あたりまえだよなぁ?

※ガンダム詳しくないのでガバい所さん!?があっても許してお兄さん。

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レズがいるならホモもいるだろ

 真夏の昼下がり、アスティカシア高等学園に在籍するグエル・ジェタークは、同学年のとある男子に連れ出された。

 グエルを呼んだのは、彼と同じ三年のパイロット科に所属する一介の生徒。

 名を、『タドコロフ・オマエノコトガスキー』という。

 

 グエルとタドコロフは同級生であるが、二人の間に交流はほとんど無い。

 それはひとえに、生まれの違いによるものである。

 

 グエルは宇宙で暮らす、恵まれた境遇のスペーシアン。

 方やタドコロフは、地球生まれの下層階級──アーシアン。

 両者は時と共に広がる経済格差によって、相容れない存在となっていた。

 それはまだ学生の集う学び()である、アスティカシアでも同じであった。

 

「ぬわああああああん(憎しみあうの)疲れたもおおおおおおおん。やめたくなりますよ~喧っ嘩ぁ~」

 

 そんなスペーシアンとアーシアンの終わらぬ闘争に対し、ついに休戦を口にしたのは、アーシアンの中でもトップの成績を持つタドコロフ。

 彼は学年一位でスペーシアンの代表でもあるグエルに、宇宙と地球、両者の間にある怒りの感情を(しず)めるための親睦(しんぼく)会を持ちかけたのだ。

 人類の融和を願うタドコロフは人間の(かがみ)

 

「こ↑こ↓」

「はぇ~、すっごいみすぼらしい……」

 

 学園内にあるアーシアン専用の寮──ガン掘リア宮殿と呼ばれている──へと招かれたグエル。

 ガチャン! ゴン! トン! と、建付けの悪いドアくんを開けて、室内へと通される。

 が、中にはグエルと同じ上位成績者の、通称『御三家』やその取り巻きのメンバーはおろか、タドコロフと同じアーシアンの入寮者の姿も見えない。

 

「他の奴らはどうした?」

 

 親睦会だというのに、この人気の無さはどうだ。

 グエルは疑問の声を上げた。

 

「まま、そう慌てないで。ところでさぁ、ノド渇いた……ノド渇かない?」

「あぁ、まあな」

 

 今日は太陽フレアの活動が激しいため、普段より日光の照りが強い。

 空調の完備されたスペーシアンの寮と比べると、地球寮は外と大差ない暑さだ。

 タドコロフの言うようにノドが渇く……。

 と、そこで事前に用意していたのか、タドコロフは「アイスティーしかなかったんだけど、いいかな?」と冷えたお茶を持ってきた。

 進められるままに、グエルはアイスティーを飲み干す。

 

「それで、他の奴らは……」

「グエルくんって、モビルスーツの操縦技術で学園トップの成績なんすよねぇ」

「ん? まあな」

「制服がすっげぇ白くなってる。ホルダーだってはっきり分かんだね」

「ああ……それで」

「なんかこの辺がちょっとセクシー……エロいッ!」

 

 質問の答えをはぐらかすような素振りのタドコロフにグエルが疑念を抱いた時、だしぬけにグエルの体を大きな脱力感が襲った。

 

「ッ!? ……な、なんだ……?」

 

 膝をつき、自身の体の不調に戸惑うグエルを、隣に立つタドコロフは静かに見下ろしていた。

 グエルを見る目つきは不気味な喜びに歪んでおり、まるで思い通りにことが進んだのをほくそ笑んでいる様に見て取れる。

 さきほどグエルに出したおもみももに一服盛っていた可能性が、微粒子レベルで存在している……?

 

「た、タドコロフ……お前、なにをした……!?」

「……さあ、ホルダー解体ショーの始まりや」

 

 そう呟くタドコロフは、身動きの取れないグエルにゆっくりと近づくと、おもむろに彼の制服を脱がせ始めた。

 流れるような手つきでグエルの上半身は裸にむかれ、残すはパンツ一枚というところまで着た時、彼はある噂を思い出した。

 『タドコロフは男が好きだ』、とまことしやかに(ささや)かれていたことを。

 

 実際、この時代で同性愛は特別なものではなくなっている。

 それでも同性同士でこういった関係になる者は、まだ決して多いとは言えないが。

 

「止めろぉ……! ナイスゥ……!」

「暴れんなよ……暴れんな。お前のことが好きだったんだよ!」

「だからってこんなこと……しちゃあ、ダメだろ!」

 

 タドコロフの大胆な告白を受けるも、あいにくグエルにそっちの気はなかった。

 こんな所でこんな奴相手に初体験を奪われるなんて、親が見たら泣きますよ……。

 グエルは必死の思いで外に逃げようと、扉まで()う。

 しかし、無情にもドアはビクともしない。

 

「無駄だよ、その扉は私の『どうぞ』という声にしか反応しないのだ」

 

 迂闊(うかつ)に発したタドコロフの、どうぞの声に反応し開け放たれたドアくん。

 その向こうには、グエルを心配して探し回っている、馴染みの三人組の姿がチラチラと見えた。

 

「! 兄さ……!?」

 

 敬愛する兄の危機を真っ先に感じ取ったのは、グエルの義弟──ラウダ。

 兄は衣服をはぎ取られ側にいるのが、男なら誰が相手でも見境のない種壺野郎と影で名高いタドコロフであれば、それはもうそういう現場であると判断せざるを得ない。

 そして冷静なラウダは、この現場が合意の上ではないであろうことも、瞬時に見切っていた。

 

「なんだコレコレ変態野郎!」

 

 怒声とともにラウダは兄を助けんと、タドコロフに向かって行く。

 伸ばした腕がタドコロフの制服の(えり)元をつかもうとするが、次の瞬間にラウダは地面に倒れていた。

 

 なにをされたのか?

 当のラウダにも、すぐ近くにいたグエルにも分からなかった。

 地に伏すラウダに、タドコロフが馬乗りにまたがっている。

 なんということはない。

 タドコロフがラウダの腕をひねり、組み伏せたのだった。

 

 一瞬のことだったが、それ故に二人の兄弟は驚愕(きょうがく)した。

 グエルもラウダも共にパイロット科の生徒であり、授業の一環として暴徒を鎮圧するための体術の基礎を教え込まれている。

 それは同じパイロット科のタドコロフも同様であろうが、彼がラウダを組み伏せた一連の流れは、明らかに授業で教わったそれ(・・)とは違う。

 動きの早さが、まるで身体的な強化を施されている(・・・・・・・・・)としか思えないほどの超スピード♂だったのだ。

 

「ぐっ……!」

「ッ……ラウダ!」

「真っ先に飛び込んでくるとか、やっぱ兄貴のことが好きなんすね~」

 

 腕をひねられ苦悶の表情を浮かべるラウダ。

 を見下ろしながらタドコロフは、にんまりと舌なめずりをする。

 

「……このまま兄弟そろって食っちまうってのもいいゾ~、これ」

「や……止めろ! ラウダは……ッ」

「ダメだ、兄さん!」

(かば)いあう兄弟愛、あぁ^~いいっすね^~」

 

 まるで感動的な映画でも観劇しているかのような表情を、タドコロフは浮かべた。

 学園上位者二人を軽々と手玉に取るこの男、TDN下層階級の者(アーシアン)ではない。

 兄弟は冷や汗を浮かべた。

 このままでは本当に二人とも、野獣のような目の前の男に処女ケツを捧げる羽目に……やべぇよ、やべぇよ……。

 

 しかし、ここで事態は一変する。

 笑顔のままでタドコロフは、圧倒的優位に立っていたはずの兄弟にたいして、譲歩を申し出たのだ。

 

「俺もさ、嫌がる奴を無理やりレイプするほどの悪魔じゃねえんだよ。だからさ、アスティカシアらしく決闘で決めようと思うんだけど、お前どう?」

「決闘すれば(今は)許していただけるんですか?」

「そうだよ。当たり前だよなぁ」

「……わかったわかったダイエー!」

 

 タドコロフの真意がどこにあるのか?

 グエルには分からなかったが、今は弟を……そして自分自身の窮地(きゅうち)を救うためにも、ここは素直に決闘の申し出を受け入れるのだった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「兄さん、準備完了したよ」

「こっちもOKだ」

 

 ラウダとグエルの兄弟は今、タドコロフが言い出した決闘を受けたため、共に専用のモビルスーツ──ディランザのコックピット内にいた。

 アスティカシア高等学園では、生徒間のあらゆる問題はモビルスーツを用いての対戦、『決闘』の勝敗によって解決される習わしだ。

 

「ラウダ、なにをそんなに不安がる?」

 

 パイロットスーツのバイザー越しに、弟の顔色の優れなさに気づいたグエルが問うた。

 

「タドコロフの乗機はデミトレーナーだ。多少カスタムされているとはいえ、あの量産機で僕らの専用ディランザ二機を相手にして……勝てるつもりなのかな?」

「確かにそこは解せないな。奴のモビルスーツはアーシアンのメカニックが改良したらしいが、その程度でジェターク社の重MSに敵うはずがない」

 

 グエルはウインドウに表示した、タドコロフが普段使用しているモビルスーツのデータに目を通す。

 タドコロフ専用にカスタムしたのは、ブリブリオン社製造の量産型MS──デミトレーナーを重装甲化した『Hi(ハイ)-デミ』。

 パイロットのタドコロフは、この愛機を『ヒデ』の通称で呼んでいた。

 

 ヒデは装甲に『ヤメチクリウム合金』という特殊な素材を使用した強化アーマーを被せてあるため、量産MSでありながら重MSに匹敵する硬さを誇っているのが売りの機体だ。

 この堅牢(けんろう)さを武器に、タドコロフは御三家に次ぐ戦績を叩きだすことができたのである。

 

「だがいくら頑丈だろうが、たった一体なら同じ重MS二体のこちらに、スピードで劣るのは目に見えている」

「だから不気味なんだよ。いったいあの男、どこに勝機を見出して僕ら二人を相手に、決闘を申し込んだんだろうって」

 

 二人の回線に割り込む者があった。

 決闘委員会からだ。

 対戦相手のタドコロフの方も準備が終わったため、両者機体を戦闘フィールドに配置せよ、とのことだ。

 

 戦いの場は学園内に用意されている、砂漠地帯を模した環境エリアである。

 タドコロフ機の姿は、視界の中にはない。

 互いに繋がった無線を通して、決闘前の宣言を行う。

 

「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず」

「操縦者の技のみで決まらず」

『ただ、結果のみが真実』

 

 今、グエルとラウダ対タドコロフの、貞操をかけた戦いが始まった。

 

「やるぞ、ラウダ。俺たちが必ず勝って、あの変態ステハゲ野郎をこの学園から叩き出す!」

 

 決闘に賭けるものとして、タドコロフが勝てば兄弟の体を好きにすること。

 そしてグエルとラウダが勝てば、タドコロフは学園を退学することを条件とした。

 

 兄弟の専用ディランザはホバー走行で砂塵(さじん)を巻き上げながら、タドコロフがいるであろう場所に疾走している。

 果たして彼らのレーダーに、タドコロフの機体が反応した。

 じきにカメラアイにも、その姿が捕らえらえられる。

 

「……なんだ、あの機体は……!?」

 

 ラウダの驚きの声が、グエルの通信にも流れ込んだ。

 二人の視界の先には確かに、タドコロフの乗機がたたずんでいる。

 しかしその機体は明らかに、デミトレーナー系列の物とは違っていた。

 

 スタイルはもっと人型に近いスマートなもので、まるでボディービルダーを思わせる筋肉質な、生物的な蒼いカラーリングの装甲をまとっている。

 

『あっお前さ、ラウダさ。グエルもだけど、俺がまた今回もヒデで来ると思ってただら?』

 

 回線からタドコロフの声が聞こえてきた。

 

『お待たせ! マルティスしかなかったんだけど、いいかな?』

 

 『マルティス・ポーター』。

 それが今回タドコロフが乗機とした、新型(・・)モビルスーツの名前である。

 

 まったくデータの無い新MSの登場は、グエルとラウダに少なからぬ衝撃を与えた。

 兄弟の驚きを想像してか、愉快そうなタドコロフの声が無線から響く。

 

『決闘前の宣言で言ったよなぁ? 勝敗は機体の性能でもパイロットの腕でも決まらないって』

 

 そう。

 それはつまり、モビルスーツを使用しての直接的な戦闘とは別の裏工作も、『なんでもアリ』ということを意味しているのだ。

 

「バカな、一介のアーシアンが専用機だって……!?」

「慌てるな、ラウダ! 奴をよく見ろ!」

 

 グエルの一喝(いっかつ)で冷静さを取り戻したラウダは、タドコロフの搭乗する機体をサーチする。

 驚くべきことに、マルティス・ポーターにはなんの武装も(ほどこ)されていなかった。

 グエルは弟に指示を飛ばす。

 

「丸腰の内に奴を叩くぞ!」

『いいよ、来いよ!』

 

 受けて立つ、とタドコロフ。

 マルティスは両腕を広げて、兄弟のディランザを待ち構える姿勢を見せた。

 

 グエルは十字状に刃を展開する、槍型のビームパルチザンを。

 ラウダは重さが売りの両刃のアックスを、スピードに乗せて勢いよくマルティスに向けて振り下ろした。

 

 中継カメラ越しに決闘を見守っていた学園の生徒たちは、二つの武器がマルティスを破壊するさまが、容易に想像できた。

 しかし、現実は──そうはならなかった。

 

 マルティスは両腕を巧みに操り、二機のディランザの攻撃を受け流したのだ。

 後方に押しやられたディランザはすぐに反転。

 ふり向きざまに再び武器を振るうが、これもまた同様に流されてしまう。

 さらに三度、四度と攻撃を繰り出すディランザだったが、拳法を思わせるマルティスの動作によって、すべてはむなしく空を切る結果となった。

 

「くっ……遊んでいるつもりか、タドコロフ!!」

『そうだよ。こんな面白い見世物、早々無いんだからさ』

 

 会話の最中も攻撃の手は緩めない。

 しかし相手のタドコロフも、笑みを浮かべながらやはり簡単に、兄弟の武器をいなし続ける。

 

 余裕の態度を崩さないアーシアンに、グエルの苛立ちはつのっていった。

 振るわれるビームパルチザンの攻撃は、彼の感情とともに苛烈さを増すが、一向にマルティスを捕らえることは出来ない。

 それは弟のラウダ機も同じであった。

 

 ついには体全体をくねらせ、奇妙なステップを踏むような、ダンスを思わせる体さばきで攻撃を避け始めるマルティス。

 

『ほらほらほらほら、もっとよく狙ってーなほら! そんな腕前じゃ俺は倒せないって、はっきり分かんだね』

「そのフザケた態度、やはり気に食わない男だ! 第一この決闘の始まりもそうだ。地球と宇宙の仲を取り持ちたいというのも、ウソだったのか!?」

法螺法螺法螺法螺(ほらほらほらほら)!』

 

 アーシアンとスペーシアンの和解、その道を初めて掲げた意思すらもウソ──法螺だった。

 

「それが真意か、タドコロフぅうううう!!」

 

 グエルとて、スペーシアンがアーシアンを受け入れられるとは思っていない。

 しかし両者の融和を説くタドコロフの言葉に、なにか興味惹かれるものがあったのも少なからぬ事実だった。

 だがそれも、今のタドコロフの言葉で遊ばれていただけだったのだと理解できた。

 

 両サイドからグエルのビームパルチザン、ラウダのアックスが、マルティスを挟むように振るわれた。これではタドコロフに逃げ場はない。

 

『邪拳──「夜」。逝きましょうね……』

 

 通信から漏れ聞こえたタドコロフの言葉。

 同時に、兄弟の乗るディランザを、大きな衝撃が襲った。

 

 地に倒れ伏す二体の重モビルスーツ。

 立っているのは一体の、蒼い(・・)細身の機体。

 

 マルティス・ポーターは両手の中に、グエルとラウダ、両機の頭部からもぎ取ったブレードアンテナを握りしめていた。

 

 ──勝者:タドコロフ・オマエノコトガスキー。──

 

 ディスプレイには、ただそれだけが表示される。

 呆然とした表情で、ラウダはディスプレイの文字を目で追った。

 

「……負けたのか? 一体僕らは、なにをされたんだ……?」

「……なんてことはない。奴は、タドコロフは……ただディランザの頭部を殴った(・・・)だけだ」

 

 兄の言葉にラウダは、「は?」と間の抜けたような声を返す。

 

「ただのパンチ。だがそれは……センサーにもとらえ切れないほどの、凄まじい超スピード♂のものだ」

「そんな……モビルスーツのセンサーにも映らないなんて、それって光速……!?」

 

 ラウダが信じられないのも当然だろう。

 光と同じ速度で駆動するモビルスーツなど、アド・ステラのこの時代には存在しない。

 呪われたモビルスーツと呼ばれるGUND-ARM──『ガンダム』ですら不可能だろう。

 それを成しえ、トップランカーのグエル、ラウダを相手に余裕で勝利をつかんだマルティスとは、いかなるモビルスーツなのか……。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「いやもうキツかったっすねー今日の決闘は。風呂入ってさっぱりしましょうよ~」

 

 整備ドックへと戻された二機のディランザ。

 コックピットから降りてきたグエルとラウダの前に、笑みを浮かべながらタドコロフがやって来た。

 さっきまでの決闘がまるで無かったかのような爽やかな笑顔に、兄弟は緊張を高める。

 

「風呂で……俺たちとその……ヤろうというのか」

「ん、なにがすか?」

「とぼけるな! 決闘で賭けただろう! 俺たちが勝てばお前は退学、お前が勝てば……俺とラウダはお前のものだと……」

「あぁ、そのこと」

「俺にもプライドがある。決めたことは、反故(ほご)にはしない……」

 

 悔しさと恐れから顔をゆがめる兄弟を見て、タドコロフはあっけらかんとこう言った。

 

「あ、それさぁ、無しでいいから」

「……あーもう一回いってくれ」

「だからー、さっきの決闘、やらせみたいなもんだから」

「どういうこと?」

 

 ラウダが問う。

 

「アーシアンとスペーシアンを仲良くさせたいってのはマジだよ。でもそのためには(みそぎ)が必要だったんだ」

 

 タドコロフはすべてを説明する。

 アーシアンとスペーシアンの仲を取り持つには、両者の根が深すぎた。

 特に、あらゆる面で優位に立つスペーシアンに対するアーシアンの恨みの感情が。

 

「だから決闘でオレがお前らをボコボコにしてやれば、少しはアーシアンの溜飲(りゅういん)も下がるダルルォ?」

「つまり、今回のことは本当に見世物だったってことか……」

「怒らないでくれよな~、頼むよ~。お前らなら話を分かってくれると思ってのことだったんだからさ」

「じゃあ、僕らは君に体を売らなくても済むのかい?」

「……そうだよ」

「え、なに今の間は」

「大丈夫だって、ヘーキヘーキ。ヘーキだから」

 

 なんにしても、これでタドコロフの狙い通り地球と宇宙のわだかまりは、この決闘を期に解消へと向かうことになる。

 グエルとラウダの貞操も守られ、事態は一件落着。

 そしてタドコロフは学園ナンバーワンのホルダーとなり、『蒼い魔帝』の二つ名を頂戴することとなった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 所変わって、ここはモビルスーツ開発協議会の傘下である、監査組織カテドラル。

 裁判所を思わせる聴取会場の中心に立たされているのは、モビルスーツ製造社であるB・プロダクトに所属する、チョコボール・ムカイ博士。

 この者こそ、タドコロフの搭乗したマルティスを造り出した男なのだ。

 

「B・プロダクトに問う。あの機体はガンダムか?」

 

 カテドラルの代表、デリング・レンブランが言った。

 この組織は、人体に悪影響を及ぼすGUNDで造られた兵器──ガンダムを見つけ廃棄する、という使命がある。

 

「わぁ、これが査問会ですかー。色んな人がいますねー。こんなに冷たい視線を向けられるとは思わなかったぁ」

 

 場の雰囲気に似つかわしくない能天気な声色で、チョコボール・ムカイ博士は独り言ちた。

 ふざけていると取られてもおかしくない博士のことなど意に介さず、デリングは再び同じ質問を投げかける。

 

「今一度問う。あの機体──『マルティス・ポーター』はガンダムか?」

「これですよ、『ガンドハ』って言うんです。うちの会社なんかで、独自に開発したんですよ」

「ガンドハ? ガンダムでは無い、というのか?」

 

 デリングの問いに、ムカイ博士はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「これですよ、『GUND-HUNTER(ガンド・ハンター)』って言うんです。『ガンドを狩る者』っていう意味があるんですよ」

「ガンドを……狩るだと……!?」

 

 デリングのみならず、この場に集ったカテドラルの関係者全員が、ムカイ博士の言葉に動揺をあらわにする。

 

「……話の続きを聞こう」

 

 果たしてGUND-HUNTER……ガンドハとは一体、どのような機体なのか。

 身体強化を施されたと(おぼ)しきタドコロフは、何者なのか。

 彼とこの機体が、水星から来た魔女と出会う時、物語はどう動き出すのか……。

 全てはここから始まる。(大ウソ)


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