〈晩御飯の話かw〉
〈なにかと思ったわw〉
〈戻ってきたw〉
「飯の話に戻すなよ! また作業にならなくなるだろ!」
『ちゃんとやってるからいいでしょっ!』
『でもあんまりご飯の話ばっかするのもよくないかも……』
〈ご飯の話してよ〉
〈真面目にすんなー〉
〈晩ご飯の話聞きたい〉
〈美月?〉
〈美月も牛丼の話ししたらいいのにw〉
『えーっ! みっきまで?! なんで?!』
『晩ご飯食べたのにまた食べたくなっちゃうじゃん。太るって』
『いいじゃんっ! また食べたらいいの! 親子丼宅配しようよ!』
『よくないって……。またリスナーに
『あははっ、きゃははっ! どっ、どんじょっ……にゅふふっ』
『笑いすぎでしょ朱莉は』
〈美月はまた女子力低いとか言われるかもしれんもんなw〉
〈腹は減るなw〉
〈俺もなんか食いたくなったわ〉
〈太るw〉
〈この時間に親子丼は太るわw〉
〈がっつり食う気やんけw〉
〈どんじょw〉
〈草〉
ファストフードチェーン店ならこの時間でも宅配サービスが使えるだろうけど、この時間からしっかり丼物を食べるのはなかなか罪深い行為だ。しかも晩飯で牛丼を食べたあとの話である。
デリケートな部分もあるだろうからと思ってさすがの俺でも口を
『ほうれん草と小松菜のおひたしと……』
「待て待てっ! ジン待て! 晩飯の話をしようとすんな!」
〈話続けんのかw〉
〈ここで乗っかってくのが悪魔〉
〈おひたしいいな〉
『ふふっ、あははっ。いやあ、悩ませてしまうくらいなら背中を押してあげようかな、と』
「食う方向で背中押してんじゃねーよ!」
『あー、おひたし……。スーパーのお惣菜じゃなくて誰かが作ってくれたおひたし食べたいな……』
〈背中押さないで……〉
〈この時間の間食はまずい〉
〈ダイエット中なんですこちら!〉
〈谷底に突き落とすような悪行〉
〈悪魔の甘言w〉
〈お惣菜じゃないんだよね〉
〈作ってくれたやつ食べたいのわかる〉
『いいねおひたし! ほかにはほかには?!』
「うわああぁぁっ……っ、腹減るって! なんか簡単につまめるもんあったかな……」
『タコときゅうりにわかめを入れた酢の物と、汁物がないなと思ってトマトを入れたお味噌汁を作りましたよ』
『うわーっ、わたしトマトのお味噌汁めちゃくちゃ好きなんだけど』
〈レベルたけーw〉
〈品数多くて草〉
〈酢の物苦手だけどタコのやつは好き〉
〈そこらの女よりよほど料理できて泣ける〉
『酢の物作ってるの?! わかってるーっ! 夏だもんねっ! トマトのお味噌汁もおいしそうっ!』
『礼ちゃんもおいしいと褒めてくれました。朱莉さんは何作られたんですか?』
『ネットできゅうりのわさび漬けっていうのがあってね、それをちょっと前に漬けてたからそれとー。あとキャベツ塩もみしてツナ缶とマヨネーズと混ぜたサラダ作った! おみそ汁も作ろうと思ったんだけど時間なさそうだったからそこはインスタントのにしちゃった』
『インスタントのお味噌汁もおいしいですし、夏のキッチンは暑いんでインスタントでも全然いいと思いますよ。それだけ作ってたら時間もなくなっちゃいますし。サラダにお漬け物まで作ってるなんてすごいですよ。しっかり料理されてるんですね』
『えへへっ、ありがとーっ! ちゃんと意外とお料理やってるんだよっ!』
〈うわー日本酒のみてー〉
〈朱莉もめっちゃ料理してんじゃん〉
〈もっとそういう話してけ?〉
〈だいぶ印象変わるw〉
〈こんな感じなのに家庭的なのいいな〉
〈幼妻のFA待ってます〉
〈お料理教室コラボに悪魔も入ってくれ〉
「なぁ、次のスキルポイント振りの時に小休憩しね?」
『ふざけんな。絶対ご飯食べる気じゃん。ずるいでしょ。わたしもお腹減ってるんだってば』
こんな話をされて耐えられるわけがない。タイミングが悪くて俺はまだ晩飯食べれてないんだぞ。
「そんなら今のうちに宅配頼んどけよ。親子丼」
『だからーっ! この時間に食べれるわけないって! しかももうご飯食べたのわたしは!』
〈ご飯食べるつもりで草〉
〈これはがまんできないよねw〉
〈美月も食うかw〉
〈親子丼頼んどきなよw〉
〈牛丼からの親子丼はやばいw〉
〈太るぞー〉
『驚いたなぁ、配信者であたし以上にお料理してる人初めてだ! 朝ご飯はー? 朝ご飯なに食べたー?』
「まだ飯の話すんのかよ!」
〈次朝ごはんw〉
〈ずっとご飯の話w〉
〈飯テロにもほどがある〉
〈なんか食うか……〉
『昨日礼ちゃんに和食を食べたいと言われてたので、今日一日和食で統一したんですよ。今日の朝御飯はシャケの塩焼きとだし巻き玉子とお味噌汁です。日本の朝御飯って感じしません?』
『一人暮らしして長いから、起きた時にそんな朝ご飯が食卓に並んでたらわたし泣くかもしれないな……』
『あははっ! わかるっ! 和って感じするっ! お昼は? お昼ご飯はなににしたの?』
〈和食もできちゃうんだよね〉
〈魚料理得意っつってたな〉
〈朝飯でシャケとか最高かよ〉
〈泣いちゃうねこれ〉
〈一人暮らししてたらご飯作ってもらえるだけで嬉しいよ〉
〈あさからそんな手の込んだもの作れないって〉
〈そりゃ次はお昼なんだよw〉
〈お昼ごはんのターンw〉
『お昼御飯はお蕎麦にしましたよ』
『おそばいいなぁっ! 暑い時のざるそばおいしいよね! でもおそばって薬味とかがあってもなんだかちょっと物足りなくならない? 実家にいる時はからあげとかあったよ!』
『揚げ物や味の濃いものがほしくなるのわかります。僕も朝に使って余っていたシャケを使ってフライを作って、あと鶏肉と根菜を甘辛く炒めたものも用意しましたよ』
『おいしそーっ! あははっ、あたしもお腹すいてきちゃった!』
〈うっわw〉
〈蕎麦かー!〉
〈夏に食うそばがいっちゃんいいんだから!〉
〈からあげわかるわw〉
〈食いてー〉
〈悪魔のお家の子になりたい〉
〈応用力半端ないって〉
〈おいしそう〉
〈お腹がすきました〉
〈ついさっき晩飯食ったのに腹減ってきたw〉
「俺が一番つれーよ……。晩飯食ってねーっつってんじゃん……。やっぱ次小休憩しようぜ」
〈つらいだろうなぁw〉
〈逆にこれから食えるんだからいい〉
〈休憩してみんなで軽くご飯食べようよw〉
ジンの晩飯のぶりの照り焼きもそうだったが、蕎麦も同じくらい食いたくなってきた。そんなの作るんなら先に言っといてくれよ。ジンの家にお邪魔して昼飯ご馳走になればよかった。家知らねーけど。
なにか冷蔵庫に手軽に食べれそうな作り置き入ってなかったかな。優空がくるようになって以降、インスタントラーメンとかの買い置きをしなくなったんだよなぁ。
『おしまい! 余計な話は終わり! ほら朱莉! 早く木を切って道作って! トラック待ってるから! 壊斗も! 朱莉の左上のほうにシカがいるから狩っといて!』
『あははっ! はーいっ!』
「どうにか気を紛らわせようとしてんな……」
〈あーそば食いてーな〉
〈ぶりの照り焼きでビール飲みたい〉
〈止めるの遅いよ……〉
〈もう完全にスイッチ入ってんだよね〉
とうとう耐えかねたのか、ゲームに集中させるように美月が
まったくもって同意見だし、ゲームに集中してもらえるのなら俺も好都合だ。好きにさせておこう。
『ふふっ、建設予定地ももうすぐですしね。集中していきましょう。朱莉さん、斧交換しましょう。強化しておきました』
『やたーっ! ありがとーっ』
「あともう一段上がった先が予定地だ。朱莉と美月は道幅広げといてくれ。ジンは」
『用意できてますよ。やっておきます』
「ナイス。さんきゅ」
〈いつのまに強化してたんだ〉
〈ほんとちょうどいい時に交換するなぁ〉
〈作業班ノンストレスだ〉
〈サポートが手厚い〉
〈二マスだと人いたらトラック通れないもんな〉
〈クラフトできてんだよね〉
〈?〉
〈悪魔のやることはやすぎてわからん〉
〈主語がないよ主語が〉
〈それで伝わってんの?〉
〈なんだ?〉
建設予定地までのことはジンに任せ、俺はステージの下のほうへと移動する。
道具のアップグレードで最優先にすべきは斧とピッケルなのは理解しているが、そろそろ弓のほうもやっていってほしい。
弓は強化したら威力も射程もどちらも増加する。攻撃を受けないように立ち回ることは簡単だが、未強化だと威力が低くて倒すまでに時間と矢がかかるのが多少面倒だ。一本当たりのコストは低いとはいえ、矢をクラフトするにも資材を消費するし、矢を持てる量にも限りがある。
『壊斗さんトラック寄ってください。作って置いてます』
「おっ! 助かるっ! 今ちょうど考えてたんだよ。ナイスナイス!」
〈人読みの極地か?〉
〈頭の中見えてんの?〉
〈強化した弓あるわw〉
〈矢まで置いてる〉
〈なにも言ってなかったよな?〉
ステージ下に向かう途中にトラックに立ち寄って荷台を見てみれば、ほしいなと思っていた強化された弓と、ついでに矢もクラフトしてくれていた。そこまで長くはないがクラフトするには若干の時間がかかるのでこうして作って置いといてくれるのはタイムロスがなくて助かる。
『え? え? なになに?』
『ちゃんと人に伝わるように喋ってもらっていい?』
「なにが? 伝わるように喋ってんじゃん。なぁ?」
『意思疎通はできてましたよね?』
『言葉がたりないよーっ! なんのお話ししてるのかわかんなかった!』
『逆になんで二人はそれで伝わってんの? 先生に指示出そうとしてたのってなに?』
〈そらそうなる〉
〈こっちもわからん〉
〈壊斗喋っとらんやろw〉
〈なにか言う前に悪魔が用意しとる〉
なんか二人がよくわからないことを言い出した。俺とジンの会話を聞いてたらわかるだろうに。聞いてなかったのか、こいつら。
「指示? だから、あれだろ? 朱莉と美月に道幅広げさせて、そのあとにトラックが段差を越えるためのスロープが必要だから、ジンにクラフトしといてくれって」
『言ってないじゃん』
「言ってなかったっけ? 言っただろ?」
『ぜんぜん言ってないよっ!』
『スロープはもうクラフトしてますよって答えた後、ステージの下のほうに野生動物が出てきたので、壊斗さんに先に狩ってきてくださいってお願いしたんですよね』
『先生、言ってないって先生』
『あれ? 言いませんでしたっけ?』
『野生動物の話なんて一つも聞いてないよせんせーっ!』
「んで、トラックの運転と狩りどっち先にしようかって悩んでたらジンが運転やってくれるっつったから、トラックはジンに任せて俺は下に移動したんだ」
『それも言ってないよね』
『壊斗さんと僕は別々の場所で動いていることが多かったので強化した弓を渡せてなかったんですよね。なので狩りに行く道中でトラックの倉庫から強化済みの弓と、ついでに矢も補充しといてくださいっていうのを伝えて』
『伝えてないよーっ! 言ってないよっ! 弓も矢も出てきてなかったよっ!』
『というか……なんで先生は壊斗が弓替えたいって思ってることがわかったの?』
『僕、今別画面で壊斗さんの配信開いてるんですよ。そしたら矢の数をちらっと確認してたので、威力が低くて矢の消費量が多いことを気にしてるのかな、と。それがなくても壊斗さんがトラックに近づくタイミングで伝えてはいたでしょうけどね』
「あれ、言ってなかったのか……? なんかすっげぇいいタイミングでジンが言ってくるからてっきり口に出してると思ってたけど、頭で考えてるだけだったのか……」
〈ぜんぜん言ってないんだよね〉
〈なに考えてるのか読んでんのかよ〉
〈やばすぎ〉
〈マジモンのバケモンで草〉
〈ガチ悪魔じゃん〉
〈思考読まれてる〉
〈頭ん中見られてんぞ〉
〈これだけ動き回って配信も観てんの?〉
〈目何個ついてんだよw〉
『壊斗さんの画面も観ているようなものなので、何がほしいのか気づいただけですよ』
『せんせー、そんなにかいとくんに気をつかわなくてもいいんだよ?』
『そうだよ。壊斗が言ってきた時にだけやればそれでいいんだから』
「いいや! このままでいいぞ! 人を思いやる精神こそが潤滑にチームゲームを進めるコツだ! このままでいい! そのままのお前でいいんだ!」
〈配信観ててもわからんよ〉
〈そうだぞ〉
〈壊斗に気をつかうな〉
〈気遣う相手じゃないぞ〉
〈草〉
〈嫌々やってるみたいな言い方w〉
〈ならお前も思いやれ〉
〈いいこと言ってるふうの搾取ですこれ〉
『かいとくんは自分が楽したいだけでしょっ!』
『先生にあんまり負担かけないでくれない? ただでさえ朱莉とわたしのサポートで先生は頭悩ませてるんだから』
〈楽したいだけw〉
〈バレてて草〉
〈そうだ!〉
〈どんだけ頭使ってると思ってんだw〉
〈草〉
〈ほんとそうw〉
〈二人のカバーで手一杯なんだからw〉
「自分たちが負担かけてることは自覚してんだな」
『あははっ、負担じゃないですよ。これがサポート職の醍醐味みたいなところありますからね。それに手のかかる生徒ほど可愛いと言いますし』
『せんせーっ!』
『先生っ……』
「……お前ら一応、歴で言えば先輩だってこと忘れてねーか? っておい! また手が止まってんじゃねーか! 目の前にゴール見えてんだからそこまで行けよ!」
〈自覚あり〉
〈ならもうちょい楽させてあげてw〉
〈悪魔っ〉
〈先生!〉
〈めっちゃいい先生〉
〈悪魔先生に教育実習にきてほしいだけの人生だった〉
〈どう転んでも手は止まる〉
〈ご飯話が終わっても進まねーw〉
優秀なサポートであるジンがいてこの調子とか、三人の時はどれだけ無理ゲーだったのかという話だ。まぁ、ジンが加わったことで雑談の時間も増えていることは否めないが。
なにかと動きを止める二人のけつを叩きながら進め、どうにかこうにかこのステージもクリアした。