真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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皆様、お久しぶりです。
三巻の制作の為に更新がとても遅れてしまっています。本作を楽しみにして頂いてる読者の皆様、大変申し訳ございません。

この投稿から1時間ほどで今年が終わりますね。
今年は皆様にとってどんな一年でしたか?
私は大変なことは多かったですが、読者の皆様のお陰で2巻を出すことができ、今も3巻の制作に取り組むことができて非常に良い一年だったと思います。

改めて本作を応援して下った皆様にお礼を申し上げたいと思います。

と前置きが長くなってしまいましたが、本編です。
残り僅かではありますが、良いお年を。


第67話

「来ましたね」

 

「ミーシャ……」

 

 カイルを突破したロークとリリーが地図に描かれた目的地へと辿り着くとミーシャとセナが設営された椅子に腰かけながら待機していた。

 

「お疲れ様です、お二人とも。無事に突破したようですね」

 

「結構ギリギリだったけどな」

 

「突破できているならば何の問題もありません」

 

 苦笑気味に呟くロークにミーシャはそう言い返しながら何か立ち上がると隣のセナが用意した金属片らしきものを手渡す。

 

「これで晴れて貴方たちも大精霊演武祭の代表メンバーです。共に我が学院を背負って戦いましょう」

 

「……え?」

 

「おお~」

 

 ミーシャの言葉がいまいち理解できていないロークの隣でリリーは感動の声を漏らしながら手渡された金属片、ユートレア学院の校章を描いたバッジを眺める。

 

「だ、代表メンバー?」

 

「はい」

 

 震える声で確認するロークにミーシャは頷く。

 

「今回の合宿は特訓と共にメンバーの最終選抜も兼ねているので」

 

「いやいや、そんなこと言ってもさっきの試験はリリーに任せてほぼ何もしてないぞ?」

 

 最後こそ活躍したかも知れないがそれだけだ。

 先程の戦いの功労者は間違いなく自分ではなくリリーだとロークは断言する。

 

「そうなのですか? カイル先生からは見事なチームワークだったと聞いていますが」

 

「もう先生から話を聞いているのか」

 

 ロークの言葉に頷きながらミーシャは今回の特訓と称した選抜試験の内容を話し始めた。

 

「今回、先生方に見て頂いたのは皆さんの対応力です」

 

「対応力?」

 

「はい、大精霊演武祭ではその競技の全てが精霊の気まぐれで決められる為、事前の対策が非常に難しいとされています。それこそ場合によっては本来の力量を発揮できない環境下で格上の精霊師と戦うこともあるでしょう」

 

「だから、この場所で先生と戦わせたってことか……」

 

 確かに大精霊演武祭はその性質上、誰とどのような場所で戦うのかを決めることはできない。実際に過去に開催された演武祭は本当に同じ大会なのかと疑いたくなるほど、その内容が異なっている。

 

「内容は大精霊演武祭の出場経験のある先生方にお任せしていますが、どのような形であれ先生方の試験を乗り越えることができたのならば、本番においても十分対応できるでしょう」

 

「……まぁ、ミーシャの狙いは分かったけど、そんな簡単に決めて良いのか?」

 

「そもそもこの合宿に参加している学生はこちらで定めた基準を超えた方々ですからね。その上で先生方に見て頂きましたから、問題は無いでしょう」

 

 何となく予感はしていたが、この合宿に参加している時点で大精霊演武祭への代表入りはほぼ決まっていたようだ。

 

「ローク、ローク」

 

「ん?」

 

「どう? 似合う?」

 

「……ああ、似合ってるよ」

 

 バッジを胸元に付け、ドヤ顔で薄い胸を張るリリーの姿にロークは何とも言えない表情を浮かべながら頷く。

 

「ローク・アレアス。貴方にも付けてあげます」

 

「お、おい……」

 

 ロークが何かを言う前にミーシャがバッジを胸元に付けようと距離を詰める。ふわりと甘い香りと共にミーシャの美しい顔が間近に迫り、思わずロークは硬直してしまう。

 

「はい、よく似合っていますよ」

 

「…………」

 

 そうしてあっという間にバッジを付けてそう褒めてくるミーシャにロークが何も言わずに押し黙っているとリリーに手を引っ張られる。

 

「お揃い」

 

「…………ソダネ」

 

 視線を向けるとそう言って嬉しそうに微笑むリリーの姿があり、ロークはぎこちない笑みを浮かべながら頷く。

 

「あ、先輩」

 

「もう着いていたんですね」

 

「お二人とも、お疲れ様です」

 

「まじで俺、代表になったの?」

 

「うん」

 

 少し遅れてやってきた後輩たちとミーシャたちの会話を耳にしながらロークは改めて自分が大精霊演武祭の選手になったことを悟るのだった。

 

 

*****

 

 強化合宿は大精霊演武祭への参加メンバーが正式に決定したこともあり、それぞれが本番に向けて本格的な訓練を始めることになった。惜しくも代表から外れてしまったメンバーたちは代表メンバーのサポートとして合宿に継続して参加しており、全員が協力しながら実力の向上を図っていた。

 

「それで私の故郷には五行って概念があってね」

 

「詳しく」

 

「…………」

 

 そんな活気に満ち溢れた空間で霊術について燈に質問しているロークの姿をリリーはぼんやりと眺めながら昔のことを思い返していた。

 

「はい、これも読んで」

 

 リリーはそう言うと分厚い本を死んだ瞳で読んでいるロークの隣に置く。

 

「え、これも?」

 

「うん」

 

 更に積み上がる本の山を目にしてロークは絶望に満ちた声でローク尋ねるとリリーは当然だといわんばかりに頷く。

 

「良い成績取りたいならこれくらいは読まないとダメ」

 

「なぁ、ここら辺の本、オラリアさんが分かりやすく纏めてくれたりって………」

 

「嫌だ」

 

「ですよねぇ」

 

 リリーはそう言うと項垂れるロークを無視して椅子に座り、読もうと持ってきた本を開く。突然、勉強を教えてくれと土下座と共にお願いされた為、思わず承諾こそしてしまったがそこまで面倒を見る義理は無い。

 

「ああぁぁ~、疲れた」

 

 そのまま暫くしていると何とか一冊分を読み終えたロークが地面に突っ伏する。

 

「休憩だ、休憩! 休憩にしよう!」

 

「そう」

 

 図書室に響き渡るロークの心の叫びにリリーはうるさいなと思いながらどうぞ勝手にと呟く。そのまま乱れた意識を再び本へと戻そうとした時だった。

 

「オラリアさんも一緒に休もうよ」

 

「えっ」

 

 呆けた顔をするリリーをロークは強引に大市場へと連行するのだった。

 

 

 

 

 

 

「世話になっているからな、買える範囲で何か物があったら奢るぞ」

 

「…………」

 

 財布を取り出しながらロークがそう言うもリリーはまるで耳に入っていないと言わんばかりの様子で賑わう大通りを眺める。

 

「もしかして来るの初めて?」

 

 ロークが驚いた様子で尋ねるとリリーはコクリと首を縦に振る。

 基本的に暇な時間は家で寝るか図書室でずっと本を読んでいるリリーはガラテアに来てから一度として大市場に訪れたことが無かった。

 

「それは勿体無いな。大市場は王国の中でも有名な観光スポットの一つなのに」

 

「別に興味無いし……」

 

 ロークの言葉にリリーはそう冷淡に返す。

 

「まぁまぁ、そう言わず。色々あるから」

 

「………」

 

 こうして渋々ながらもロークと共に大市場を回ることになったリリーは彼の先導の下、様々な物を見て回った。

 

「大市場の中で個人的にこのガラテアバーガーが好きなんだ」

 

「…………」

 

「こんな感じで思いっきりかぶり付けば良いよ」

 

 奢りでハンバーガーを食べようとするも食べ方が分からず硬直するリリーにロークが食べ方をレクチャーするも結局上手く食べることができず口元を思いっきり汚す。

 

「ハハハ、ほらこれで拭いて」

 

「…………」

 

 手渡された紙で口元を拭くリリーは笑うロークを不満げに睨み付ける。その視線に気付き、ロークは「ごめんごめん」と謝罪の言葉を口にする。

 

「何だか箱入り娘みたいな失敗の仕方するからさ。もしかしてオラリアさんって実はいいところの出だったりする?」

 

「……孤児院出身」

 

 ロークの問いにリリーはそう呟くと再びハンバーガーを齧り、口元を汚しながら言う。

 

「親は小さい頃に死んだ」

 

「………悪い」

 

「別にいい。もう慣れた」

 

 謝罪するロークにリリーはそう言って再びハンバーガーを齧る。実際、既に悲しみや寂しさといった気持ちは随分と薄くなっていたなと自認していた。

 

「…………」

 

 言葉ではそう口にしながらも寂寥感を漂よわせるリリーを無言で眺めていたロークは少しして何かを思いついた様子で声を漏らす。

 

「なら、俺がオラリアさんの家族の代わりになろうか?」

 

「……へ?」

 

 何を言っているんだと困惑するリリーにロークは再び紙を取り出し、まるで兄の如く彼女の口元を拭きながら言う。

 

「これからも暫くはリリーに勉強を教えて貰うことになるだろうし。親代わり……は流石に無理だけど兄っぽいことならできる筈だ」

 

「……まだ私から教わる気なの?」

 

「勿論、俺が満足できる成績を取れるまでは粘着し続けるぞ」

 

「…………」

 

 現状ロークはガレスから剣を、オーウェンから簡易契約と霊術についての技術を学んでいるが、やはり契約精霊の有無の差を覆すのは厳しく学位戦を含めて実技では良い成績を残せていない。

 

 故に座学だけでも良い成績を取る必要があるロークは座学で一位を取ることができるリリーの頭脳が必要不可欠だった。

 

「俺のことを兄貴だと思っていいぞ」

 

 そんなことを真顔で言うロークにリリーは呆れたような、けれども少しだけ口元を緩めながら言った。

 

「……どちらかと言えば私が姉でしょ」

 

「えっ⁉」

 

 

******

 

「…………」

 

 過去の記憶の中から戻ってきたリリーは暫しの間、燈とロークのやり取りを見つめていたが、やがて駆け足気味にロークの側に近寄ると服を引っ張りながら声を掛ける。

 

「ローク、霊術が上手く使えない……」

 

「お前さっき教えた時、普通にできてたじゃん」

 

「もう忘れた、また教えて」

 

「絶対、嘘だろ。ってかお前、俺より頭いいだろ」

 

「そんなことは無い」

 

 ワーワーと仲良く言い合いをする二人の様子を側で眺めていた燈はそんな彼らをまるで兄に構って貰おうとする妹のようだなと思いながら、とりあえず「私も教えて~」と自分も混ざろうとするのだった。

 

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