鬼殺隊監査役・東雲麟矢   作:SS_TAKERU

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初めての方ははじめまして。
ご存じの方はお世話になっております。SS_TAKERUです。

僕のヒーローアカデミアの二次小説である『出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。』を休載している間、勘を鈍らせない為、この作品を執筆させていただきます。

鬼滅の刃に関しては、現在改めて読み返している最中なので、拙い部分も多いとは思いますが、お楽しみいただければ幸いです。


本編第壱部 原作開始前
零之巻 -ある一般隊士の話-


 俺の名前は茂部野大司(もぶのたいし)。鬼さ…人に危害を加える有害な動物を処分する会社に勤めて2年になる一般隊…一般社員だ。

 命の危険が付きまとう仕事だけど…その分やりがいがあるし、仕事の過酷さに見合うだけの給金も貰えてる。

 おやか…社長の方針で、仕事中に発生した食費や宿泊費は全て会社持ちだし、万が一怪我をした時は無料で治療を受ける事も出来る。

 日頃の生活にかかる費用を心配せず、仕事に集中出来て、給金のほぼ全てが手元に残る。こう考えると、恵まれてるよな。

 ちなみに先月の給金は13円50銭*1だった。

 

「茂部野」

 

 任…仕事が終了した後、何故かそんな事を考えていると、声をかけてくる人がいた。

 

「あ、村田さん」

 

 声をかけてきたのは今回の仕事で一緒だった村田(むらた)さん。入た…入社してから何かと気にかけてくれる先輩だ。

 『華がない』だの『地味』だのと言う口さがない連中もいるが、俺や同期の連中は皆村田さんを慕ってる。

 

「怪我は無いようだな。お互い無事で何よりだ」

「はい」

「報告も済んだし、戻るとするか。それから、明日はお互い休みが貰えるだろうから…軽く飲みにでも行こうか。奢るぞ」

「はい! ご馳走になります!」

 

 こうやって一緒に仕事をした後は、気前良く奢ってくれる。本当に人柄は申し分ない人なんだ。

 

 

「『チューハイと一品料理の店東雲亭(しののめてい)』…村田さん、チューハイって何ですか?」

「俺も詳しくは知らないが、この店だけで飲める珍しい酒…らしい」

 

 翌日の夕方。村田さんと一緒に酒を飲みに繰り出した俺は、目的地である酒場の前で、村田さんとそんな事を話していた。

 十日程前に開店したばかりのこの酒場。村田さんも人伝に評判を聞いただけで初めて来たそうだが…扉越しでもわかるほど随分と賑わっている。繁盛している店のようだ。

 

「とりあえず入ってみるか」

「そうですね」

 

 まぁ、いつまでも入り口の前で突っ立っているのも良くない。俺と村田さんは揃って店へと入ることにした。

 

「「「「「いらっしゃいませ!」」」」」

 

 店に入って早々、藤色の割烹着を着た娘さん達の声が俺達を迎えてくれた。

 

「2名様ですね。こちらへどうぞ!」

 

 その内の1人に空いている席へ案内され―

 

「ご注文がお決まりでしたら、お伺いいたします」

「あ、あぁ、すまない。実はこの店は初めてでね。幾つか質問したいんだが…構わないかな?」

 

 そのまま注文を聞かれそうになる。流れるような手際の良さに一瞬呆けてしまったけど、我に返った村田さんがそう言ってくれた。助かります、村田さん!

 

「はい! この店のことでしたら何でもお尋ねください!」

「それじゃあ、チューハイとはどんな酒なのかな? 生憎飲んだ事が無くてね」

「チューハイは、焼酎を炭酸水…細かい泡が出る水で割った物です。当店では麦焼酎を使用しております」

「細かい泡が出る…麦酒(ビール)のようなものかな?」

「はい、麦酒(ビール)を想像されると近いと思います。でも、麦酒(ビール)より苦みが少なくて飲みやすいお酒ですよ」

「飲みやすいか…ありがとう、あと…本日の一品料理とあるんだけど…『焼き餃子』『エビチリ』『(とり)の唐揚げ』……どれも初めてでね。簡単にで良いから、説明してくれないかな?」

 

 流石は村田さんだ。知らないことを素直に知らないと白状し、教えを乞うている。俺だけだったら、わからないまま適当に注文して、失敗していたかもしれない。

 

「はい! 焼き餃子ですが、清の料理餃子(チャオズ)を日本風に仕上げたもので、小麦の粉を練って作った皮で肉野菜で作った餡を包み、焼き上げた料理です」

 

 皮で餡を包んで焼いた料理か…おやきみたいな感じなんだろうか?

 

「次にエビチリですが、こちらも清の料理乾焼蝦仁(カンシャオシャーレン)を日本風に仕上げたもので、炒めた海老に辛めに味付けしたタレを絡めた料理です。海老は当店では、芝海老を使用しています」

 

 辛めのタレを絡めた海老か…酒に合いそうだ。

 

「最後に(とり)の唐揚げですが、若鶏(わかどり)の肉に下味をつけ、衣をまぶして油で揚げた料理になります」

 

 衣をまぶして油で揚げた…天ぷらみたいな料理だろうか?

 

「いや、よくわかったよ。ありがとう。注文が決まったら呼ばせてもらう」

 

 そう言った村田さんに一礼した娘さんが、他の客への対応に向かったところで、俺と村田さんは小声で相談を開始。

 

「茂部野、何を頼む?」

「そうですね…エビチリも気になりますが、今回は焼き餃子か(とり)の唐揚げを頼もうかと」

「俺もそのどちらかを頼もうと思うんだが…エビチリも気になるな」

「とりあえず、注文してみて美味かったら、エビチリを頼みましょうか?」

「そうだな…そうするか」

 

 俺と村田さんはお互いに頷き、娘さんを呼んで注文を伝える。最初の注文は俺が(とり)の唐揚げとかぼすチューハイ、村田さんが焼き餃子と柚子チューハイだ。

 

 結論から言うと、チューハイも料理も滅茶苦茶美味かった。それだけでも驚きだったけど…会計が更に驚きだった。

 1人あたりチューハイ3杯と料理2品で6銭*2だなんて、信じられない!

 あらゆる意味で満足した俺と村田さんは、ほろ酔い気分で帰途についた。

 今度は他の同期や後輩を誘って行こうなどと話しながら…

 

 

 この時、俺達は知らなかった。この東雲亭を運営している東雲商会が、鬼さ…会社と深い関わりを持っていること。

 そして、その関わりが俺達の運命を大きく変えることになることを。

*1
現代の貨幣価値に換算して、約27万円

*2
現代の貨幣価値に換算して、約1200円




最後までお読みいただきありがとうございました。

-オマケ-

東雲亭について

①メニューはチューハイ+1品料理のセットのみ。
②1品料理は日替わりで3品の中から選べる。
③値段はセットが2銭5厘、チューハイの追加注文が1銭、1品料理の追加注文が、1銭5厘で統一。
④追加注文はチューハイは2回、1品料理は1回可能。
⑤スタッフは女性が割烹着姿で主に接客。男性が作務衣姿で主に調理を担当。
⑥女性スタッフへのおさわりは厳禁!
⑦営業時間は17時から22時。定休日は日曜日。
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