真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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皆様、感想ありがとうございます。
それから書籍の購入報告が聞けてとても嬉しいです。買って頂き、ありがとうございます。

2巻も出す予定ですので、また楽しみにお待ち頂ければと思っております。

では本編です。


第56話

『さぁ、今度は女性の部による借り物競争が繰り広げられています!果たして男性の部のようなハプニングは起こるのか!?』

 

「先輩、前評判を覆して見事にボロ負けしたね」

 

 また霊輪祭で借り物競争をする時があればしっかりとお題の内容の検閲しようと誓いを立てたロークが引き続き行われている借り物競争の実況を聞きながら他の競技の準備に移っていると一緒に準備をしている燈から声を掛けられる。

 

「うるせぇ」

 

 燈に揶揄うような口調で言われたロークは顔を顰めながら言う。

 それは普段、褒め言葉として言われることが多いロークからすれば珍しく悪い意味で使われていた。

 

「そもそもアレは俺のせいじゃない。絶対に違う」

 

「えぇ〜、そうなの?」 

 

 ロークは首を横に振りながら断固として自分に責任は無いと訴える。

 

「お題がゴミだった。とにかくゴミだった」

 

「確かにずっとキレてたもんね」

 

 ロークが何度も地面にお題の紙を叩き付ける姿を思い返しながら燈は頷く。シュールな光景ではあったが、側から見ている分にはとても面白かった。

 

「そう言えばお前も借り物のお題は書いたのか?」

 

「うん、書いたよ」

 

「……ちなみにどんな内容を書いたんだ?」

 

 今までの燈の非常識っぷりを思い返しながらロークは後輩である彼女に尋ねる。もしかしてあのふざけたお題はコイツが書いたものだったりするのだろうか?

 

「んー、確か私が書いたお題は『邪霊を所持している人』とかだったかな?」

 

「それ、ピンポイントで俺じゃん」

 

 思わずロークは突っ込む。

 いや、厳密に言えば微精霊ならアルベルト先生も持っているだろうから決して自分一人と言う訳では無いだろうが……学位戦での出来事を考えると大半の人はこちらに来ることだろう。

 

「うん、もし私が競技出ることになったらこのお題をゲットして先輩捕まえに行こうと思ってさ〜。まぁ、結局出なかったけど」

 

「なんて奴だ…」

 

 どうやら流石に燈が犯人ではなかったようだが、それはそれとして彼女も彼女で厄介なお題を書いていた。

 

「っていうか、もしそのお題引かれたら俺のところに来るのか」

 

「誰か引くかな〜?楽しみだね」

 

「全然楽しみじゃない……」

 

 ニコニコと笑いながら話す燈にロークはどこか疲れた表情を浮かべながら呟く。何なら楽しみどころか嫌な予感までしている。

 

「……なぁ、一ついいか?」

 

「ん?なに?」

 

 最初の元気の無さは何処へやら、霊輪祭の盛り上がりに釣られて元気に絡んでくる燈に呆れていたロークはふと今まで気になっていたことを燈に尋ねることにした。

 

「燈はどうして俺にこんな絡んで来るんだ?」

 

 今までロークが抱いていた疑問。

 何故、燈が自分にここまで執着しているのか。本人の言を信じるならば実力の底が見えないから気になるとか口にしていた筈だが、だとしても少し執着し過ぎな気がした。

 

「嫌なの?」

 

「ウザくはある」

 

「アハハ、先輩は正直だね〜」

 

 ハッキリと告げたロークの言葉に対して燈はショックを受けることも怒ることも無く、楽しそうに笑う。

 

「そうだね、先輩に興味があるからだよ」

 

「まだ俺に興味あるのか?」

 

 ロークは不思議そうに尋ねる。

 契約精霊がいないことが分かり、実力の底が見えている気がしなくも無いが………いや、もしくは発言を信じてないないということも考えられるか。

 

「あるよ、普通に。先輩、面白いし」

 

「……それ、褒め言葉か?」

 

 何だか馬鹿にされているような気がしたロークが疑うように聞くと燈は勿論と即答しながら頷く。  

 

「だって先輩、本当は邪霊と契約しているんでしょ?」

 

「………それ、どこ情報?」

 

「一年の間だと結構、話題になってるよ」

 

「…………」

 

 ———また根も歯もない噂が広がってやがる…。

 

 思わず頭を手で抑えるロークを見て燈は笑いながら話を続ける。

 

「噂の真偽は分からないけど…だとしても私、初めてみたよ。簡易契約でもあんな風に邪霊を使役する精霊師なんて」

 

「まぁ、確かにそれは俺自身びっくりしてるしな」

 

 実際、邪霊を使役できたことはローク自身も驚いていた。

 尤も本当は契約を結ぶことを目論んで失敗した結果の副産物のようなものだが、それでも得られるものは多かった。

 

 とそんなことを思っていると燈がゆっくりと口を開く。

 

「………私の家、っていうより故郷がね、割と風習とか伝統っていうのを重んじる堅苦しくて面倒なところでさ。まぁ、そう言う私自身も割と染まっちゃってるところはあるけど……」

 

「………」

 

 故郷のことを語るにはどこか忌々しさを感じさせる彼女の表情を眺めながらロークは無言で耳を傾ける。

 

「……まぁ、だからかな?そういう常識とか普通に縛られずに戦う先輩って見ていて何だか、ワクワクするんだよね」

 

「……ワクワク?」

 

「うん、ワクワク。なんて言うか……ビックリ箱みたいな感じ?」

 

「……お前、やっぱり先輩を馬鹿にしてるな?」

 

「違うんだけどなぁ。上手く言葉にできないね」

 

 ロークがそう言うと燈は珍しく少し困ったような表情を浮かべながら笑う。そんな燈に対して口にした言葉とは裏腹に特に怒りを抱いていないロークは対する認識を静かに改めていた。

 

「……まぁ、言いたいことは分かったよ。けど、だとしても揶揄いは程々にしてくれ」

 

「えぇ〜」

 

「えぇ〜、じゃな———」

 

「ロークくん。一緒に来てッ!」

 

「へっ?」

 

 会話の途中で突然、ガシリと腕を掴まれて何事かと思いながら視線を向けると間近に整った顔立ち、セリアの顔があった。

 

『おおっとッ!お題を確認したセリアさんがなんとアレアスの下へとむかったァァアッ!一体どんなお題だったのか!?気になるッ!羨まし———ぐふぉぅッ!?』

 

『黙りなさいッ!失礼でしょ!?』

 

 実況がぶん殴られている声を聞きながらロークは突然のことに困惑しながらセリアに視線を向ける。

 

「ほら、私たち負けてるんだからさっさと来て!」

 

「えっ!?あっ!もしかしてお前、邪霊のお題を引い……ちょぉおおおおおお!?!?」

 

「行ってらっしゃ〜い」

 

 お題のことを思い出ながらロークは一位を取るろうと奔走するセリアによって木の霊術によって縛られるとそのまま問答無用で引っ張られていく。

 

 そんな先輩たちの姿を燈は手を振りながら見送っていった。

 

「やっぱり先輩は面白いなぁ」

 

 悲鳴を上げながら連れて行かれるロークの姿を眺めながら燈は再び笑った。

 

*****

 

「はぁ……疲れた」

 

 思わずため息を漏らしながら俺は呟く。結局、借り物競争はセリアを発端として様々な人々に呼ばれてはお題として連れて行かれ、碌に実行委員の仕事をすることができなかった。

 

 尤もどうやら準備の方は燈を含めた他の実行委員がしっかりと終えてくれたらしく、何事もなく進行している。

 

『さぁ、借り物競走の次は二人が協力して走る競技、二人三脚が繰り広げられています!』

 

 実況を聞きながら視線を向ければ指定されたレーンを足を縄で縛った二人の学生ペアが協力しながら走っていた。けれども走り方の差はペアごとに大きな差があり、順調に息を合わせながら進んでいるペアもいれば、中には一歩目から思いっきり転んでるペアもいた。

 

「1、2、1、2……」

 

「違う、左からじゃないッ!右からだ!」

 

「ぐぁぁあああッ!」 

 

 単純ながらも相手と呼吸を合わせる必要がある二人三脚の競技は組んでいるペアの相性によって大きく差が出ていた。

 

「普段から精霊と息を合わせてる奴としていない奴の差かな?」 

 

 二人三脚。 

 まさにこれは精霊師と精霊の関係を示している競技と言える。

 

 精霊師の強さは本人と精霊自身の強さは勿論、互いのコンビネーションの高さによってその強さは何倍にも跳ね上がる。実際、俺が学位戦でぶつかったトラルウスは音楽を通して精霊と通じ合い、恐らく本来の何倍もの力を発揮していたように思える。

 

 故にこそこの競技では普段から精霊と息を合わせている精霊師はスムーズに走れているし、逆に自分勝手に戦っている印象の精霊師はズッコけて苦戦している印象を覚える。

 

 まぁ、俺にはそもそも息を合わせる相手がいない訳だが……。

 

「………ん?」

 

 とそんなことを思いながら二人三脚の様子を見ているとレーンの控えの方が少し騒々しくなっていることに気付く。

 

 何かトラブルでもあったのだろうか?

 

 実行委員として確認するべく騒ぎの方へと近付いていくと困惑した様子のレイアの姿と彼女の目の前で揉めている数名の一年男子たち、そしてその側でオロオロしているメアリーの姿があった。

 

「どうした?何かあった?」

 

「あ、ローク先輩!それが二人三脚に参加するレイアちゃんのペアの子が今少し体調を崩して出れなくなっちゃって………」

 

「ほう?」

 

 メイリーから詳しく話を聞くとどうやらレイアのペアの子が体調を崩して保健委員の救護テントの方へと運ばれたらしい。

 

 そして問題はここからで、じゃあレイアの代わりに誰が一緒に走るかということで元々二人三脚に出る予定の無かった男子たちが一緒に走ろうと名乗り出てそして今、こうしてレイアと共に走るべく火花を散らしているとのことだ。

 

 この欲望に忠実な奴らめ。

 

「けど、そもそもレイアが競技を棄権すれば済む話だろ?」

 

「レイアちゃん、赤組負けてるから棄権はしたくないみたいで」

 

「そうだったな。そういう奴だったわ」

 

 それで一緒に走る相手を求めたらこの騒ぎか。所謂、美しさは罪というやつだろうか?

 

「……よし、事情は分かった。ここは俺に任せろ」

 

「先輩?」

 

 ともあれ、走る順番も迫っている以上、手っ取り早くこの場を収める必要がある。となれば————。

 

「レイア!」

 

「あ、ローク先輩」

 

 声を掛けると振り返って俺を確認したレイアがどこかホッとした表情を浮かべる。恐らくこれでこの場が収まると思ったのだろう。

 

「えっ、アレアス先輩!?」

 

「何故ここに!?」

 

 言い合ってた一年男子たちも突然、現れた俺に驚いた様子を見せているが俺はそんな彼らを無視してレイアに声を掛ける。

 

「事情は聞いたぞ、ペアの子が体調不良でリタイアだって?」

 

「はい…」

 

「安心しろ」

 

 困った様子で頷くレイアに俺はトンッと胸を叩きながら告げる。

 

「なら俺が一緒に出よう」

 

「はい…………えっ?」

 

「えっ!?」

 

 俺の言葉に頷いたレイアは数秒して驚いた様子で俺に視線を向け、メイリーや一年男子たちも俺の言葉に驚きの声を漏らす。

 

「一位、取りたいんだろ?なら俺が協力しよう」

 

「……えっ、いや………あっ、えっ?」

 

 仮にも俺は二年次席。加えてレイアとは共に修羅場も潜り抜けた経験もある、ペアの相手として考えれば強力な筈だ。

 

 丁度、さっきの借り物競争では意図しない形とはいえ無様を晒してしまった。ここで汚名を返上しよう。

 

「俺とは嫌か?」

 

「い、いえ!そんなことはッ!お、お願いします!」

 

 何だか予想とは違うレイアの反応に俺が尋ねると彼女はブンブンと首を横に振りながら答える。なんか脅迫してるみたいになっちゃってるけど……まぁ、大丈夫か。

 

「クソォオオオッ!!アレアス先輩が相手じゃ無理だ!」

 

「ウッウッ、折角、ヴァルハートさんとお近づきになれると……」

 

 俺が名乗りを上げたことでレイアと共に走ろうとしていた一年男子たちが悔しげな声を上げているが、もう順番も目前だ。まずは競技を無事に終えよう。

 

「よし、レイア。行こう」

 

「は、はい」

 

 なんかガチガチに緊張している様子のレイアを引き連れながらレーンに立った俺は実行委員から手渡された縄を受け取って自分の右足とレイアの左足を縛り付ける。

 

『おーっと、これはヴァルハート選手のペア相手に急遽、助っ人に入ったのはアレアス選手だッ!これは強力なペアになった!!』

 

「最初は外側の足から出そう。俺は左、レイアは右だ」

 

「…………」

 

「レイア、聞いてる?」

 

「あ、は、はいッ!」

 

 俺が尋ねると心ここに在らずと言った様子だったレイアはハッとした表情を浮かべながら頷く。何故かは分からないがこの競技に対して異常なほど緊張しているが、大丈夫か…。

 

「よし、ちょっと近付くぞ」

 

「へぁッ!?」

 

 走りやすいようにと少し近寄るとレイアから変な悲鳴が漏れる。

 

 えっ、なに?もしかして嫌だった?

 

「あ、すまん。近かったな」

 

「…………」

 

 謝罪をするも顔を真っ赤にしているレイアに無視される。

 

 何だか、嫌な予感がしてきた。

 

「レイア、お前は右足だからな?左足は俺が出す」

 

「…………」

 

「位置について、よーい………ドンッ!」

 

 俺が拭い切れない不安を抱く中、審判の合図が響き渡る。

 

 左右の生徒たちがゆっくりと相手と確認し合いながら足を前に出す中、彼らよりも先にゴールに辿り着くべく俺たちも動き出す。

 

「レイア、行ぐぁぁああッ!?」

 

 そして俺は一歩目で右と左の両方の足が地面から離れ、結果として身体を思いっきり大地に打ち付けることになった。

 

 

 

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