真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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宣伝です!
今回、めでたく本作がコミックガルドの方でコミカライズでweb連載することが決定しました!

チラッと読ませて貰いましたが、文章の内容が迫力のある絵で表現されていて非常によかったです!
無料で読むことができるので是非、読んで頂ければと思います!

宣伝失礼しました、本編になります!


第78話

 ヘルプラントが見境なく振り回す無数の触手から必死に逃げている中、軽快な身のこなしで触手を躱しながら燈を背負ったガレスが俺の方へと近寄ってくる。

 

「アレと簡易契約は結ばないの?」

 

「結べたら既に結んでる」

 

 ガレスの背から尋ねてくる燈に俺はそう言い返す。

 あのレベル精霊になると自我が強すぎる為、あちらが受け入れない限りは霊力を流し込んでも拒否される。

 

 というか実際、ちょっと試したが秒で拒否された。アイツ、俺を喰らう気満々らしい。

 

「えー、邪霊は従えてたのに?」

 

「相性があるんだよ、相性が」

 

 俺は答えながら再び迫ってきた触手を回避する。三つ巴のようなこの状況、上手く立ち回りたいところだが…………。

 

『シャアッ!』

 

『グオッ!?』

 

 短い大蛇の咆哮。次いで耳に入る妖狐の驚きの感情が込められた鳴き声。

 

 視線を向ければ大蛇の胴体に向かって蒼炎を纏った尻尾を振り下ろした一撃を躱されたことに妖狐が漏らした鳴き声らしい。

 

 見れば振り下ろされたタイミングでオロチはその身体を五つに分裂させることで尾を躱した大蛇達は地面を素早く這いながら暗の下へと集まる。

 

 そのまま暗を覆うように大蛇達がとぐろを巻くと次の瞬間には出会った時の姿である五つ首の大蛇の姿へと戻っていた。

 

「あいつ、分裂もできるのか?」

 

「多分ね、私も詳しく知っている訳じゃないから確信は持てないけど」

 

 俺が二人に尋ねるとガレスの背から降りながら燈が答える。どうやら動ける程度には回復したらしい。

 

「もう大丈夫なのか?」

 

「うん、ありがとう」

 

 燈はそう言って再び剣を手に取り、戦意を滾らせる。

 

「盛り上がって来てはいるけど……この状況は少し面倒ね」

 

 見境なく暴れるヘルプラントと俺達に視線を向け、そう呟きながら腕を振り上げる。

 

 

 同時にオロチの霊力が急激に高まり、口腔から不気味な光が溢れ出す。

 

「これはッ!」

 

「コンッ!」

 

「何だ、何が来るんだ?」

 

 嫌な予感を覚えながら尋ねる俺の側にやってきたコンがその尻尾で俺達を素早く包み込んで走り出す。

 

「なッ!?」

 

 直後、オロチの五つ口腔から極光が放たれた。迫り来る破壊の濁流を前にして俺はモフモフの尻尾の中で唖然とする。

 

「何だよ、あれッ!」

 

「オロチの破壊光線だよ、お陰でこの迷宮もボロボロだ」

 

「少しは加減しろや!」

 

 一応、これ競技だぞッ! 

 

「躱しきって」

 

『ヴォフ!』

 

 暗の容赦の無さに俺がキレる中、燈はコンに指示を出して照らした存在を消し飛ばす輝きを悉く躱していく。

 

『ガッ』

 

 一方でコンほどの俊敏性を持ち合わせいなかったヘルプラントはその巨体を光に貫かれて身体を細切れにされ、地面に転がっていた。

 

「…………」

 

 俺は何一つ悪くないし、そもそも俺はアイツに襲われていた側だが、それでも見るも無残な姿で転がるヘルプラントを見ていると罪悪感が湧いてくる。 

 

「……まぁ、一番の邪魔者は除去できたかしら」

 

 攻撃の限界が来たらしく、オロチは口から煙は吐きながら光線を停止させる。

 

 オロチの吐く煙の下、暗は俺達と細切れになったヘルプラントを見つめながら不承不承と言わんばかりの表情で頷く。

 

「ざまぁないね」

 

「煽るな、煽るな」

 

 尻尾の拘束から開放された俺は暗を挑発する燈を窘めながら霊力の繋がりの確認を行い、まだ繋がりが残っていたことに安堵する。

 

「……無事か、ロックドレイク」

 

『グルル』

 

 どうにかあの攻撃を生き延びてくれていたらしいロックドレイクは壁を這いながら俺の声に弱々しい鳴き声を返してくる。

 

 見れば光線を浴びたのか外殻の一部が抉り取られるほどの怪我を負っており、ロックドレイクもギリギリだったことが分かる。

 

「相変わらず簡易契約しか使わないのね?」

 

「……悪いか?」

 

「悪いと言わないけど、腹立たしいわね。生徒会長の時と違って剣精霊も出さないし、もしかして舐められてる?」

 

「…………」

 

 そう言って怒りを見せる暗に俺は何も言い返せず、押し黙る。

 最初から契約精霊はいないし、剣精霊に関しては依代ごと忘れましたって言ったらどうなるのだろうか? 

 

 戦意喪失してくれるだろうか。

 

「ローク先輩の方が煽ってるじゃん」

 

「黙らっしゃい!」

 

 燈に煽るなと言っておきながら、まさか俺の方がナチュラルに煽っていたとは……。

 

「こっちはわざわざ大技まで出しているっていうのに」

 

「いや、そう言われましても………」

 

 暗から理不尽とも言える文句を口にされながらも意図せずに煽ってしまったという事実に言葉尻が弱くなる。

 

「君が依代さえ忘れなければねぇ……」

 

「言い訳のしようもない」

 

 本当に何で忘れちゃったんだろう。馬鹿なのかな? いや、馬鹿なのか……。

 

「この程度じゃ、まだ本気は出せないってことかしら」

 

「逃げよう。このままだと絶対にヤバい」

 

「ヤダ」

 

 不穏な雰囲気を醸し出す暗の姿に嫌な予感を覚えずにはいられなかった俺が撤退を進言すると燈に一瞬で断れてしまう。なんでさ。

 

「やだじゃねぇ。あんなの相手にするだけ無駄だ」

 

「絶対に私がぶっ倒す」

 

「ガレスッ!」

 

「既に僕からも言ってるよ」

 

 話にならないと今度はガレスに声を掛けるも帰って来たのはお手上げだという諦めの反応だった。どうやらガレスもあんなヤバい精霊を従えている暗と戦おうとは思っていなかったらしい。

 

 まぁ、撃破の必要性が薄いこの競技中であることを考えれば当然だろう。

 

 それでも残っているのは退く気配のない燈を置いていくことができず、仕方なく一緒に戦っていると言ったところだろうか。

 

「……分かった。なら、お前はこのまま相手していてくれ。俺はその間に王冠を探すから」

 

「元からそのつもり」

 

 俺がそう言うと燈は当然とばかりに応える。もはや競技の勝敗などどうでも良いといわんばかりに暗を倒すことに固執している。

 

「ガレスはどうする? 残っておくか?」

 

「ああ、僕もこのまま残るよ」

 

「ガレス先輩も行きなよ」

 

 この場に残ると口にするガレスに燈は言う。その表情は寧ろ一人で戦うことを望んでいるのか、笑みすら浮かべている。この戦闘狂め。

 

「いやいや、君一人じゃ勝てないだろう」

 

「は? 勝てるし」

 

 ガレスの言葉に燈は額に青筋を立てながら言い返す。

 

「お前、さっきガレスに背負われてたじゃん」

 

「ぐっ」

 

 俺の指摘にバツの悪そうは表情で押し黙る辺り、多少なりとも自覚はあるのだろう。

 

「ここは大人しく先輩に助けられておけ、後輩」

 

「それに僕も一撃は入れておきたいしね」

 

「………」

 

 無言で何かを言いたげな視線を向けてくる後輩に俺達はちょっとした優越を覚える。

 

 まぁ、助けるのはガレスであって俺では無いんだけども……。

 

「貴方達の間で勝手に方針を決めるのは勝手だけど………」

 

 と、完全にこの場から離脱して王冠の捜索に意識を切り替えていた俺は戦闘の為に狭めていた霊力探知を広げようとして—————。

 

「逃がさないわよ?」

 

「———しまッ⁉」

 

 ゾクリと背筋に走った悪寒。

 直感が危険を知らせるも、探知範囲を広げたせいでその霊力に気付くのが一瞬だけ遅れてしまう。

 

『シャアッ!』

 

「ぐあッ!」

 

 コンの足元の地面から飛び出し、俺に向かって一匹の蛇の精霊が飛来してくる。

 

 俺は咄嗟に腕で防御を試みるも腕に噛み付いた蛇にそのままの勢いで押されてコンの背中から落下してしまう。

 

「ロークッ!」

 

「コン!」

 

 そんな俺を救うべくガレスとベオウルフ、それに燈の指示を受けたコンが尻尾を動かして俺を救おうと試みる。

 

『シャアアアァァァァッ!』

 

 けれどもそんな援護を妨害するように復活したオロチから高圧水流が放たれる。文字通り鉄をも斬り裂くであるウォーターカッターに全員がその場から退避し、俺は仲間と分断されてしまう。

 

 回避行動を取った時点で俺の回収が不可能だと断じた燈は瞬時にオロチに対しての攻撃の指示を出す。

 

「炎狐禍天滅照」

 

『グォォオオッ!』

 

 コンの全身から霊力と共に蒼炎が溢れ出し、やがて頭上に巨大な蒼い太陽が生み出される。辺り一帯が青色の陽光に包まれる中、コンはその大量の霊力と蒼炎が濃縮された塊をオロチに向かって放つ。

 

「邪魔だッ!」

 

『ギッ!』

 

 地面に転がった俺は腕に噛み付く蛇の精霊の頭を握り潰して送還させるとロックドレイクを呼び寄せる。

 

 その直後に激しい衝撃と共にコンの一撃を浴びたオロチの姿が燃え盛る蒼炎に包まれる。

 

「やった?」

 

「それは言っちゃだめなやつッ!」

 

 身体を焼かれるオロチの呻き声が響き渡る中、俺は言ってはいけない決め文句を口にする燈に叫ぶ。それはお決まりの生存フラグだ。

 

「抜け殻だッ!」

 

「脱皮しやがったかッ!?」

 

 すると案の定と言うべきか、燃え尽きたのはオロチの脱皮による抜け殻だったようだ。

 

 ならば本体はどこへ? と疑問を抱く間もなく、振動と共に前方の地面が僅かに盛り上がり、勢いよくこちらに突き進んできた。

 

「下から来るぞッ!」

 

「コンッ! 一度後ろに下がって!」

 

 危険を察知してベオウルフに騎乗するガレスの叫びに燈の指示の下、コンは後退を試みようとするが、判断が少しだけ遅かったようだ。

 

『シャァアアアッ!』

 

『ガァアアッ!』

 

 逃がさないと言わんばかりに地面から現れた四つの首がコンの足を伝って身体に巻き付き、その身体を拘束すると共に締め上げる。

 

「ガレスッ!」

 

「分かってるッ!」

 

 四つの首から少し遅れて地面から出てきた五本目の首は動けなくなったコンに止めを刺すべくその口腔に再び破壊の光を溜める。

 

「させるかよッ!」

 

 叫びながら俺は地面に手を当てると霊術を発動。周囲に五つの石柱を生み出すと光線を撃とうとするオロチの顎に向けて高速で放つ。

 

 その一方でガレスを乗せたベオウルフもコンの身体を駆け上がりながら勢いよく跳躍、オロチの頭上へと飛び上がっていた。

 

「ぉぉぉおおおおッ!」

 

『ガァアアアッ!』

 

 そのままオロチの頭に向かって雷光を帯びた魔剣と氷刃を纏ったベオウルフの前脚は振り下ろされる。

 

『ゴバァッ!?』

 

 ガレス達の放った一撃と俺の霊術は同タイミングでオロチに着弾し、今まさに光を開放するべく開かれた口を強制的に閉じさせる。

 

 結果、行き場を失った膨大な霊力の塊は口内で盛大に爆発、白目を剥いたオロチは口から煙と血を吐き出しながら首が力無く地面に落ちていく。

 

「コンッ! 離脱してッ!!」

 

『ッ!』

 

 オロチは一本の首がやられても怯むことこそ無かったが、流石に痛みにより僅かに拘束が緩んだらしい。その隙を逃すことなく指示を出した燈に従い、コンはオロチの拘束から離脱する。

 

「良い連携ね」

 

「それはどうもッ!」

 

 背後から聞こえてくる声に対して俺は霊術を発動。背中側に石柱を生やして横薙ぎに振るわれた刀を受け止めようとするが、暗の振るう刃は石柱を斬り裂きながら俺の身体に迫ってくる。

 

「くッ!」

 

 驚きながらも咄嗟に地面を蹴り、斬撃の回避を試みるも完全に躱しきることは叶わず、左腕に赤い線を刻まれてしまう。

 

『グォオオッ!』

 

「よせッ!」

 

「邪魔よ」

 

 俺の危機を察知したロックドレイクは張り付いていた壁から暗へと飛び掛かるも、振り返り様に振るわれた一太刀によって両断。

 

 俺の制止の声も虚しく、ロックドレイクは送還されてしまう。

 

「そろそろ本気を出す気になった?」

 

「俺としてはずっと本気なんだけどなぁ……」

 

 刃を突き付けられながらの暗の言葉に俺は困ったように笑いながらそう呟くことしかできなかった。

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