真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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読者の皆様、明けましておめでとうございます!
ちょっと短めですが、年明け投稿です!


第68話

「それでなし崩し的に代表選手に選ばれてしまったと?」

 

「はい……」

 

 約一週間に渡る強化合宿を終えてから暫くして、俺は大精霊演武祭に出場することを報告する為に師であるオーウェンの下に足を運んでいた。

 

「フフッ、大精霊演武祭に選ばれてそこまで暗い気持ちになるのは君くらいだよ、ローク」

 

「笑いごとじゃないですよ。契約精霊いないのに本当に出て大丈夫なんですか?」

 

「まぁ、精霊と契約していなきゃ出てはいけないなんて制約は無いからね。そこを心配する必要は無いんじゃないかな」

 

「……そう言えば精霊と契約しとかないといけないルールってないんですね」

 

「そりゃね、そもそも精霊と契約していない精霊師が出ることを想定してないし、精霊と契約せずに出るメリットもないしね」

 

「…………」

 

 そりゃそうだと師匠の言葉に納得しながら俺は息を吐く。

 言われてみれば精霊と契約していない精霊師が出場するなど運営側も考えていないだろう……頭痛くなってきた。

 

「もっと堂々としなさい。選ばれた以上、君は既にユートレア学院の名を背負う精霊師になったのだから」

 

「う……」

 

 それはその通りだ。ミーシャの言葉やトラルウスとの学位戦を終えて多少なりとも自信を得た筈なのだが、それでもやはり大精霊演武祭となると話が変わってくる。

 

 相手も学院代表、つまりはミーシャやトラルウスレベルの精霊師が出てくることを考えると恐ろしくて堪らない。

 

「まっ、気持ちが分からないとは言わないけどね」

 

 俺の心の内を察した師匠はそう言って微笑みながら引出しから青色に輝くサファイヤを彷彿とさせる封霊石を取り出し、こちらに向かって放り投げてくる。

 

「これは……」

 

「僕からの選別だ。扱いは難しいけど、大精霊演武祭でもきっと役に立ってくれると思うよ」

 

 いきなり投げ渡された封霊石に戸惑っていると師匠は続けて言う。

 

「大丈夫、君は強い。師である僕が保証する」

 

「…………師匠」

 

 ぽんっと優しく肩を優しく叩かれた俺の心は気付けば先程よりも軽くなっていた。

 

「『踏破者』と呼ばれた僕が言うんだ。自信になるだろ?」

 

「前、自分でその二つ名、忘れてたって言ってましたよね?」

 

「さて、何のことやら」

 

 俺の指摘にとぼけた様子でそう答える師匠に思わず笑みを浮かべる。

「ありがとうございます、師匠。頑張ってきます」

 

「ああ、応援しているよ、ローク」

 

 師匠のその声援を最後に俺は部屋を後にした。

 

 

 

 

******

 

 そうして遂に迎えてしまった当日。

 コンコンと寮の自室で荷物の最終チェックをしていると扉をノックする音が耳に入った。

 

「はーい」

 

「ローク、そろそろ時間になるけど準備は大丈夫か?」

 

「ああ、丁度終わったところだよ、今出る」

 

 聞こえてくるガレスの声にそう返事をしながら俺は今し方、荷物を詰め終えた鞄を肩に掛けて部屋を出る。

 

「良かった、ボイコットするかもって……なんか鞄少し大きくないか?」

 

「よく考えたら聖都に行けるんだ。なんか良い物あったら買っておかないと」

 

「流石は抜け目ないね」

 

 苦笑交じりのガレスの言葉を聞きながら部屋の扉を閉めると俺たちは並んで寮の廊下を歩く。

 

 もう今更逃げることなんてできないのだ、少しでもプラスに考えようとした結果である。

 

「そう言えばオーウェンさんに学院代表になったことを報告したんだって?」

 

「ああ、プレゼントも貰えたし、報告しておいて良かった」

 

「プレゼント?」

 

 何を貰ったのかと気になる様子で尋ねてくるガレスに俺は「後のお楽しみだ」とこの場で教えることはしなかった。

 

「何だよ、気になるな」

 

「まぁ、正直なところまだ使うかは分からないからな」

 

 師匠から受け取った精霊は簡易契約で使役するには扱いが難しく、チームプレイが必要となる今回の大精霊演武祭で呼び出す機会があるかは若干怪しいところだ。

 

「なら秘策があると思って頼りにしているよ」

 

「それはこっちの台詞だ。寧ろ俺の方こそ頼りにしてるぞ」

 

 俺がそう言うと苦笑を浮かべるカイルから「違うだろ」と指摘を受ける。

 

「僕だけじゃなくてみんなを頼りなよ、チームなんだから」

 

「チーム……か」

 

 その言葉に今回はミーシャやトラルウスを始めとして多くの優秀な精霊師が俺の仲間であるという事実を改めて実感する。

 

「確かに……そうだな」

 

 何だかそう思うと勝てる気がしてきた………ってか、よくよく考えたらアイツらがいれば俺が出るまでも無く、大精霊演武祭で優勝できるのでは??

 

 あれ? もしかしてこのイベントって俺が思っているよりも楽勝なのか?

 

「……ローク?」

 

「……ああ、すまん。そうだな、お前の言う通りみんなを頼ることにするよ」

 

「なんかやけに清々しい顔をしていないか?」

 

「気のせいだろ」

 

 俺は訝しげな表情を浮かべるガレスにそう返しながら気持ち軽くなった足取りで寮を出ると集合場所であるユートレア学院校門前へと向かう。

 

 そして既に校門で待機していた代表メンバーたちを確認し、ガレスと駆け足気味になりながら合流する。集合時間によりは早く来たつもりだったが、割と待たせてしまっただろうか。

 

「お二人とも、来ましたね」

 

「すまん、待たせたか?」

 

「いえ、そんなことはありませんよ。集合時間前ですし、それに……」

 

 そう言いながらミーシャが視線を俺たちの後ろへと向ける。釣られて俺も後ろを振り返って確認すると焦った様子で走って来るレイアの姿が視界に入る。

 

「す、すみませんッ! 遅くなりましたッ‼」

 

「んん……」

 

 未だ寝惚けた様子の燈を引っ張りながらやってきたレイアは息を切らしながらミーシャに謝罪の言葉を漏らす。

 

「大丈夫ですよ、そもそも集合時間に遅れていませんからね」

 

「よ、良かったです……」

 

 ミーシャの言葉にレイアはほっと安堵の息を漏らすと今度は引っ張ってきた燈を睨み付ける。

 

「燈さん、しっかりして下さいッ!」

 

「あと五分………」

 

「ダメに決まっているでしょう⁉」

 

 再び眠りに落ちようとしている燈はバチンとレイアに頭を叩かれ、「痛い」と呟きながら目を擦る。

 

「まるでお母さんだな、レイア」

 

「ロ、ローク先輩」

 

 そんな二人の様子に思わず苦笑を浮かべながらレイアにそう声を掛けると彼女は恥ずかし気な様子で視線を向けてくる。

 

「お恥ずかしいところを………」

 

「そうか? 寧ろお前の面倒見の良さが分かって良いと思うけどな」

 

「そんなことは………」

 

 どこか照れた様子で呟くレイアに笑いながら彼女の小さな背肩をポンッと軽く叩き、俺は言う。

 

「頼りにしてるぞ」

 

 マジで、切実に。

 

「………はい!」 

 

 元気良く返事をするレイアをミーシャとガレスが微笑ましげに見つめる中、背中に衝撃が走り振り返ると俺を見上げるリリーの姿があった。

 

「ローク、私は?」

 

「後輩と張り合おうとするなよ……」

 

「…………」 

 

 呆れながらそう言うもリリーはジッと期待を込めた視線を向けてくるので俺は根負けして彼女の頭を撫でながら望んでいるであろう言葉を口にする。

 

「勿論、リリーにも期待してるよ。よろしくな」 

 

「言われるまでも無い」

 

 じゃあ、言わすなよ……。

 

 と、俺がリリーの頭を撫でているとパンッと手を叩く音が耳に入り、視線を向けると周囲の注目を集める引率役のアルベルト先生の姿があった。

 

「みんな揃っているね? そろそろ精霊院からの案内役が来るからすぐに移動できるように準備をしておいて!」

 

「そういや聖都までどうやって移動するんだ?」

 

 アルベルト先生の言葉にふとそんな疑問を抱いた俺は隣で荷物を肩にかけ直しているガレスに尋ねる。ここから普通に移動したら一週間は掛かるが、よくよく考えたら大精霊演武祭の開催日は明日だ。

 

 

「さぁ、僕も詳しくは知らないけど、一瞬で着くって話は聞くね」

 

「一瞬って———」

 

 

 どういうことだと思っていると上空からこちらに向かってくる霊力を探知した為、会話を切り上げて、霊力の正体へと視線を向ける。

 

「来ましたね」 

 

 

 快晴の青空を我が物顔で舞う一羽の巨大な白鳥の如き精霊。その背には白いローブを纏った精霊師が乗っており、精霊と共にゆっくりと校門前に降りてくる。

 

 

「お初にお目に掛かります。私は精霊院から聖都への案内役として参りましたノルンと申します」

 

 精霊の背中から降りてきた精霊師はフードを外し、その姿を露にするとどこか無機質さを感じさせる口調で自己紹介を行った。

 

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