真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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遅くなり、大変申し訳ございません。
最新話更新です。

そしてここぞとばかりに宣伝ですが、8月25日にオーバーラップから精霊師の2巻発売です!

web版にない展開や裏設定で封印していた設定が序盤から表に出ているのでご興味のある方は購入して頂けるととてもう嬉しいです!

では、本編になります。


第59話

「いいか、作戦はこうだ。俺が霊術であいつの動きを止める。そこにお前の炎を叩き込み、アイツの鎧を溶かして無防備になったところを俺がぶん殴る。これで完全勝利だ」

 

「絶対にそんな簡単にいきませんよね……」

 

 レイアはロークの作戦を聞くと顔を顰めながら意見を述べる。

 

 二人の視界の先では周囲を凍らせながら襲ってくるガレスのオオダマから必死に逃げ回るロークとレイアのオオダマの姿があった。

 

「ハハッ!逃げ回るだけかい!?」

 

「というかガレス先輩、なんか性格が変わってません?」

 

「久しぶりにアイツと勝負したからかな。テンション上がってるみたいだ」

 

 一年の頃の記憶でも思い出してハイになっているのだろう。霊力も普段より荒ぶっているし、顔も凄い笑顔だ。 

 

 かくいうローク自身も同じくつい先程までテンション上げ上げだったが、敗北が許されない状況であることを思い出して冷静さを取り戻していた。

 

「ッ!この霊力!」

 

「アイツ、マジで周りが見えていないな」

 

 ガレスが発する霊力に慄くレイアの隣でロークが呆れと驚きを交じらせながら呟く。

 

「纏めて斬り払えッ!」

 

 ガレスの声と共に霊力の供給を受けたオオダマの手にしていた氷剣が巨大化、そのまま巨大化した剣を構えると勢いよく横薙ぎに剣を振るう。

 

「ええいッ!」

 

 ロークは咄嗟にオオダマを操作、霊術によって木々を生み出すと自身とレイアのオオダマを乗せる。

 

 直後、二人のオオダマが先程までいた高さを氷剣が通り過ぎ、木々を斬り裂いた。

 

「うぇッ!?いきなり真っ二つになった!?」

 

「俺のオオダマが!?」

 

「ガレスくん、僕は味方ッ!?」

 

 ポコポコと殴り合っていた赤と白のオオダマたちは突然迫って来た氷剣に気付くこともできず、身体を上下真っ二つに両断されてしまう。特にガレスと同じ白組である学生たちは想像もしていなかったフレンドリーファイアに驚愕しながら抗議の声を漏らすが、今のガレスの耳には全く届いてなかった。

 

「本当に性格、変わってませんかッ!?」

 

「いや、まぁ…どちらかと言えば今のアイツのが本来の性格だけどな」

 

 普段の落ち着いたガレスの姿からは想像もできない暴走っぷりを前に思わず叫ぶレイアにロークは寧ろ過去のことを思い返しながら告げる。

 

「えッ!?あれがですか!?」

 

 驚愕するレイアにロークは頷く。

 

 普段の紳士然とした振る舞いが猫被りとまでは言わないが、それでも今の彼とどっちが本来のガレスに近いかと言えば間違いなく今のガレスだろう。

 

「まぁ、にしてもエキサイトしている気はするが今は好都合だな」

 

「好都合…?」

 

 この状況で何を言っているんだとレイアが視線を向けてくるのでロークは迫ってくる氷剣を回避するべくオオダマを操作しながら答える。

 

「今のアイツは俺を斬ることに躍起になって視野が狭くなってる」

 

「ほ、本当ですか?さっきから私の霊術、全部防がれてますけど………」

 

 ロークとガレスの戦闘に横槍を入れるように炎弾を何度も放っているが、全てオオダマに直撃する前に氷壁で防御、或いは巧みなオオダマ操作によって躱されてしまっている。

 

 とてもでは無いが視野の狭くなっている人間の操作感では無い。

 

「あの防御動作は本能的なものだ。現にさっきからアイツはお前の攻撃を防御するだけで俺のオオダマしか狙ってないだろ?」

 

「私は眼中に無いってことですか………」

 

「い、いや、そういう意味では……いや、間違って………うおッ!?」

 

 不機嫌になるレイアを宥めようとロークは思考を回したことが仇とり、ガレスのオオダマの放った鋭い逆袈裟斬りによってオオダマの左腕が斬り飛ばされる。

 

「どうしたッ!この程度かいロークッ!?これなら昔の君の方が張り合いがあったよ!」

 

「だーッ!黙れ黙れ!喋るなッ!!」

 

 深夜テンションの如き様子で余計なことを口走ろうとしているガレスに対してロークは慌てて大声で言い返す。このままアイツを放置していると余計なことを言いかねない、早々に勝負を決めに行く必要がある。

 

「レイアッ!とにかくアイツは俺に集中して周りが見えていない。周囲に警戒しながら高火力の霊術でガレスのオオダマを倒せ!」

 

「ですが大技となると術式を組むのに少し時間が……」

 

 ロークやガレスは当たり前のように瞬時に霊術を行使しているが、オオダマを介しての霊術の行使は通常の時と比べて非常に難度が高い。

 

 レイアと言えど強力な霊術を放つには多少の時間を要する。

 

「組める時点で上等だ。っていうか俺じゃアイツの防御突破できないし、今はお前だけが頼りだ。任せるぞ」

 

「————」

 

 ポンっと肩を叩きながら言われた言葉にレイアは目を見開くとやがて口角を上げながら答える。

 

「はいッ!」

 

 後輩の元気の良い返事を聞いたロークは意識の全てを再びフィールドへと向ける。

 

 幸いなことにガレスの暴走のお陰で他の選手のオオダマは大体やられている。警戒は必要だろうが、それでも周囲の目の前のガレスに集中して問題無いだろう。

 

「さて、時間を稼ぐか…ッ!」

 

 ガレスの気持ちの昂りに呼応して荒ぶっている氷騎士へと変化したオオダマへと視線を向けながらロークは呟く。

 

「随分と操作が疎かになっていたけど、策は練り終えたのかい?」

 

「さて、どうだろうなッ!?」

 

 ガレスへの問いに曖昧な答えを返しながらロークはオオダマを大きく後退させる。

 

 追撃を掛けてくるガレスに対して霊術を扱うべく術式を構築を試みるも片腕を切断された為に術式が上手く組めず霊術の発動に失敗してしまう。

 

「やべっ」

 

「はッ!」

 

 ガレスは霊術の発動に失敗して動きが硬直しているロークのオオダマの隙を見逃すことなく自身のオオダマに剣を構えさせるとそのまま大きな一つ目を狙って鋭い突きをお見舞いする。

 

「動けぇええッ!!」

 

 霊力を流し込みながら必死にオオダマを操り、何とかギリギリ迫ってきた氷の刃を躱すことに成功する。

 

「あっぶねぇ……」

 

「一撃避けただけで油断し過ぎじゃないかッ!?」

 

 安堵するのも束の間、ガレスはオオダマは瞬時に体勢を立て直しながら強烈な斬撃を放ってくる。

 

「ちッ!操作上手いな!」

 

「簡易契約なら君から学ばせて貰ったからねッ!!」

 

 かつてガレスに剣を教わり、自身の秘密を守ってくれた礼としてロークが彼に差し出した対価。それが自身の学んできた霊術と簡易契約の技術だった。

 

 故にガレスにはロークから得た霊術と簡易契約の技術が少なからず備わっている為、ジェミニ戦においてロークに勝るとも劣らないオオダマ操作ができていた。

 

「今度こそ、その首を貰うよ!」

 

「くッ!」

 

 予想外の軌道から放たれてくる斬撃を必死に回避しながらロークは術式を組み直す。とはいえ、攻撃を躱しながらでは碌な術式を組めない為、今度は確実に発動できるように強力な霊術ではなく低火力ながらも構築が簡単な術式にする。

 

「その程度の霊術で僕を止められるのかい!?」

 

「充分だろ!」

 

 霊力量から霊術の規模を察したガレスが挑発気味に叫ぶと同じくロークも挑発を返す。

 

「言ってくれるねッ!!」

 

 その言葉にガレスは獰猛な笑みを浮かべる。恐らくこの挑発は自身を誘い込むための策の一つだろうが構わない。何をしでかそうとしているかは知らないが、その全てを対処して正面から打ち破ってやろう。  

 

「なら倒してみろッ!」

 

「言われなくても!」

 

 ガレス本人と相違ない俊敏な動きで迫ってくるオオダマ。

 

 が、それ故にオオダマの剣の軌道を読むことが可能なロークはギリギリながらも確実に氷剣を回避していく。

 

 袈裟から始まり逆袈裟、横薙ぎ、突きと勢いを止めることなく流れるように次々と放たれる斬撃をギリギリで躱し続ける。

 

 ———このまま何とか時間を。

 

 確かに速く正確な斬撃は恐ろしいがそれでも動きが先読みできる為、このまま回避に徹すれば問題無い。

 

 ロークにとって一番の懸念材料である霊術も防御と氷剣の使用のみであり、ガレス本人は剣でロークを斬ることに躍起になっているようだ。

 

 油断はできないが、それでもこのままならばレイアの術式構築の時間を稼ぎ切ることができる。

 

 そう意気込むロークを打ち砕くかのようにロークのオオダマの肩を剣先が貫く。

 

「なッ!?」

 

「油断したね?」

 

 それはガレスならば放つことのできない突きだった。

 

 精霊ならではの肉体を利用した人の持つ手首と腕の可動域を超えた動作によって放たれた突きを予測することができなかったロークは必殺の突きをモロに喰らってしまい、オオダマの動きが停止する。

 

「君が僕の剣を理解しているように僕だって君の考えることは理解できる。見通しが甘かったね」

 

「…………」

 

 ガレスの言う通りロークは自身の見通しが甘かったことを悟る。けれど同時にロークは笑みを浮かべながらオオダマに霊力を流し込み、既に構築させていた霊術を無理矢理発動させる。

 

「ッ!」

 

 ブワッと樹木が現れるとガレスとロークのオオダマを纏めて拘束するように収縮し、そのままその場に固定した。

 

「この程度の霊術ッ!」

 

「確かに俺の見通しが甘かったことは認めるよガレス。けど、お前も甘かったな」

 

 瞬時に霊術を発動し、氷の刃で樹木を斬り裂こうとするガレスに対してロークは焦ることなくそう告げる。

 

「何を———ッ!」

 

 ロークの言葉に反応しようとしたガレスはドロリと溶ける氷の刃を見て目の色を変える。

 

「これは……」

 

「お前、俺に集中し過ぎ」

 

 驚くガレスと揶揄うロークの視線は互いに同じ場所……レイアの操るオオダマへと向いていた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 レイアは2人のそんな反応を気にする余裕は無く、霊術を暴発させないように必死に霊力を制御していた。

 

 ガレスの霊術を溶かすほどの圧倒的な熱と共に形成される炎の矢。

 発動させたオオダマ自身の腕すら焦がすほどの強力な霊術を生み出したレイアはその額から汗ながらその矢の先をガレスへと向ける。

 

「俺ごとぶちかませッ!」

 

「…………やれやれ、確かに僕も甘かったか」

 

 楽しげに叫ぶローク。冷静さを取り戻し、霊術を発動させ氷壁を展開するガレス。そんな2人の先輩たちの言葉を耳にしながらレイアは燃え盛る業火を解き放つ。

 

「真炎の矢」 

 

 放たれた炎の矢は一直線に突き進み、ガレスの展開した氷壁を貫くとそのまま2人のオオダマに迫る。

 

「ちょっと待ってレイア、これちょっと火力が強過ぎじゃ?」

 

「全く、こんな火力防げる訳が無いだろ」 

 

 

 直撃した霊術はフィールド全体に爆炎を巻き起こし、ロークとガレスどころか生き残っていた他の選手のオオダマをも呑み込んであっという間に全てのオオダマが送還された。

 

 こうしてジェミニ戦はレイアによる一人勝ち……赤組の勝利によって幕を閉じた。

 

 

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