真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます 作:アラッサム
「…………」
「ジッと何の紙を眺めているのですか? ローク」
「聞かなくても分かっているだろ、ミーシャ?」
中庭のベンチに座っていた俺は、美しい金色の髪を靡かせながら声を掛けてきたミーシャに対して、持っていた書類をひらひらと揺らしながらそう言い返す。
「四凶討伐部隊への参加希望書ですね。参加するのですか?」
「ああ、まぁな」
リリスとの喧嘩を終えてから数日、学院全体に連絡が入った。
ルナの塔に四凶を従えた敵組織が潜んでいることが判明したため、ロムス王国が編成した四凶討伐部隊が二日後に攻撃を仕掛けることが決まったのだ。
「それで学院からも有志で戦力を募るとはな……」
「相手は四凶です。戦力は多ければ多いほど安心できるので」
「そりゃそうだ」
ロークはミーシャの言葉を聞きながら、改めて学院から手渡された今日が期限の参加希望の書類に視線を向けながら呟く。
書類に書かれている内容としては、あくまでも学生達はルナの塔内部に侵入する討伐部隊本体のサポートであり、主な仕事は塔の外部にいる邪霊達の対処になるようだ。
「それに時間も無いですからね」
「時間が無い?」
「ええ、貴方のご兄妹からルナの塔に眠る何らかの封印を解こうとしているという話を聞きました。そのことを考えると、あまり時間を掛ける訳にもいきません」
「……リリスの話を信じてくれるのか?」
俺はミーシャの言葉に少し驚きながらそう尋ねる。
俺からすればリリスは妹だが、ミーシャからすれば元敵側についていた人物以外の何者でも無い筈だ。
そんな素直に信じられるのだろうか?
「貴方の妹です。信じない理由が無いでしょう」
「…………」
当然のことだと言わんばかりにそう答えたミーシャに、俺は言葉を失って沈黙していると、ミーシャはクスッと口元を抑えながら上品に笑う。
「どうしました?」
「……いや」
「フフッ、照れているのですか?」
「照れてない」
俺がそう答えると、楽しそうに笑いながらミーシャは隣に腰掛け、あろうことかそのまま肩に頭を預けてきた。
ちょっと待て。
「ミーシャ、近くないか?」
「そんなことありませんよ」
「いや、近いよ」
「嫌なのですか?」
「そうは言ってないだろ………」
寧ろ役得まであるが、それとこれとは話が違うだろッ!
「なら、少しこうさせて下さい。疲れているんです」
「この状態で休めるのか?」
「ええ、とても」
「…………」
そうまでハッキリ言われてしまうと何も言い返すことはできない。
俺はただの案山子だと自己暗示を掛けながら微動だにせず暫く待機していると、ミーシャが肩から顔を上げ、そのまま近付けてきた。
だから近いってッ!
「顔色があまり良くないようですが、大丈夫ですか?」
「……ッ。そう見えるか?」
その指摘に思わず自分の顔に触れながら尋ね返してしまう。
「ええ、顔がやつれていますよ。正直、そんな状態で本当に参加して大丈夫なのかと思うほどです」
「そんなに?」
「ええ」
一応、顔には出ないように気を付けていたつもりだったが、どうやらしっかり出てしまっていたらしい。
「……まあ、そりゃそうか」
と言うのも、ここ数日間、俺は昼夜問わずにずっと霊力を吸われ続けている。
お陰でしっかり休んでいる筈なのに、寧ろ疲れが溜まっているような気さえしている。
今のコンディションは控えめに言って最悪と言っても良いだろう。
「ローク、無理はしていませんか?」
「ああ、大丈夫だよ」
「本当ですか? 先日の戦いの影響が出ているのでは無いですか?」
「そんなことねぇよ。怪我はもう治ってる。それよりも、お前こそ、ちゃんと眠れているのか? さっきのこともそうだけど、薄っすらとだけど隈ができてるぞ」
俺の怪我に関してはリリスの治療を終えた後に一緒に治して貰っているので、心配する必要は無い。
それよりも、俺に寄り掛かってきたり、化粧で誤魔化しているが目元に隈ができているミーシャの方がよっぽど心配だった。
「ローク、女性にそういう指摘はよくありませんよ」
「悪いな、乙女心には疎いんだ」
俺がそう謝罪すると、ミーシャは呆れ混じりにため息を漏らした。
「まぁ、ですが否定はしません。ここのところ立て続けに重要な案件が舞い込んで来ているので、しっかりと眠れてないようです」
「……そうだよな、四凶が立て続けに復活してるんだもんな」
今まで何だかんだ、どうにかなっていたので実感が薄かったが、一国の王女でもあるミーシャの立場からすれば、ここ最近はずっと気が気で無かった筈だ。
いや、違う。今も依然として危機は続いている。
きっとミーシャの胸中は俺では察することのできないほど、色々な思いが渦巻いているのだろう。
「ええ、お陰で悩みが尽きません。全く、肌も荒れていますし、文句の一つも言ってやりたいですね」
「ミーシャ……」
「ですが、私の心配は必要ありませんよ。皆さんが頑張って下さっているお陰で解決の兆しが見えていますからね」
そう言ってミーシャは「それに先程、休ませて貰いましたから」と笑った。
「……強いな」
「今更知ったのですか?」
「いや、そうだな。確かにずっと強かったな……」
ミーシャの言葉に俺は今までのことを思い返しながら苦笑を浮かべながら頷く。
「ですから、今は貴方です。ローク」
「えっ?」
そう言ってミーシャは俺の顔を覗き込んでくる。
思わず仰け反っていると、「やはり顔色が悪いですね」と呟きながら何かあったのかを尋ねてくる。
「……そうだな、ちゃんと説明するべきだな」
俺は静かに息を吐くと、心配してくれるミーシャにそう呟く。
思えばミーシャは俺の妹というだけで無条件にリリスの言葉を信じてくれたのだ。下手に誤魔化そうとせず、しっかりと真実を話すべきだろう。
「とりあえず、今の俺の状態を説明すると、常に霊力を消耗しているんだ。顔がやつれているのはそのせいだろ」
「常に霊力を? 何故ですか?」
その質問に俺は無言で足元を靴でコンコンと叩く。
ミーシャは俺の行動の意味が理解できない様子で視線を足元に向け、直後に絶句した表情を浮かべた。
「ローク、これは……」
「まぁ、そういうことだ」
信じられないと言わんばかりの視線を向けてくるミーシャに、足元の影の中で輝く金色の瞳、四凶の一体である冥闇龍アペプスの姿を見せながら俺は言う。
「アペプスと簡易契約を結んでいるんだ」
「冗談……という訳ではなさそうですね」
「ああ、本当だからな」
俺は頷く。
先日、リリスとの喧嘩に参加したメンバーにはそれとなく伝えているが、彼女に勝つ為にアペプスと契約してから今日までずっと、彼に霊力の供給を行い続けていた。
『バラして良いのか? 折角、気を遣って気配を抑えてやったというのに』
「良いよ、ミーシャは信頼できるし、そもそも話すべき相手だ」
「……ッ」
脳内に響き渡るアペプスの声に俺がそう答えると、ミーシャが驚いた顔でこちらに視線を向けてくる。
どうやらアペプスはミーシャにも念話を飛ばしていたらしい。
「これは……」
『そう身構えるな、小娘。別にお前を害そうという訳じゃない』
ベンチから腰を僅かに浮かせ、警戒した表情を浮かべるミーシャにアペプスがそう安心するようにと語り掛ける。
尤も、より警戒心を抱かせてしまっているようだが……。
「なら、何が目的なのですか? わざわざロークと簡易契約を結んで一体、何をするつもりですか?」
『大きな目的は無いが、個人的に不愉快な奴がいてな。ソイツと戦う為に一時的にロークと契約を結んでいる』
「不愉快な奴?」
『三つ首、アジ・ダハーカだ』
「なッ⁉」
アペプスの発言にミーシャが驚いた表情を浮かべながら顔を俺に向ける。
そこでようやく俺の目的を察したらしく、ミーシャは本気なのですか? と視線で訴えかけてくる。
故に俺はハッキリと答えた。
「俺はアペプスと手を組んでアジ・ダハーカを討つ」
「……ッ!」
俺の宣言を聞いたミーシャは驚きと動揺が入り混じった様子で口籠る。
彼女にしては珍しく言いたいことがあるが、咄嗟に言葉が出なかったようだ。
「……大丈夫なのですか?」
少し間を置いた後、ミーシャは絞り出すように俺に尋ねてきた。
「流石に信じられないか?」
「違います、貴方のことは信じています。ですが……」
俺が揶揄うようにそう尋ねると、ミーシャは首を横に振りながら足元のアペプスへと視線を向ける。
『私が信じられないか? まぁ、当然だな』
「…………」
自らが疑われていることにどこか愉快そうな声音でそう笑うアペプスに対して、ミーシャは反応を示さず、沈黙を貫く。
伝説の邪霊。ましてや、その恐ろしさを身を持って理解しているミーシャからすれば、アペプスと手を組むなど信じ難いことだろう。
『フフッ、どうする、ローク? やはりここで契約を切るか?』
「切らない。話した通り、決戦の時までお前にはずっと霊力を注ぐ」
どこか試すような口調で語りかけてきたアペプスの言葉を俺は最後まで聞くことなく、俺はそう即答する。
『……やれやれ、つまらん反応だ』
「とまぁ、俺の体調が良くない理由は分かったか?」
「ええ、それは分かりましたが……」
アペプスはそう言って息を吐く中、俺が話を終えるとミーシャは重苦しい表情のまま頷いた。
「ですが、やはり危険です。貴方も見たでしょう? アルベルト先生の末路を……」
「…………」
ミーシャの指摘に俺の脳裏に苦しげな叫び声を上げながら闇に飲まれたアルベルト先生の姿が過る。
「もし貴方が同じようなことになったら、私は……」
「心配するな、同じようにはならないよ。そうだよな?」
『…………』
ミーシャの不安を和らげようと俺はアペプスにそう声を掛けるが、沈黙が返ってきた為、「無視しないでくれ」と再度、声を掛けると、ため息混じりの念話が響いた。
『私が問題無いと言ったとして、お前はその言葉に納得できるのか?』
「それは……」
アペプスの指摘にミーシャは思わず口籠る。
言外に信じられないと返答したミーシャにアペプスはフッと嘲笑を漏らした。
『やはり、話すだけ無駄———』
「無駄じゃない。お前の口から伝える意味はある」
『……なに?』
どういう意味だとアペプスがその金色の瞳を細めながら俺に向けてくる。
「ミーシャはお前のことは信じられないかも知れない。けど、俺のことは信じてくれるんだろ、ミーシャ?」
「……そうですね」
ミーシャがそう頷くのを確認すると、俺は笑いながら「だから」と改めて足元のアペプスに視線を向ける。
「俺がお前の言葉を嘘じゃないって保証する。簡易とはいえ、契約者だからな」
『…………』
「まぁ、絶対に嘘だと思ったら否定するけど、これならどうだ?」
「……ええ、それなら私も信じることができそうです」
口元を緩めながら頷いてくれたミーシャの姿を見て、信用の橋渡し作戦が成功したのを実感しながら、俺は改めてアペプスに説明を促す。
「ほら、アペプス。そういう訳だから」
『…………』
「ほら、頼むって」
『……契約者を傷付けるような下らない真似はしない』
そうやって急かしていると、ようやくアペプスが口を開き、俺に危害を加えないことを面倒そうに約束してくれた。
「だってさ。俺は信じるけど、ミーシャはどうだ?」
「…………」
元々、相当プライドの高い邪霊だ。自分の名に誓った以上は、決して反故にするような真似はしないだろう。
「ええ、私も信じます。他でも無い貴方が信じたのですから」
瞑目した後、不安を感じさせない穏やかな表情でミーシャもそう言って頷いてくれる。
どうやら納得させることはできたようだ。
「分かってくれて良かったよ。これで心置きなくアジ・ダハーカと戦える」
「ですが、どうしましょうか。アペプスをこちらの戦力として扱えるのは有難いですが、そのまま共有する訳にもいかないでしょうし」
確かにその通りだ。
師匠やガレス達は把握しているからまだ良いが、その他の相手に話すとなると色々と面倒臭くなるのは間違いないだろう。
『私のことは隠しておけ』
「ッ!」
悩んでいるとアペプスからそんな言葉が聞こえ、俺とミーシャは驚きながら足元に視線を向ける。
『下手に話しても混乱を生むだけだ。それに私はアジ・ダハーカとの戦い以外では基本的に表には出るつもりはない。隠しておいても問題は無いだろう』
「なら、その他の敵は俺一人でどうにかしろって言うのか?」
『そうだ』
「いやいや、ルナの塔にどんな邪霊がいるか分からないし、契約してるんだからもう少し助けてくれよ……」
『私が暴れると恐らく味方にも被害が出るぞ』
「なッ⁉」
「どういうことですか?」
『私と戦ったお前達なら分かるだろ。私の霊術は規模が大きい分、味方を巻き込みやすい。あまり味方と戦うには向かない』
「確かに……」
アペプスとの死闘を思い返しながら、俺は納得する。
言われてみれば、あの規模の霊術だと敵を倒すよりも味方を巻き込まないようにすることに意識を向ける羽目になりそうではある。
「では、貴方はアジ・ダハーカと会敵するまでは動かないと?」
『ああ、それと私の三つ首との戦いにも介入するな』
「理由を聞いても?」
『一対一でやりたい。尤も、無理に私達の戦いに混ざったところで無駄に命を危険に晒すだけだろうが』
「……私達の実力ではアジ・ダハーカに通用しないと?」
「いや、流石にそんなことは無いだろ……」
アペプスの言葉にプライドを刺激されたらしく、その目を僅かに細めながらそう尋ねるミーシャに俺はそう突っ込む。
アペプスとの戦いでのミーシャの活躍を考えれば、通用しないなんてことは無い筈だ。
『ああ、まだ未熟な部分こそあるが、それでもお前の実力はアイツに通用するだろう』
そう否定の言葉を口にするアペプスに俺は「だよね」と頷いていると、ミーシャが「なら、どうして……」とアジ・ダハーカとの戦いに介入させない理由を改めて尋ねた。
『私はお前達を考慮して戦う気は無い。無理に介入するなら止めないが、命の保証はしないぞ』
「………」
アペプスの言葉にミーシャは何か言い返そうとして、結局、何も言うことができなかった。
当然だ。四凶一体ならば意識を集中させれば何とかなるが、二体の四凶の攻撃を躱しながら戦うなど不可能だ。
そんなの、数分も持たずに死ぬに決まっている。
…………あれ、それじゃ俺、ヤバくね?
アペプスと契約している以上、アペプスと共に戦うことは確定している。
ということは、アペプスとアジ・ダハーカの大怪獣決戦に生身で参戦することが確定している訳で……もしかして死ぬのか? 俺は?
『お前達が全力を注ぐべきは私との共闘ではなく、私が敗れた後、弱体化した三つ首の討伐だ』
「……ッ!」
俺が自分の命のことについて考えていると、アペプスの発言にミーシャが驚いた様子で目を見開いた。
まさか、アペプスが自らの敗北する可能性を口にするとは想像だにしなかったのだろう。
俺も驚きはしたが、それ以上に自分の命が危ぶまれていることへの恐怖が勝っている。
『まぁ、有り得ない話だが、万が一、いや億が一、私があの三つ首に敗れるようなことがあったとすれば、それはお前達にとってこれ以上ない好機となる筈だ』
「……確かに、それはその通りですね」
自分で言っておいて癪に触ったらしく、不愉快そうな様子でアペプスがそう語ると、ミーシャは納得した様子で首を縦に振った。
「………分かりました、アジ・ダハーカの討伐は貴方達にお願いします」
「あ、ああ、マカセテオケ」
そう言ってアジ・ダハーカの討伐を依頼してくるミーシャに、俺は格好付けて返事をしようとするが、声がおかしくなってしまう。
『お前、声が震えるぞ』
「気のせいだ」
『臆したか?』
「まさか」
はい、臆しました。
話している内に現実が見えてきて、今更ながら色々と怖くなってしまってきました。
「ローク」
「いやいや、違———はい、実はめっちゃ怖いです」
最初こそ誤魔化そうとしたが、俺をジッと見つめてくるミーシャの瞳に観念した俺は、謝罪と共に自分の気持ちを吐露する。
「いや、そりゃ怖いだろ。誰だって」
「それなら……」
「けど、やるよ。ってか、やるしかないだろ?」
代案か何かを口にしようとしたミーシャを遮って、俺は若干ヤケクソ気味に言う。
それに、俺がアジ・ダハーカと戦えば他の参加者、ガレスやリリー達への危険はグッと減る。やらない理由がない。
「ですが、このままでは貴方一人に負担を掛けることに……」
「……それが最善だから仕方ないだろ」
どこか苦しげに語るミーシャに俺はそう告げる。
幾ら考えたところで現状、アペプスとアジ・ダハーカを一対一で戦わせることが一番勝算が高く、被害を抑えられる戦い方であることはほぼ間違いないだろう。
「そんな訳がありませんッ! どこが最善ですかッ⁉」
「……ッ!」
感情のままに荒々しく叫ぶミーシャのあまりにも珍しい姿に、俺は瞠目してしまう。
「最善と言って、ただ我が身可愛さで貴方にアジ・ダハーカとの戦いを押し付けているだけでは無いですかッ!」
「…………」
「ですが、同時に貴方にアジ・ダハーカとの戦いを託すことが正しいと、そう思っている私もいるのです。それが、どうしようもなく情けない!」
そう懺悔をするかのように俯きながら話すミーシャに、暫くの間、黙って考えを纏めていた俺はゆっくりと口を開いた。
「少し誤解しているな、ミーシャ」
「えっ?」
俺の言葉に困惑した様子で顔を上げたミーシャを見つめながら続ける。
「確かに怖いのは本当だ。けど、決してそれだけじゃないんだぜ?」
「……何を言って」
「不謹慎かも知れないけど、この状況に俺はワクワクもしているんだ」
「ワクワクですか?」
「ああ、だってアーサー伝記に出てくる伝説の四凶を使役して戦えんだぞ? 物語のファンとして、こんなにワクワクすることはないぞッ‼」
「そ、そうなのですね……」
興奮しながら叫ぶ俺に若干引いた表情を浮かべながらミーシャは頷く。
そんな彼女に畳み掛けるように俺は「だからさ……」と言った。
「そう思い詰めないでくれ、ミーシャ。俺は学位戦みたいに楽しみながら全力でアジ・ダハーカと戦ってくるからさ」
「……ッ!」
その言葉に驚いた表情を見せるミーシャに、俺は自信満々と言わんばかりに笑うとベンチから立ち上がる。
「まぁ、任せておけ。四凶と簡易契約を結んだ俺の実力を見せつけてきてやるからさ」
そう言って可能な限り格好を付けながら参加希望書を提出するべく、その場を去ろうとすると、背中に軽い衝撃が走る。
「絶対に……死なないで下さいね」
「ああ、勿論だ」
背中越しに聞こえてきたその声に、俺は振り返ることなく答えた。