真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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読者の皆様、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今年は年明けから震災など不吉なことがありましたね。
被災地の方々はご無事でしょうか?
残念ながら私では大したことはできませんが、被災地の方々の無事を祈っております。

改めてまして新年初更新ですが、今回は番外編として今更ながらのクリスマスネタとなります(時系列は気にしないで下さい)
本当は一話で終わらせる気でしたが、思ったより長くなってしまい二話構成になりそうです。

という訳で前置きが長くなりましたが番外編です。
ちなみに皆さん、おみくじ引きましたか?
私は末吉でした。


番外編

 聖夜祭。

 

 それはこのロムス王国を含めて世界各国様々な都市で行われる祝祭の名でこの世界における一大イベントとである。

 その起源は遥か昔に存在したと言われるとある聖人の命日に感謝と祈りを行う為の祝祭だと言われている。けれども長い月日が経った結果、今や聖人はその名前すら滅多に語られなくなり、聖夜祭は今となってはだた人々が楽しく盛り上がる為だけの理由として利用されているのが実情だった。

 

 そして当然ながらこの学院都市においても聖夜祭は毎年の如く実施されており、今年もそんな聖夜祭の目前に迫ってきていた。

 

「とても嘆かわしいとは思わないか?ガレス」

 

「何だい突然」

 

 どことなく怒りを感じるロークの言葉にガレスは若干、困惑しながら呟く。

 

 今、二人がいる場所は学院都市内に存在するとある喫茶店内だった。店内は聖夜祭前日ということもあってか普段とは打って変わり色鮮やかな装飾が付けられていた。

 加えて客層もいつもより男女割合が多く、中にはカップルであることを周囲にアピールするかの如くイチャイチャしている者達までいる始末だ。

 

 前日でこのあり様だ。

 聖夜祭、当日となれば一体どのような事態になるかなど想像するに難くない。

 

「そもそも聖夜祭は故人に祈りを捧げる日だろ?何でみんな教会に行かずに宿屋でイチャコラしてるんだ?おかしいだろ」

 

「とりあえず君の怒りは伝ってきたよ」

 

 堪え切れない怒りを滲ませながら聖夜祭の過ごし方を語るロークの話を聞きながらガレスは注文したコーヒーを喉に流し込む。

 

「というか、聖夜祭の過ごし方なんて人それぞれだろう」

 

「ああ、確かにその通りだ。過ごし方なんて人それぞれだ、それこそ個人の自由だろう。けれど、お前は気付かないか?」

 

「いや、分からないけど………何のことだ?」

 

 言っていることがまるで理解できず、ガレスが尋ね返すとロークは視線でガラスの向こう側の景色を見るように促され、言われるがままに外へと視線を向けてみると腕を組みながら楽しそうに歩く何組ものカップル達の姿やカップル割引きと書かれた看板やハートを彷彿とさせるような装飾などがちらほらと視界に入った。

 

 

「…………それで?」

 

「この光景を見てお前は何も感じないのか!?この圧倒的な同調圧力をッ!!」

 

「同調…圧力??」

 

「見ろよッ!どこを見てもカップルばかりだ!店も何かと恋人をターゲットにした限定商品を販売してるし、一人ぼっちの男は何故かやたらと肩身が狭いし、ホントに何なのッ!?この日はカップルであることが正義なの!?彼女のいない俺達は外に出るなってことか!?」

 

「被害妄想激し過ぎでしょ。そんなことは無いって」

 

 どう見ても情緒不安定になっているロークにガレスは呆れながら答える。決して聖夜祭を出歩く人がカップルばかりな訳では無い、というか寧ろカップルは参加する大勢の人々の中の一部に過ぎないだろう。

 

「お前には分からないんだ…。俺と違ってモテるお前には……ッ!!」

 

「別にそんなことは———」

 

「なら言ってみろよッ!今年は何人の女性から聖夜祭に誘われているんでしょうか!?」

 

「5人」

 

「ほら、やっぱりなッ!!」

 

 邪霊との簡易契約で精神汚染でも受けたのかと疑いたくなるような荒ぶり方をするロークに引きながらガレスは必死に宥める。

 

「落ち着きなよ……」

 

「そりゃ、この空気の中でも余裕がある訳だ!いいな!羨ましいなぁッ!!」

 

「ダメだこりゃ……」

 

 どうやら完全にハイになってしまっているようだ。ロークの頭を霊術で物理的に冷やそうかなと真剣に検討をしようとしたガレスはそこでふと昨年のことを思い出す。

 

 

「そう言えば君だって昨年はリリーと一緒に大市場で聖夜祭を回ってたよね?」

 

「ああ、あの時は封霊石のセール販売があったからな。聖夜祭に参加する為に断腸の思いで貴重な霊術書を犠牲にしてリリーを誘ったんだよ」

 

「ならまた今回だってリリーを誘えば良いじゃないか」

 

「いや、無理だよ」

 

 ガレスの提案をロークは首を横に振る。

 

「どうして?」

 

「今、リリーの目に叶いそうな霊術書持ってないし、何より前回一緒に回った時はアイツつまんなそうにしてたからな。流石に二度は誘えん」

 

「そうなの?」

 

「ああ、話し掛けても碌に返事来ないし、何かずっと心ここに在らずって感じでな。アイツは俺以上に聖夜祭のあの甘過ぎる空気が合わなかったのかも知れない。俺の身勝手の為に申し訳ないことをした」

 

「へぇ……」

 

 ロークの説明にどこか釈然としない気持ちを抱きながらもガレスはとりあえず納得して頷く。確か自身の記憶が正しければ翌日にリリーと会った時の彼女の機嫌は決して悪く無かったと思うが………記憶違いだろうか?

 

「というか、別に良いじゃん。一人でも」

 

「なんかこう周囲からの視線が気になるんだよ。うわー、アイツ聖夜祭なのにボッチだ!って嘲笑われている気がして………」

 

「絶対に気のせいだと思うけど……」

 

 恐らく周囲の人々もロークのことなど気にしていないだろう。というか、ロークは契約精霊がいないことを周囲にバレないように学院生活をしていた影響で周囲の反応に対してやたらと過敏になっている節がある。

 

「まぁ、そんなに嫌なら聖夜祭は家に引き篭もったらどう?」

 

「……それもそうだな」

 

 ごもっともなガレスの意見に頷きながらロークは冷め切った紅茶を一気に流し込む。確かに自室に篭っていれば聖夜祭を闊歩するカップル達の視線に晒されることも無いだろう。

 

 

「そうだな、今年の聖夜祭は引き篭もるか……」

 

 ロークは改めて呟くと今年の聖夜祭は大人しく家でゴロゴロしていようと決心する。

 

 

 

 

 

 

 そして迎えた聖夜祭、当日。

 

「聖夜祭、やはり綺麗ですね…」

 

「…………」

 

 陽が落ちて暗くなり始めた空の下、ロークはいつかのようにフードを被って変装した姿のミーシャと共に微精霊を利用した煌びやかなイルミネーションに象られた街の前に立っていた。

 

「では、聖夜祭限定カーバンクルのぬいぐるみを得るべく店へと向かいましょうか」

 

「………いやいや」

 

 ———どうしてこうなった?

 

 ロークは内心で自問自答を繰り返す。

 今日は家でゴロゴロする予定だった筈なのに何故こんなことになってしまったのだろうか?

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、どうかしましたって……何で俺が———」

 

「忘れましたか?一つだけ私の言うことを何でも聞くんですよね?」

 

「…………」

 

 そうでした。

 彼女が言っているのは新入生歓迎会の時の不祥事の後処理の時の話のことだ。ミーシャに何でも言うことを一つ聞くという約束を取り付けたのだが……今更ながら何でオーグンの為にあんな条件を呑んでしまったのだろうか?馬鹿じゃないの?

 

「という訳で行きましょう。また案内をお願いしますね」

 

「はい、畏まりました……」

 

 拒否をする権利は失っている。姫の思うがままに従うしか無い。こうしてロークの波乱の聖夜祭が幕開けたのだった。

 

 

*****

 

「やはり今日は普段に増して人が多いですね…」

 

「そりゃ、聖夜祭だからな……」

 

 煌びやかな街の中を歩く人の波をキョロキョロと興味深そうに眺めながら呟くミーシャにロークは予想通りと言わんばかりの表情で見つめながら答える。

 

 前日ですらカップルで溢れ返っていたのだ。当日がどのような状況になるかなど来る前から容易に想像できていた。

 

「……きゃっ!?」

 

「おっと」

 

 周囲に気を取られて人の波に飲まれ、遠くに流れそうになるミーシャの手を慌てて掴み取ると引き寄せる。

 

「大丈夫か?」

 

「……あ、ありがとうございます」

 

「いや、それよりも人の行き交いが凄いから気を付けて」

 

「は、はい…」

 

 何やら動揺した様子の彼女で硬直するミーシャの様子にロークは内心で焦り出す。

 

 ————あれ、力強く引っ張っちゃったせいで怒った?これもしかして不敬罪?いやけど試合の時は天使従えて暴れてるしこれくらいなら大丈夫だよね?

 

「す、すみませんでした」

 

「何のことですか??」

 

 慌ててロークが謝罪の言葉を述べるとミーシャは不思議そうに首を傾げる。どうやら怒っている訳では無いらしくロークは内心でホッと安堵の息を吐く。

 

「いや、何でもない。とりあえずこの人混みだと一度離れると合流できるか分からないから注意して」

 

「分かりました」

 

 ロークの指摘にミーシャはコクリと頷くと彼女は手を伸ばすとおずおずとロークの手をギュッと掴んだ。

 

 ————何故?

 

 柔らかい手の感触と温かさに一瞬、ロークの頭が真っ白に染まる。

 

「あの姫様?」

 

「離れるなと言ったので……違いましたか?」

 

「えっ、いや……えっと……」

 

 ロークは思わず言葉に詰まる。

 確かに離れるなとは言ったが別にここまでして欲しかった訳では無い。というか、何ならドギマギしちゃうからやめて欲しい。

 

「…………」

 

 しかし、ミーシャから不安げな視線を向けられると流石に手を離せという言葉を口に出すことはできず、暫しの葛藤の末にロークは息を吐くと彼女の柔らかい手を掴み返す。

 

「いや、とにかく離れないように」

 

「はい、よろしくお願いしますね」

 

 ニコッと微笑むミーシャにロークは若干恥ずかしげに顔を背けながら目的の店へと向かって歩き出す。

 

 カップルなんて全員滅びろなんて思っていたが、側から見れば間違いなく自分が滅ぼされる側だろう。しかもフードで顔を隠しているとはいえ、ミーシャの美貌はそれでも当然と言うべきか目立っている。

 

 何なら横を通り過ぎるカップルの男の方がミーシャの容姿に吸い寄せられて彼女にぶん殴られている者までいる。

 

 これ、ミーシャを連れてこの街を歩くだけでカップルを破綻させているなとミーシャの美しさに色んな意味で戦慄しているとふと、その気配に気付く。

 

「………ん?」

 

 ロークの後方の建物の屋根の上にちょこんと立つ小鳥の風精霊。見たところ野良精霊っぽいが、気のせいかやたらと精霊の視線がこちらに向いてる気がする……。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや……何でも」

 

 ミーシャに尋ねられたロークは首を横に振る。

 多分、気のせいだろう。

 

 そう思いながら再びミーシャの手を引っ張り、歩みを再開する。

 

 

 

「やっぱり手を繋いでる。彼女?」

 

「ねぇ、僕帰っていい?」

 

 

 そんなローク達の後方。

 彼らをスニーキングでしている二人の男女の姿があった。

 

 

 

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