真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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なんかバグって2話同じ話を連続で投稿してたのでやり直してます。


第116話

「アジ・ダハーカ、アぺプス」

 

『あん?』

 

『…………』

 

「契約よ。私の魔力あげるからアイツらを消して」

 

 ロークの首を掴みながら羽を広げて飛翔したリリスはアジ・ダハーカの側へと移動するとそう言って契約を持ちかける、 

 

『ハッ』

 

 その提案を聞いた瞬間、アジ・ダハーカは口角を上げる。

 

『いいぜ、若輩悪魔。お望み通り、消し飛ばしてやるよ』

 

「契約成立ね」

 

 ふわりとアジ・ダハーカの頭上に舞い上がったリリスはその小さな手を翳す。

 

「禍魂結び」

 

 リリスの呟きと共にアジ・ダハーカの首の額に紫色の紋様が現れ、彼の纏う威圧感が一気に増した。

 

 

『……ッ! クク……クハハハハッ! なかなか良いじゃねぇかッ!』

 

 リリスから与えられた魔力が全身に満ちていく感覚に歓喜の声を上げるアジ・ダハーカは狂笑を漏らす。

 

「当たり前でしょ」

 

『私は降りるぞ』

 

 そんな彼に対してリリスは自分が魔力を与えているのだから当然だとばかりに返す中、アぺプスが静かに告げる。

 

「え、ちょっと何を勝手にッ!?」

 

『既に封印の分の義理は果たした筈だが?』

 

 予想外の発言にホーンテッドが困惑した声を漏らす中、アぺプスはそう自分の主張を告げる。

 

「いやいや、何を勝手なことを」

 

『今のアイツらならそこの三つ首がいれば充分だろう? それに私に弱った相手を甚振る趣味は無い』

 

 既に戦意を喪失しているアぺプスはホーンテッドにそう呟くと、確認をとるようにリリスに視線を向ける。

 

「……邪魔さえしないなら、好きにすればいいわ」

 

「おい、待てリリスッ! 話が———」

 

 興味無さげに返事をするリリスに対してホーンテッドは苦言を呈するが、その時にはアぺプスの姿は地面に広がる闇の中へと姿を沈んでいった。

 

「違うだろ……」

 

 

「貴方が手綱を握れなかったのが悪いんでしょ? そもそもアぺプスは契約無しで御しきれる邪霊じゃないし、それに……」

 

 不満を漏らすホーンテッドに対してリリスはそう言い返しながら冷徹な視線をレイアたちに向ける。

 

「アイツらの始末なんて貴方がいれば問題ない、そうでしょう?」

 

『あぁ、その通りだ! リリス・アレアスッ!!』

 

 リリスの言葉に応じ、アジ・ダハーカは吠えると溢れる魔力を霊力へと変換し、幾つもの霊術を発動させる。

 

 炎、水、土、風、雷、氷、闇、そして光。あらゆる属性で形成された武具が次々にアジ・ダハーカの頭上に展開されていき、やがて雲の如く空を埋め尽くすとその全ての穂先がゼルたちに向けられる。

 

 

『ガキ共を始末するのにあんな駄ヘビなんぞ、必要ねぇさッ!』

 

「これは、マズいな……」

 

 目の前に広がる霊術を前にしてゼルは冷や汗を流しながらこの状況を打開するべく思考を回す。

 

 先程のクロが放った霊術によって学生たちに掛けられた金縛りは解かれているが、それでも依然として動けるような状態じゃない。

 

 つまり、どうにかしてあの霊術を防ぐ必要があるが、武具一つ一つに込められている霊力量からしてまともに正面から受けるのは避けたい。

 

 ———とはいえ回避をすれば自分はともかく学生たちの命はまず無い、やるしか無いだろう。

 

『さぁ、くたばりやがれッ!』

 

 アジ・ダハーカの咆哮と共に待機していた武具の群れが様々な軌道を描きながらゼル達へと向けて放たれた。

 

「オーウェン君ッ!」

 

「勘弁して下さいってッ!」

 

 一歩、前に踏み出したゼルはその両腕に炎を灯すと高速で腕を振るい、迫ってくる武具に向けて炎弾を次々に放っていく。

 

「持ってくれよ……ッ!」

 

 金色の炎と砕けて散っていく武具の破片によって眼前が色鮮やかに煌めく中、オーウェンは残り少ない霊力を振り絞り、学生たちを守るべく結界を展開する。

 

「ぐッ!」

 

 ゼルによって向かってきた武具の大半は撃ち落されているが、それでも残った武具がオーウェンの結界に殺到し、罅割れを生み出していく。

 

「オーウェンさんッ!」

 

「大丈夫ですッ!」

 

 背中越しに聞こえてくる不安の声にオーウェンは返事をしながら霊力を込め、壊れかけた結界を補強していく。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!」

 

「ぜぇ、ぜぇ……」

 

 少しして武具の雨嵐を何とか耐えきったゼルとオーウェンは疲れ切った様子で呼吸を乱しながら地面に膝を突く。

 

『へぇ、まさか今のを凌ぐとはな。思いの外、やるじゃねぇか』

 

 まさか今の霊術を防がれるとは思っていなかったアジ・ダハーカは関心した様子で称賛の声を漏らした。

 

『まぁ、とはいえ随分と消耗したみたいだが、次は捌けるかな?』

 

「ッ!」

 

 その言葉と共に再び無慈悲に展開されていく霊力の武具の数々は先程と同等か、それ以上の規模であり、今の攻防で限界が近いゼルはその顔を歪める。

 

「………腹を括るしかないか」

 

 ゼルは呟きながら覚悟を決めると拳を握り締める。

 残っている全霊力を炎へと変え、拳に込めながらゆっくりと腰を低くして構えを取る。

 

 そんなゼルの様子にオーウェンは焦りながら制止の声を掛ける。

 

「待ってくれ、ゼルさん。この状況で貴方まで動けなくなってしまっては……!」

 

「しかし、あの攻撃は私が全力を出さなければ防ぎ切れない」

 

 オーウェンの発言は正しくはあるが、だからと言ってあの術を防ぐ手段が他に無いのもまた事実だった。

 

 尤もこの攻撃を凌いだところで、次の攻撃は防ぐことができないだろう。

 

 ここで抵抗したところで終わりがほんの少し伸びる程度の差だろうが、だからと言って何もしなければ全滅は必定だ。

 

『ハッ! また正面から受けるつもりかッ!?』

 

 対するアジ・ダハーカは自身の霊術を再び迎撃せんと霊力を溜めるゼルの姿を視認し、興奮した様子で叫ぶ。

 

 思いの外、骨のある精霊師だ。力を取り戻した自分の力を試す前哨戦にふさわしい相手に相応しい。

 

『面白れぇッ! やれるもんならやってみろッ!』

 

「…………」

 

 ———来る。

 

 宙に浮かぶ武具たちの輝きが増していくのを確認したゼルが覚悟を決め。今出せる全力の霊術を放とうとしたその瞬間だった。

 

『ガァアアアッ!』

 

『あ?』

 

 辺り一帯に響き渡る獣の咆哮。

 出鼻を挫かれたアジ・ダハーカが不愉快げに声を漏らしていると上空に広がる武具が上空から降ってきた光線によって打ち払われていく。

 

『コイツは……』

 

「アジ・ダハーカ」

 

 蒼炎に意識向けるアジ・ダハーカにリリスが声を掛ける。

 その声に反応して前方から迫ってくる無数の砲弾に気付いたアジ・ダハーカは素早く障壁を展開する。

 

『…………』

 

 何故、攻撃に気付くのがこれほど遅れたのか。復活した直後で感覚が鈍っているか。いや、だとしてもここまで反応が遅れることは………。

 

『……なるほど、そういうことか』 

 

 湧き上がる疑問、そして数秒でその答えに辿り着いたアジ・ダハーカは何もない上空に向けて炎の霊術を放つ。

 

「くッ!」

 

 すると何も無い筈の空間に炎弾が直撃し、苦悶の声と共に大気の中に隠されていた存在が顕になる。

 

 視界に現れたのは巨大な船……否、精霊だった。

 

「ゴホッ、流石は伝説。一撃でこれか……ッ!」

 

 頭上に浮かぶ土精霊ドレッドノートの甲板に立つ精霊師、オーフェリア・リングラードは咳き込みながら呟く。

 

「いや、よく耐えてくれた。お陰で反撃することができる」

 

 そう呟きながら一歩前に出てきたのは身の丈程の杖を手に携え、長い髭を生やした壮年の男だった。

 

「カルラ、今度は大きいのを一発かましなさい」

 

『グルルッ!』

 

 男の言葉に応じて金色の翼を持つ鳥種精霊、カルラは翼を羽ばたかせて甲板から上空に飛び立つと巨大な光の柱をアジ・ダハーカに放つ。

 

『ふん』

 

 アジ・ダハーカは煩わしげに頭上に障壁を展開し、迫ってきた光を防御すると反撃として黒く染まった髑髏を模った黒炎がカルラに向かって放つ。

 

『……ッ!!』

 

「穿天刃」

 

 カウンターに対してカルラが回避行動を取る前に甲板上から男が杖を横薙ぎに振るうと光の刃が放たれ、髑髏を真っ二つにして迎撃することに成功する。

 

『ほう?』

 

「あれは……学院長ッ!」

 

 自身の霊術をあっさりと迎撃する男に興味深げな視線を向ける中、精霊と男の姿を視認したガレスが驚きの声を漏らす。

 

「オルフェウスさんか……」

 

「どうやら命拾いしたみたいですね」

 

 迎撃の態勢を解いたゼルのオーウェンは安堵した様子で息を吐きながら地面に膝を突く。

 

「皆、気合いをいれろッ! ロムス王国の精霊師としての誇りを見せよッ!」

 

 オルフェウス・ガンバイル。

 ロークたちが通うユートレア学院の長を務める老練の精霊師の喝に甲板に控えていた教師と王国精霊師たちが精霊を呼び出し、上空からアジ・ダハーカに向かって各々が霊術の雨を降らす。

 

『ハハハッ! なかなか派手だなッ!』

 

 対するアジ・ダハーカも幾つもの法陣を展開すると迫ってくる無数の霊術の属性を即座に判別、その一つ一つに相性の良い属性の霊術をぶつけ、迎撃していく。

 

「くッ!」

 

「怯むな! 撃ち続けろッ!!」

 

 一斉に攻撃を仕掛けているというのにその全てを防がれ、寧ろ押し返されている事実に精霊師たちは恐怖を抱きながらも、霊術を放ち続ける。

 

「……み、ん……な」

 

「………」

 

 周囲で飛び交う霊術の余波から激しい戦闘を感じながらロークが仲間たちの安否を気に掛けるとリリスの目に再び強い負の感情が灯る。

 

「……アジ・ダハーカッ! 遊んでないで早く始末してッ!」

 

『おいおい、折角の戦いだぜ? もっと……』

 

 ヒステリックに叫ぶリリスに対してアジ・ダハーカは霊術を放ち続けながら言葉を返そうとして直後にその目を細める。

 

『ちッ、撃ち漏らした。そっちに突っ込んでくるぞ、構えろ』

 

「何を———ッ!」

 

 アジ・ダハーカの警告に対してリリスが首を傾げた直後、自身に迫ってきた白刃を素早く回避する。

 

「野蛮な奴ね」

 

「そういう貴女は脇が甘いね」

 

 黒い長髪を靡かせながら地面に着地した少女、月影燈はリリスの侮蔑に対してそう言い返すと笑みを浮かべる。

 

「は? 何を……」

 

「先輩は返して貰うよ」

 

 そう得意げに呟く燈の腕にはロークが抱き抱えられていた。

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