ぼっち・ざ・ソリスト!   作:マイケルみつお

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お疲れ様です、炎の二次サッカー、マイケルみつおです。

お、久しぶりの更新やんけ!ていう事は一挙公開か!?と思われた方すみません。まだある程度までのストックは貯まっていません。

実はアンケートをこの間から設置していたのですが、やはり更新の谷間だったからか、そもそも気づいてもらえず回答数も伸び悩んでいました。(ステルスアンケートになってた)

何で皆答えてくれないのかな?もしかしたら嫌われているのかな?と悶々とした日々を送っておりましたが「そうか!更新をしていないからか!」と2ヶ月以上経ったある日ようやく気づき、今回更新に至った次第です。

アンケートの詳細は後書きに設置しております。


24話 バンド・と・リア充!

「ならヒモ君にもバンド、する理由はあるじゃない」

 

「......そっか」

 

「うん。そうだよ」

 

何だかんだ言いながらヒモがバンドの演奏を楽しんでいた事は紛れもない事実だった。

もう一度バンドでの演奏がしたいか? と聞かれれば──したくない事はない、というのが本心だ。

 

「(そっか。良かった)」

 

衝立越しではあるが、虹夏はヒモの意思が変わった事をはっきりと感じられた。その事に虹夏の頬は緩む。元々虹夏はヒモと同じバンドを組みたかった。しかし今の話を聞くにどうやらヒモは──他のバンドとも繋がりがあるらしい。

 

「(取られたくない! ──逃してなるものか)」

 

今ならヒモが「結束バンド」に入ってくれる事に──何の疑いもない。彼の楽器はまだ他のバンドメンバーと被りもしていないから。

それに虹夏以外のメンバーともヒモの関係は良好だ。約一名、ヒモから出禁を喰らった人物はいるが──虹夏の手にかかれば容易だろう。虹夏がリョウに甘いのと同様に──何だかんだ言ってリョウも虹夏に甘いのだから。

 

「(むしろヒモ君加入は「出禁撤回のチャンス!?」って喜びそうだしねリョウは......)」

 

既にヒモは「結束バンド」のグループラインの一員だ。ネット会員が一般会員になる程度の難易度でしかない。

 

虹夏は深呼吸を一度し、一世一代の告白の準備をする。

 

「ヒモ君さ、よかったら──」

「あ、虹夏。先に入ってたんだね」

 

「リョウ!?」

 

ヒモへの告白を遮ってやってきたのは──リョウだった。

 

「ぼっちから聞いた。いくらぼっちと自分に格差があったとしても──」

「あああああああああああ!!」

 

「......なに?」

 

開口一番、リョウの言葉を虹夏は大音量の奇声で掻き消した。リョウからしてみれば女同士の友人ならいつも通りの言葉。別に変な事は言っていない。

 

「(え、虹夏って胸の話題出されるのそんなに嫌なの? ......そんなに自信ないの?)」

 

ドン引きする者とされる者の立場が今回は逆転した。

 

「そういえば私が来る前、何か話してたようだけど──誰かいるの?」

 

「い、いや?? ただ景色が凄いからさ! ちょっと一人言言ってたーみたいな?」

 

「確かに。凄くいい景色だね」

 

何とか話の腰を折る事に成功した虹夏。彼女の本心は無論──

 

「(何言ってるのリョウ!! その話題は今だけはNO!)」

 

ひとりとの胸部の差に絶望して彼女を置いて一人浴場にやってきたなど、衝立の先にいるであろうヒモには絶対に聞かれたくない。乙女の沽券にも関わってくる。

衝立の先にヒモがいると分かれば──リョウなら言ってもおかしくないと思い虹夏は誤魔化した。

 

「あ、ぼっちと郁代来た」

 

虹夏がリョウとの頭脳戦(一方通行)の次の手を考えている間に扉が再度開かれ──ついに「結束バンド」プラス新規加入(するかもしれない)メンバーが揃った。ひとりの隣に立つ郁代が死んだ目をしている理由について──同じ目に遭った虹夏は即座に悟った。

 

 

 

 

「そういえばリョウさ、あれだけお腹いっぱいって言ってたけど、よく30分も経たずに復活したよね。......もう大丈夫なの?」

 

「満腹に喘いでいる間、私はある重大な事実に気づいた。ヒモの家が出禁になった以上、私はこれから草を食べて生活していかなきゃいけない」

 

「リョウの自業自得だけどね」

 

「そう考えるともっと食べなきゃいけない。あれだけのおかわりじゃ足りない。食い溜めしないといけないと思った。──別腹ってやつ」

 

「えぇ......」

 

別腹、という現象は単なる迷信ではなく列記とした科学的根拠が存在する。甘いもの等食べたくなる物を目にした時、胃の活動がより積極的になり消化活動を促進させ、無理矢理にでも新たに入るスペースを胃に空ける。

大食いキャラではないリョウにとっての別腹刺激は──甘い物ではなく金銭的な恐怖だった。

 

「でもさ、今更別腹空けても仕方なくない? もう夕食の時間は終わってるんだし」

 

別腹とは単に胃の中に空白(スペース)を空ける行為であって、その隙間に入れる食べ物がなければ──ただ空腹感を覚えるだけの行為だ。それは敢えて自分自身に全く意味のない飢餓感を与えるだけの──何の意味もない無価値な愚行でしかない。

 

「大丈夫。既に調理場の場所は押さえた」

 

「......どゆ事?」

 

「ヒモのおばあさんのご飯、凄く美味しかった。まだ調理場に残りがあるかもしれない。それを頂く」

 

「頂くって......それもう泥棒じゃん! 食い物泥棒! 見つかったらどうするの!? せっかく「結束バンド」に良い印象持ってもらえたのに全部台無しだよ!」

 

そうなればきっと、ヒモのバンド加入どころの話ではなくなるだろう。

 

「ヒモのおばあさん達は多分大丈夫」

 

「......何の根拠があって言ってるのよ......」

 

「ヒモのおばあさん達は私達のファン。一度ファンになったら大抵の事は見逃してくれる」

 

「............」

 

あまりの発言に、つい虹夏は咄嗟の反論をする事ができなかった。リョウは更に続ける。

 

「問題はヒモ。ヒモは厳しいから。特に私に」

 

「それはあんたの自業自得だと思う」

 

「......この企みがバレたら、多分私はもう二度と出禁を解かれない」

 

「(もうバレてるんだけどね......)」

 

虹夏の意識は衝立の向こう。

特にリョウが小声で話していたという事でもないからきっと彼女の奇天烈(トンデモ)発言も衝立の向こうにまで届いているだろう。それもこれも虹夏がヒモの存在をリョウに伝えなかった事にある。自らの胸部の小ささという、客観的に見ればそこまで重要ではない秘密によって、親友と少し気になっている男の子との関係が決定的になってしまった事について虹夏は......

 

「(まあ、リョウの自業自得だからしょうがないよね)」

 

全く気にしていなかった! 

 

 

 

 

「そういえば虹夏と、あと郁代がダメージ受けてたみたいだけど──ぼっちっていい身体してるよね。MVとかぼっちを前面に押し出して──」

 

「えっ......」

「リョ、リョウ先輩!?」

 

両目が銭の形になっているリョウに対してひとりは本気で身の危険を感じ、両腕で胸を隠しながらリョウから離れていき、郁代は「ち、違いますよ......」と、説得力のない否定をし始めた。そして先ほどから必死で話題を逸らそうとしていた虹夏は......

 

「(リョウのばかぁぁぁぁぁぁ!!)」

 

過去一の眼力でリョウを睨んでいた。それは思わずリョウもたじろぐほどのもので──

 

「(虹夏ってそんなに自信なかったんだね。星歌さんもそんなに大きくないけど──強く生きてね。大丈夫。私は虹夏よりも豊かだけど虹夏の味方だから)」

 

なぜかリョウは虹夏に同情し始めた。

 

「リョ、リョウさん! その......向こうに誰がいるかもしれないじゃないですか!」

 

ひとりが敷居の奥、つまるところ男湯を指差しながらそう言った瞬間──虹夏のドリトスがピクッと反応した。

 

「大丈夫。私がそんな事も確かめずに男がいる前でぼっちを辱めるような性悪女に見える?」

 

「見えると思うよ」

 

「............」

 

リョウはドヤ顔でひとりに対してそう言ったが......虹夏の即答とひとりがリョウから目を逸らした事で状況はお察しの通りとなった。

 

「うっ、そんな目で見ないでよ......。今までと違ってちゃんと確かめたんだからさぁ」

 

「リョ、リョウ先輩もこう言ってますし......後藤さんも伊地知先輩も話を聞くくらいは......」

 

「いくよぉ」

 

リョウの言葉もあながち嘘ではない。まあ虹夏の記憶では衝立の向こうには男子がいるのだが。

 

「ヒモが言ってたんだ。今日のお客さんは色々あったらしくてほとんどが日帰りのお客さんなんだって。だからもう温泉に入って帰ったって。

あ、でもヒモならもしかしたらいるかも」

 

「ヒ、ヒモさんが!?」

 

確かにこういう会話は見知らぬおじさんに聞かれるよりも知り合いに聞かれた方がダメージが大きいものだ。尤も、羞恥の価値観がバグっているひとりはこの限りではないだろうが。

 

「ヒモ先輩ー! いますかー?」

 

「いないみたいだね」

 

「ですねー! ヒモ先輩なら居留守なんてしないでしょうし!」

 

郁代が衝立の向こうに呼びかけてみたか──何の返事もなかった。ヒモに対する「結束バンド」の信頼は高い。彼が居留守をする訳がないという信頼からひとりはホッと息をし、リョウはドヤ顔をしながらサムズアップをした。そんな中──

 

「(へー。ヒモ君そうするんだねー)」

 

ヒモが衝立の奥にいた事を知っていた虹夏の内心は恐ろしく冷めていた。

 

「(ヒモ君も男の子だもんねー? やっぱりぼっちちゃんのおっぱいは気になるんだ。大きいもんね。ヒモ君、大きい方が好きなんだね? 

私、さっきヒモ君と話したよね? 隠しても意味がない事分かってるよね? そんな事にも気づかないほどIQ下がったの? それだけぼっちちゃんのおっぱいに夢中になってるの??)」

 

やや自分のコンプレックスを交えた私怨こそ含まれているが、珍しく虹夏のヒモに対する評価は下がっていた。

 

「そういえばヒモの事だけどさ」

 

「(あ、ヒモ君の話題に進むんだ)」

 

衝立の向こうにヒモがいる事など想像だにしていない3人は何の違和感も持たずにヒモの話をし始める。

 

「今日のヒモの演奏、ちょっと変だったよね」

 

「そう......ですね。私、ボーカルだから一番前で、演奏が終わった後後ろを振り向くのがその......少し怖かったです」

 

「ヒモ、前のライブの時の方が指動いてた。もしかして前のはマグレ?」

 

「そんな事ないです! ヒモ先輩は凄く上手いんです! 世界で一番心に響く演奏をするんです!」

 

「......あれ、郁代ってヒモの演奏聞いた事あったっけ? 前回のライブいなかったけど」

 

「うぐっ......」

 

二重の意味で特に理由のない言葉の暴力が郁代を襲う。リョウに加害の意思はなかったが。

 

「あ、あの! 多分ですけどヒモさんは私と同じ......」

 

次の言葉が見つからずに唸っていた郁代を救ったのはひとりだった。が、そんなひとりも途中で言葉を詰まらせてしまう。「私と同じ他人と合わせる演奏が苦手なソリストで......」と言おうとしたが、ひとりは虹夏以外のバンドメンバーに自身が「ギターヒーロー」である事を明かしていない。

 

「に、虹夏ちゃん......」

 

自然と助け舟を虹夏に求める。その救援要請にしたがって虹夏は彼女の補足説明をする。こうして助け舟の三角貿易が行われた。

 

 

 

 

「そういえばヒモの演奏、あの鍵盤のタッチの仕方。私、どこかで聞いた事がある」

 

「そ、それ私もです。初めてヒモさんの演奏を聞いた時、なぜか妙に聞き覚えがあって......」

 

「ヴェッ......!! そ、そんな事は......。リョ、リョウ先輩と後藤さんの勘違いでは......?」

 

リョウとひとりは流石バンドマンと言うべきか、ヒモの演奏をこれまで数回聞いてきて、どことなく既視感を覚えていた。その発言によって郁代は顔を青くする。彼女達のやり取りを見ながら虹夏は──

 

「(それ、私も思っていたんだよね)」

 

と2人と同じ事を考えていた。

虹夏もある時からヒモの演奏に既視感を抱いていた。まともに彼が弾いているところを見た事が無かったが、それでもなぜか彼がピアノが上手だという固定概念(イメージ)を持っていた。だからこそ彼をいきなりライブに加えたのだ。──その結果がアレだったのだが。

 

「ねえお姉ちゃん。ヒモ君の演奏、どこかで聞いた事ない?」

 

一度、虹夏は姉の星歌にこう尋ねた事がある。

 

「(確か......私達の、喜多ちゃんが加わって最初のライブが終わった後くらいだったよね......?)」

 

が、返ってきた答えは期待したようなものとは違った。

 

「えっ!? あ、あぁまぁ......あいつの姉の明海のライブにたまに出てたからな。聞いた事はあったぞ?」

 

自然な回答だった。STARRYで行われていたのなら、客席にいずとも虹夏が聞き覚えがあるのは自然な成り行きだ。虹夏はあの時、一度自分の中の疑問に解を出した。

が、STARRYに最近加わったひとりも同じ既視感を感じており、あれだけ郁代が動揺している。

 

「(何かあるんだ)」

 

虹夏は、郁代とヒモの間に何か共通の秘密があると睨んでいた。特に根拠はなかったが虹夏はその秘密はこの事なんじゃないか? と直感で引き当てていた。

 

「(それに今思えば......)」

 

虹夏が星歌に丸め込まれた(と予想)あの時、星歌の後ろにいたPAは何か微笑んでいるようにも見えた。

 

「(何かある......何かあるんだ!)」

 

虹夏は、ヒモが自分に対して何か秘しているのだと結論つけた。そしてそれは......

 

「(お姉ちゃん......どうして......)」

 

最愛の姉の裏切りも同時に露見するという最悪な形で。

 

「──じか」

「──ち先輩!」

「──かちゃん?」

 

「(喜多ちゃんには話してた秘密も私には話してくれないんだね......)」

 

虹夏は内心感じたショックで溜息をつくが、思考はひとまず終了する。内面での集中が終われば──新たに聞こえてくるものがある。

 

「虹夏」

「伊地知先輩!」

「虹夏ちゃん?」

 

「うわっ、びっくりしたぁ」

 

「さっきから呼んでましたけど、何か考え事でもしてましたか?」

 

「い、いや? 何でもないよ?」

 

虹夏が顔を上げると、3人が彼女に呼びかけていた。先ほどまで集中していたからだろうか、虹夏は自分の思考を一通り終わらせるまで気づく事ができなかった。そして、郁代に何かあったのか聞かれて──つい反射的に目を逸らしてしまった。

 

「次、虹夏の番」

 

「え? 私の番?」

 

「もう3人とも言ったから。......もしかして聞いてなかったの?」

 

「え、えっと......ごめん。何の質問?」

 

「ヒモの事をどう思ってるか」

 

「......え?」

「(えええええええええっっ!?!?)」

 

虹夏にとっては何の脈絡なくそう言われたものだからつい驚いてしまう。もし飲み物を口にしていれば吹き出してしまうほどには。

 

「(こ、恋バナか......。リョウが恋バナなんてちょっと意外だな......。個人的には喜多ちゃんの意見が気になるところだけど......でも、私が言わないと喜多ちゃんも後で教えてくれないよね?)」

 

正直まだ自分の中でも整理しきれていない。でも虹夏は「結束バンド」のメンバーを信じている。誰も茶化したりしないと分かっている。だから信頼して、自分の気持ちを素直に吐き出す事に抵抗はない。......この時、虹夏の脳内には衝立の奥に誰がいるのかという認識がこぼれ落ちていた。

 

「......正直、まだ自分でもハッキリしてないんだよね。

最初に会ったきっかけは、皆と同じでライブの欠員としてお姉ちゃんが連れてきた形で......。

「結束バンド」としての最初のライブ。最初にヒモ君に「ぼっちちゃんの演奏に合わせて」って言われた時は「何で私達のライブなのに??」って思った。でもヒモ君もぼっちちゃんもいきなりだったのに参加してくれたから申し訳なさもあって、そんな中で始まったよね。

でも......あの時のライブ、すっごく楽しかった。序盤はぼっちちゃんに合わせてたけど中盤以降でズレ始めて「もうダメだ〜!」って思ってたら次の瞬間、よく分からない事になってるの。今にして思えばあれ、全然バンドのライブじゃなかったけど──それでもすっごく楽しかった。だからね? 私、ヒモ君ともう一度ライブをしたいなってずっと思ってたの。

 

そうこう思ってたけどあのライブの後に話す機会はあんまりなくて、って思ったらなぜかリョウと仲良くなってるでしょ? 私ビックリして、ちょっとした対抗心からヒモ君と仲良くなろう! って思ったんだ。

 

私、ライブの時の「ぼっちちゃんに合わせて」のイメージだったからさ、最初はちょっと自分勝手な人なのかな? って思ってたんだ。でも話していく中でヒモ君が結構優しくて、でも調子乗ったリョウには厳しくて、今日だってドラムが持ち運びできないっていう事にもちゃんと気を配ってくれて......私、初めてだからさ。まだ分からないんだけど......もしかしたらヒモ君の事......

 

好き......かもしれない......」

 

「「「............」」」

 

虹夏の告白に対して3人の反応は──沈黙だった。

 

「ちょ、ちょっと何か言ってよぉ! 恥ずかしいじゃん!」

 

「えっと......その......」

「い、伊地知先輩......」

 

ひとりと郁代は、虹夏に対して「あ、ヤベェ......」みたいな顔を浮かべていた。(郁代はそれに加えて「伊地知先輩がライバル......!?」とも思っていたが)

 

「虹夏。落ち着いて聞いて」

 

「......なに?」

 

そんな中でも2人より動じなかった(否、虹夏との時間が最も長いからこそ内心では1番動じているのだが)リョウが真剣な眼差しを虹夏に向ける。

 

「......私達がさっきから話してたの──「ヒモの演奏をどう思うか」なんだけど......」

 

「......え?」

 

「......だから、ヒモの事をどう思うかっていう恋バナ的な話じゃなくて、ヒモの演奏をどう思うかっていう音楽的な話をさっきからしてた」

 

「......う、そ......」

 

勘違いで自滅した虹夏は茹でタコのように赤くなってしまう。それが温泉の温度によるものでない事は明らかだ。

 

「で、でも伊地知先輩、まだ「そう思う」って段階ですもんね!」

 

「そ、そうだよ! まだ可能性の話だから!」

 

流石に不憫に思ったのか、郁代が虹夏のフォローに回る。助け舟の三角貿易、一周する。

 

「ヒモ先輩に聞かれなきゃセーフです! 私達は絶対に話しませんから!」

 

「」

 

だがその三角貿易の助け舟には──爆薬が積まれていた。

 

「あああああああああああああああああ!!!!」

 

「い、伊地知先輩!?」

「虹夏!?」

「虹夏ちゃん!?」

 

虹夏は失念していた。壁の向こうに誰がいるのかという認識を。そして言ってしまった。絶対に聞かれてはいけない人の前で、絶対に聞かれてはいけない言葉を。人はこれを──公開告白という。

しかも虹夏にとっては初めての恋に告白。もっと準備を重ねた上で、せめてこの気持ちが本物だと気づいた上でしたかった。人はこれを──後悔告白と言う。

 

「大丈夫。私、山田リョウは伊地知虹夏を応援しています」

「私は......ちょっと複雑ですけど。──後で少しお話しませんか?」

「バンド内恋愛......これがリア充......」

 

虹夏と3人のテンションがやや異なるかもしれないが──これは衝立の向こうにヒモがいるかどうかの認識の有無によるものだろう。現にリョウは幼馴染の初恋をどう揶揄おうかという企みまで始めている。女同士の恋バナだと思っているため通常なら何の問題もないかもしれないが──いかんせん状況が悪すぎる。

もし虹夏がもっと早い段階で、自分の胸を犠牲にして衝立の向こうにヒモがいる事を明かしていれば──ひとりや郁代当たりが話の途中で止めてくれていたかもしれない。

「自業自得」という言葉が虹夏の脳内に過っていた。

 

──────

「じゃ、私は調理場に行ってくるね」

 

「......リョウさん逃げた」

「......逃げましたね」

 

4人は温泉から出て、脱衣所で浴衣に着替えていたのだが──やはり虹夏のテンションの低さは微妙な雰囲気を作り出しており、入浴でお腹も空いたリョウは一目散に逃げ出した。

いつもならそんなリョウに対して虹夏が軽口を叩くところだが──

 

「............」

 

どうやらそんな余裕もないらしい。

 

「い、伊地知先輩? さっきも言いましたけど私達、絶対に話したりしな──」

「うわあああああ!!」

 

「......リョウ先輩!?」

 

郁代の声を遮り、「結束バンド」の耳に届いたのはリョウの聞いた事もないような悲鳴だった。鬱々としていた虹夏も流石に心配だったようで3人は急いで浴衣の帯を結び、悲鳴が聞こえた方へと走り出した。

 

「ふっふっふ。僕が企みに気づかないとでも思ったか」

 

「なぜだ......」

 

声の主は、脱衣所の近くの調理場からだった。3人がそこに到着した時には奇妙な光景が広がっていた。

 

「......ナニコレ」

「粘着テープに拘束される先輩、素敵です!」

 

3人が見た光景は──手足を粘着テープで拘束され身動きができないリョウの姿と、それを見下ろす形で仁王立ちするヒモの姿。

 

すでにヒモの髪の毛は乾いていた。

 

「おい、何か申し開きはあるか山田リョウ容疑者」

 

「......ありません」

 

リョウを相手にする時のヒモには甘さがない。ヒモは、きくりが見ればトラウマで卒倒するであろう怖い笑みを浮かべ、冷たい眼差しと言葉で眼下に正座するリョウを見下ろしていた。

 

「一体なぜだ.....。私の企みは完璧だったはずだ......!」

 

「(リョウさんの企み、そんなに完璧だったかな?)」

 

「なぜかだって? お前の計画は全部筒抜けだったからだ。虹夏、ネタバラシしてあげて」

 

「うぇ!?」

 

「......虹夏?」

 

ノリノリでバトンを虹夏に渡そうとしたヒモだったが、虹夏に顔を逸らされてしまう。そして彼女だけでなく他のメンバーからも非難の視線を向けられた。

 

「え.....何これ......」

 

さっきまでリョウを責めていたヒモだったが立場は一転。しかもリョウを責めている時とは比べ物にならないほどの熱量で責める視線を向けられた。

 

「ヒモさん、あそこにいたんですね」

「ヒモ先輩。私、ちゃんと聞きましたよね? 何で言ってくれなかったんですか?」

 

ひとりと郁代はヒモを非難しながら、かつ虹夏を背に守るように布陣していた。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ! 一体何の事!?」

 

「もうネタは上がってるヒモ。ぼっちのおっぱいが大きいって話、衝立に耳を押し付けて聞いてたんでしょ。......ヒモのエッチ」

 

「」

「......え?」

 

リョウがニヤリと笑いながらヒモに向かってそう言い──ひとりは気絶した。ヒモへのおしおきが今始ま──

 

「ちょ、ちょっと待ってよ! さっきから何の話してるの!? ぼっちさんのおっ......とかさ」

 

「」

 

「ヒモ。何ぼっちの死体蹴りしてるの?」

 

「だから! それだって全部初耳だって! 喜多さんが僕を呼んだ? 全然聞いてないんだけど! もしかしてそれってさ、山田が調理場に行く云々の話の後? なら知らないよ! すぐにお風呂出て行ったんだからさ!」

 

「......それ、本当?」

 

「うわっビックリした。......虹夏、だよね?」

 

「ぼっちちゃんの話とか、その後の......その後とか、本当に聞いてないんだよね?」

 

これまで全く参加してこなかった虹夏がヌウッと、前髪で顔が隠れてゾンビみたいになっていたが──これに足を取られれば大変な事になると本能的に理解したヒモは努めて冷静に対処した。

 

「そうだよ。その後、がどんな話なのかは分からないけど、少なくともぼっちさんの話と、それ以降は何も聞いてないよ」

 

「......証拠は?」

 

「これ見てよ。この罠。僕が山田の企みを知ってから急いで準備して、ようやく付けられるくらいでしょ?」

 

「たし......かに......」

 

山田リョウがかかった粘着テープの罠は、床だけでなく壁、天井に至るまでのありとあらゆる場所に仕掛けられていた。そこには設置者の、食事泥棒を絶対に許さないという、強い意志が感じられた。確かにこれだけの罠を5分10分で設置するのは物理的に不可能だ。

 

「じゃ、本当に何も聞いてないんだね!?」

 

「だから最初からそう言ってるでしょ?」

 

「うっ......疑ってごめんねヒモ君」

「わ、私も。すみませんヒモ先輩、つい疑ってしまって......」

 

ヒモの冤罪が発覚し、さっきまでヒモを犯人だと決めつけてしまっていた虹夏と郁代は頭を下げる。──ひとりは既に倒れており、言い方を変えればこの中で一番頭を下げていた。そしてリョウは──

 

「良かったねヒモ。これで全部解決。じゃあ皆解散しよっか」

「おい」

 

踵を返して客室に帰ろうとしたところ、左肩をヒモに掴まれる。

 

「なに終わったみたいな雰囲気出してんだ? お前の窃盗未遂はまだ何の解決もしてねぇだろうが。それに......今回の騒動だってお前が最初に煽ったからこんな事になったんだろうが。なあ山田......座れよ」

 

「フッ、しょうがないな」

 

分かったよと、なぜかドヤ顔をしながら正座するリョウに向けて──

 

「ウッ......。すみません......グスッ」

 

雷が落とされた。




回答フォームはアンケートのところに設置してあると思いますが、文字数の関係上、質問文は活動報告に載せてあります→(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=303232&uid=385679

以下抜粋

Q, 書き直してもいいですか?また書き直して良ければどういう方法で行うべきなのかも教えて下さい。

1, 書き直してもいいよ!前書き等で事情を説明して「書き直しました」って表記するならこの作品を修正して上書きしてもいいよ!

2, 書き直してもいいよ!ただ、未熟の未熟とはいえ一度投稿した物を大幅に変更するのはどうかと思うから新しく新規小説を作って作品名に「改訂版」とか書くなりして、つまるところリメイク作品みたいにするならやってもいいよ!

3, そういうのは曲がりなりにも完結まで走り切った作者が言うセリフだ。貴様のような完結というゴールテープを切る事もなく右往左往する人間には百年早いわ!

4, 興味ないorどうでもいいor作者に任せる

5, 結果閲覧用(解答しないとどこに何票入ったかわっかんないから)

6, その他(活動報告のコメント欄に書いてね!)

回答、よろしくお願いします〜

生存報告を兼ねたアンケート(文字数の関係から詳細は活動報告を見てね!)

  • 上書き更新してもいいよ!
  • リメイク更新ならいいよ!
  • 百年早いわこの未熟者!
  • 興味ないorどうでもいいor作者に任せる
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