真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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物語を書く励みになっております。

加えてアンケートも投票ありがとうございます。確認させて頂き情報は作中で明かしていく形にしますがこれ補足いるなとこちらで判断した場合は多少補足を追加していく形にしようと思います。




第10話

 

「はぁッ!」

 

「ふッ!」

 

 俺とガレスはそれぞれ眼前へと迫ってきたガーディアンに向けてすれ違い様に剣を振るう。剣が鎧へと衝突してギィンという甲高い音を響かせるが、まるで手応えを感じられなかった。

 

「ッ!?」

 

「これは硬いなッ!」

 

 俺たちが振り返ると同時に相手もこちらへと向き直ったので今しがた斬ったであろう鎧の部分へと視線を向けるが、胸元に一本線が入ってるだけでまるでダメージを受けている様子が無い。

 

 もしかしなくてもヤバいのでは?

 

「うおッ!?」

 

「ロークッ!くッ!?」

 

 そんな焦りを覚えている内にガーディアンが再び突っ込んできてハルバードを横薙ぎに振るってくる。咄嗟に剣を盾にして攻撃を防ぐが勢いまでは殺し切れず、ハルバードに押し出されるような形で壁へと吹っ飛ばされる。クソ痛いがとりあえず壁画の方にぶつからなかったのは不幸中の幸いか。

 

 ガレスは吹っ飛ばされた俺の姿を見て援護に回ろうとするがすぐに襲ってきたガーディアンの攻撃を防ぐので手一杯になる。

 

 ならばガレスの精霊ならばどうかと視線をベオウルフの方へと向けるとベオウルフも数体のガーディアンを相手に立ち回っており、危なげこそ無いがこちらを援護する余裕も無さそうだった。

 ちなみに俺の風精霊は既にやられたらしい。いつの間にか簡易契約が切れている上に気配も感じられない。普通にガーディアンに倒されて《元霊界》へ送還されたと考えるのが妥当だろう。

 

「やべぇな」

 

 撹乱役が消えたことで俺に意識を向けたガーディアン二体がハルバードを構えて俺へと突っ込んでくる。一体目の大振りの一撃を右に跳躍して躱すと二体目が示し合わせたように俺の脳天をかち割るべくハルバードを振り下ろしてくる。

 

「ッ!!」

 

 まともに受けたら腕が千切れると判断した俺は迫ってくるハルバードの柄部分の側面にタイミングを合わせて剣を振るうことで軌道を逸らす。軌道が逸れて真横の地面に直撃したハルバートの斧刃は見事に轟音を響かせながら地面を粉砕した。

 

 おいおい、こらこら。

 

「ガーディアンが遺跡ぶっ壊してんじゃねぇッ!」

 

 ツッコミを入れながら霊力を全身と剣へと送り込むと柄を強く握り、先程よりも力を込めた斬撃を横っ腹へとお見舞いする。

 

「ッ!?」

 

 反応が遅れて刃をまともに受けたガーディアンは身体をくの字に曲げながら勢いよく出入り口の方向へと転がっていく。

 

「ちッ」

 

 納得のいかない結果に思わず舌打ちをする。ぶった斬るつもりで放った一撃だったが鎧を砕くことしかできなかった。まだ威力が足りないらしい。

 

「苦戦してるね、ローク」

 

「うるせぇ、お前も人のこと言えないだろ」

 

「グルルッ!」

 

 自らの不甲斐なさを嘆いているとガーディアンにぶっ飛ばされたらしいガレスが地面に剣を刺して勢いを殺して隣に並ぶ。更に奥で戦っていたベオウルフも主人の危機に壁を駆けてガーディアンたちを避けながら俺たちの前に立った。

 

 その灰色の巨体は大きな傷こそ負っていないが所々に裂傷を負っており流石に数体のガーディアン相手はキツかったらしい。いや寧ろ種族だけで言えば格上の相手なので裂傷を負うだけで済んでるのはだいぶおかしいのだが…。というかよく見れば奥に二体ほど氷漬けになって転がってるガーディアンがいるし、間違いなく俺よりもめっちゃ役に立っている。

 

 流石はガレスの契約精霊といったところだろうか。

 

「さて、どうしようか。このままだとジリ貧だけど」

 

「だな、ましてや建物を気にしてたらキリないな」

 

 前方に立ち並ぶガーディアンたちを見つめながら呟く。

 出来るだけ遺跡を破壊しないように立ち回りたかったがこのまま戦うとまず間違いなくやられる。つーかこっちが気にして戦ってるのに相手が気にしないってどういう事だ?侵入者の撃滅に振り切り過ぎだろ。

 

「カッコよく啖呵を切った手前、このまま撤退はしたくないね」

 

「だな、せめて戦闘不能状態に追い込みたいな」

 

 思わず顔を顰める俺の横で苦笑しながらガレスが呟く。カッコ悪いのは勿論だがコイツらがどこまで追っかけてくるかも分からない。できるだけ動けない状態にしないと後々に面倒なことになるだろう。

 

 …………これはやむを得ないか。

 

 

 

 

「業火の剣」

 

 ふわりと俺の側に浮いていた火の微精霊が俺の剣精霊へと宿りその刀身を赤く燃え上がらせる。同時に凄まじい霊力が剣精霊から放たれ、その霊圧の強さにガーディアンたちが数歩後方へと後ずさった。

 

「温存するんじゃなかったのかい?」

 

「このまま斬り合っても倒せなそうだしな」

 

 行ったのは微精霊による剣精霊への属性エンチャント技だが、正直初手からあまりこれを使いたくは無かった。この技は微精霊を通じて火属性の霊力を剣精霊へと流し込むだけの一般的な属性付与技なのだが一つだけ問題があった。

 

 業火の剣は高位精霊にも通用する火力を出すために剣精霊が耐えられるギリギリまで膨大な霊力を流し込むのだが、一度使うと微精霊の方が霊力に耐え切れずに元霊界へと消え去ってしまうのだ。無論、契約は切れるし再契約もできない。補充が利かないこの場では正直使いたくない手だ。

 

「相変わらず化物じみた霊力量だな」

 

「これが唯一の取り柄だからな。それより試してみるから援護頼んだぞ」

 

「やれやれ」

 

 呆れた様子のガレスに俺は笑いながら言うと剣を構えて一気に駆け出す。赤い軌跡を描きながら迫ってくる俺を前に本能的に恐怖を感じたのか、後退しようとしたガーディアンたちはけれど身体が動かせず、その場で体勢を崩した。

 

 

「ッ!?」

 

「騎士たる者が逃げるものじゃないよ」

 

 動きを止めたガーディアンたちが足元を見れば自らの足が氷によって地面と接着させられていた。流石はガレス、ナイス援護だ。

 

「油断大敵だな」

 

「ッ!!」

 

 俺は動揺した様子で足元の氷を砕こうとするガーディアンの懐へと潜り込むと剣を素早く逆袈裟に斬り上げる。動揺しながらも咄嗟に反応したガーディアンがハルバードの柄を盾にする形で斬撃を受けようとするがそれは悪手だった。業火の刃は僅かな抵抗もさせず柄を焼き裂くとそのままガーディアンの胴体ごと真っ二つにした。

 

「まずは一体」

 

 粒子となって元霊界に消えていくガーディアンを見送ることなく俺は跳躍すると宙に炎の円を描きながら仲間がやられたことに動揺して無防備なガーディアンの頭上へと跳躍して脳天から縦一閃、二体目も斬り裂く。

 

「ッ!!」

 

 瞬く間に二体の仲間を討たれたことに地上にいたガーディアンたちが翼をはためかせて宙へと逃走を図った。 

 

「逃すか」

 

 氷を砕くのに手間取って僅かに逃げ遅れた個体に対して大振りに剣を振るい、炎を纏った斬撃を飛ばす。狙いは僅かに逸れたがそれでも斬撃は翼を切り落とし、片翼を失ったガーディアンは地面へと落ちていく。

 

 空かさず追い討ちを掛けようと思ったが背後から膨れ上がった霊力を感じ取って動きを止める。瞬間、俺の真横を一条の紫電が通り過ぎた。

 

「魔剣グラム、限定開放」

 

 魔剣の力を解放したガレスはその刀身から凄まじい紫電を纏う魔剣を構えながらそのままガーディアンの着地のタイミングを狙って横一閃、雷鳴を鳴り響かせながら胴体を斬り裂いた。

 

「君だけに格好付けさせる訳にもいかないからね」

 

「流石」

 

 ガレスの一撃に俺は感嘆の声を漏らしながら迫ってきたガーディアンの一撃を跳躍して躱す。魔剣の力は勿論のこと素早く正確な斬撃は綺麗にガーディアンの身体を上下真っ二つに斬り裂いてる。流石は俺の剣の師、かっけぇ。

 

「ォォオオッ!」

 

 立て続けに仲間をやられたことに憤ったガーディアンたちが雄叫びを上げながらガレスへと殺到するが忘れてはいけない。

 

 

 精霊師とは契約者と契約精霊、二人で一組なのだ。

 

 

「ガォアアッ!!」

 

 ガーディアンたちの頭上から鋭い爪の生えた前脚を頭部へとぶつけながら地面に押し潰す。更にはダメ押しとばかりに全身から放った冷気によってあっという間に氷漬けにした。

 

「相変わらず、良い契約精霊だなッ!」

 

 その光景を見た俺は顔面目掛けて横振りに迫ってくるハルバードを伏せて躱しながら羨ましさ全開にして叫ぶ。

 

 ガレス同様に上空から突進してきたガーディアンたちによってリンチに合っているが俺はその尽くを捌き切っていた。

 ガーディアンのハルバードを振り回すが速度と威力は高いが一方で技術に関してはだいぶお粗末なものだった。こちとらガレスによって扱かれて技術ステータスを上げているのだ。この程度の力任せの攻撃ならば喰らうことはまず無いだろう。

 

「ォォオオッ!」

 

「っと」

 

 俺は攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えたのか今までより荒く力任せな大振りを剣の腹で軌道を逸らし、背後にいたガーディアンへとぶつける。

 

「ッ!?」

 

「ッ!!」

 

「そら、隙だらけ」

 

 予想外の同士討ちに動揺するガーディアンたちの隙を逃さず俺は剣の柄を両手で持つと身体を捻って一回転させる。円状に炎の軌跡が描かれ、その間にいたガーディアン二体はその身を燃え上がらせながら地面に倒れ伏せた。

 

「流石に疲れるな……」

 

 倒せることには倒せるが一体を倒すのに使う霊力の消耗が激し過ぎる。俺は僅かに顔を歪めながら更に襲ってくるガーディアンたちに対して剣を構えた。

 

 

*****

 

 

 

 

 

「ローク、そろそろ良いんじゃないか?」

 

 戦闘を続けて更に5分ほど経過した辺りで聞こえてきた声に視線を向ければガレスが丁度ガーディアンを斬り伏せたところだった。紫電を身体に走らせるガレスだがその呼吸は荒く、表情にも若干疲れが見えてきた。

 

 確かに時間も稼いだしガーディアンもある程度は倒した。俺たちもそろそろ逃げる頃合いだろう。

 

「そうだな、逃げるか」

 

 呟きながら俺は依代から二体目の微精霊———今度は土属性の微精霊———を呼び出した。

 

「よし、ベオウルフッ!」

 

 俺が頷くのを確認したガレスはベオウルフを呼ぶと軽やかにその背中に乗り、次いでこちらに向かって疾走してくる。俺が右手を差し出せばガレスは笑いながらその手を無視してベオウルフに俺を咥えさせるとそのまま階段へと向かって疾走する。

 

「そのまま登れッ!」

 

「貴様、覚えとけよ」

 

 ベオウルフにブンブン振り回されながらも俺は階段に入る直前に霊壁に手を当てて霊術を発動させる。

 

 土の霊術によって地面が隆起し、今しがた俺たちが入った上へと続く階段への入り口を完全に塞ぐ形となった。とりあえずこれで暫くは追っても来ないだろう。

 

「おいおい、そんなことして良いのか?」

 

「元からこうなってた」

 

「君って奴は……」

 

 俺の言葉にベオウルフの背に乗るガレスが呆れた様子で笑う。いや、そんなことはどうでも良いから降ろしてくれない?

 

 けれど俺の思いはガレスに届くことは無く、ベオウルフは咥えた俺の足を床にぶつけながら先行した者たちに合流するべく駆けるのだった。

 

 

 


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