鬼殺隊監査役・東雲麟矢   作:SS_TAKERU

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お待たせいたしました。
伍拾壱之巻を投下します。
いよいよ、煉獄様とあの鬼が戦闘開始!
お楽しみいただければ幸いです。


伍拾壱之巻 -激闘・上弦の参(前編)-

炭治郎視点

 

 煉獄さんとの会話を強制的に打ち切った轟音。咄嗟に振り替える煉獄さんへ続くように、俺も頭を動かして砂煙の先に視線を送る。そこにいたのは…

 

「上弦の…参?」

 

 どうして今ここに…俺が思いを口にしようとしたその時、轟音と共に上弦の参は姿を消し…次の瞬間俺の目前へと迫っていた。

 

「ッ!?」

 

 そのあまりの速さに、回避も防御も出来ないまま…振るわれた拳が俺の目前へと迫る。駄目だ…死―

 

「炎の呼吸…弐ノ型・昇り炎天!」

 

 目前に迫った死。それから俺を救ってくれたのは…煉獄さんの振るった刃!

 振るった拳を肘の辺りまで一気に切り裂かれ、距離を取る上弦の参。その間に煉獄さんは俺の前に立ち、体勢を立て直した。

 煉獄さんなら、煉獄さんならきっと大丈夫だ。そう信じているのに…

 

「………良い刀だ」

 

 煉獄さんに斬られた腕を一瞬で再生させた上弦の参を見ていると、背中の寒気が治まらない!

 

 

杏寿郎視点

 

「………良い刀だ」

 

 そう言いながら、再生させた腕に残った僅かな血を舐め取る鬼。再生が速い。この圧迫感と凄まじい鬼気(きき)。これが上弦…だが、どうしても解せないことがある。

 

「何故手負いのものから狙うのか、理解出来ない」

 

 そう、あれほどの力を持ちながら、明らかに格下である竈門少年を狙ったことだ。

 

「その小僧、それなりに腕が立つようだが、俺の基準で見れば弱者の部類。だから話の邪魔になるかと思った。俺とお前の」

 

 話、だと?

 

「君と俺が何の話をする? 初対面だが、俺はすでに君のことが嫌いだ」

「そうか、俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると、虫唾が走る」

 

 弱者…か。

 

「俺と君とでは、物事の価値基準が違うようだ」

「…では、素晴らしい提案をしよう。お前も鬼にならないか?」

「ならない」

 

 提案と呼ぶには、あまりに下らない内容。当然、俺は即答で拒否するが…

 

「見れば理解出来(わか)る。お前の強さ、柱だな。その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い」

 

 上弦の参は、まだ話を続けたいらしい。

 

「俺は炎柱。煉獄杏寿郎だ」

「俺は猗窩座(あかざ)。杏寿郎。何故お前が至高の領域に踏み入れないのか、教えてやろう。人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ」

「鬼になろう、杏寿郎。そうすれば、百年でも二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」

 

 なるほど。無限の寿命があれば永遠に鍛錬し続けることが出来る。そういう意味では、奴の言う至高の領域へ踏み入ることが出来るかもしれない。だが!

 

「老いることも、死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ」

 

 俺は己の信念に従い、言葉を紡いでいく。

 

「老いるからこそ、死ぬからこそ、たまらなく愛おしく、尊いのだ」

「強さというものは、肉体に対してのみ使う言葉ではない」

 

 そう、俺は断言する。

 

「この少年は弱くない! 侮辱するな。何度でも言おう」

「君と俺とでは価値基準が違う。俺はいかなる理由があろうとも、鬼にならない!」

 

 俺の叫びの後、僅かな間沈黙がその場を包む。そして―

 

「………そうか」

 

 上弦の参(あかざ)が動き始めた!

 

「術式展開」

 

 何かしらの武術の構えを取った上限の参(あかざ)がそう呟いた直後―

 

「破壊殺・羅針!」

 

 奴の足元に出現する雪の結晶のような陣。あれが奴の血鬼術か!

 

「鬼にならないなら、殺す」

 

 その呟きと共に、こちらへ向かって来る上弦の参(あかざ)。こちらも迎撃の為、前へ出る!

 

「はぁぁっ!」

「ぬぅん!」

 

 俺の放つ斬撃と、上弦の参(あかざ)の放つ拳打。互いの攻撃が時にぶつかり合い、時に空を切る。

 瞬きほどの間に幾度もの攻防が繰り広げられ、それが幾度も繰り返される。おそらく並の隊士では目で追うことすら出来ないだろう。

 

「今まで殺してきた柱達に、炎はいなかったな!」

 

 攻撃を続けながら上弦の参(あかざ)が叫ぶ。

 

「そして、俺の誘いに頷く者もなかった」

 

 その言葉に耳を傾けながらも、俺は奴が攻撃を放った後に生じた僅かな隙を突き、手首から先を切り落とそうと日輪刀を振るう。

 

「ッ!」

 

 だが、奴もそれを読んでいたのだろう。斬られた瞬間力を込めることで、刃を受け止めてみせた。斬ることが出来たのは、手首の三分の一程。敵ながら見事!

 

「何故だろうな。同じく武の道を極める者として、理解しかねる」

 

 互いの額をぶつけあえそうなほどの近距離で睨みあいながら、上弦の参(あかざ)は尚も持論を口にし続ける。

 

「選ばれたものしか、鬼にはなれないというのに!」

 

 そして振るわれるは…右の手刀!

 

「せぇい!」

 

 俺は咄嗟に日輪刀の刃を下から上へと振るい、上弦の参(あかざ)の右腕を肘のあたりから切断! 切断された右前腕が宙を舞うが―

 

「ふっ…」

 

 なんと、上弦の参(あかざ)は地面へと落ちていく右前腕を掴もうとすらせずに傷口同士を合わせ、一瞬で結合。そのまま突きを放ってきた! 咄嗟に日輪刀で受けたが、なんという再生の速さ。なんという技量!

 

「素晴らしき才能を持つ者が、醜く衰えていく。俺は辛い! 耐えられない!」

 

 そんな声と共に放たれた連続突きを凌いだ俺は、再び上弦の参(あかざ)と至近距離で睨みあう。

 

「死んでくれ、杏寿郎。若く強いまま」

「ふんっ!」

 

 上弦の参(あかざ)の要求に、俺は日輪刀を振るうことで拒否の意思を示す。すると―

 

「破壊殺・空式!」

 

 宙に舞い上がった上弦の参(あかざ)が、何かの技を繰り出してきた。この距離で放つ技…一体どのような技だ? どこから来る? 右か? 左か?

 

「くぅっ…」

 

 己が直感に従って刀を構えた瞬間、刀身に走る衝撃。

 

「でやぁっ!」

 

 二発、三発、次々と刀身を走る衝撃に、完全ではないにせよ攻撃の正体を察した俺は―

 

「でぇぇぇいっ!」

「炎の呼吸…肆ノ型・盛炎のうねり!」

 

 連打と共に放たれたそれを、盛炎のうねりを防壁代わりにすることで受け止める。

 あの技…虚空を拳で打つと、攻撃がこちらまで来る。おそらくは風の塊を打ち出す技。一瞬にも満たない速度で届く上に不可視。このまま距離を取って戦われると、頸を斬るのは厄介だ。ならば…

 俺は両足に力を込め、一気に奴との間合いを詰めていく。そう、距離を取られると厄介ならば、近づくまで!

 

「でぇいっ!」

「この素晴らしい反応速度!」

 

 再び始まる斬撃と拳打のぶつかり合い。一息の間に十を超える攻防が繰り広げられていく。

 

「この素晴らしい剣技も、失われてゆくのだ。杏寿郎! 悲しくはないのか!」

「誰もがそうだ。人間なら当然のことだ!」

 

 剣と拳をぶつけ合いながら、俺と上弦の参(あかざ)は互いの持論をもぶつけ合っていく。その時、視界の隅で何かが動いた。竈門少年と、駆け付けた猪頭少年が援護に入ろうとしているのか!

 

「動くな! 特に竈門少年は急所こそ外れているが、腹を刺されている! 無理をすれば取り返しのつかない事になりかねない! 待機命令!」

 

 咄嗟に二人に待機を命じ、戦闘を続行する。

 

「弱者に構うな、杏寿郎!」

 

 だが、それは上弦の参(あかざ)を刺激してしまったようだ。攻撃の圧が一段階増していく。

 

「全力を出せ! 俺に集中しろ」

 

 全力を出せ…か。その挑発…敢えて乗ろう! 俺は再び上弦の参(あかざ)との距離を詰め―

 

「でやぁっ!」

 

 壱ノ型・不知火を放つ。紙一重で避けられてしまったが、それは想定内。反撃で放たれた拳打を捌き、本命の一撃を叩き込む!

 

「ぬぉっ!?」

 

 近くの森へと吹っ飛んでいく上弦の参(あかざ)。ここで逃がすわけにはいかない。俺は危険を承知で森へと踏み入り、奴を追う。

 

「良い動きだ!」

「ッ!?」

 

 案の定、奴は森に足を踏み入れた俺に攻撃を仕掛けてきた。不意打ち気味に放たれた左の拳打を避け、それを皮切りに再開される斬撃と拳打のぶつかり合い。

 その結果、俺は上弦の参(あかざ)の右腕を切り落とすことが出来たが―

 

「はぁっ!」

 

 俺も奴の蹴りを受けてしまった。防御こそ間に合ったものの、その強烈な衝撃の前に、俺は大きく吹っ飛ばされてしまう。

 

「煉獄さん!」

「ギョロギョロ目ん玉!」

 

 竈門少年と猪頭少年の声が響く中、俺は自らの状況を確認。まだ怪我らしい怪我は無し。まだまだ戦える。だが…

 

「鬼になれ。杏寿郎」

 

 悠然と森から出てくる上弦の参(あかざ)も、右肘から下を失っているにも関わらず、平然としている。恐らくあの傷も間もなく再生するだろう。

 

「はぁ、はぁ…」

 

 乱れた呼吸を整えながら、考えを巡らせる。長期戦はこちらが圧倒的に不利。短期決戦を挑むしかないが…奴の技量を考えると短期決戦で仕留められるかどうかにも疑問符が付く。

 

「そして、俺とどこまでも戦い、高め合おう。その資格がお前にはある」

 

 …いや、考える必要など無いな。俺は炎柱、煉獄杏寿郎。俺は俺の成すべきことをやり抜くのみ!

 

「断る! もう一度言うが、俺は君が嫌いだ」

 

 俺は立ち上がり、日輪刀を構え直すと、目の間に上弦の参(あかざ)へ断言する。

 

「俺は鬼にはならない!」

 

 そして、獰猛な笑みを浮かべる奴との間合いを詰める為、両足に力を込めたその時!

 

「ちょっと待ったぁぁぁっ!」

 

 よく響く大声と共に一台、いや二台の自動車がこちらに突っ込んできた!

 

 

麟矢視点

 

「ちょっと待ったぁぁぁっ!」

 

 フルアクセルで車を走らせながら、俺は出せる限りの大声を発し、煉獄様と猗窩座の戦闘へ乱入。

 

「獪岳! 犬塚氏! 五数えたら、車から飛び降りてください!」

「わかった!」

「心得た!」

「五、四、三、二、一、今です!」

 

 僅かに速度を緩めて獪岳と犬塚氏を車から飛び降りさせると、猗窩座へ体当たりを仕掛ける為、再加速!

 

「体当たりか!?」

 

 そんな俺の狙いを察したのか、獰猛な笑みを浮かべ、拳を振るう猗窩座。すぐさま、弾幕のような衝撃波が車へと襲いかかるが、俺は速度を緩めない。

 何発か衝撃波が命中し、車体が破損していくが…大丈夫、このくらいならまだ耐えられる!

 

「なかなか丈夫だな。面白い!」

 

 猗窩座も想像より丈夫な自動車に興味を惹かれたのか、自らの拳打で迎え撃とうと構えを取る。そして―

 

「破壊殺・砕式! 万葉閃―」

 

 猗窩座が振りかぶった拳を叩きつけるように振り下ろそうとした瞬間、俺は車を操作し、ドリフト走行!

 

「何っ!?」

 

 完全に虚を突かれた形となった猗窩座へ、フロントボディを叩きつけた!

 

「ぐはぁっ!」

 

 虚を突かれ無防備状態となったところへ、ほぼ最高速での体当たりを食らい、吹っ飛んでいく猗窩座。だが、このくらいで仕留められたとは思っていない。

 

「玄弥君!」

 

 俺は横転しそうな車体を必死にコントロールしつつ、後続…玄弥君が運転する二号車へ叫ぶ。

 

「はい!」

 

 その時には既に、玄弥君は行動を開始していた。車を停車させると同時に後部座席に積み込んでいた()()()()に被せていた布を取り去る。露になった秘密兵器。その正体は…回転式多銃身機関銃(ガトリングガン)!!

 玄弥君は、回転式多銃身機関銃(ガトリングガン)の銃口を、頭から地面に落下しながらもすぐに起き上がった猗窩座へ向け―

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 クランクを回し、大量の弾丸を猗窩座へ浴びせていく!

 

「う、ぐ、ぬぁぁぁっ!?」

 

 毎分二百発の連射速度を誇る回転式多銃身機関銃(ガトリングガン)の射撃…文字通り弾丸の雨を受け、瞬く間に削られていく猗窩座の防御。やがて、防御を担っていた両腕が削り尽くされ、銃弾で蜂の巣にされていく猗窩座の全身。

 用意していた弾丸全てを発射し、射撃を終了する回転式多銃身機関銃(ガトリングガン)。並の…いや下弦の鬼であっても殺せると思われるだけの弾丸を撃ち込んだ訳だが…

 

「………今のが銃というものか。なかなかの威力だ」

 

 やはりというか、残念ながらと言うべきか。上弦の鬼は、猗窩座は殺せなかった。

 

「だが、威力はあっても所詮は鉛玉。これじゃあ、俺は殺せない」

 

 挽肉状態(ハンバーグのタネ)から物凄い勢いで人型に戻っていく猗窩座。上弦の鬼の再生能力…原作知識でわかっていたつもりだったが、想像以上だ。

 

「玄弥君、炭治郎君、伊之助君と合流。戦闘体勢を維持しつつ、別名あるまで待機。いいですね?」

「は、はい!」

 

 車から降りた俺は玄弥君に指示を下しながら、先に煉獄様の元へ向かっていた獪岳、犬塚氏と合流。

 

「煉獄様、遅くなり申し訳ありません。今動ける最高の腕利き二人を連れてきました」

「すまないな、東雲。正直言って、助かった!」

 

 煉獄様の言葉に俺は笑みを返し、猗窩座へと向き直る。

 

「さて、上弦の鬼。ここからは四対一だが…卑怯などと言ってくれるなよ?」

「…見れば理解出来(わか)る。お前達三人の強さ、かなりのものだ。杏寿郎には劣るが練り上げられた闘気。至高の領域へ踏み入ることも夢ではない」

 

 獰猛な笑みをますます獰猛にしながら、心底嬉しそうな様子の猗窩座。俺達は油断なくそれぞれの得物を構える。さぁ、ここから仕切り直しだ!




最後までお読みいただきありがとうございました。
次回、四対一の激闘開始。


※大正コソコソ噂話※
 
助っ人として到着した獪岳、剣造の戦闘力は、煉獄様を100とした場合、獪岳、剣造共に85前後となります。
麟矢は小太刀のみを用いた場合、戦闘力は70にギリギリ届かない程度ですが、弓を併用すれば80代前半程度まで上昇するようです。
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