真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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第124話

「ローク、何だか機嫌悪い?」

 

「そう見えるか?」

 

「うん」

 

 朝起きた後、嫌な気分を紛らわそうと無理矢理ボランティア活動に参加して倒壊した建物の片付けをしていた俺は一緒に参加していたリリーにそんなことを言われてしまう。

 

「……そうか」

 

 切り替えようとしたつもりだったが、どうやら今朝からずっとリリスのことを引き摺ってしまっているようだ。

 

「ローク、何かあった?」

 

「いや、何でもない」

 

 リリーの問いに反射的にそう答えながら首を横に振る。

 一瞬話そうかとも思ったが、話したところでどうこうできる問題でも無い。リリスとの約束もある以上、リリーを巻き込む訳にはいかない。

 

「ローク」

 

「何でも無い」

 

 こちらをジッと見つめるリリーの頭を撫でながらそう言って作業へ戻ろうとするが、ガシッと腕を掴まれる。

 

「逃がさない」

 

「いやリリー、本当に何でもないから」

 

「嘘」

 

「…………」

 

 秒で看破されたな。いや、分かってはいたことだけど……。

 

「ローク、隠しごとは?」

 

「いや、それは…………」

 

 実家でリリーに隠しごとはしないと話したことを思い返しながらも、今回のことは流石にと俺が口籠ると彼女の目付きが鋭くなった。

 

「ミノタウロス」

 

『ブォッ!』

 

「うおッ!?」

 

 先程まで瓦礫の撤去作業をしていたミノタウロスはリリーの指示に従って俺を背後から拘束した。

 

「連行」

 

『ブォオオッ!』

 

「おい、ちょっと放せッ! つーか、どこに連れて行く気だッ!?」

 

 そう言って俺は暴れながら抵抗も虚しくミノタウロスに拘束されたままリリーに連行されるのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

「何だかまた厄介事を持ってきたと言わんばかりの様子だね」

 

『グルル……』

 

 相棒のベオウルフと共に瓦礫の撤去作業をしていたガレスはやってきた俺達を見るなり、面倒そうな表情でそう呟く。

 

 その隣では瓦礫を咥えているベオウルフが『またお前かよ……』と言わんばかりの視線を向けながら唸り声を漏らしていた。

 

「それで、今回はどんな話なんだい?」

 

「それをこれからロークに聞き出す」

 

「なるほどね。隠しごとをしたのか、ローク?」

 

 リリーの説明にガレスは頷くと見透かすような視線をこちらに向けながらそう尋ねてきた。

 

「…………」

 

「だんまりか、僕にも話せなとなるとなかなかの大事だね」

 

 そこで理解したなら察して助けてくれと視線で訴え掛けるが、ガレスはどこ吹く風と言わんばかりの様子で無視をした。

 

 ……ちくしょうめ。

 

「ちょっと場所を移そうか、恐らく人に聞かれるのはマズそうな内容だろうしね」

 

「おっけー」

 

「待って、俺の意見は?」

 

 俺の言葉を無視してこの場から離れて人気の無い場所に移動すると二人はそれぞれ近くの瓦礫に腰掛けた。

 

「あの俺は……」

 

『シュコー』

 

 そしていつの間に呼び出したのか、リリーの隣に佇んでいた蜃は霧を吐き出すと外部から他人が簡単に入れないように、そして俺が出られないように周囲に結界を展開をしてくれていた。

 

「これで大丈夫。降ろしていいよ、ミノタウロス」

 

『ブォ』

 

「…………」

 

 リリーの指示の下、ミノタウロスはゆっくりと地面に降ろすと俺の背後に控えた。

 

 ……いや、主人の方に行けや。

 

「それじゃ、場も整ったことだし聞かせて貰えるかな? ローク」

 

「断る」

 

 俺が即答でそう言うとガレスはその返答を分かっていた様子でやれやれと首を横に振る。

 

「おやおや、悲しいことを言うなぁ。僕達は親友だろ?」

 

「だからこそ、話せないこともあるだろ」

 

 きっと話せば二人は喜んで協力してくれるだろう。

 けれど、だからこそ話す訳にはいかない。俺の問題で二人の命を危険に晒すことだけは避けなければ……。

 

「……ふむ。ということは相当危ないことをしようとしているみたいだね。それこそ、僕達の命が危ないほどの………」

 

「…………」

 

 探りを入れてくるガレスに俺は無言を突き通す。

 下手に喋るとボロが出てしまう、無言で着き通すしかない。

 

「この状況でロークが一人でやろうとする危険なこと………。邪霊、もしくは家族関係?」

 

「……ッ!」

 

 ガレスの話を聞きながら瞬時に答えを導き出したリリーの発言に俺は声こそ漏らさなかったが、驚きで目を見開いてしまう。

 

「当たりみたい」

 

「……コイツッ!」

 

 その驚きの反応を見逃さなかったリリーが確信を得た様子で頷き、俺は思わず苛立ちながら声を荒げてしまう。

 

 人が必死に隠そうとしていることを何でそう暴こうとするのかなッ!?

 

 趣味が悪いぞ、マジでッ!!

 

「さぁ、段々と君の隠しごとの内容が判明してきたけど、まだ話さないつもりかい?」

 

「最初から話すつもりはないって言ってるだろッ!」

 

「やれやれ、強情だね」

 

 俺の返答に呆れた表情を浮かべながらガレスがそう呟く。

 何というが絶対に話さない。動揺を落ち着けた俺が決意を固めていると「なら仕方ない」とリリーが呟いた。

 

「ロークが話すまでこの結界に閉じ込める」

 

「……へ?」

 

 しれっとリリーが口にした言葉に俺は素っ頓狂な声を漏らしてしまう。

 

 今、なんて言った?

 

「だから、ロークが隠していることを話すまでこの結界を解かない」

 

「……いやいや、何言ってんだリリー?」

 

 なんかリリスみたいなことを語り出したリリーに冗談だろと半笑いで視線を向けた俺は彼女のふざけを感じさせない表情に冷や汗を流す。

 

「……マジで?」

 

「マジで」

 

 コクリと頷くリリー。

 コイツ、ガチだ。ガチで閉じ込めるつもりだ!

 

「ガレスッ!」

 

「僕が餓死する前に話してくれよ」

 

 思わず親友に助けを求めるも当の本人はベオウルフの身体に背を預けてリラックスタイムに入ろうとしていた。

 

 やはりガレスはリリーの味方らしい。

 

「……」

 

 どうする? 

 

 約束が今日の夜である以上、このまま閉じ込められる訳にもいかない。けれど、だからと言って力づくで突破しようとするとリリーと戦うことになりそうだし……。

 

 

「ローク」

 

 俺が内心で頭を抱えながら悩んでいるとリリーが声を掛けてくる。

 

「私達、仲間でしょ?」

 

「……はぁ」

 

 どこか縋るような、寧ろ助けを求めるような視線を向けながら訴えかけてくるリリーに気付けば俺はため息を漏らしていた。

 

「分かった」

 

 結界に閉じ込めるという強硬策に出た癖に結局は頼み込んでくるリリーに何だか気が抜けてしまった。

 

 何よりここまで俺のことを思ってくれているのだ。話さないのはやはり、仲間として失礼だろう。

 

 

「話すよ……いや、聞いてくれるか?」

 

「ッ! うんッ!!」

 

「やれやれ」

 

 明るい表情で頷くリリーと呆れたながらも嬉し気に笑うガレスに苦笑しながら俺は夢の中で起きた出来事をゆっくりと語り始めた。

 

 

 

*****

 

「———という訳なんだけど……」

 

「……」

 

「……」

 

「あの二人とも?」

 

 俺が話し終えても二人とも何も言葉を発さず、辺りは蜃が霧を吐き出す『シュコー』という音だけが虚しく響き渡る。

 

 そのまま暫くの気まずい沈黙が続いた後、ガレスが深く息を吐き出しながらゆっくりと口を開いた。

 

「全く……。どうして君はこう、僕らの手に余るような重たい話を持ってくるだい?」

 

「うんうん」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 

 二人から漏れる呆れと怒りが入り混じった声音に思わず縮こまりながら謝ると再びガレスが深いため息を漏らした。

 

「まぁ、それでもしっかり話したことは褒めてあげよう。どう考えても君だけ決めるべき話じゃない」

 

「許してあげる」

 

「……」

 

 何だか凄く子供扱いされている気がするが、実際に隠そうとしていたので何も言い返すことができない。

 

「けれどこのレベルの話だと、本来ならすぐに学院長やミーシャ様に報告するべき案件だが、そういう話がしたい訳でもないだろう?」

 

「ああ、お前の言う通りだ。俺としてはこのままリリスの提案に応じようと思っているんだけど……」

 

「賛成し難いな」

 

「反対」

 

 案の定と言うべきか、俺の考えに二人は難色を示した。

 

 まぁ、分かり切っていたことではある。

 

「僕はリリスちゃんとの取引は止めた方が良いと思うな。何ならみんなで約束の場所に向かってリリスちゃんを捕まえるべきだと思うけど」

 

「ガレスに賛成」

 

「…………」

 

 ガレスの提案を聞いたリリスはコクコクと首を何度も縦に振るが、俺は素直に頷くことができなかった。

 

「……不満かい?」

 

「いや、そういう訳じゃない……」

 

 不満がある訳では無い。

 

 ガレスの意見は正しいと思うし、そうするべきであることも理解している。

 

 けれど……。

 

「ローク、それなら———」

 

「リリー」

 

 ガレスはリリーの話を遮って止めると再び俺に視線を向ける。

 あくまでこちらの答えを待つガレスに俺は息を吐くと自分の今の素直な思いを吐露した。

 

「リリスが他の奴が来たら殺すって言っていた以上、他の誰かを連れて行けば殺し合いになる。できればそれは避けたいんだ」

 

「僕らでは彼女に勝てないと?」

 

「多分な」

 

 ガレスの問いに俺は正直にそう答えた。

 

「アイツの力は未知数だが、仮にもアジ・ダハーカを使役できる力を持っていること考えると俺達の力は上回っていると考えた方が良いだろう」

 

「確かにその通りだ。けれど、それだけの理由なら今から先生方やミーシャ様に相談すれば良いだけの話の筈だ」

 

「…………」

 

「他に理由は何だ?」

 

 ジッとこちらを見据えるガレスに俺は息を吐き出しながら答えた。

 

「……アイツとお前らが殺し合うようなことは避けたいんだ」

 

「「……ッ!」」

 

 俺のその言葉にガレスとリリーが驚いた様子で目を見開くが、俺は構うことなく話を続けた。

 

「ヤバいところがあるとはいえ仮にも妹だ。傷付けるようなことはしたくないし、アイツにお前らを傷付けるような真似もさせたくない」

 

 頭を撫でた時のリリスの嬉しそうな笑み。アジ・ダハーカを使役して俺の仲間を殺そうと激昂した姿。

 

 子供らしさと悪魔らしさの二側面がずっと俺の脳裏を過り続けており、危険と分かっていながらも非常になり切れない気持ちが俺の中にあった。

 

 そして何より………。

 

『私、大きくなったらお兄ちゃんと結婚するッ!』

 

「………」

 

 今朝から脳裏を過る覚えのない記憶。

 恐らく封印されていた記憶が少しずつ戻ってきているのだろう。

 無邪気な笑みを浮かべながらそんなことを宣う幼いリリスの姿が何度もチラつき、少しずつだがリリスの兄としての実感も湧いてきていた。

 

「争いを避ける為にわざわざ危険な契約を結ぶのか?」

 

「ああ、結ぶよ。そもそも契約に関しては今も不完全ながら結んでいる状態みたいだしな」

 

「確かに言われてみれば彼女の干渉を受けていたね」

 

 クロとの契約の時のことを思い出したのであろうガレスが険しい表情を浮かべながら納得した様子で頷く。

 

「だとしたら尚更、契約には反対だな。不完全な状態であれほどの干渉を受けるんだろ? 完全になったらどうなるか、分かったものじゃないよ」

 

「ああ、分かってる」

 

「いや、分かってない。仮に君が前のように操られたらどうする?」

 

「その為にお前らに話したんだ」

 

 俺のその言葉の意味を理解したガレスは顔を顰めながら「無茶を言う」とため息を漏らした。

 

「あの時ですらオーウェンさんの助けがあってようやく止められたんだぞ」

 

「アレはお前が俺を気遣って魔剣を使わなかったからだ。完全開放すればいけるだろ」

 

 魔剣グラムを完全開放したガレスの戦闘力は裕に俺を越える。

 仮に俺の身体をリリスが操作して戦うにしても問題無く倒せる筈だ。

 

「勘弁してくれ。完全解放のグラムなんて人に振るうもんじゃない。下手をすれば殺し兼ねない威力が出るんだぞ」

 

「止められれば問題無いだろ」

 

「僕に友殺しの汚名を背負えと?」

 

「俺を助けてくれって言ってるんだ」

 

「………」

 

 俺の返事にガレスは一度、天を仰ぐと腕を組んで黙り込むが、今度はリリーが「ダメ!」と珍しく強い口調で反対の言葉を口にした。

 

「絶対に危ない。私は反対」

 

「リリー」

 

「ガレスもちゃんと言って。行くなら絶対にみんなで行くべき」

 

 リリーは沈黙しているガレスにそう言うと改めて俺に向き直った。

 

「私はよく知らないロークの妹よりもロークの方がずっと大事。リリスのことなんて知ったことじゃない」

 

「リリー、そう思ってくれるのは嬉しいけど……」

 

「大切な人をまた失うのはごめん。絶対に反対」

 

「……ッ!」

 

 その言葉に今度は俺が黙り込む番だった。

 幼い頃に家族を失った経験のあるリリーからしたら今の自殺行為とも言える俺の行為は容認し難いのだろう。

 

 

「……」

 

 

 今更ながら仲間の気持ちを全く考えていなかったことに気付く。

 完全に失念していた。俺自身が俺はどうなっても良いと思っても周りが同じように思う訳じゃない。

 

 俺がみんなのことを思うように、みんなも俺のことを思ってくれているという事実から目を背けていた。

 

「話はもう終わり。姫様に報告してくる」

 

「ま、待ってくれ」

 

 蜃に霧を出すのを止めるように指示を出したリリーはゆっくりと立ち上がり、学院に向かおうとする。

 

 俺は慌てて背を向けて歩き出したリリーの小さな肩を掴もうとするが、直前で蜃の触手によって妨害されてしまう。

 

「おい、こら離せッ!」

 

『シュコー』

 

「この野郎ッ! 刺身にするぞッ!?」

 

 俺がそうやって蜃とワチャワチャやり合っていると「リリー、ストップ」とガレスが制止を掛ける声が耳に入った。

 

「リリー、ミーシャ様に伝えに行くのは少し待ってくれないか?」

 

「どうして? 待つ必要があるの?」

 

 首を傾げるリリーにガレスは「ああ」と頷いた上で答えた。

 

「ロークを行かせてやろう」

 

「冗談?」

 

「いや、本気だよ」

 

 ガレスがそう答えると途端にリリーの纏う雰囲気が剣呑になり、「ふざけないでッ!」と声を荒げながら叫んだ。

 

「ロークが危険な目に遭っていいのッ!?」

 

「良い訳ないだろ」

 

「なら、どうしてッ!?」

 

「ロークがそう望んでいるからだ」

 

「……ッ! 関係ないッ!」

 

 ガレスの言葉にリリーは一瞬、動揺した様子で口籠るがすぐにそう言い返す。

 対するガレスはリリーの反応を理解していた様子で臆することなく、話を続けた。

 

「関係はある、これはロークとその家族の問題でもある。君の意見は尤もだけれど、それだけで終わらせていい話じゃない」

 

「だからってッ!」

 

「勿論、僕もリリ-の意見には賛成だ。けど、だからと言ってロークの意見を無視するべきじゃない」

 

 ガレスはリリーを宥めるようにそう話すとその視線を俺に向けた。

 

「君は行きたいんだよな?」

 

「…………ああ」

 

 俺が頷くとリリーが鋭い瞳でこちらを睨み付けてくる。

 普段の彼女から想像もできないほどの威圧感に思わず気圧されているとガレスが再び「リリー」と呼び掛けた。

 

「君にとってロークが家族同然なほど大切なのは理解している。けれどリリスはロークの本当の家族なんだ」

 

「——ッ!!」

 

「君なら、他でも無い君ならロークの気持ちが理解できるだろう?」

 

「…………」

 

 ガレスのその指摘にリリーは口を噤む。

 俺はその間、リリーに何の言葉を掛けることもできず、ただ葛藤を滲ませる表情で黙り込む彼女を見つめることしかできなかった。

 

「…………ローク」

 

「何だ?」

 

 やがて重々しく口を開いたリリーに尋ね返すとその小さな身体が俺に向かって勢いよく突っ込んできた。

 

「ぐふぉあッ!?」

 

「無理したら許さないから」

 

「いや、正直それは難し———ぐあッ!?」

 

 鳩尾にパンチが入り、思わず悶えていると「それと……」と胸元からくぐもった声が聞こえてきた。

 

「……しっかり妹と仲直りすること」

 

「——ッ!!」

 

 その言葉に俺が思わず顔を下ろすとこちらをジッと見つめるリリーと視線が合う。

 

「返事は?」

 

「……ああ、分かった。約束する」

 

「……ん。ならいい」

 

 俺の返事を聞いたリリーはどこか納得した様子で頷くと側から離れていく。

 

「ガレス」

 

「行っても構わないけど、僕からも幾つか条件は提示させて貰うよ」

 

「ああ、聞かせてくれ」

 

 そう言うと側に座ったリリーの頭を撫でながらガレスは条件を提示してきた。

 

「まず、一つ目はこの情報を僕ら以外にも共有すること」

 

「それは……」

 

「勿論、君達家族の話し合いを邪魔しないように人選はする。けれど、やはり何か起きた際に僕ら二人だけでは対応できる幅が随分と狭くなってしまう」

 

 確かに万が一の事態になった時、ガレスとリリー以外にも事情を知っている人間がいた方が対応はしやすいのは間違いない。

 

 情報を共有する相手に関してもガレスなら俺が気にするまでもなく、適切な相手を選んでくれるだろう。

 

「……分かった。お前に任せる」

 

「二つ目、僕達のジュデッカの森への散歩を黙認すること」

 

「…………それ、リリスとの約束の条件に抵触しないか?」

 

 予想外の言葉に一瞬、ポカンとしたが少し考えてガレスの言いたいことを理解した俺はそう尋ねる。

 

 

「何を言っているんだい。僕は今日の夜は月が綺麗らしいからリリーとデートをしたいと思っただけさ。ねぇ?」

 

「そうそう」

 

「……はぁ、分かった分かった。好きにしてくれ」

 

 

 あまりに雑な演技をする二人に説得は意味がないと俺はため息を漏らしながら頷く。

 

「監視は……バレるリスクが高いし止めて置こう。代わりに僕達が散歩中に君が危機に陥った時、もしくは助けが必要だと判断した時の合図を決めて置こうか。」

 

「それなら俺が空に向かって思いっきり霊術をぶっ放すのはどうだ? 属性は……雷にしておけば分かりやすいか?」

 

「分かった、それでいこう。それじゃ最後に一つ……」

 

「まだあるのか?」

 

 どれだけ条件を付けるんだと思っていると最後にガレスは今まで一番、真剣な表情を浮かべながら言った。

 

「無事に帰って来い」

 

 

「————ああ、勿論だ」

 

 

 その言葉に一瞬驚きで言葉を失うが、俺はすぐに口角を上げながら力強く頷くのだった。

 

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