鬼殺隊監査役・東雲麟矢   作:SS_TAKERU

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お待たせいたしました。

今回から徐々に原作本編へと関わっていきます。
少々短いですが、お楽しみいただければ幸いです。


本編第弐部 竈門炭治郎 立志編
拾弐之巻 -変わった事、変わらなかった事‐


麟矢視点

 

 最終選別終了から2週間。俺は基本東雲商会(父の会社)の手伝いと、自身の鍛錬に打ち込み、時々産屋敷邸を訪問するという日々を送っていた訳だが―

 

「麟矢様。鍛錬中に申し訳ありません」

 

 ある日の昼下がり、弓の鍛錬を行っている最中に後峠さんが声をかけてきた。

 

「どうしました? 後峠さん」

「麟矢様にお客様がいらしています。ですが…少々()()()()()()()でして…」

 

 何とも歯切れの悪い後峠さんの口ぶり。風変わりなお客さんか…あ、もしかしたら。

 

「如何なさいますか? 不審な人物では無い様なのですが」

「大丈夫、会いますよ。何者なのか見当がついています。急いで身支度を整えるので、お茶でも飲んでいてもらってください」

「畏まりました」

 

 一礼し、退室していく後峠さんを見送った後、大急ぎでコンパウンドボウを片付けていく。お待たせする訳にはいかない。慌てず急いで準備するとしよう。

 

 約15分後、汗を拭き、服を着替えた俺は客間へと移動。

 

「お待たせして申し訳ありません。東雲麟矢です」

 

 ひょっとこの面をつけ、慣れない様子でソファに座る人物に頭を下げた。すると―

 

鉄条甲士郎(くろがねじょうこうしろう)*1ど申します。刀鍛冶の里の里長、鉄地河原鉄珍(てっちかわはらてっちん)の指名で、あんだの刀打だせでいだだいだ」

 

 仙台訛りの喋り方でそう返し、風呂敷包みを解いて桐箱を取り出す鉄条氏。早速、俺専用に打たれた刀…日輪刀の説明が始まった。

 

「日輪刀の原料は、1年中日射してで、曇る事も雨降る事もねぁー(ない)陽光山で採れる“猩々緋砂鉄(しょうじょうひさてつ)“ど“猩々緋鉱石(しょうじょうひこうせき)”だ」

「この砂鉄ど鉱石は陽の光吸収し、溜め込む珍しい性質たがいでで(性質を持っていて)、これらで作った武器は、陽の光以外で唯一鬼殺す事出来ます」

 

 そう言って桐箱を開ける鉄条氏。箱の中に入っていたのは二振りの小太刀だ。

 

「刃渡り一尺九寸*2。順手ど逆手、どぢらでも扱いやすいように作ってる。さぁ、たがいでみでけろ(持ってみてください)。日輪刀は、別名色変わりの刀ど言ってたがぎ主(持ち主)によって刃の色変わるのだ」

「では、遠慮なく」

 

 鉄条氏の声に頷き、俺は小太刀を手に取り、鞘から抜いてみる。すぐさま、刀身がその色を変えていくのだが…

 

「なんだ…ほいな(そんな)色は見だ事がねぁー(ない)

 

 呆然と呟く鉄条氏だが、それも当然だ。小太刀の刀身は、光の当たり方や見る角度で色彩が変化する…所謂マジョーラカラー*3に変化していたのだから。

 

「赤にも青にも緑にも見える…不思議な色だ」

「私の全集中の呼吸は、他の方々とは異なる類のものらしいので、その為だと思います」

「そうが…いや、珍しい物見せでもらった」

 

 俺の言葉に納得したように頷いた鉄条氏は―

 

 ―刀の手入れが必要な時や、刀壊れだ時は遠慮なぐ言ってけさいん。それが刀鍛冶の仕事だがら!―

 

 そう言い残し、刀鍛冶の里へと帰っていった。甘い物が好きだと言っていたので、パティスリー東雲で販売している焼き菓子の詰め合わせをお土産に、と3箱ほど渡したところ凄く喜んでくれたから、後々()()()()()()()()()()()()()()()、土産として持っていくことにしよう。

 

 

天元視点

 

 最終選別が終わって3週間が経った頃。任務を終えた俺は呼び出しを受け、お館様のもとへと馳せ参じた訳だが…

 

「先客がいたか」

「宇髄様、暫くです」

「………」

 

 俺よりも先に東雲と冨岡が着座しており、その背後には12人の隠が控えている。

 東雲と隠がいる事から見て、()()()()()だとは思うが…冨岡は何の為にいる?

 そんな事を考えながら俺も着座し、待つ事暫し。

 

「お館様のお成りです」

 

 ひなき様の声と共に、お館様がそのお姿をお見せになられ、俺達は一斉に平伏する。

 

「やぁ、皆よく来てくれたね。特に義勇と天元は、長期の任務が終わってすぐにも拘らず駆けつけてくれた事。感謝しているよ」

「何をおっ―」

「何を仰います、お館様! お館様のご尊顔を拝する事こそ名誉の極み! その為ならば、例え地の果てであろうとも馳せ参じる覚悟が出来ております!」

 

 冨岡の声を遮り、上乗せする形で声を張り上げる。悪いな冨岡。お前みたいな地味な野郎にお館様へのお声掛けは渡さねえよ。

 

「うん、ありがとう。では、早速だけど本題に入ろう。麟矢君」

「はい! 以前より進めておりました弓隊の件ですが、人員の選出と基礎訓練が終了いたしました為、お知らせさせていただきます」

 

 東雲の声と共に再度平伏する12人の隠達。遂に弓隊が始動するか。

 

「隠の皆さんの中から希望者を募り、適正を測る試験を実施。合格者として12人を選出いたしました」

「それでは僭越ながら、弓隊構成員を紹介させていただきます」

新名安明(あらなやすあき)!」

「はっ!」

 

 名を呼ばれた隠は覆面を取り、その素顔をお館様へ晒していく。

 

櫻庭悟朗(さくらばごろう)!」

「はっ!」

茅葺純子(かやぶきじゅんこ)!」

「はっ!」

御崎恵巳(みざきめぐみ)!」

「はっ!」

日々野俊作(ひびのしゅんさく)!」

「はっ!」

普寺芽依(ふじめい)!」

「はっ!」

黒寺頼耶(くろでららいや)!」 

「はっ!」

八上瑤子(やのかみようこ)!」

「はっ!」

白鐘沙綾(しろがねさあや)!」

「はっ!」

獅噛翔(しがみかける)!」

「はっ!」

池浪隆太郎(いけなみりゅうたろう)!」

「はっ!」

呉西拝十(ごせいはいと)!」

「はっ!」

「以上が第一次選抜を突破した12名でございます」

 

 男7に女5、性別の違いに囚われず実力のみで選抜したか。女というだけで侮る手合も少なくないって言うのに、流石は東雲と言ったところか。

 

「実に頼もしい顔ぶれだね。これからは弓隊の一員として、頑張ってくれる事を期待しているよ」

「お館様のご期待に応えられるよう、我ら12名! 粉骨砕身の気概で任務に邁進いたします!」

 

 お館様の激励に、12人を代表して答える新名。なかなか良い気合の入り方だぜ。そして―

 

「弓隊の結成を祝して、部隊の名前を考えてみたんだ」

 

 お館様の声と共に、横に控えていた輝利哉様が手にした紙を広げていく。そこに書かれていた文字は…

 

筋交(すじかい)*4。今後は弓隊の事をこう呼称してくれるかな?」

「光栄な事でございます! 本日只今より、我らは筋交を名乗らせていただきます!」

 

 額を擦り付けるほど平伏しながら声を張り上げる新名。その姿を見て、静かに微笑みながら頷くお館様。

 

「それじゃあ、この場に天元と義勇を呼んだ理由を話すとしようか。天元、義勇、すまないが暫くの間、任務に赴く際は筋交の皆を連れて行ってほしい」

「筋交を…あぁ、現場で評価しろと?」

「そういう事だね。あとは、どのように筋交を動かせば、最大限に力を発揮出来るのかの見極めも行ってほしい」

「他の(子達)に頼もうかとも考えたが、皆それぞれに事情があって難しいからね」

 

 たしかに、悲鳴嶼さんは盲目故にこういった類の評価は難しいだろうし、既に蝶屋敷の運営を行っている胡蝶に筋交の評価までやらせるのは、いくら何でも無茶が過ぎる。そして不死川は…弓隊を不要だと唱えている急先鋒。評価以前に何もさせない可能性が高い。

 そう考えると、俺と冨岡が評価を引き受けるのが最善ってところだな。

 

「わかりました。筋交の評価、謹んでお受けいたします」

「御意」

「ありがとう。期待しているよ、天元、義勇」

 

 こうして、筋交のお披露目は無事終了。早速、冨岡と人員の割り振りについて話そうとしたのだが…

 

「俺はどうでもいい」

 

 それだけ言って冨岡はさっさと帰りやがった! まったく、毎度毎度人を怒らせる事に関しては天才的だな! 俺が派手を司る祭りの神なら、あいつは煽りを司る悪口の神か!?

 

「まあまあ、宇髄様。冨岡様の代わりに私がお手伝いしますから」

 

 東雲が気を利かせてくれたからいいものを…やはりアイツは柱に相応しいと言えねえな。

 

 

麟矢視点

 

 宇髄さまの冨岡様に対する好感度低下(若干のトラブル)はあったものの、弓隊改め筋交の運用は開始された。

 産屋敷邸を訪れる毎に耀哉様から聞かされる話によると、筋交の効果はこちらの予想以上のものがあったようで、宇髄様や冨岡様からの報告によると、隊士の負傷率や殉職率が目に見えて下がっているそうだ。

 

「これだけの成果を上げたので、実弥も筋交の事を認め始めたようだ。麟矢君には何とお礼を言うべきだろうね」

「お役に立てたのならば、何よりでございます。これからも浅学菲才の身ではありますが、鬼殺隊の一助となれれば幸いです」

 

 

 俺の介入によってここまでは最良の展開を進んでいた。そして、原作第1話の時期と思わしき、1913年(大正2年)2月初頭。

 これまでで最大級の()()()()が起きた。それは…

 

「竈門家の人々が…死ななかった」

 

 モーリアンによって齎された耀哉様からの手紙に、思わずそんな声が漏れる。

 流石に詳細は書かれていないが、冨岡様から耀哉様へ送られた書状によると―

 

 1つ…雲取山で炭焼きを営んでいる家族が鬼に襲われた。

 2つ…たまたま付近で鬼狩りを行っていた冨岡様並びに筋交の面々が異変を察知して駆けつけた為、鬼は逃走。

 3つ…7人家族のうち、長女だけが鬼に変えられた為、冨岡様が頸を刎ねたが他の6人は無事。

 4つ…長男が妹の敵を討つ事を冨岡様に直訴。冨岡様は自身の師でもある育手。鱗滝左近次様を紹介。長男は即旅立った。

 

 とあったそうだ。この長男とは99%、竈門炭治郎(かまどたんじろう)くんであり、長女とは禰豆子(ねずこ)ちゃんの事だろう。

 そして、冨岡様が鬼となった長女の頸を刎ねたとあるが、これは恐らく嘘だ。

 俺の介入で、物語の展開に変化が起きているとはいえ、まだ介入していない竈門炭治郎君に関係する事…即ち物語の根幹部分を揺るがすような変化は起きない筈だからな。

 とにかく、この一件を知った耀哉様は、ご自身の直感で何かを感じ取ったのだろう。明日、柱を緊急招集する事を決定した他、俺とも()()()()()()()()と手紙に書かれてある。

 別件で話がしたい…か、どんな内容かはわからないが、期待に応えられるよう最善を尽くすとしよう。

*1
本作オリジナルキャラ

*2
約57.6cm

*3
日本ペイントが開発・発売する分光性塗料

*4
柱と柱の間に斜めに入れる部材の事。建築物や足場の構造を補強し、耐震性を高める効果がある




最後までお読みいただきありがとうございました。


※大正コソコソ噂話※

冨岡様が禰豆子ちゃんを見逃し、炭治郎くんを鱗滝様の下へ向かうよう伝えたのは原作通りですが、そのあまりの言葉足らずが災いし、竹雄くん達弟妹勢からは「何を言っているのかわからない」と非難されました。
更に一周回って冷静になった葵枝さんからも「何か深い事情がお有りとは思いますが…」と前置きをされた上で、「言葉足らずで伝えようとしている事が殆ど伝わっていない」と懇々と諭すように叱られたそうです。
間の悪い事に周囲の警戒に当たらせていた筋交の面々にも、一部ながらその光景を見られており「水柱様は何をやらかしたんだ?」と誤解されてしまったようです。
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