真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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コロなったりして更新がだいぶ遅れました。申し訳ございません。
また流行ってみるみたいなので皆さんも気を付けてください。


第41話

 

 

「……あれ、ここは?」

 

 気付くと周囲の景色が森から暗闇へと変化していた。

 つい先程まで契約の為にジュデッカの森の中で結界を張って邪霊との契約に挑んでいた筈だが、何がどうなっているんだ。

 

「師匠?ガレス?みんなは……?」

 

 目の前にいた筈の邪霊、見守っていた師匠やガレス、加えて結界を張っていた精霊達の姿と周囲にいた筈の相手が誰一人としていない。何処に行ったのだろうか?

 

「………いや、そもそも此処はどこだ?」

 

 この謎の空間に疑問を抱きながら記憶を思い返す。

 確か少し前まで邪霊と契約を行おうとして、それで意味不明な言葉が頭の中に流れてきてパニック状態になって………。

 

 

『ダメだよ、あんなのと契約しちゃ』

 

「………え、誰?」

 

 

 背後から声が聞こえてきた為、振り返ると誰かが暗闇の中に立っていた。闇で顔が隠れている為、顔立ちまでは分からないが声やシルエット的に女の子のようだった。

 

 

『あんなの、貴方に相応しくないよ』

 

「いや、さっきから何を言って………いや、そもそもお前は誰だ?」

 

 何故か俺を知ってるような口調で喋っているが、こちらにはまるで覚えが無い。

 

 

 ………いや、本当にそうか?

 何故かは分からないが、彼女からどことなく懐かしい雰囲気のようなものを感じる。もしかして、俺が忘れているだけで何処かで会ったことがあるのだろうか?

 

『……………』

 

 事実、目の前の俺の言葉に何処となく女の子から不満げな気配が放たれている。どうやら不興を買ったらしい。

 

『………はぁ、仕方ないか』

 

「……なんか、ごめん?」

 

『まぁ、いいよ。私は優しいから大目に見てあげる』

 

 そう言うと女の子はゆっくりと近付いてくる。

 やがて俺の目の前に立つと口角を上げながら俺に向かって指を指す。

 

『けど、あんまり目移りすると許さないからね。■■■■■』

 

『……は?今、なんて————-』

 

 

*****

 

 顔面に生温かいザラリとした感触と共に目を開けると舌を出した巨大な狼の精霊、ベオウルフの顔が目の前にあった。

 

「ハッハッハッ」

 

「うぉッ!ベオウルフ!?」

 

「どうやら正気には戻ったようですね」

 

 起き上がると同時に背後から聞こえてきた声に視線を向けるとカボチャ頭の精霊、ジャック・オ・ランタンがランタンを構えて立っていた。

 

「ジャックさん?」

 

「お久しぶりですね、ローク君」

 

「何でアンタが出てきて———ッ!?」

 

 師匠の契約精霊が顕現していることに困惑していると全身に痛みが走り、思わず顔を顰める。視線を身体へと向ければ何故か傷だらけだし、右足首に関しては赤く染まった包帯が巻かれていた。

 

「えっ、何で俺こんな傷だらけなの?」

 

「君が暴れたんだよ、ローク」

 

 俺の疑問に答えたのは地面に腰を下ろしていたガレスだった。

 

「俺が暴れたってどういう………」

 

 どういう意味だと尋ねようとした俺はそこで俺と同じようにボロボロになっているガレスの身体を見て言葉を詰まらせる。

 

「その傷、俺が……やったのか?」

 

「君本人かと言われると少し怪しいところはあるけどね」

 

「……師匠」

 

 ガレスの背後から姿を現した師匠へと俺は視線を向ける。師匠の身体は怪我という怪我こそ負っていないが、纏っている衣服には土埃が付いていたり、一部が破けていたりとそれなりの荒事があったことを察することのできる姿をしている。

 

「俺は……邪霊に飲まれたんですか?」

 

「さて、どうだろうね。一概に邪霊が原因とも言えなそうだけど……記憶はどの辺まで残ってるかな?」

 

「邪霊から訳の分からない言葉が流れてきたところまでは…。その後はほとんど何も……」

 

 師匠からの質問に俺は頭を抑えながら答える。

 実際にはその後に誰かと話したような気がするのだが、話した相手の容姿も内容もまるで思い出せない。俺の気のせいだろうか?

 

「………ジャック」

 

「少なくとも先程までの嫌な気配は消えてますよ」

 

 師匠が視線をジャックへと向けると彼はその意図を察した様子でランタンを揺らしながらそう述べる。

 ジャックの返事を聞いた師匠は何かが気になるらしく顎に手を添えて何かを考え込む。

 

「あの…師匠、邪霊はどうなったんですか?」

 

 

 あまり師匠の考え事の邪魔はしたくはないがどうしても姿の見えない邪霊のことが気になって仕方がない。俺が尋ねると師匠は考えるのを中断して懐に手を伸ばすと封霊石を取り出した。

 

 

「無事だよ。一度こっちの封霊石に閉じ込めさせて貰ってるけどね」

 

 

 黒い輝きを放つ封霊石を見せながら答えてくれた師匠に俺は僅かに安堵の息を漏らす。てっきり送還させられたかと思ったが、無事で良かった。

 

 いや、操られてたかも知れないと考えるとそんなに喜ぶことでも無いのだろうか?

 

「師匠、ガレス、それにベオウルフにジャックも本当にすまない。あれだけ意気込んで置いてこの様だ。申し開きも無い……」

 

「まぁ、君の思いも分かるしね。何はともあれお互い無事だったんだし、そこまで深く思い込む必要は無いさ」

 

 頭を下げる俺にそう言ってガレスは苦笑を浮かべた。

 

「それよりもロークこそ身体は大丈夫なのか?オーウェンさんの契約精霊の技をモロに浴びてたけど……」

 

「ああ、だから俺こんなボロボロなのね……」

 

 どうりで全身が痛む訳である。納得だ。

 

「悪いね、あまり加減する訳にもいかなかったからね」

 

 師匠の言葉に上空から応じてバサリと四枚の青い巨翼を羽ばたかせた雷精霊、サンダーバードがゆっくりと地面に降りて来た。

 

「サンダーバードまで呼び出してたんですね…」

 

「ああ、コイツは加減が下手だからね。お前を焼き殺しかねない」

 

「余計なお世話ですよ」

 

 師匠の二体目の契約精霊であるサンダーバード。

 シグルムと並ぶ高位精霊であるこの精霊の一撃を浴びてこの程度で済んでいるということは相当加減して攻撃してくれたのだろう。

 

 

「まぁ、君が大暴れしてくれたお陰で僕の簡易契約用の精霊を何体も送還されたけど、とりあえずはガレス君の言う通り全員無事だったことを喜ぼう」

 

「………俺、そんなに暴れたんですか?」

 

「ああ、見事な暴れっぷりだったよ」

 

 

 俺の質問に頷く師匠が同意を求めるようにガレスへと視線を向けるとガレスもその通りだと頷いた。

 

 

「………本当に申し訳ございませんでした」

 

 俺は再び頭を下げて謝罪する。

 師匠の所持していた精霊を送還させていたとは………どうやら俺が想像している以上に師匠に迷惑を掛けていたようだ。

 

 

「もう二度と邪霊との契約を試そうとは致しません……」

 

「まぁ、失った分の精霊の補完は後ほど考えるとして、それより幾つか気になることがあるから確認しても良いかな?」

 

「はい、勿論です」

 

 俺が頷くと師匠は幾つかの質問を投げかけてきた。

 

「君は契約の儀を試した時に邪霊からの声を聴いたんだよね?」

 

「え……はい、まぁ………」

 

 マジで何言ってるか分かんなかったけど。

 

「……その時に邪霊から敵意や悪意のようなものは感じたかい?」

 

「……いえ、感じませんでした」

 

「…………」

 

 そう、俺は邪霊から敵意のようなものを感じなかった。

 だからこそ俺は契約できるんじゃないかと期待を抱いたのだが、考えてみればそれが失敗の始まりだったのだろう。

 

 今までに邪霊と契約して気が狂った者達も俺のように油断した為に悲劇的な末路を辿ってしまったのだと今ならば分かる。

 

「……最後に一つ、ロークはこの邪霊以外に過去、邪霊と遭遇したことはある?」

 

「……いえ、多分ですけど…無い筈です」

 

「…そうか」

 

 一連の質問を終えると師匠は頷いて俺に邪霊の封じられた封霊石を投げ渡してきた。

 

 えっ。

 

「うぉッ!?」

 

「その子はロークに返しておくよ。どうやら少なからずその子は君に懐いているみたいだし」

 

「……いえ、ですけど」

 

「ただ当たり前だけど契約を試そうとはしないように。どうしても力が必要になったら、問題なく行えた簡易契約で留めること。良いね?」

 

「…………俺に預けて良いんですか?」

 

 こんな事態をやらかした俺が邪霊を預かっていて良いのだろうか。そう思い、尋ねると師匠は何を今更と呆れたような表情を浮かべた。

 

「契約して無かろうと自分で拾った精霊の面倒は自分で見るものだよ。君がどうしても面倒見たく無いなら僕が預かるけどね」

 

「けど、オーウェンさん。ロークと一緒だと邪霊が暴れるんじゃ…」

 

「恐らくその心配は無いよ。少なくとも呼び出した時点で邪霊が暴れることは無かったし、暴走も精霊契約を行おうとしたタイミングまでは起きなかった。契約の儀さえ下手に試さなければ大丈夫さ」

 

「…………」   

 

 師匠の言葉を聞きながら俺はジッと手渡された邪霊の封じられた封霊石を見つめる。

 

 本当に大丈夫なのだろうか?

 コイツを預かっていて、本当に俺は暴れたりしないだろうか。

 

 昨日までは大して心配していなかったことが今は不安で仕方がない。俺は何でこんな爆弾を抱えながら今まで生活できていたのかと不思議に思えてしまう程だ。

 

「ローク」

 

 と封霊石を見つめながら固まっている俺を見かねたのか師匠が声を掛けてきた。

 

「信じられないかい?」

 

「……えっ?」 

 

「その邪霊が。それに自分自身もかな?」

 

「…………」

 

 図星を突かれてた俺が思わず口を噤むと師匠は面白そうに笑う。

 

「ロークにしては珍しいじゃないか。随分と臆病だね」

 

「いや、なるでしょ。自分なら邪霊と契約できると思い込んでこの様ですよ?」

 

 結局のところ、俺は契約のできない精霊師としては半人前の人間であると言うことが改めて証明されただけなのだが、それでも一縷の望みを掛けて挑んだ俺としては色々とショックも大きかった。

 

「……精霊と契約する上で一番大切なものが何かは分かるかい?」

 

「………いきなり何ですか?」

 

「答えは互いの信頼。魂の繋がりを結び、契約の下で文字通り一心同体となって互いに信頼し合うことが前提となる」

 

「………信頼…」

 

 つまり精霊契約を結ぶことができなかった俺はこの邪霊に信頼されていないということだろうか?まぁ、殺し合った仲だし当然と言えば当然なのだろうが……。

 

「けれど、これは簡易契約においても言えることだよ」

 

「………!」

 

「簡易契約、一時的な契約だとしても力の貸し借りをすることは信頼関係が無ければ決して成り立つことは無い」

 

「………あるんですかね?俺とコイツの間にも」

 

「少なからずあったからこそ、簡易契約が結べたんじゃないか?」

 

「……………」

 

 そう……なのだろうか。

 

「そもそも無いならどうにかして信頼を得ようとするのがローク・アレアスという人間じゃないのかい?」

 

「……ッ!」

 

 掛けられた言葉に俺がハッと顔を上げると師匠は相変わらず笑みを浮かべていた。

 

「僕だって何も考えずにその子を渡した訳じゃない。君なら問題無いと信じているからこそ託したんだ」

 

「………師匠」

 

「それとも、そんなに不安なら僕が預かるかい?それでも構わないけど」

 

 そう言って手を伸ばしてくる師匠に俺は僅かに息を吐くとゆっくりと立ち上がり首を横に振る。

 

 そんな言葉を掛けられては俺も言い返さずにはいられなかった。

 

「いえ、俺が預かります。問題ありません」

 

「本当に?」

 

「はい。二度と暴走なんてしませんし、コイツを暴れさせたりも絶対にさせません」

 

 そうだ。一度の失敗で怖気付くなんて俺らしく無い。

 失敗したら次に活かして二度と同じ過ちを犯さないように気を付ければ良いだけの話だ。

 

 今までと何も変わらない。

 普段通り、いつも通りに努力をしていけば良いだけの話だ。

 

「本人が構わないなら僕としても構わないけど君だけの問題という訳じゃないからね。ガレス君は?」

 

「まぁ、本人がそこまで言うのなら僕も良いと思います。さっきのロークなら不安でしたけど、今のロークなら特に思うことは無いです」

 

 師匠からの問いに問題無いとガレスは笑う。

 どうやらガレスが不安を抱いた理由は先程まで俺の情けない様子を見ていたことが原因だったようだ。

 

「まぁ、それに今回は初見だったから一本取られたけどオーウェンさんとの戦いも見せて貰ったからね。次こそは僕が斬ってやるよ」

 

「斬るのは勘弁して欲しいんだけどな…」

 

 普通に死んじゃうから峰打ちにして欲しいんだが……まぁ、そもそも暴走しなければ良いだけの話だし問題無いだろう。

 

「……どうやら無事に話も付いたみたいだし帰ろうか。ついでご飯でもどうかな?奢ってあげるよ、ロークが」

 

「えっ、俺ですか!?」

 

「ありがとうございます、是非」

 

「よし、それじゃ行こう。サンダーバード!」

 

「えっ、マジで俺奢るんですか?」

 

 

 こうして俺の試みは無事?失敗に思わった。

 やはり邪霊が相手ということもあり、上手くはいかなかったがそれでも得たものと少なからずあった。

 

 今回の失敗をしっかりと覚え、次の糧にすることを誓いながら俺はサンダーバードの背に乗って学院都市ガラデアへと戻った。

 

 

 ちなみに食事は師匠の行きつけだという学生では払える訳もない超高級店に連れて行かれ、俺に貸しという形で師匠が代わりに払った。

 

 

 

 俺はどうにかして踏み倒そうともう一つの誓いを立てるのだった。

 

 

 

 

 

 

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