真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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既に把握している方も多いと思いますが、改めまして宣伝させて頂きます!

コミックガルドの方で本作のコミカライズの連載が開始されております!とても綺麗な作画ですので本作にご興味を頂けている方は是非、一読して頂ければと思います!

これからも本作をよろしくお願いします!


第93話

 重苦しい沈黙が場を包み込んでいた。

 

「………」

 

「………」

 

 ———君と娘は一体どういう関係なのかな?

 

 ゼル・ヴァルハートから投げ掛けられたその問いに対する答えをロークは今だに答えることができず、ただ黙っていた。

 

 ———どういう関係ってどう答えれば良いんだ?

 

 普通に先輩後輩の関係ですと答えれば良いのか、けれどそんな分かり切っていることをゼルはわざわざ尋ねるだろうか?

 

「えーっと、ですね……」

 

 とりあえず、この沈黙が続くのはマズいとロークは何とか答えをいおうとするが、上手い回答を思いつかず言葉尻が続かない。

 

「どうしたんだい? ……まさかとは思うが、レイアと何か私には言えないような関係にでもあるのかい?」

 

「い、いえッ! そんなことは断じてありませんッ!!」

 

 一向に回答を言わずに悩み続けていると訝しんだゼルからそう質問され、ロークは慌てて否定の言葉を口にする。

 

 ———マズい、怪しまれている。

 

 

 ロークは焦る。このまま下手に時間を掛けていてはゼルに悪印象を与えてしまう。

 

「先輩後輩の関係ですね……はい」

 

 故にとりあえず、当たり障りのない率直な回答で反応を伺おうとロークが言うとゼルは「ふむ」と納得したように頷く。

 

 そんなゼルの反応にどうやら正解を引いたらしいとロークが安堵の息を漏らす。 

 

「けれど、ただの先輩後輩の関係と言う割には随分と娘と仲良さげだね?」

 

 が、その安堵も次の瞬間には吹き飛んでいった。

 

「……えっ?」

 

「レイアとは学院に入った当初から定期的に連絡を取っていてね」

 

 困惑するロークにゼルがそう言いながら紅茶を流し込み、喉を潤わせる。

 

「最初の手紙は自分を馬鹿にするふざけた先輩がいると怒りに満ちた内容だった。私も思わず学院に怒鳴り込もうかと思ったほどだったが……」

 

「………」

 

 仮に怒鳴り込まれたら終わっていたなと当時のことを思い返して静かに冷や汗を流すロークを他所にゼルは話を続ける。

 

「けれど次に届いた手紙では少し評価が軟化していてね、前期が終わった頃の手紙には同じ人物のことをとは思えないほど、内容が変化していたよ」

 

「そんなに俺のことが書いてあったんですか?」

 

「ああ、ほぼ毎回ね」

 

 まさか手紙にまで自分のことを書いているとは思わなかったロークはゼルの話を聞いて素直に驚く。

 

 一体、手紙にはどんなことが書かれていたのか。

 

「それに大精霊演武祭の時、私も観戦していたが、君は最初の競技にレイアと一緒に出場していたね」

 

「あ、はい」

 

 レイアの書いた手紙のことを考えているとゼルから大精霊演武祭のことを言われ、ロークは慌てて思考を現実へと戻す。

 

 最初の競技……恐らく天競(スカイレース)のことを言っているのだろう。

 

 確かにあの時、俺はレイアと一緒にサラマンダーの背に乗って戦っていたなと思いしながらロークは頷く。

 

「手紙で君がレイアから信頼されることは何となく察してはいたが、あの時の君とレイアの距離は随分と近く感じたんだけれど……」

 

「あの時はお互いに競技で一位を取ろうと必死でしたので、ヴァルハート様が想像しているようなことは……」

 

 その赤色の目を細めながら勘ぐってくるゼルにロークはそう言ってレイアとの関係の潔白を訴える。

 

「……本当かい?」

 

「はい」

 

 少し前のめりになって確認してくる何も無いと頷くローク。

 

 直後、ロークの脳裏にルナの塔でレイアのスカートの中に顔を突っ込んだ記憶が過るが、瞬時に忘却の海に投げ飛ばして抹消を行う。

 

「誓って何もありません」

 

「……そうか。どうやら私の勘違いだったようだね」

 

 ロークの返答を聞いたゼルはそう呟くと背もたれに身体を預けながら静かに息を吐く。

 

「すまないね、つい娘のことが気になってしまって」

 

「いえ、全然大丈夫ですが……その、つかぬことを伺いしても宜しいですか?」

 

「ん? 何だい?」

 

「その仮に、あくまでも仮の話ですが……私がレイアさんと付き合っていたらどうなっていたんですか?」

 

「それは———」

 

 瞬間、部屋の温度が跳ね上がった。

 ゼルの身体から熱を帯びた霊力が溢れ出し、カップに入っていた紅茶が一瞬にして蒸発する。

 

「ッ!!」

 

 現役の宮廷精霊師の放つ圧を前にしてロークは周囲の温度とは逆に全身が冷水に浸かったような感覚になる。

 

「——燃やすね」

 

 そして重々しく放たれた言葉に実際に自分の身体が燃えるビジョンが明確に見えたロークは半ば反射的に距離を置こうと身体を浮かするが……。

 

「フフッ、すまない。驚かせ過ぎたね」

 

 けれど、次の瞬間にはゼルは先程までの表情から一変、楽しげな笑みと共に彼から放たれていた圧と霊力は跡形もなく霧散し、部屋内の温度も徐々に下がっていく。

 

「……へっ?」

 

「冗談だよ、本当に燃やしたりなんてしないさ」

 

 突然のことに困惑していたロークはゼルの冗談という言葉でようやく先程のただのおふざけであったことを理解し、深く息を吐きながら腰を下ろした。

 

「勘弁して下さい。心臓に悪過ぎますよ……」

 

「ハハハ、けれどお陰で肩の力が少しは抜けたんじゃないかい?」

 

 ゼルはそう言って笑うが、ロークは曖昧な笑みを返すことしかできなかった。

 

 ゼルの言う通り確かに多少なりとも緊張は解けたが、代わりに寿命が何年分か減った気がする。

 

 というよりも脅し方が出会った時のレイアを彷彿とさせることもあって非常に怖かった。流石は親子といったところだろうか。

 

「それに勘違いしているみたいだけど、私はレイアの男女交際は寧ろ推奨している方だよ」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

 そう言う割にはさっきのゼルの演技はやたらと真に迫っていた気がするが、自分の勘違いだったのだろうか。

 

「ああ、学生なんだから色恋の一つや二つは経験するものだろう。勿論、ある程度の節度は保ってね」

 

「そういうものですか……」

 

「ああ、私も学院に通っていた頃は色々とあったよ」

 

 そう言って学生時代を懐かしむゼルに俺は一度も経験無いけどなと思いながらロークは耳を傾ける。付き合っている相手がいるかは別としてガレスもモテているし、やはり世の中、容姿が全てなのだろうか。

 

「ちなみにアレアス君、君は学院で交際している人はいるのかい?」

 

「……いませんね」

 

「本当かい? 意外だな」

 

 一瞬、煽られていると錯覚してキレそうになったロークは瞬時にゼルがそんなことを言う人物では無いと頭を冷やし、冷静さを取り戻す。

 

「俺、そんなモテる訳じゃありませんし」

 

「そうなのかい? その割には随分と娘に慕われているようだけど?」

 

「あくまで先輩としてですよ。一応、気に掛けていたので」

 

 尤もその理由は最初の悪印象をどうにか挽回しようとしていたからなのだが……。

 

「ならそのお陰かな。レイアが成長したのは」

 

「成長ですか?」

 

「ああ、随分と成長したよ」

 

 ゼルはそう言って頷くとどこか嬉しげに口元を緩める。

 

「あの子は並外れた才能を有しているが故に少し高飛車になってしまうきらいがあったが、君との出会いを経て謙虚さを身に付け、よりひたむきに努力するようなった。親として嬉しい限りだよ」

 

「レイアさんは少し過激なところこそありましたが、俺と会う前からひたむきに頑張っている子だったと思いますけど……」

 

 ロークは言葉に気を付けながらゼルにそう意見する。

 

 確かに初対面こそ最悪だったが、それはこちらが契約精霊を呼ばずに舐めプをしていたからであり、彼女は出会った当初から謙虚でひたむきであったようにロークには思えた。

 

「そう思ってくれるということは、それだけ君がレイアのことを見ているということだろうね」

 

「いや、それは誤解で………」

 

 何だかプラスに解釈されているとロークは否定の言葉を口にしようとして、本当に嬉しそうに微笑みゼルの表情に言葉が続かなくなってしまう。

 

「君が良ければこれからも是非、あの子のことを気に掛けてあげてくれないかな?」

 

「……分かりました。俺にできる範囲でやらせて頂きます」

 

「うん、ありがとう。よろしく頼むよ」

 

 ゼルはそう礼を述べると「空にしてしまっていたね」蒸発させてしまった空のカップに予め侍女が残していたティーポットに入っている紅茶を注いでいく。

 

「……ふぅ」

 

 ゼルが紅茶をカップに注ぐ中、どうにか山場は乗り切ったかとロークは静かに達成率を抱きながら安堵に息を漏らす。

 

「そういえば大精霊演武祭でアレアス君の活躍は見せて貰ったけど、本当に簡易契約だけで戦うんだね」

 

「えッ!?」

 

 が、それも束の間、再び返答が難しい話題がゼルから投げ込まれ、ロークは休止させていた脳を再び働かせるのだった。

 

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