真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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第23話

 

 

 死ぬかと思ったッ!!

 

 

 いや、冗談抜きで。どう考えてもやり過ぎだろ。

 明らかに一介の学生が浴びて良い攻撃じゃない。って言うか、どうして審判はオーフェリアを失格にしない?どう見てもアレ、意図的に俺を殺しに来てるぞ。

 

 抗議の意を込めて視線を一度、審判へと向けるが当の本人はやはりと何か勝手に納得したような表情を浮かべながら頷いている。殺すぞコイツ。

 

 

「…………殺す気か?」

 

 

 俺は砲弾が着弾した余波で身体に付着した砂埃を払いながらオーフェリアに真面目に尋ねる。周囲に視線を向ければ俺の背後以外の地面は衝撃で思いっきり地面が抉れており、仮に一発でも喰らっていたらと想像するだけで身震いする。

 

 

「無論、全力で仕掛けたよ。お前が相手なら殺す気くらいで丁度良いと思っていたんだが……まさか無傷とはな。流石にショックだぞ」

 

「喰らう訳にはいかなかったからな」

 

 ほらぁ、殺意を認めたぞ、あの女。あんなん一発でも喰らったら普通に肉体が吹き飛ぶわ。加えて言うなら全然無傷でも無いし。

 

 

 周囲に複数の微精霊を従えながら俺は腕の感覚を確かめる為に一度素振りを行う。やはりと言うべきか、酷使した腕の感覚が鈍くなっている。

 

「言ってくれる。その周囲に漂わせてる風の微精霊たち、それで風の盾を張ったか」

 

「まぁ、そういうことだ」

 

 

 剣で肩をトントンと叩きながら俺はオーフェリアの言葉を肯定する。

 シミュレーションの時点で一度はドレッドノートの艦砲射撃を喰らうことは予想していた。故に対策として微精霊たちに霊力を送って風の霊術で前方に障壁を張った。ただ、それは盾というよりも弾丸の軌道を左右に逸らすための障壁だ。

 

 あの砲撃の嵐は正面から受ければ数秒と持たずに木っ端微塵になる。生き残る為には左右に逸らすしかなかった。

 

 大体はシミュレーション通りに行ったが、砲撃時間の長さと砲撃速度は俺の想定を完全に上回った。途中から障壁では逸らし切れない砲弾が増え始め、眼前に迫ってきた砲弾に関しては止むなく剣で真っ二つにすることで防いだが……にしても砲撃時間が長すぎる。多分、十分くらい延々と砲弾をぶっ放され続けていた気がする。

 

 お陰で腕が悲鳴を上げている。何ならちょっとプルプルしてる。

 

 外面的にはほぼ無傷でドレッドノートの第一波を凌ぎ切ることに成功したが予定よりもだいぶ霊力を消費させられた上に腕も酷使させられた。

 

「で、まだやるか?」

 

 

 ただ下手に弱みを見せて相手の士気が上がるのも嫌なのでとりあえずポーカーフェイスを意識しながら俺は尋ねる。何ならこれでビビって攻撃の勢いが弱くなってくれればこちらとしては嬉しいのだが————。

 

「ふっ、流石だ。業腹だがやはりお前のことは認めざるを得ないな……だが」

 

 俺の問いにオーフェリアは僅かに笑みを浮かべると腕を薙ぐように横に振るう。

 

 するとドレッドノートの複数の砲門に再び霊力が込められ、それぞれの砲門から眩い光が放たれる。

 

 その様子を見た俺は再び霊術による風の障壁を展開しようとして、やめた。

 

「私のドレッドノートがこの程度だと思われるのは心外だぞ」

 

 オーフェリアの呟きと同時に砲門の一つから膨大な霊力の砲弾が放たれる。迫ってくる砲弾を目にした俺は身体強化して大きく跳躍してその場から離れた。

 

 直後に響き渡る轟音と火柱。着地地点へと視線を向ければそこには元から何も無かったかのようにポッカリと黒い穴が空いていた。

 

「おいおいおい」

 

 放たれた砲撃の威力に俺は思わず目を剥く。

 なんて威力だ、一撃に込められている霊力の量が先程とは桁違いだ。

 

「驚いている暇はないぞ」

 

「ッ!」

 

 オーフェリアの声に顔を上げればドレッドノートから伸びる無数のロープが俺を拘束しようと迫ってきていた。

 

 着地と同時に蛇のように唸りながら襲い掛かってくるロープの群れを俺は剣を振るって捌いていくが、その隙にドレッドノートから次弾が放たれる。

 

「ッ!?」

 

 すぐさまその場から離れようとするが右足が動かない。何事かと思いながら足元に視線を向けると片足が地面に埋まっている。どうやら俺がロープに夢中になってる間にオーフェリアがやったのだろうが全く気付かなかった。

 

 これはマズい。

 

 すぐさま脚力を霊力で強化することで強引に足を引き抜いて脱出には成功する。けれど妨害によって僅かに回避が遅れてしまい、俺の身体は着弾の際の爆風に煽られて吹き飛ばされる。

 

 更に空中で無防備になった俺にドレッドノートは数発の砲弾を放つことで追い討ちをかけてくる。威力こそ先程の一撃よりも弱いが、やはりこれもまともに喰らって良い攻撃では無い。

 

 風を纏って体勢を立て直すとそのまま剣に霊力を纏わせ、迫ってくる砲弾に向けて斬撃を放つ。三日月型に飛翔する斬撃と砲弾は接触すると宙で盛大に火花を咲かせた。

 

 追撃を防いで安堵するのも束の間、視界の奥でオーフェリアが地面に手を当て何かの霊術を発動しようとする姿が確認できた。込められている霊力量からして大技の可能性が高い。

 

「水流弾」

 

 その動きを確認した俺は依代を取り出して水の微精霊と契約。自身の掌に水の渦を生み出すと攻撃準備をするオーフェリアへと向けて放つ。風の霊術を混ぜ合わせて威力の増した水は渦を描きながら迫るが、オーフェリアも冷静に発動しようとした術を中断、防御型の霊術で土壁を展開することで攻撃を凌いだ。

 

 敵ながら流石の判断能力だ。前の学位戦では組み合わせの運もあり、十位内にいなかったが実力で言えば間違いなく彼らに比肩しうるだろう。

 

 

 俺は攻撃が止んだ隙に地面へと降り立つと一気に距離を詰めようと足に霊力を込めるが、そのタイミングを見計らったかのように再び砲撃が放たれる。

 

「うぜぇッ!」 

 

 仕掛けようとしたタイミングで先制攻撃を喰らい、否応にも再び俺は防御に回らされる。

 その事実を苛立たしく思いながら剣を振るって砲撃を捌くが、放たれた砲弾の一つが俺の少し前方で爆発し、視界が爆煙によって遮られた。

 

 ————目眩しかッ!

 

 相手の目的を理解して瞬時に風を放って煙を吹き飛ばすが、そのタイミングを狙ったように晴れた視界から今度は錨が俺の眼前へと迫って来ていた。

 

「ぐッ!?」

 

 咄嗟に剣を盾にして受けるが衝撃に堪え切れずに後方へと弾き飛ばされ、そのまま俺は受身を取れずに無様に地面へと転がってしまった。

 

 

「どうしたローク、いつになく情けない姿をしているが?」

 

 

「……………」

 

 

 ジリ貧だ。

 攻撃を浴びながら俺は素直に思った。

 

 精霊師の強みである精霊との連携、二回行動をあっちはしっかりと実践していた。こっちが攻撃をすれば防御と攻撃、逆にこっちが防御をすれば攻撃を二回してくる。

 

 そりゃキツいって。まぁ、契約精霊がいない俺が悪いんだけれど……。

 

 

「大人しく精霊を呼んだらどうだ?そうすればお前にも勝ち目は充分にあるだろう」

 

「……………」

 

 呼べたら最初から呼んでるわ、クソが。

 

 

 かと言ってこのまま抵抗していても恐らくは負けるだろう。となれば……いよいよ奥の手の出番ということだろうか。

 

「呼ばないなら呼ばないで構わないが、それならお前は———」

 

「………オーフェリア」

 

 オーフェリアの話を遮るように俺は彼女の名前を呼ぶ。

 

 勝ち気な笑みを浮かべるオーフェリアはいつになく饒舌だった。俺を追い込んで興奮してるからか、それとも俺の契約精霊が見れると思っているからか。

 

 別にどちらでも良いが………。

 

 

 

 

「余裕ぶるには、少し早いぞ?」

 

「何を———」

 

 訝しげな表情を浮かべるオーフェリアの前で俺は霊力を込めると地面に手を当てて仕込みを発動させた。

 

 

 

*****

 

 

「地震?」

 

 三人の中で最初にその揺れに気付いたのはレイアだった。彼女はカタカタと揺れる闘技場に何事だと首を傾げながら周囲を見回す。見れば学位戦に意識を向けていた周囲も少しずつ強くなっていく揺れに気付いたようで不安そうな表情を浮かべている。

 

 流石にこれはおかしい。

 

「レイアちゃん、この揺れって」

 

「うん、これは……って燈ちゃん?」

 

「フフッ!ハハハッ!!」

 

 不安げに呟くメイリーに返事をしようとしたレイアは隣で頬を僅かに赤らめながら笑い声を上げる燈の姿に驚く。どうやら相当興奮しているようだが、普段のクールな彼女の姿をよく見ているレイアからすれば珍しい光景だった。

 

「本当に凄い。これは予想外」

 

「それってどういう———ッ!?」

 

 燈の言葉の真意を訪ねようとしたレイアはそこでようやく気付いた。眼下の闘技場、その地面に溜まっている凄まじい霊力に。

 

「………ええッ!?」

 

 視線を向けた先地面が音を鳴らしながら隆起し、巨大な影がレイアたち観戦している学生を覆った。

 

 

*****

 

 

「これは……」

 

 突如として地面から這い上がってきたかのように現れた土塊の巨人を前にしてオーフェリアは唖然とした表情を浮かべる。大型の精霊であるドレッドノートを優に越す背丈、顔面らしき部分の表面には目と口を表している窪みが三つほどあるが、本来の機能を果たしているようにはまるで見えない。身体の節々もよく見れば所々、子供が作った人形のように歪な部分があるが、その部分を基点として巨人に凄まじい霊力が血液の如く全身を流れていた。

 

 ————まさか、これがロークの契約精霊なのか?

 

 

 確かに初見のインパクトは強かったが、それでもこれがロークの契約精霊だとすれば恐れることはない。自身のドレッドノートの敵ではない。

 

 そう判断したオーフェリアはドレッドノートに様子見代わりの砲撃を命じる。指示を受けたドレッドノートの砲門に霊力が充填され、弾眼前の巨人へと向けて砲撃が放たれる。

 

 計五発に渡って放たれた砲弾はそのまま狙いを違わず、巨人の頭部と腹部、それに上腕部に直撃すると派手に音を響かせながらその肉体を破壊した。

 

 

「脆いな」

 

 特に障壁が張られている訳でも、肉体の強度がある訳でもない。これならばあと数発も撃てば巨人を戦闘不能にできると崩れる瓦礫を眺めながら判断したオーフェリアは静かに次の砲撃を命じようとして————固まった。

 

 

「………なに?」

 

 

 砲撃によって砕け落ちた瓦礫、それがまるで意志を持っているかのように浮かび上がるとそのまま元の破損した部位へと戻って巨人の肉体を修復した。思わず動きを止めたオーフェリアがその光景を眺めていると数分もせずに肉体の修復は終わり、土塊の巨人はまるで何事も無かったかのように復活した。

 

「これは……」

 

「驚いてくれたか?」

 

 目を見開いているオーフェリアの頭上から揶揄うような声が届く。彼女が声の方へと視線を上げれば巨人の肩に乗ったロークがこちらを見下ろしていた。

 

 

「これがお前の契約精霊か?」

 

「まさか」

 

 オーフェリアの質問にロークは違うと首を横に振る。それならばこの巨人は何だ?と疑問を抱くオーフェリアはしかし、動き出した巨人を見て思考を切り替える。

 

「ォォオオッ!」

 

 巨人は歪な腕を大きく振り上げると不気味な唸り声を闘技場に響かせながらドレッドノートに向けて拳を振り下ろした。

 

 咄嗟にオーフェリアは土の霊術による防御を展開するが膨大な霊力を帯びた巨人の拳は展開された防御を瞬時に突き破り、ドレッドノートの甲板へと直撃する。

 

 振り下ろされた拳はバキリという音を響かせながらドレッドノートの甲板の一部にヒビを入れるが、それでも突き破るには至らなかった。  

 

「ぐッ!」

 

「流石に硬いな」

 

 ドレッドノートの防御力の高さにロークは舌を巻く。

 撃沈させるつもりで放った一撃だったが、流石は高位精霊と言ったところか。この一発で片付けられるほど甘い相手ではないようだ。

 

「調子に乗るなッ!」

 

 ドレッドノートはロープで自身の身体を殴った巨人の拳を絡め取るとそのまま船体を回して巨人を投げ飛ばす。

 

「ッ!」

 

 ロークは体勢を崩して地面に転がる巨人から飛び降りて地面に着地するとそのまま自身を睨み付けるオーフェリアへと視線を向ける。

 

「あの巨人は何だ?」

 

「何だと思う?」

 

「ッ!!」

 

 ロークのその言動に苛立ちを覚えたオーフェリアは衝動的にドレッドノートへ攻撃を命令する。

 

 轟音が鳴り響き、地面に倒れ伏せた無防備な巨人をドレッドノートによる砲撃が襲う。瞬く間に巨人は爆炎に包まれ、その土塊の肉体を破壊していく。

 数分も経てば砲撃をまともに浴びた巨人の身体はボロボロになり、見るも無惨に四散してしまう。

 

「はぁ、はぁ…」

 

「…………」

 

 息を切らすオーフェリアはけれども巨人の惨状を見て満足げな笑みを浮かべる。対するロークは自身が従える巨人の惨状を見ても動揺する様子を見せず、ただ眼前に立つオーフェリアを観察していた。

 

 

「あの巨人、どうやら再生能力があるようだがここまで壊せば…流石……に……」

 

「流石に?」

 

 仮に高位精霊と言えど送還されるだろうダメージを与えたことで、笑みを深めるオーフェリアは、けれども砕けた五体を中心として瓦礫が集まり、再び再生しようとしている巨人を目にして凍りつく。

 

「流石に……何だ?」

 

 ロークは尋ねながら静かに剣を構えた。

 

 

 

 

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