美しき氷華のライダー アユリア。
そんな彼女に恋をした後輩ライダー レン。

ただの一人の青年の、最初で最後の恋のお話。


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その笑顔に恋をしました。
その優しさに恋をしました。
その美しさに恋をしました。

だから絶対に守りたかったんです。


雪降る夜の恋に開花して

 

 唐突ですが、僕には好きな人がいます。

 …多分、いや絶対に、振り向いてはもらえないだろうけど…僕には、憧れの人がいます。

 

 まずは、自己紹介をさせてください。

 僕の名前は《レン》。

 【クアン】という村の生まれのライダーで、一年ほど前にライダーになったばかりです。

 オトモンはアグナコトル亜種の《アイス》。僕の永遠の相棒で、友達です。

 

 今では名実共に立派なライダーになった僕ですが、最初の頃は勿論新米でした。

 そんな僕を導いてくれたのが、《アユリア》さん。

 僕の先輩で、村一番のライダーで──、

 

 ──僕の、好きな人です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気恥ずかしいですが…まずは、どうして僕がアユリアさんへ恋愛感情を持つに至ったのか、話さなくてはいけません。

 

 あれは、僕がまだライダーになって一週間経ったか経たなかったかぐらいの頃…。

 僕は、村の近くの洞窟をアイスと一緒に訪れていました。

 その時の洞窟は普段よりとても寒く、その冷気は、ホットアイテムを忘れていた僕の体を容赦なく刃物のように突き刺していました。

 

 そして…そんな時に僕たちはモンスターに出会ってしまった…。

 しかも運の悪いことに、相手のモンスター『ティガレックス』は凶気化していて、まだライダーになって日の浅い僕たちには、とても敵わないような相手でした。

 一か八か、後に引けなくなった僕たちは挑みましたが…やはり、手も足も出ずに敗北。咆哮響く洞窟に、濃厚な死の匂いが立ち込めてきました。

 

 もはやこれまで。

 

 そう覚悟を決めた僕は、無理矢理アイスを逃すと、村からできる限り引き離す為、単身どんどん洞窟の最奥に走りました。

 なんとか最奥にたどり着いた頃には、指の感覚はほとんど無く、息をするたびに針が刺さるような痛みが肺に走る、ボロボロの体になっていました。

 こちらに迫ってくるティガレックスを目の前にしながら、深い諦念の情とともに、僕は目を閉じました。

 そして、次に目に入ってきたのは──、

 

 血に濡れた僕の体の一部ではなく、心配そうに僕の顔を覗き込む、アユリアさんの顔でした。

 

 

 聞く話によると、アユリアさんは当初村にいたそうなのですが、たった一匹で戻ってきたアイスを訝しげに思い、アイスの案内のもと、ここに駆けつけてきてくれたのだそうです。

 倒されたティガレックスを呆然と見ていた僕に、アユリアさんは「なぜあんなことをしたのか」と細めた目で聞いてきました。

 僕はその質問を『なぜあなたのような新米が洞窟に単身入ったのか』という意味と受け取り、「新米の僕には早すぎましたよね…すみません」と謝りました。

 それを聞いたアユリアさんは「そう言う意味で言ったのではないの!」と、とても怒りました。

 あの怒りっぷりは、今でも目と耳に焼き付いています。当時はあまりそういう面を見せない人だと考えていたので、その時の僕は身を竦ませてびっくりするばかりでした。

 …そうそう。

 ──耳に残っている、ということなら、アユリアさんがその時言ったことが、一番くっきりと残っています。

 

 

「なぜ逃げなかったのか、と言っているの! 聞く限り、何もアイスだけしか逃げられない、という状況では無かったはず。なのになぜあなたは逃げなかったの!? モンスターを村から遠ざけるためと言うのなら、その判断は間違いよ。逃げることのできた今回の状況なら尚更、あなたはアイスと一緒に逃げて、その脅威の詳細を村に伝えるべきだった」

 

 

 ──僕は、何も言うことができませんでした。

 だって、アユリアさんの言ったことは何一つとして間違っていなかったから。確かにあの時、アイスと一緒に逃げることはできたと思ったからです。

 アユリアさんの腕から垂れた血の跡──恐らく先の戦いで負ったもの──を見て、余計なことをしてしまった自分に対し、凄まじい自己嫌悪の感情が湧き上がりました。

 うなだれる僕に、アユリアさんは「それに」と言って、話を続けました。

 

 

「…あなたは、もっと自分を大切にして。あなたはみんなから愛されて、頼りにされてる大切な『仲間』なの。私だって同じ。私がここに来た時、ティガレックスにバラバラにされそうになっているあなたを見て、どれだけ背筋が凍ったと思ってるの? …だから、今回みたいなことは絶対にもうしないで…。みんなの為にも、勿論、私のためにも…。…命は、一度きりなんだから」

 

 

 そう、うってかわって悲しげな声で諭したアユリアさんは、まるで包むように僕を抱きしめてくれました。

 

 その時、僕は──情けないことですが──泣いてしまいました。

 …告白すると、ティガレックスに追われていた時、僕の心は今にもへし折れそうでした。どうせ死ぬのに、なぜ走っているのか、何度も自問し、守るためと答えることで、なんとか足を動かしていました。

 だから、僕はアユリアさんに抱きしめられて、とっても安心して…つい、泣いてしまったんです。

 あ、泣き声は出しませんでした。なんというか、やはり、アユリアさんの手前そういうことをするのは男のプライドが許さなかったので…。

 

 でも、結局泣き顔は見られてしまいました。

 アユリアさんは泣いていたことに気づかなかったのか、僕の顔を見るなりすごく慌てて「ごめん、怒りすぎた?!」と言ってアワアワとしていました。

 今度は僕がアユリアさんを落ち着かせてから、アユリアさんに「ごめんなさい」と、さっきとは違う意味で、改めて謝りました。

 アユリアさんもその意味を受け取って、俯く僕の頭を撫でてくれながら笑いかけてくれました。

 そして────、

 

 

「──さて、帰ろっか!」

 

 

 ──僕はきっと、その時のアユリアさんの笑顔を、永遠に忘れないと思います。

 洞窟の最奥、そこに戦闘の余波で空いてできた天窓から、外で降りしきっていた雪がパラパラと吹き込んできた、あの瞬間。

 花のような笑顔でこちらに手を差し伸べるアユリアさんの周りには、月の光に照らされ輝く雪が。

 そして、アユリアさん自身も月の光に照らされて、まるで天使のようでした。

 その瞬間に、僕は。

 

 

 アユリアさんに、恋をしたんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アユリアさんに助けられて、村に戻った時、みんなが一斉に出迎えてくれました。

 

 村長は「よかった、よかった」と豪快に笑いながら抱きしめてくれて、雑貨屋のおばさんは目尻に涙を溜めながら手を握ってくれました。

 特に、先に村に戻ってきていたアイスなんかは僕の頭をその嘴で何度も突っついてから、安心したように頭を擦り寄せてきてくれました。

 

 笑顔で無事を祝ってくれるみんなに、感極まってまた僕は泣きそうになりましたが、隣にアユリアさんがいたのもあり、なんとか我慢しました。

 

 ──そして、みんなが元の日常に戻り始めた時に。

 

「…え? 弟子入り…したい?」

 

 

 僕は、アユリアさんの弟子になりました。

 

 

 

 次の日から、アユリアさんと一緒に修行する日々が始まりました。

 オトモンと心を上手く通わせる練習。

 近辺にいるモンスター一匹一匹の生態と、攻撃方法。

 薬草やキノコの見分け方や、調合のコツ。

 武器の扱い方。

 戦い方。

 

 いずれの修行も、ベテランのアユリアさんに着いて行くのは大変だったけれど、アイスと、そして何よりアユリアさんと一緒なら、いくらでも頑張れました。

 むしろ、僕のやる気がありすぎて、アユリアさんの方が先にダウンしてしまうぐらいでした。

 …ちなみにその夜、焚き火を囲んでいた際に疲れたアユリアさんが

 

 

「ごめん…ちょっとだけ寝させて」

 

 

 と言ったので、快く頷こうとした瞬間。

ぽすん。

 

 ……ふわり、とした感触と共に、アユリアさんがこちらに身を寄せ、僕の肩に頭を乗せて、スヤスヤと寝息をたて始めたんです。

 

 誰も見ていなかったこともあり、僕は恐らく人生で一番、大いに動揺しました。

 

 漂ってくる女の子特有の甘い匂い。

 耳元で囁くように聞こえる静かな寝息。

 僕の脚に恐らく無意識に置かれた手。

 そして腕に当たる、柔らかな────。

 

 …僕がその夜、眠ることができなかったのは、言うまでもないと思います。

 

 特に、肩に乗せたことで超至近距離にまで迫ったアユリアさんの顔は、まるで童話に出てくるお姫様のようで、うっかり顔を見てしまってからしばらくの間は、一瞬たりとも目が離せませんでした。

 

 次の日の朝、目を覚ましたアユリアさんは、未だに鳴り止まない心臓の鼓動を必死に抑える僕を見て、こう言いました。

 

 

「ど、どうしたの? 耳…真っ赤だけど」

 

 

 …アユリアさん。

 これ、あなたのせいです……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アユリアさんに師事してから、四ヶ月後。

 

 だいぶライダーとして成長した僕は、思い切ってアユリアさんに何かプレゼントをしよう、と考えました。

 「女子には花を贈れ」──。

 今は亡き父の教えが頭を過り、僕は早速、近辺の花畑へ出かけました。

 一体、何を贈ればいいのか…

 そう迷っていた僕の前に、一輪の花が、まるで今そこに咲いたかのように現れました。

 

 

「──これって…雪山草…?」

 

 

 一時間後。 

 村に戻り、アユリアさんに僕が手渡したのは『雪山草』と呼ばれる植物。

 ──しかも、『花をつけた雪山草』。

 普通、雪山草は花をつけないのですが、ある条件をクリアすると、見事な花を咲かせます。

 その条件は、『葉を丸ごと覆うように氷点下以下の温度で包む』こと。

 そうして咲いた花は、純白の花びらを持ち、そしてその花びらの表面を一回り大きく覆うように水色の氷のような半透明の花びらが咲くのです。

 その美しさは本物で、誰でもその美しさには見惚れてしまうのだとか。

 

 僕は、そんな絶世の美しさを持つ花をアユリアさんに手渡しました。

 受け取ったアユリアさんは、最初は「きれい…」と呟いてぼんやりと花を見ていましたが、ふと、アユリアさんはこちらを見て、

 

 

「…レン、この花、すっごい迷って選んだでしょ?」

 

 

 と、確信的な表情とともにそう言いました。

 僕はとっても驚きました。「なんでわかったんですか」と僕が聞くと、アユリアさんはニコニコと笑いながら、下の方を指差します。

 指の先には、泥だらけの自分の指と、溶けた雪でびしょびしょに濡れたズボン。

 

 

「泥だらけの指は花畑をいじったって証拠で、濡れたズボンは雪の上に長い間座ってた跡…。どう? 当たってた?」

 

 

 やっぱりアユリアさんはすごいなぁ。そんなことまでわかっちゃうんだから。

 「当たりです」と言いながら頬をかく僕に、アユリアさんは「でもね」と続けます。

 

 

「その指も、ズボンも、あなたが一生懸命この花を選んで、集めてくれたっていう証拠。…レン、私はね…そういうあなたの思いが、一番嬉しい。…ありがとね、レン」

 

 

 ──また、あの顔をしてくれた。

 目の前のアユリアさんは、あの洞窟で見せてくれたあの顔を、もう一度僕に見せてくれました。

 僕はまるで、夢の中にいるような気分で思います。

 

 

──やっぱり、好きだなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そういえば。

 雪山草の花言葉…全然知らないまま渡しちゃったな。…でも、それは問題ないはず。確か、花言葉は悪い意味ではなかった。

 それに、花の数もあれだとちょっと少なかったかもしれないな……。

 …いけない。これ以上はどんどんネガティヴになってしまう。…あぁ、でもやっぱり、あれだと少なかったかもなぁ…

 

 

 

 たったの、四本だなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ふぅ。

 さて、ところで僕は、これを書いていてふと「なぜこんなことを書いているのだろう」と考えることがあります。

 その疑問は、この『一日限りの日記』を書いている間中、ずっと脳裏に過ぎていた疑問です。…そして、この疑問に対する答えも、決まっていました。

 

 ……想いの、整理をつけるため。

 

 

 …三日前のこと。

 クアン村近くで、異常なほどに喰われたポポの死体が発見されました。

 …しかも、群れだったのであろう二十匹、全てが。

 

 あまりにも異常ということで、村で探索に向いたオトモンと絆を結んでいるライダーが調査したところ、なんと凶気化に加え、【飢餓状態】になった《イビルジョー》が、この村に向かっているのだと言うのです。

 前代未聞の事態に、村長は迷うことなく村民に避難指示を出しました。…しかし、あいにく発見が遅すぎたせいで、指示が出されたのは今日…つまり、異変から既に一週間ほど経ってしまっているという状況です。

 もはや時間は無く、避難も間に合わないこの状況。

 だから僕たちは、一丸となって、戦う覚悟を決めました。

 

 とはいえ、相手はただでさえ危険なイビルジョーの暴走、そして凶気化という三拍子が揃った悪夢のような相手です。何が起こるかわからない、という不安の中、ふと思い立って、手帳を手に取ったのがこの日記を書くに至った経緯です。

 

 

 …こうして、アユリアさんへの思いを綴っていて、わかったことがあります。

 散々、「振り向いてはくれないだろう」とか、「叶わぬ恋」とか、最初の方には書いていましたが…

 …そう、結局僕は、アユリアさんを自分のものにしたいのです。

 

 アユリアさんに、面と向かってこの胸の内を曝け出せたら。

 でも、きっと今の自分では足りない。アユリアさんは、振り向いてはくれない。

 

 …だから、もっと、もう少し大きくなって、大人になったら──。

 

 

 この気持ちを、伝えたいと思います。

 

 

 

 

 そのためにも、明日の戦いをなんとしてでも切り抜けて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パタン、と、手帳が閉じられる。

 アユリアは、長い間瓦礫に埋もれてすっかりボロボロになってしまった手帳を閉じ、ふぅ、と一つ、震えながら息を吐く。

 

 顔をあげて見れば、目の前には崩壊し、見る影も無くなった家の跡。その跡地の側には、アグナコトル亜種のアイスがスヤスヤと寝息をたてて眠っている。

 

 

──アユリアさん? 何やってるんですか?

 

 

 後ろから聞こえた聞き慣れた声に、アユリアは振り返る。

 

 …しかし、後ろには誰もいない。アユリアの耳は、幻聴を聞いてしまっていたようである。

 だが、アユリアはさして困惑することもなかった。なぜなら──、

 

 

「…今、レンが声かけてくれたの? …ありがとうね。私ならここにいるわ」

 

 

 一人分ほどの長さに、盛り上がった土。その先端に立てられた石には、

 

 

【 レン 】

 

 

 一人の、優しいライダーの名前があった。

 

 

「レン…あれからだいぶ復興も進んだわ」

 

 

 アユリアは墓を掃除しながら、昔のことを思い返していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──凶気化した飢餓イビルジョーが村に襲来し、ライダー達は大いに奮闘した。

 しかし、相手の力は想像以上に大きく、あと少しで倒せる…という時に、全員のオトモンが戦闘続行不可能となってしまう。

 迫り来る凶牙、理不尽なほどの圧倒的暴力。

 ここまでか──と、誰もが思ったその時。

 

 

『アイスッッ!!《フリージングスピナー》!!!』

 

 

 こうなることを予期し、あえて余力を残していたレンとアイスが、絆技を発動。

 完全に油断しており、しかも死角からの強力な攻撃をもろに喰らったイビルジョーは、大きくバランスを崩し、崖側に追い詰められることとなった。

 

 しかし、これでは足りない。

 …ならば足らすまで。

 

 

『村長…これ、借ります…ッ!』

 

 

 ──封龍剣【絶一門】。

 太古の名工達が龍を封じるために108日間休まず打ち続けたと伝わる、究極の封龍剣。

 レンは、いつの間にか持ち出していたソレを構え、未だ空中にいたアイスの背から、勢いよくイビルジョーへ斬りかかる。

 

 一撃目。頭に直撃。しかし浅い。反撃で左肩が切り裂かれる。

 二撃目。同じ場所へ直撃。硬い鱗と皮が剥がれ、頭蓋が見えた。反撃で脇腹を喰われる。意識は気合いで繋ぎ止めた。

 そして、三撃目。

 封龍剣は、その身を凶気に蝕まれながらも、完全に恐暴龍の脳を穿った。

 

 ──ただし、使い手の命と相打ちに。

 

 

『レ……ン…?』

 

 

 力なく地面に打ち付けられたレンの姿に、呆然と声を絞り出すアユリア。

 恐暴龍としての意地か、黒の凶気が生命の限界すら無視したのか。

 イビルジョーは脳を穿たれるその瞬間、最後のあがきと言わんばかりに、その身に宿った莫大な龍属性エネルギーを、ブレスとして一気に全て解き放ったのだ。

 …そして、それをレンはまともに喰らってしまった。

 

 レンの手から、すっかり錆びてしまった封龍剣がアユリアの元へ滑り落ちてくる。

 それがまるで合図だったかのように、重いイビルジョーの体重に耐えきれなかった崖がひび割れ、崩落していく。

 

 ヒビの内側に倒れていたレンも、無論例外ではなく──、

 

 

『…ダ、ダメ、ダメェッ! レンっ!!!!』

 

 

 この村で唯一飛べるヒョウガは、もはや動ける状態ではなく。

 誰よりも早く動けたであろう、アイスは気を失っている。

 …故に、駆け寄るしかなかったアユリアは、必死に手を伸ばしたものの──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アユリアの伸ばした手が、虚しく空を切ったその時。

 ──最後に、レンはアユリアに…とても、悲しげに笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…レン…あれから、大変だったよ。色々なことがあったんだから」

 

 

 回想から意識を戻したアユリアは、そう言ってから「でもさ」と続ける。

 

 

「…レンが、こんな…こんなこと、私に思っていてくれてたなんて……、…今になって、知りたくなかった…っ!」

 

 

 …レンの手帳は、この日、初めて出てきたもの。

 あらかたの瓦礫の片付けが終わり、四年とちょっとの月日を経て、ようやく着手されたレンの家。

 この手帳は、アユリアがレンの遺品を探している最中、見つけたものだった。

 

 

「ごめん…レン…ごめんね…っ…気づいて…あげられなかった…っ」

 

 

 今は亡き、自分を愛してくれていた彼の手帳を抱きしめながら、アユリアはポロポロと涙を流す。

 

 ──レンの眠る土の上には、いつしか彼が贈った雪山草の美しい花が、たった一輪咲いていた。

 まるで、レンが死してなお、アユリアへ花を贈っているかのように──。

 

 

 

 

 

 

 




この度は、私の作品を手に取っていただけて、感謝の極みにございます。

さて、ここでは本作における、私の伝えたかった『暗示』というか、そういったものを紹介したいと思います。
質問など、お手柔らかにであればドンドンお送りください。


まずは、題名について。

《雪降る夜の恋に開花して》。

これが本作のタイトルですが、これには本作における結末を暗示させたつもりです。
 『雪降る夜』は、レンがアユリアに助けられ、惚れた時の風景です。
 『恋』は、レンと掛けています。恋の読みは二つ、『こい』と『レン』。レンの名前の元も、恋愛系のssを書こうと思い立った時、天啓のように頭に浮かんだものです。
 『恋に開花して』。これは最後のシーンにおける状況を示したつもりです。地面に埋まったレンの上には、花が咲いていました。『死んだレンの墓の上に開花した花』。これを表したかったのです。
 

次に、レンの渡した花の本数について。

 レンは本作の中で、「自分の渡した花の本数が少なかったのではないか」と後悔するシーンがあります。ネット調べなのですが、人に贈る花というのは、渡す本数によって良い悪いがあるようなのです。特に、偶数の本数はダメなことの筆頭であり、『割り切れる数』…つまり、『別れを暗示させる』ということでダメなのだそうです。


さて、最後に。

本作、投稿する上で、かなり不安な気持ちもありました。
オリ設定あるけど大丈夫かな…オリ主いるけど…などなど。
しかし、こうしてこの拙い文章を読んでくださる方がいると思えば、私も嬉しいです。



ここまでお読みいただき、本当に、ありがとうございました。





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