鬼殺隊監査役・東雲麟矢   作:SS_TAKERU

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お待たせいたしました。
伍拾之巻を投下します。
今回、遂にあの鬼が登場します。
お楽しみいただければ幸いです。


伍拾之巻 -現れた鬼は-

伊之助視点

 

「伊之助-ッ! この汽車はもう安全な所が無い! 眠っている人たちを守るんだ!!」

「この汽車全体が鬼になってる! 聞こえるか! この汽車全体が鬼なんだ!!」

 

 天井を突き破って外へ飛び出した途端に聞こえてきた炭八郎の声。それを聞いた俺は―

 

「やはりな…俺の読み通りだったわけだ。俺が親分として申し分なかったというわけだ!!」 

 

 己の直感、その鋭さに体を震わせた。見てろよ! やってやるぜぇ!!

 

(けだもの)の呼吸…伍ノ牙・狂い裂き!!」

 

 天井の穴から再び中へと飛び込んだ俺は両手の刀を振るい、客に纏わりつこうとしていた肉の塊を手当たり次第に斬り捨てていく!

 

「どいつもこいつも、俺が助けてやるぜ!」

「須らくひれ伏し! 崇め讃えよ、この俺を! 伊之助様が通るぞォオ!!」

 

 次から次に湧いてくる肉の塊。だが、こんなもんで俺が止められるかよ!

 

 

禰豆子視点

 

 おにいちゃんにいわれて、みんなをおこそうとしたけれど…なんだか気もちわるいものがみんなにちかづいてきていた。

 

「ムーッ!」

 

 わたしはうでをふって、目のまえの気もちわるいものをおもいっきりひっかく!

 

「ムーッ!」

 

 ふりむきながらうでをふって、うしろにいた気もちわるいものを、ごとうげさんがやりかたをおしえてくれた手刀でうつ!

 つぎからつぎに出てくる気もちわるいものをどんどんやっつけていたけど…

 

「ムゥッ!?」

 

 気もちわるいものにまきつかれようとしていた小さな子をかばったら、わたしの左手が気もちわるいものにまきつかれた。いそいで右手でひっかこうとしたけれど、右手も気もちわるいものにまきつかれる。

 

「………!!」

 

 りょう足にも気もちわるいものがまきついて…わたしの手足をひきちぎろうと力をいれてきた。

 すごくいたくてなみだが出そうになったけど…

 

「雷の呼吸…弐ノ型・稲玉!」  

 

 すごいおとをさせながらわたしのまえに立った人が、刀をふってわたしにまきついた気もちわるいものをぜんぶきってくれた! この人は!

 

「禰豆子ちゃんは俺が守る」

 

 おにいちゃんのおともだちの…ぜんいつさん!

 

「壱ノ型・霹靂一閃・六連!」

 

 ぜんいつさんはそういって、ちかくにいた気もちわるいものをみんなやっつけてくれた。ぜんいつさん、すごい!

 

 

炭治郎視点

 

 右手に日輪刀、左手に手斧という変則的な二刀流の形を取った俺は、眠ったままの乗客に迫る肉の塊を手当たり次第に切り捨てていく。そんな中―

 

「今の音は!?」

 

 後ろの車両から落雷のような轟音が聞こえた。だけど客車を守りながらじゃ詳しい状況がわからない!

 善逸と煉獄さんは起きたんだろうか!? 禰豆子は大丈夫なのか!?

 

「くっ!」

 

 この車両を守るだけで精一杯で、連携が取れない! このままじゃまずい…どうすればいい!

 

「うーん…うたた寝している間に、こんな事態になっていようとは! よもやよもやだ!」

「柱として不甲斐なし! 穴があったら…入りたい!」

 

 後ろの車両からそんな声が聞こえてきたのはその時だ。そして、声の主を俺が認識するよりも早く、轟音と共に車両が大きく揺れた。何だっ! 鬼の攻撃か!?

 変化し続ける状況に歯噛みしつつも、俺が立ち上がろうとした次の瞬間!

 

「竈門少年!」

「煉獄さん!」

 

 俺の目の前に煉獄さんが立っていた。突然現れた煉獄さんに、俺が驚きを隠せずにいると―

 

「ここに来るまでにかなり細かく斬撃を入れてきたので、鬼側も再生に時間がかかると思うが、余裕は無い! 手短に話す」

「この汽車は八両編成だ。俺は後方五両を守る! 残りの三両は黄色い少年と竈門妹が守る! 君と猪頭少年は、その三両の状態に注意しつつ、鬼の頸を探せ!」

 

 煉獄さんは、矢継ぎ早に指示を飛ばしてきた。

 

「頸!? でも今この鬼は」

「どのような形になろうとも、鬼である限り急所(くび)はある! 俺も急所を探りながら戦う。君も気合を入れろ!」

 

 そう言って雷のような轟音と共に姿を消す煉獄さん。凄い…! 見えない! さっきの揺れは煉獄さんが移動した揺れだったのか…!

 状況の把握と判断が早い…五両を一人で…って、感心している場合じゃないぞ馬鹿! やるべきことをやれ!

 俺は自分に活を入れ、鬼の匂いが強くなるほうへと移動を始めた。

 

「伊之助! 伊之助どこだ!」

「うるせぇ! ぶち殺すぞ!」

「上か!」

「ギョロギョロ目玉に指図された! でもなんか…なんか…なんか凄かった! 腹立つぅぅう!」

 

 煉獄さんに圧倒されて、悔しさと同時に憧れも感じたんだろう。複雑な匂いをさせている伊之助と共に進みながら、俺は指示や情報を共有していく。

 

「伊之助! 前方の三両を注意しながら―」

「わかってるわァァァ! そして俺は見つけてるからな。すでにな! 全力の漆ノ型で…この“主”の急所!」

「そうか! やっぱり…前方だな?」

「そうだ前だ! とにかく前の方が気色悪いぜ!」

 

 強い風のせいで匂いが流れて判りづらかったけど、伊之助が言うなら間違いない!

 

「石炭が積まれてる辺りだな?」

「そうだ!」

「わかった! よし行こう! 前へ!」

 

 

伊之助視点

 

「オォリャアア!」

 

 俺の感覚に従い、この“主”の一番前までやってきた俺は、刀を振るって再び中へと侵入。

 

「怪しいぜ怪しいぜ、特にこの辺り!」

 

 気色悪さが一番強い所へ足を踏み入れた!

 

「何だお前は! でっ、出ていけ!」

 

 なんかギャーギャー喚いている男は端から無視して―

 

「鬼の頸! 鬼の急所ォオオオ!!」

 

 狙うは鬼の頸ただ一つ!

 

「キモッ!」

 

 その筈だったのに、あちこちから気味の悪い色をした手が生えて、俺に襲い掛かってきやがった!

 俺は刀を振り回して手を斬り捨てていくけど、手の数が多すぎ―

 

「水の呼吸…陸ノ型・ねじれ渦!」

 

 全身を掴まれる寸前、権八郎が周りの手を斬り捨てた。ちくしょう! やるじゃねえか!

 

「伊之助! この真下が鬼の頸だ!」

「命令すんじゃねえ! 親分は俺だ!」

「わかった!」

 

 権八郎とそんなやり取りを交わしながら、俺は弐ノ牙・切り裂きを放ち、床を切り裂く! そこにあったのは…デカい頸の骨!

 

 

炭治郎視点

 

 伊之助の一撃で床が切り裂かれ、露わになった巨大な頸の骨。

 

「水の呼吸・捌ノ型…滝壺!」

 

 俺は間髪入れず、日輪刀を振るうけど…防がれた! 裂け目がすぐに塞がる。再生が速い!

 

「くっ!」

 

 すぐに俺へと殺到してきた無数の手を斬り捨てながら、俺は考える。渾身の一撃で骨を露出させるのが精一杯…()()()()には、これだ!

 

「伊之助! 呼吸を合わせて連撃だ! どちらかが肉を斬り、すかさずどちらかが骨を断とう!」

「なるほどな! 良い考えだ、褒めてやる!」

「ありがとう!」

 

 伊之助の了承を得た俺は呼吸を合わせ―

 

「いくぞ…」

「強制昏倒睡眠・眼」

 

 日輪刀を振るおうとした瞬間、周囲に現れた無数の目。その一つと目が合ってしまう。これは、血鬼術! 喰らっ…た! 眠らされる!

 

「い、伊之助! 夢の中で自分の頸を斬れ! 覚醒する!」

 

 早口で伝えるべきことを伊之助へと叫び、俺は意識を失い……すぐに覚醒する。大丈夫だ。かかっても術は破れる!

 

「ッ!」

 

 覚醒した瞬間、また目と目が合ってしまった。馬鹿! 目を覚ましたら瞼を閉じろ。すぐ術にかかるぞ!

 意識を失っては覚醒し、またどこかの目と目が合って意識を失う。そしてまた覚醒するを繰り返す。

 

「ッ!」

 

 そしてまた目が合ってしまった。早く目を覚ませ! 俺は反射的に日輪刀を頸に…

 

「夢じゃねぇ! 現実だ!」        

 当てたところで伊之助に止められた。

 

「罠にかかるんじゃねぇよ! つまらねぇ死に方すんな!」

 

 あ、危なかった。俺は鬼の策に嵌まって、現実で自分の頸を斬ろうとしていたのか!

 

「グワハハハハハ! 俺は山の主の皮を被ってるからな! 恐ろしくて目ェ合わせらんねぇんだろ! 雑魚目玉共!」

 

 高笑いと共に目を次々と斬り捨てていく伊之助。そうか、伊之助は猪の皮を被っているから、視線がどこに向いているか解りにくいんだ!

 猪の皮の思わぬ働きに感心した直後―

 

「伊之助!」

 

 錐を持った男性が、伊之助に背後から忍び寄っているのが見えた。駄目だ、ここは狭い上に立ち位置が悪い。こうなったら! 

 

「夢の邪魔をするな!」

 

 俺は伊之助と男性の間に滑り込み、自らの体を盾にして伊之助を襲う錐の一撃を受け止める!

 

「権八郎!?」

 

 伊之助の驚いた声が響く中、俺は男性に一撃を叩き込んで無力化。

 

「大丈夫だ! 急所は外れてる! 早く鬼の頸を斬らないと、善逸や禰豆子がもたない! 早く!」

「…ウォォォッ! 獣の呼吸・肆ノ牙・切細裂き!」

 

 伊之助が床を切り裂いて出来た裂け目から露になった頸の骨に日輪刀を振るう。父さん…守ってくれ。この一撃で骨を断つ!

 

「ヒノカミ神楽…碧羅の天!!」

 

 

 魘夢視点

 

「助けた後、アイツの髪の毛全部毟っといてやる!」

「そんなことしなくていいよ…」

 

 鬼狩り達の気の抜けたやり取りが、耳障りな音になって響き渡る…頸を斬られた直後、残る力の全てを使って汽車を横転させてやったのに、誰も死んでない…投げ出された運転手ですら、鬼狩りが助けてしまった。

 ………体が崩壊していく。再生出来ない。負けたのか? 死ぬのか? 俺が? 馬鹿な…馬鹿な!

 俺は…俺は全力を出せていない! 人間を一人も喰えなかった…汽車と一体化し、一度に大量の人間を喰う計画が台無しだ。こんな…こんな姿になってまで…! これだけ手間と時間をかけたのに…!

 アイツだ! アイツのせいだ! 三百人も人質を取っていたようなものなのに、それでも押された。抑えられた 。これが柱の力…

 アイツ…アイツも速かった。今までに倒した鬼狩りと比較にならないくらい!

 しかもあの娘! 鬼じゃないか、何なんだ! 鬼狩りに与する鬼なんて、どうして無惨様に殺されないんだ!?

 くそォ…くそォ! そもそも…あのガキに術を破られてからがケチのつき始めだ。あのガキが全部悪い…!

 あのガキだけでも殺してやりたい…そうだ、あの猪も! あのガキ一人なら殺せたんだ。あの猪が邪魔した。並外れて勘が鋭い。視線に敏感だった…。

 負けるのか? 死ぬのかァ…ああああ…悪夢だあああ、悪夢だあああ…。

 鬼狩りに殺され続けるのは、いつも底辺の鬼たちだ。上弦…ここ百年顔ぶれの変わらない鬼たち。山ほど鬼を葬っている鬼狩りの柱さえも葬っている。異次元の強さなのか。

 あれだけ血を分け与えられても、上弦に及ばなかった…あぁぁぁ…やり直したい。やり直したい。何という惨めな悪夢…だ…

 

 

杏寿郎視点

 

 横転した汽車の状況を確認し、これ以上の状況悪化が無いと判断した俺は、無限列車と一定の距離を取って追尾させていた鎹鴉の要に、救助の要請を依頼する旨の文を託し― 

 

「竈門少年!」

 

 先頭車両近くで地面に横たわる竈門少年へと駆け寄った。

 

「煉獄さん…」

「腹を…刺されたのか?」

「鬼に操られていた男性から…でも、急所は外れていましたし、大体ですけど止血も出来てます」

「ふむ…」

 

 俺は竈門少年の声を聞きながら、隊服の上から傷の状態を確認する。細く鋭い刺傷…針、いや錐のよるものか。少々深いが、内臓や太い血管を外れているのは幸運だな。止血も出来ているようだが…

 

「全集中の常中…キチンと出来てはいるが、傷の痛みからか時々精度が荒くなっている。呼吸に集中しろ。傷の痛みに抗うのではなく、受け流す感覚だ」

「は、はい…」

 

 俺の助言を聞き、呼吸に集中していく竈門少年。うむ、なかなか良い調子だ!

 

「もう少し、もう少しだけ集中だ。止血は完璧にしておくに越したことはない」

「は、はい………ぶはっ、はぁっ、はぁっ…」

「うむ、完璧に止血出来たな。今の感覚、覚えておくと良い。全集中・常中は奥が深い。極めていけば様々なことが出来るようになる。何でも出来る訳ではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる」

「……はい!」

 

 竈門少年の強い意志を感じさせる返事に俺は頷き―

 

「皆無事だ! 怪我人は大勢だが命に別状は無い」

 

 起き上がろうとする竈門少年に手を貸しながら、状況を説明。

 

「救助隊も来ることだし、君は無理せず―」

 

 していたのだが、背後で響いたまるで爆発のような轟音が会話を強制的に終了させた。俺は咄嗟に振り返り、いつでも抜刀出来る状態で、轟音の主を見極めようと巻き起こった砂煙の先を睨みつける。

 そして、砂煙が晴れた時…姿を現したのは上弦の…参?




最後までお読みいただきありがとうございました。
次回、炎柱対上弦の参、激闘開始。


※大正コソコソ噂話※

二人で力を合わせ、客車を守り抜いた善逸君と禰豆子ちゃん。
汽車の横転で互いに軽傷を負ったものの、十分に動ける状態だったので、怪我人の救助に奮闘しています。
伊之助君も口では文句を言いながら、怪我人を助けているようです。
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