ミトが整合騎士として召喚されてベルクーリと不死鳥討伐に行くお話です。思い付きで書いたからかなりしっちゃかめっちゃかになったけどまぁいいや。
個人的にミトの神器周りがワクワクする感じに書けたと思います。

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ミトが整合騎士として召喚されたら

 

 

整合騎士────────それが、私に与えられた職業(クラス)らしい。公理教会最高司祭アドミニストレータ猊下によって天界から召喚され、人界を護るために戦う戦士。

それが私、ミト・シンセシス・スリーに課せられた使命だ。

 

 

*********

 

 

「ここは………」

 

「目覚めたのね。いらっしゃい新たなる騎士よ」

 

荘厳な彫刻の施された神殿がまず、目に入った。正面に見える天井には、一段と立派な宗教画が彫りこまれている。

創世神、太陽神、地母神。3柱の女神がそれぞれ武器を取る様を描いたそれは、まさしく神話の一端を具現化したものなのだろう。

真珠色の鎧を纏った創世神ステイシアの姿に、僅かな頭痛を覚えながら、私は体を起こした。簡素な衣服にから覗く手足は病的に見えるギリギリ手前まで細く白い。鏡面の様に磨き上げられた床に映る瞳は、宝石のように赤くこちらを見つめている。

────なるほど。確かにこれは記憶にある通りの私の姿だ。その記憶が、いつどこで得たモノかわからないと言う問題を除けば。

 

「騎士?」

 

「そう。整合騎士。天界より召喚され人界を護る指名を背負った神々の使い。貴女は3番目に召喚された騎士なのよ。ミト・シンセシス・スリー」

 

語り掛ける声に私が顔を向けると、そこには女神が立っていた。

──────否、女神と見紛うほど美しい女性が立っていた。年は二十歳に届かない程度。豊かに実った胸、引き締まった腰、そこから延びるたわわな臀部。そのすべてが神の威光その物であると錯覚するほどの美貌。

勝てない。女として、この美しいヒトには決して勝てない。

私の女としての本能がそう告げているのを感じる。

無意識に右手で胸元──目の前の女性には劣るが、消して小さくはない男好きのするソレ──を掴む。

 

「とはいっても、最初は混乱するでしょうから。まずはこの神殿でも見て回りなさいな。ベルクーリ」

 

「あいよ」

 

「この子を案内してあげなさい」

 

「はいはい、仰せのままに。最高司祭アドミニストレータ猊下」

 

アドミニストレータ、と呼ばれた女性の背後から巌のような男性が姿を見せる。

彼の姿を目にした瞬間────────私は、心の芯が震えるのを感じた。

 

「あなた、は」

 

「あ~とりあえず自己紹介でもしとくか。俺はベルクーリ。ベルクーリ・シンセシス・ワン。30年くらい前に召喚された最初の整合騎士でな。まぁ嬢ちゃんの先輩ってわけだ。」

 

「ベルクーリ………」

 

鋼の如く鍛え上げられた肉体、30年に及ぶ闘いの日々で受けたのであろういくつもの刀傷が彼の戦歴を物語っている。

アドミニストレータに対して抱いたのが女としての敗北感なら、今私が感じているのは戦士としての敗北感だろう。

今この瞬間、武器を渡され彼と対峙したとして。恐らく私が勝てる見込みはない。

隔絶した力量の差が、立ち振る舞いだけで伝わってくる。

知らず、私は唾をのんでいた。

 

「とりあえず、嬢ちゃんの寝泊まりする部屋に案内しようか。いつまでもその恰好ってわけにもいかんだろ?」

 

確かに、いつまでもこの病人のような服で出歩くのは抵抗がある。それに拠点となる宿を確保するのはゲーム攻略の基本…………

 

「?」

 

「どうかしたか?」

 

「いえ、なんでも」

 

はて。ゲーム攻略とは、一体なんのことだっただろうか。首をかしげる私をおいてベルクーリは歩き出す。ついて来いと言う事だろう。私は立ち上がって壁際の豪奢なソファに腰掛けるアドミニストレータに一礼すると彼の後を追った。

 

 

 

*********

 

 

「不死鳥の討伐……ですか」

 

人界に召喚されてから1年後。私は珍しくカセドラル最上階にあるアドミニストレータ様の居室に招かれていた。そもそも亜ドミニすトレーラ様から直接、私に命令が下ることは少ない。大抵は元老長チュデルキンを通して命令されるからだ。

私がこの部屋に呼ばれるのはこれで3度目。一度目は、今着ている黒地に紫の騎士鎧と死神を彷彿とさせるマントをいただいた時。二度目は………退屈をこじらせたアドミニストレータに食べられた(・・・・・)とき。

そして今回、最高司祭猊下直々に命令を受けるため呼び出されたと言うわけだ。

 

「ええ。南の火山地帯に生息する神獣よ。それを殺して、何か体の一部を持って帰って欲しいの」

 

「ですが私はまだ、神器をもっていません。神獣クラスを相手取るには些か役者不足かと」

 

「ええ。だから今回はベルクーリも同行させるわ。それに用意してるのよ、貴女のための神器を」

 

アドミニストレータ様は妖艶に微笑むと一振りの長剣を取り出した。

 

「これは………」

 

拭いきれないほどの血を浴びてきたのだろう。投信全体が赤黒く変色し斑になった古びた剣だ。だが決して鈍らではなく、むしろ触れただけで指が切り落とされそうな妖しさを放っている。

 

「銘はないわ。ただ便宜上『最古の剣』とでも呼びましょうか」

 

「最古の剣………」

 

「そう。これは元々10年くらい前にベルクーリが殺した暗黒将軍が使っていたものなの」

 

「暗黒将軍………!!」

 

人界の外に広がる暗黒界。そこに住まう者たちは原始的な『力の掟』に従って生活していると言う。暗黒将軍とは、そんな暗黒界人の中でも選りすぐりの強者たる暗黒騎士を束ねるもの。

つまり──────暗黒界において最強の人物といっていい。

 

「ベルクーリ曰く、これは元々先代以前の暗黒将軍に代々受け継がれて来た刀剣だそうよ。けれど重要なのはそこじゃない」

 

一度言葉を区切って、アドミニストレータ様はその事実を告げる。

 

「世界開闢から間もない頃、暗黒界における最初の戦争で、最も初めに、そして最も多くの敵兵を切り殺した剣。それがこの『最古の剣』よ」

 

──────────それはつまり、この世界において最も初めにヒトを殺した凶器ということか

 

「そう。だからこの剣には『殺す』という概念が染みついている。既に神器の域に高められたこれをもとにして、貴女に新しい神器を作ってあげる。さぁ貴女はどんな武器を望むのかしら?」

 

「私は────────────」

 

 

*********

 

「で、それが俺が戦利品として持って帰ってきた剣ってわけかい」

 

「ええ。何度か試したけど私には剣よりこっちの方が性に合ってるみたい」

 

セントラルカセドラルに設けられた飛竜の発着場でベルクーリは私の大鎌をしげしげと眺めて息を吐く。

 

「剣のときも十分物騒な見た目だったが、一段とヤバさがましたなこりゃ」

 

「別にいいでしょ。使うのは私なんだから」

 

「ははっそりゃそうだ。ま、お互い死なない様に頑張ろうぜ」

 

ベルクーリの右手が私の肩を叩く。初めての神獣との闘いに緊張する私を励まそうとする仕草に、ドキリと胸が高鳴る。

 

(ぶっきらぼうなくせにこういう処で気遣いできるのよねコイツ)

 

召喚された日に初めて会った時、どうやら私はベルクーリに一目惚れしたらしい。

鍛え抜かれた筋肉や雄々しい立ち姿。腹の底に秘儀く様な重厚な声。僅かに皺の刻まれた顔は笑うと絶妙な愛嬌がある。

その一挙手一投足が私の心を揺らしてならない。

この思いは1年の間にさらに大きく膨れ挙がっていた。

初陣で100を超える暗黒騎士に囲まれた私を命がけで助けてくれた時。

思うように実力が上がらず悩んでいた私にそっと手を差し伸べてくれた時。

誰よりも強く、そして優しいこの男に。私は虜にされていた。

 

「分かってる。今回は私とこの子のすごいところ、見せてあげるから」

 

「そりゃ楽しみだ」

 

にやりと笑いながらベルクーリは飛竜に跨る。私も続けて自分の飛竜の手綱を握ると、私たちは揃って拍車をかけた。

 

 

*********

 

 

赤々と光を放つ溶岩の熱気が空を飛ぶ私たちの下にまで届いている。熱によって発生した上昇気流に阻まれて飛竜はこれ以上高度を下げられないようだ。

 

「こうなったら飛び降りるしかねぇな」

 

「そうね。不死鳥がいるのは一番大きい火口だって言うからここからその上までいって飛び降りましょう」

 

言いながら私は手綱をひいて移動する。いくつもの火山が密集したこの場所で一際大きな火口の断崖に不死鳥は巣をつくっているらしい。

 

「行くぞ」

 

飛竜を上空で待機させ、私たちは地上へ飛び降りた。

 

 

*********

 

 

「これが………不死鳥………………」

 

「でけぇな………」

 

火口に降り立った私とベルクーリの前に巨大な鳥が羽をたたんで

眠っている。

その大きさは、翼を広げれば30メートルに達するだろう程。その羽の一枚一枚が炎でできており、まともに剣で切りつけたのでは、ダメージを与えるどころかこちらが大火傷を負ってしまうだろう。

 

「こりゃあ俺の剣じゃ分が悪そうだ………。嬢ちゃんはどうだい?」

 

「…………完全武装支配術を使えば、なんとか」

 

「よし。なら嬢ちゃんはなんとかヤツを俺の指定した場所まで誘導してくれ。空斬でぶった切る」

 

空斬──────それはベルクーリの持つ時穿剣の完全武装支配術。未来を斬ることでその場に斬撃を残す奥義。いくつもの斬撃を未来に設置し、不死鳥が効果範囲に入った瞬間に発動する、という作戦か。

 

「一撃で倒せるのよね………?」

 

「ああ。10分稼いでくれたらな。………そらお目覚めだ」

 

ここにきてようやく私たち侵入者に気付いたのだろう。不死鳥がゆっくりと体を起こし、威嚇するようにその巨大な羽を広げた。

 

「やってやるわよ………!!」

 

私は背中に吊った大鎌を取り出し、その式句を唱える。

 

「エンハンス・アーマメント!!!」

 

私が与えられた大鎌の銘は『戦死鎌(せんしれん)』。数多の戦士たちの死を死に至らしめてきた魔剣の新生した姿。それが意味するところは────────連鎖。

戦死鎌の元となった『最古の剣』は、使い手が闘いの中で殺されるたびに、殺した相手の手に渡り続けてきた経歴を持つ。

初代の使い手を切ったものが2代目となり。2代目を殺した戦士が3代目となった。

その繰り返し、戦いの連鎖こそが『最古の剣』、そして『戦死鎌』の本質なのだ。

だからこそ。死神の如き大鎌は、命を絡み刈り取る鎖鎌となる────────!

 

ジャラジャラジャラ!!紫の燐光を帯びた鎖が空へ飛び立った不死鳥に絡みつく。脚から体、そして首回りを締め上げる鎖を私は力任せに引っ張った。

 

「セイッヤァッッ!!」

 

単純な腕力だけでなく、鎖そのものが伸縮し不死鳥を火口の壁にたたきつける。

苦悶の声を上げながら炎羽を散らす不死鳥は、蒼玉の瞳で私を睨みつける。

 

「流石、不死鳥の名前は伊達じゃないってわけね」

 

起き上がった不死鳥には、先程の攻撃によるダメージは見受けられない。飛び散ったはずの炎羽も既に再生している。

 

「でも、私の仕事はあなたを倒すことじゃない」

 

言いながら私は鎖を回転させ、勢いよく撃ち放った。

 

「ギュワァッ!!」

 

弾丸の如き速度で飛来する攻撃を不死鳥が躱す。今度こそ空に飛び立った不死鳥は全身を更なる高熱の炎で包む。

あの状態で体当たりされれば、私はひとたまりもなく黒焦げになるだろう。

 

「そんな見え見えの攻撃が当たるか!」

 

私は鎖鎌の先端を岩肌に突き刺して跳躍する。鎖が高速で縮むことでただの脚力では届かない空中へ私は身を躍らせる。そのまま跳躍を繰り返して背後を取ると、不死鳥の後頭部目掛けて鎖を振り下ろした。

死角からの攻撃に狙いを外された不死鳥が再度壁に激突する。頭部から突っ込んだことにより、嘴が折れ、首もおかしな咆哮に折れ曲がっている。

 

「これでもまだ蘇ってくるんでしょうね」

 

土煙を上げながら不死鳥が身を起こす。煙から頭が出る頃には既に損傷したはずの嘴までが綺麗に復元されていた。

 

「でも流石に、粉微塵に切り刻まれたら再生できないでしょう」

 

 

「時穿剣、『空斬』──────────!!」

 

不死鳥が再び羽ばたこうとした瞬間、数百に及ぶ斬撃が同時に炸裂した。

未来を斬る剣技を何度も何度も繰り返し、一瞬にして解放するベルクーリの大技。発動に時間こそ掛かりはするが、その破壊力において人界、暗黒界を含めて右に出る者のいない範囲攻撃だ。

最強の剣技が不死鳥の体を切断する。それでもなお空間に残り続ける斬撃が、切れて飛び散った破片すら切り刻んでいく。

僅か数秒の間に、不死鳥は炎に包まれた塵へと姿を変えた。

 

「やった………?」

 

「いや、こいつぁ…………まずいな」

 

「え?」

 

険しい顔をするベルクーリの視線の先には未だ燃え盛る不死鳥の死体がある。否、それは死体ではなく───────────────。

 

「うそ………。炎が………」

 

炎が燃え上がり鳥の形を作り始める。舞い散る火の粉の一つ一つが一枚の羽根となり、あふれ出る熱気が火山の岩肌を踏みしめる。

 

「あれで死なないなんて…………!!」

 

バサリと翼を広げたときには、傷を負った形跡など何処にもない、いっそ美しいとすら感じる炎鳥が君臨していた。

紅々と燃え盛る体の中で唯一蒼い瞳が私とベルクーリを射抜く。それはまるで定められた命しか持たない人間でありながら、不死たる自分に挑む愚者を嘲笑しているようだ。

 

「何となく、そんな気はしてたんだよなぁ」

 

ガシガシと頭を掻きながらベルクーリがぼやく。

 

「今回の任務が俺主体じゃないってのがずっと引っ掛かってた。本来なら嬢ちゃんを俺の補助につけて経験を積ませるべきだろうに、ってな」

 

そこで言葉を区切り、ベルクーリは私を見る。

 

「アイツは嬢ちゃんにしか倒せない。嬢ちゃんの『記憶解放術』でしか」

 

「そ、んな………無茶な」

 

『記憶解放術』──────それは未だアドミニストレータ様ですら理論段階でしかないと言わしめる究極奥義。神器に宿る記憶を参照し武器を支配、強化する完全武装支配術のさらに先。神器の記憶すべてを解放し、その本質を曝け出す業だ。

目の前にいるベルクーリですら、時穿剣の記憶解放術には、召喚されてからの30年一度も成功していないと言うのに──────────

 

「私に、できるわけないでしょう…………」

 

「できる出来ないじゃねぇよ。やらなきゃ俺たちは死ぬ。そんで俺はこういう時にお前が踏ん張れるやつだって知ってる」

 

その言葉に、ズキリと頭痛が走る。かつて同じ様な状況が無かったか。私が戦わなければ、私と、誰か大切な人が死んでしまうという状況が。

 

「──────あの時、私は………………」

 

「嬢ちゃん?」

 

ズキズキと止まない頭痛に顔をしかめながら、私は大鎌を握り占める。

思い出せない。この記憶がいつのものか、大切な人とは誰だったのか。

そして────その時私はどんな行動をしたのか。

けれど、今すべきことは明白だ。

 

「私は今度こそ────────!!!」

 

────────────逃げることはしない!!!

 

その叫びは私の記憶の中でだけ響いた。

にやりと笑うベルクーリに構うことなく、私は大鎌を構える。見るべきは敵ではなく己自身。感じるべきは武器の記憶。

深い深い皆底に沈むような集中の中で私はソレを謳う

 

「リリース・リコレクション!!!」

 

瞬間。私の手から大鎌が消え失せ。

次の瞬間には、不死鳥が地に伏していた──────────────。

 

 

 

*********

 

 

 

「そう。それが戦死鎌の記憶解放術なのね」

 

「ああ。あれはヒトを斬り続けた結果、この世で最も死という現象に近づいちまった武器だ。その記憶の解放とは即ち、万物の死を意味する」

 

「例え不死の存在であろうと殺してしまう記憶……ね。我ながら飛んでもないものを作ったものだわ」

 

「敵なら確かに恐ろしいが、味方なら心強い事この上ない。ミト自身もっと強くなるし、人界は安泰だねぇ」

 

そういって朗らかに笑う男を見下ろしながら、アドミニストレータは冷徹に思考する。

 

(彼女の力はシステムに直接作用する物……。であるならば、原理的に防ぐ手段が無いと言う事)

 

クルリとワイングラスを弄びながら超越者たる魔女は嗤う。

 

(少し惜しいけれど封印してしまいましょう。現実世界からの来訪者に記憶操作は使えないのだし)

 

強力な手駒を失うデメリットと、万が一反旗を翻された時のリスクを天秤にかけ、後者を選択する。

 

(ああ、ベルクーリの記憶も消しておかないと)

 

「さて、あの子が持って帰ってきたこの炎羽はなにに使おうかしら?」

 

燃えるように揺らめく一枚の羽根を光に透かしながら、人界の支配者は微笑した。

 


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