真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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詳しい情報はまだ開示できませんが書籍化が決まりました。
これも読者の皆様のお陰です、ありがとうございます!
これからもお付き合い頂ければと思いますのでよろしくお願いします。



第26話

 

 

「そう言えば最近、ロクスレイ委員長とトラルウスが生徒会に呼び出されたって学院で噂になってるよ」

 

 食堂でガレスとリリーと共に食事を取っているとガレスがふと思い出した様子で近頃、学生たちの間で噂になっている話を口にした。

 

「あの二人が?何で?」

 

「さぁ、僕も理由までは分からない」

 

 トラルウスは割と問題児な面がある為、呼び出されても納得できるが風紀委員長が呼び出される理由に関してはさっぱり見当が付かない。いや、アイツも部類的には問題児に入るだろうがそれでも弁えるところはしっかり弁えている人間だ。

 

「時期的に学位戦の話だと思う」

 

「確かにそれが一番可能性は高そうだよね」

 

「なら俺に話が来てないってことは、もしかして意見通ったか?」

 

 俺を無視してあの二人が呼ばれたということは、あの二人が参加するから俺は必要無いということじゃないだろうか?あんなアンケート期待していなかったが、意外と書いてみるもんだな。

 

「いや、あんまり期待しない方がいいと思うよ。それにロークは学位戦もしっかり勝ってるし」

 

「それ関係あるのか?」 

 

 学位戦はただの実技の成績を付ける為の試合の筈だ。何故、大精霊演舞祭の話題の中に出てくるんだ。

 

「ローク、掲示板をしっかり見てないな?今回の大精霊演舞祭の出場者は学位戦の試合内容も考慮されるんだぞ」

 

「えっ、そうなの?」   

 

「ああ、だから普段よりもミーシャも試合を見に来てるし、彼女が来ない時も生徒会役員の誰かは試合を確認してる」

 

 

 確かにここ最近のミーシャはよく学位戦を見に来るなとは思っていたが、まさかそんな理由があったとは……。

 

「その影響もあって、今回の学位戦はどの学生もいつも以上に本気で挑んでいるみたいだしね」

  

「なるほど。だから皆、やたらと学位戦の結果に一喜一憂してたのか…」

 

 今考えてみると俺が助けたあの一年生もいくら初戦とは言え、一回負けただけでやたらとショックを受けていたなと思っていたが大精霊演舞祭への出場権も掛かっていたと考えれば納得できる。

 

「まぁ、勝敗だけで決めてる訳じゃなくて試合内容もしっかり見て判断してるらしいから結果が全てという訳では無いみたいだけどね」

 

「お姫様、本気だな……」

 

 選抜方法を聞いているだけでもミーシャの大精霊演舞祭に対しての気合の入れようが相当なものだと分かる。そもそも生徒会の業務の多忙を考えると学位戦の見学する時間を作ることすら相当大変な筈だが……。

 

「まぁ、ユートレア学院はここのところ碌な結果を残せてないしな。生徒会長になったからにはミーシャもどうにかしたいんだろ」

 

「そんなにウチ、ダメなの?」

 

「ああ、ここ数回はベスト3どころかベスト8にすらユートレア学院は名前を残せていない」

 

「マジか…」

 

 ユートレア学院と言えばロムス王国でも唯一と言って良い精霊師育成機関な為、てっきりもっと高成績を納めているものかと思っていたが、どうやら大精霊演舞祭に関しては成績が良くないらしい。

 

「それでこのままだと流石に学院の評判にも響くと焦ったところに僕たちの代が現れたからね。まぁ、力も入れたくなるんじゃない?」

 

「とんだタイミングで入学しちまったな…」

 

 よりによって大精霊演舞祭での成績不振の時に入ってしまうとは。何だか尽く運が無い気がするが、俺はそういう星の下に生まれてしまったのだろうか?

 

「寧ろ僕からすれば喜ばしいタイミングだけどね。嘆くのは君くらいだよ」

 

「いや、そんなことは——ある……か」

 

 そんなことは無いと言い返そうとしたが、よくよく考えてみれば俺も契約精霊がいれば普通に出ようと思う気がする。横でリリーもウンウンと首を縦に振っているし、俺の考え方が圧倒的少数派だろう。

 

「うん、普通は出るよ」

 

「出る」

 

「……確かにそうだよな」

 

 実力があるなら普通は出ようと思う筈だ。基本的にメリットしかないし、そう考えると進んで辞退しようとする奴なんて俺ぐらいな気がしてきた。

 

「ロークはどうしてそんなに出たくないの?」

 

「いや、それは………」

 

 リリーの純粋な疑問に俺は咄嗟に言い訳が思い付かず、言葉に詰まる。ガレスは事情を知っているから良いが、何も知らないリリーに理由を説明する訳にはいかない。

 

「どうせ面倒だとか言うんだろ。学位戦と講義で精一杯だって」

 

「…うっせぇ。俺は毎回、学位戦も講義も全力でやってんだよ」

 

 どうするかなと悩んでいるとガレスから揶揄うような形で助け舟が出されたので有難く乗って上手く誤魔化す。

 

「………ふーん」

 

 俺の答えにリリーは暫くジッとこちらを見つめていたが、やがて全く納得はしてなさそうな表情を浮かべやながらも一応頷くとリリーは空になった食器のトレーを持って席を立った。

 

 リリーの小さな背中を見送っていたガレスは小さく息を吐く。

 

「……リリーには精霊のこと話しても良いんじゃないか?彼女なら君のことをそれでどうこう思うことは無いと思うけど」

 

「………そうだな、俺もそう思うよ。けど……」

 

「無理に話せとは言わないよ。一番は君が話したくなった時に話すことだしね」

 

「…………」

 

 仮に話したことでもし気味悪がられたら、侮蔑されたら、避けられたら…。不思議なもので頭の中に浮かび上がる未来はそういう嫌な可能性ばかりだ。リリーの性格上、それはほぼ無い筈だと思っていても、たった数%の可能性があるだけで途端に恐ろしくなってくる。

 

「そもそも今は恐ろしいことに誤魔化せてるしね」

 

「本当にな。俺もビックリしてるよ」

 

 周囲に力を隠しているという余計な誤解こそ生んでいるが、周囲の手助けもあり、こうして無事に二年生を迎えることができた。個人的には一年生で退学させられることすら考えていたが本当に世の中、分からないもんだ。

 

「アレアス様、少し宜しいですか?」

 

「えっ、はい。って生徒会秘書さんか」

 

 背後から声を掛けられて振り返ると生徒会秘書を務める少女、セナ・ティアドールが立っていた。

 

「何か用ですか?」

 

「申し訳ございませんが今日の放課後、生徒会室に来て頂くことは可能ですか?」

 

「今日?」

 

「はい、もし今日はご都合が悪ければ別日でも構いませんが如何でしょうか?」

 

「……………」

 

 思わず視線をガレスへと向けるとガレスは「ほらね?」と言わんばかりの表情で肩を竦めた。

 

「………いや、今日で大丈夫」 

 

「ありがとうございます。では、放課後お待ちしております」

 

 セナは礼儀正しく丁寧に頭を下げると踵を返して食堂から去っていく。俺はその背を見送りながら小さく呟いた。

 

「なんか申請書でも提出し忘れたかな?」

 

「ほぼ間違いなく学位戦の話だろ」

 ————ですよね。

 

*****

 

 時は流れ、放課後。

 学位戦で生徒たちの多くが闘技場へと足を運んでいる中、俺は生徒会室へと向けて歩いているとその途中、あまり会いたくない後輩と遭遇した。

 

「あ、ローク先輩」

 

「げっ」

 

「その反応は傷付くよ、先輩」

 

 思わず顔を顰める俺に後輩、月影燈は不満を漏らすがその表情は言葉とは裏腹に傷付いている様子は無く、寧ろ楽しそうだった。

 

「前の試合見たよ。とても面白かった」

 

「何だか素直に喜べない感想だな」

 

 面白いってなんだ、面白いって。

 貶してるのか褒めてるのか分からない微妙な言葉のチョイスで試合の感想を述べられた俺は何とも言えない表情を浮かべる。

 

「褒め言葉だよ、先輩」

 

「ならもっと分かりやすく褒めてくれ」

 

 揶揄うように笑う後輩に思わずため息を漏らしていると燈が俺の顔を見て少し気になった様子で首を傾げる。

 

「ところで先輩、何だか元気ないね?何かあったの?」

 

「強いて言えばお前がまた学位戦の時みたいに暴れないか心配なんだよ」

 

「アレは学院の学生の実力を見たかっただけなんだけど、流石に反省してる」

 

 どうやらあの後、しっかりレイア達が注意してくれたらしく燈の表情からは少なからず反省の色が見えた。  

 

「それなら良いけど流石に前みたいなことはやめてね。肝が冷えるから」

 

「気を付ける」 

 

「なら良し。あと友達とは仲良くしなよ」

 

 燈はコクリと首を縦に振ってくれたことを確認した俺はそのまま話を終わらせ、足早に廊下を歩き出す。この子は今年入って来た一年生の中でも明らかに異質だ。さっさと逃げるに限る。

 

「…………」

 

「…………」

 

 再び生徒会室と向かって歩いていると付かず離れず一定の距離からコツコツと後ろから追いかけて来る足音が聞こえてくる。

 

「………あの」

 

「………なに?」  

 

 振り返ると先程までさほど変わらない距離にニコニコと楽しそうに笑う燈が立つ姿が目に入る。

 

「………何で付いてくるの?」

 

「闘技場に向かう訳じゃ無さそうだし、どこに行くのかなと思って」

 

「……………」 

 

 笑みこそ浮かべているがその瞳からは逃さないと言わんばかりの眼力が放たれており、思わず気圧されてしまう。

 

「………そんな気になる?」

 

「うん、ローク先輩のことは凄く気になる」

 

「…………生徒会室に行くんだよ」

 

 何だか聞きようによっては勘違いを産み出しそうな言葉に僅かに口籠るが、このまま生徒会室にまでついて来られても困るので正直に行き先を告げた。

  

「それって最近、呼び出されてた二年生の三位と四位の人と同じ理由?」

 

「どうだろうな。アイツらとは微妙に違う気はするけど」

 

 今回の件が大精霊演舞祭のことだと考えると彼らはポジティブな理由で呼び出され、俺はネガティブな理由で呼び出されている気がする。というか振り返ると良い理由で生徒会室に呼ばれたことはほぼ無い気がする。

 

「私も付いて行って良い?」

 

「ダメに決まってんだろ」 

 

 そもそも付いて来てどうする?ミーシャに叱られる俺の情けない姿を見たいのか?

 

「えー」

 

「それよりもお前はさっさと学位戦を見に行きなさい。俺に付いて来るよりよっぽど有意義だよ」

 

「そんなことは無い」

 

「あるわ。ほら、良いからさっさと行け。学位戦の観戦ほど有意義な時間は無いぞ」

 

 学生たちによる本気の試合は毎度のことながら見ていて飽きないし、得るものも多い。特に俺のような半端者は学位戦で試行錯誤しながら戦う学生たちの姿を見て新しい戦法を思い付くことも多々ある。

 

「えぇ〜、先輩と一緒に行きたい」

 

「やかましい。良いからさっさと行け」

 

「おや、少し珍しい組み合わせですね」

 

 なかなか去る様子のない燈をシッシッと追い払おうとしていると俺と同じく生徒会室に向かおうとしていたのか書類を手にしたミーシャが現れた。

 

「何の話をされてたのですか?」

 

「私も一緒に生徒か——」

 

「学位戦は見ておいた方が良いってアドバイスをしてたんだ」

 

「なるほど、先輩らしい良いアドバイスですね」

 

 余計なことを口にしようとした燈の頭を叩き、慌てて言葉を挟み込むとミーシャは納得したように頷く。

 

 俺はミーシャに「失礼」と前置きした上でサッと燈の頭を掴むとそのまま近付いて小声で会話を始める。

 

「……何するの」

 

「後でなんでも付き合ってやるから今は大人しく帰ってくれ、本当に」

 

「…!分かった、約束ね」

 

「あ、待って。何でもはマズい、ちょっと条件を——」

 

「生徒会長、私はこれで失礼しますね」

 

 面倒になって咄嗟に何でもと言ってしまったが、この子を相手に無条件はマズい。そう思い直して条件を付けたそうとしたが、その時には既に俺の側を離れて嬉しそうな笑みを浮かべながらミーシャの横を通り過ぎて去っていく。

 

 あまりに素早く静かな身のこなしだった。もう声を掛ける暇さえ無かった。

 

「…………」

 

「何だか顔色が悪いみたいですが、大丈夫ですか?」

 

「アハハ、大丈夫大丈夫」

 

 俺の顔色を見て心配そうな表情を浮かべるミーシャに俺は問題無いと努めて笑みを浮かべながら答える。

 

「セナから話は聞いてますよね?折角ですからこのまま生徒会室で話をしようと思っていたのですが、体調が優れないようでしたら後日でも」

 

「大丈夫、超元気。問題ナシ」

 

「……?なら良いですが」

 

 訝しげな表情を浮かべながらも俺が大丈夫ならと納得したミーシャは「行きますよ」と一声掛けて歩き出す。俺も無言でその後に続くのだった。

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